「あれ、私
……なんでここで寝てたの?」
捨てられた地の交流広場で目覚めたリトル・ガーベラは、橙色の蝶ケープやマッシュヘアに付いた土埃を払い、立ち上がった。
「普段なら色んな子が背比べしたり、演奏したり、遊んだりしてるのに」
星の子は一人も居らず。夕闇の地に至る大渦雲を周遊する、巨大魚の気配も無く。吹き荒ぶ冷たい風だけが、この場を満たしていた。
「なんで誰も居ないんだろう。なんか、なんか
……とても、嫌だ」
怖い者好きであることを誇る『深淵覗き』の胸中で、冷たい怖気が湧き上がる。同時に、以前もこういう不快感を味わったような気がし始めていた。
「
本拠地に戻ろうかな
……ネモと一緒に遊びたい
……」
そう思って念じようとした瞬間。かの子は、己の名を呼ぶ優しい声に気付く。
「こちらにおいで、ガーベラ」
交流広場と
本拠地を繋ぐ舞い戻りの像。その側から、暗い雲海へ向けて桟橋が伸びている。そこに立つ声の主は、リトル・ガーベラよりも、友人たちよりも背の高い星の子だった。
呼ばれるままその子の傍に近付くにつれ、ガーベラは既視感を抱き始める。
巨大魚の顔を模した戦士の仮面、隠れ潜む生存者のドレッドヘア、紺地に金縁模様の入ったケープ
……
『大魚追いディノの手記』に同じ風貌の星の子の似顔絵が載っていた事を、ガーベラは思い出した。「友達がボクの絵を描いてくれた!」という喜びの記述も。
「キミは
……ディノなの?」
「そうだよガーベラ。いや、深淵覗き」
大魚追いディノは満足気に目を細め、ガーベラを見下ろした。
「あの呼び声がボクらを呼んでいる。一緒に行こう」
思わず後ずさるガーベラをくすくす笑いつつ、旧き星の子は手を差し出す。
「ボクの手をとっておくれ、ガーベラ。君もボクと同じ『残り火の子』であり、『罪の跡』に招かれし者なんだから」
その一言でガーベラの全身は硬直した。そして、拒む意志に反して勝手に身体が動き、ディノへ手を伸ばす。
「嫌だ
……やめろ!」
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