【#深淵覗きの断章】黒き影と、白き獣

深淵覗きガーベラは謎めいた影との邂逅を果たし、新たな力を得る事に……

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※『深淵の季節』最終クエストのネタバレが含まれます。
※今回は(過去作と比べ)捏造過多です。

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


 書庫の大精霊から引き受けたある任務の為、捨てられた地の大精霊は地上に現界し、忘れられた方舟の魔法店を訪れていた。
 店主である魔法の案内人から、昨今の星の子たちの様子や、彼らの流行、噂話等を聞き出していた時。風の街道に繋がる雲トンネルから、一匹の大きな光の蝶が飛び出した。
 ケープを広げた星の子よりも大きい蝶は、真っすぐ巨躯の勇者のところに飛んできて、その右肩にひらりと舞い降りる。
「おや、将軍殿、その蝶はもしや……
「うむ。草原の造り手殿の使いだ。すまんが、話の続きはまた今度とさせてくれ」

 方舟の裏の畑跡までのしのし歩いた後、明るく暖かな光の蝶を介し、造り手の長が陽気に呼び掛けてきた。
『やあ、ツァディ! ごめんよ任務中にお邪魔しちゃって。どうしても伝えときたい事があってね』
 古の名で呼ばれ、荒れ地の勇者は仮面の奥で笑みをこぼす。

 常にでんと構えて、誰に対しても明るく優しく穏やかに接して見せるしっかり者。
 草原の大精霊の陽だまりめいた在り方は、過去の対立と滅びを経ても、全く変わっていない。
 捨てられた地の大精霊にとって、その事は有難くもあり、羨ましくもあり……決して侮れぬ事でもあった。

「いいや、構わんよ! こうして使いを寄越したという事は余程の事だろう、アイン」
『ふふふ、やっぱり古い名前で呼ばれるのは嬉しいねえ……あのね、さっきガーベラが瞑想で僕のところに来たんだよ。“獣の力”を得たと言ってね』
「ん、あの深淵覗きがか?」
 深淵覗きガーベラ。大精霊たちが注視する『残り火の子ら』の一人。
 遥かに懐かしく輝かしい『残り火』を宿す交信者ネモフィラと違い、これまでガーベラに大きな動きは無かった筈だが。
『不思議な影の夢を見て、大きくて真っ白い獣に変身できるようになったんだって。大きいと言っても僕や君より小さいけど、ふわふわしてて強そうだったな』
「ほほう……他に何か、気になった事は?」
『獣のあの子が纏っていたのは、僕らの愛し子と同じ気配だったよ。見た目はだいぶ違うけれど、ね』
「嗚呼。それはとても、とても、興味深おもしろい」

 遥か昔の、殺伐でどろりとした闇色の記憶が蘇る。

「新しき勇者の、獣の雄姿か。是非ともこの目で見てみたいものだ。まあ、機会があればの話だがな」

 導き手の喜びと戦士の悦びを綯い交ぜにしながら、旧き勇者は、手にした大槍と大盾を強く握りしめた。

《了》