【#深淵覗きの断章】いざなわれしもの

これは、秘宝の環礁への航路が見出される直前のお話。
深淵覗きガーベラが見た、不気味な悪夢のお話。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


「はっ?!」
 リトル・ガーベラは、胡座をかく蒼翼のネモフィラの腕の中で目を覚ました。
「やっと起きたか。案内人もすげえ心配してたんだぜ?」
 そう言われて振り返ると、雨林にある大樹のツリーハウスの主スカウト隊のリーダーである大樹の案内人が、すぐ傍に座り込んでガーベラを覗き込んでいる。
「ハンモックから落ちても、僕が呼び掛けて揺すっても、全く起きずに魘され続けてるから、一体どうしたのかと驚いたよ! 君のお友達が様子を見に飛んで来なかったら、どうなっていたか……
「え?」
 ガーベラは、ネモフィラと案内人の言葉に困惑しながら周囲を見回す。

 今居るのは、大樹のツリーハウスの上階だ。ネモフィラの後ろにあるハンモックの上に、数多の旧き星の子の文書を取り込んだ、ガーベラお気に入りの投影キューブ(またの名をメモリーキューブ)が置かれている。
 ネモフィラ以外の星の子の気配はない。外ではしとしとと雨が降り続け、ツリーハウスの周辺を飛び回る光の生物たち鳥やマンタやクラゲの鳴き声が聞こえてくる。
 癒しの雨音と、ネモフィラの鼓動で落ち着きを取り戻したガーベラは、自分の身に何が起きていたのかをようやく思い出した。

 隣の共有空間シェアスペースに設けた拠点で、『大魚追いディノの手記』の解読作業に没頭していた事。
 水場の飛び込み台で遊んで気分転換した後、ツリーハウス上階のハンモックで昼寝をしていた事。
 そして、ディノの手記を手に入れて以降繰り返し見るようになった、悪夢に魘されていた事。

「ありがとう、ネモ……案内人さんも、心配掛けちゃってごめんなさい」
「いやいや、謝罪は不要さ。無事で安心したよ! それじゃあ僕はブランコの点検に行ってくるから」
 そう言うと、大樹の案内人はラッパで号令を吹く。
 呼び寄せられたマンタの背に乗って、案内人はふたりの星の子に手を振りつつ外へ去っていった。

 その後。リトル・ガーベラとネモフィラはツリーハウスの下階に降り、焚き火を囲んでいた。
「こないだも“直結交信”でお前の悪夢の記憶に触れたけど、本当に訳が解らねえな……お前だけ何度も同じ悪夢に魘されてる理由も謎だぜ」
 ネモフィラの言葉に、ガーベラは頷く。
「特に今回は、オレが潜行ダイヴしなけりゃ目覚めない程の深い眠りだった。なんだか呪いめいてやがる」
「呪いか……ホントにそうなのかはわからないけれど」とガーベラ。
「あの嫌な夢は、ディノの手記を見つけた私を導いている……そんな気がするの。次の季節の噂話や、あの子の手記の内容と付合する部分が幾つかあるし」
「ふーむ……オレとしちゃあ、正夢になっては欲しくねえぞ?」
 そう言うネモフィラの胸中では、ガーベラの悪夢に出てくる二つの言葉『残り火の子』と『罪の跡』が引っかかっていた。
 『残り火の子』とは、旧き星の子らが広めたおとぎ話上の存在『星の子たちを統べる特別な星の子』の事である。星の子の中には、多くの仲間を纏めて率いる才能を持つ子や、賢くて知識欲が旺盛な子、鋼の心と勇気を持つ子、ネモフィラのように不思議な力を扱える子が存在する。その子達は、空の王国に居たとされる『王』の『残り火』を持っていて、然るべき時に新たな王として迷える星の子たちを救うのだという。
 ネモフィラはそういう類の話を信じないし、ガーベラに至っては「断片的な関連記録はあるけど数が少ないし、信憑性が薄い」と言って切り捨てていた。だが、そんなガーベラの悪夢に現れたディノが「ボクと同じ『残り火の子』」と告げたのは、一体何を意味するのだろうか。
 もう一つの言葉『罪の跡』が具体的に何を示しているのかは不明だが、悪夢の後半の内容を見るに、捨てられた地と書庫の精霊・大精霊、そして恐らくは光の生物と関連がありそうだとネモフィラは推察する。勿論、夢の内容がそのまま現実に、真実に直結するとは限らないのだが。
「本当に、正夢にならねえと良いんだけどよ……
 ネモフィラの心は、理由も解らぬまま、酷くざわついていた。

 新たな季節が始まるまで、あと1日。

《了》