超せかちゅ2025の新刊の話など

2025/5/3(土)スパコミday1内超世界中のchu‼2025にて発行した新刊の話


*新刊の裏話と設定


*パブリックスクールパロ本

アイス君と香くんにはつねづね学パロが似合うと思っているのですが、一度はパブリックスクールパロをやってみたかった。
世界観設定は20世紀初頭の大英帝国の繫栄ぶり(とその闇)で暮らす人々の話が好きだからですが、設定の調べ物手間を惜しみました。いつものことです。どうやっても英国“風”です。
巻末にある通り、まさしく上記時代パブリックスクールが舞台の『奇譚収集家小泉八雲』が下地になっています。ある意味ではこれのパロディでもあります。上記の本は学生時代のパトリック・ラフカディオ・ハーン(のちに日本で婚姻と帰化して小泉八雲と改名、『雪女』などの怪談話を英語で執筆する)を相棒に、同級生オーランドが語り手としてパトリックの怪異探しに付き合う……という話。ほぼアイス君と香くんの設定はここからパロディに組み込んでいます。

この二人で学パロにするときは呼ばせたい呼び名と付けたい人名が乖離しているのでいつも名前の設定に悩みますが、今回は本家の創造人名候補(複数挙げられたうちのひとつ)+兄弟設定に合うもの+ご都合からつけています。
この名前でアイスと愛称にすることはなさそうですが、英語圏でも一般的なもじり以外の普通つけないだろそれという呼び名(職や立場を重ねて物語の登場人物の名前から取るとか)や、親ですら本名で呼ばないという設定(『ロンド国物語』でマリオン→ミミとしか呼ばれない登場人物、検索にも他の例に出てこないんだよな……)がなくもないようなのでそれということで。
アイス君はよくエミールにするのですがいつもと雰囲気変えてのエギルです。『エギルのサガ』における魔女に追われ続ける主人公の名前が由来。


編入生
最初に書いた突発作。最初は転入生のタイトルでしたが語源的に変更しました。サウィンはケルト系の祭りですが、アイス君ちはケルトの民もいた繋がりということで。

Le diable est mort
フランス語で「悪魔は死んだ」。元ネタは芥川龍之介『歯車』の一文から。ドッペルゲンガー話ということで、芥川は『二つの手紙』『歯車』でドッペルゲンガーを登場させているという縁で。香の怪談話はほぼ『歯車』のレエン・コートからきています。芥川もドッペルゲンガーを二度見たとか。私は芥川晩年作品は死の匂いに引きずられるので読まないようにしているのですが、作品では『蜃気楼』が好きです。
設定上北欧メンバーが出せず、アジアンメンバーも出しづらい、ということで、エストに出番を回してみたら思った以上にはまり役で面白かったです。ラトはお家騒動が似合いすぎる。ところでドッペルゲンガーで著名な登場人物に実在不明のエミリー・サジェがいますが、ラトビアでの出来事だったので色々仕込んでいます。
当初は書く予定がなかったのですが、せっかく学校なのに授業風景ないともったいないと思って幽霊騒動で書き始めたらなかなか筆が進まず、仕切り直しながらエストを登場させたらみるみる動き出したのでほぼエストのおかげです。

幕間 慰められるよりは
最後に追加した話です。オーウェル『一杯のおいしい紅茶』を読んだ勢いでクリームティーをしている話を書きたくなってしまったのと、エストからの報酬の件について。エストの報酬はお茶のご馳走、アイスが役に立つことでエストの評価を上げることにも繋がるのもあります。
アイスが神学校にいるのは一の理由に軍学校の身体規定に達しなかったですが、二の理由に家庭教師だけでは学力が足りなかったので名門校に入学できなかった事情もある。あと金払いも。財産の一部はフォンヴォック家に差し押さえられている状況で自由に動かせない。
タイトルは「フランシスコの平和の祈り」。前後省略していますが「慰められるよりは慰めることを、理解されるよりは理解することを、愛されるよりは愛することを、わたしが求めますように。」という一文より。

あわいの蝙蝠
ふたつめの話がアイスの背景メインだったので、香の背景をということでカークランド家です。あと設定的にアイスが説明役になりがちだったので香の語りをしたかったのもある(地の文ではお喋りだけど)。
貴族設定のアーサーをどうしても書きたかったので、庶民生まれの香とのズレ、無意識下の偏見を取り入れつつ、悪役になりすぎないようなバランスを目指しています。『わたしはこうして執事になった』という使用人視点の本では、ある一人が使用人生活について奴隷根性と馬鹿にする人もいたとしつつ、忘れ物を懐に入れる、世話に過剰なチップを期待する、仕事をさぼって恋人と逢引する、とずいぶん好き勝手しながら、主人を尊敬申し上げていたと語るのが印象的だったので、身分制度の中の光と影と思って書いています。ノブレスオブリージュの精神。マシューも当然報告義務があり、香がサボっているのがまずい。
とりあえず読み始めたジャック・ザ・リッパーのウィキペディア、日語も英語も長文で時間が溶けました。一行に使うために読み始めたんですが……
ユールラッズネタが好きすぎて三度目です。本家にユールキャット末裔モンスターアイス君が登場を果たしたことだし。方言あいまって完全になまはげだなと書きながら思っていました。
趣味と実益で幼少期に聖書に親しんでいたので、久しぶりに聖書引っ張り出してきた。ちょこちょこ聖書的な表現を入れていますが思考回路がうまくいっているかどうかははたして……。「生まれてこない方が幸せだった」はイスカリオテのユダ。
本編には微塵も関係ないですが『吸血鬼すぐ死ぬ』で半吸血鬼が昼と夜の狭間の子と呼ばれているのが好きです。そんなタイトルです。

幕間 羊飼い
新大陸の話。ここが核心である。
デンは故郷では貴族との一切の繋がりがないのでわからなかったし、ノルが怯えていたので探さなかった。妖精さんは見えていない。


20世紀初頭の英国ぽい架空の国が舞台。
神学校 満11歳~18歳。香とアイスは13歳。

香(レオン・カークランド)
侯爵家カークランド家に引き取られた庶子。母方の祖母が落胤であったらしく、父親が死んで天涯孤独になった直後に乗り込んできたアーサーに引き取られることになった。両親とも東の移民の血を引く。
扱いに困るため、上流階級の礼儀作法を身に着けるため、将来は神父か軍人か学者かであるために、ひとまず田舎の神学校に放り込まれる。
両親ともに流浪の料理店をしていたので、香もやたら料理が上手い。寮の飯がまずい。
東の異教にも馴染みが深く、オカルトに抵抗がないせいかやたらめったら人ならざるものに付け込まれる。
香が本名。レオンは侯爵家でつけられた名なのでアイスにはそう呼ばないよう頼んでいる。
アーサーはまだ関わりが少ないのもあって恨みに寄っている。アーサーが視える方なのは知らなかったので、カークランド家が視える家系と教えられて驚いた。
国設定香よりも固定観念にとらわれている。そのためアーサーに対する感情が否定的。たとえるなら貰われてきたばかりの野生の猫。

アイス(エギル・ボンネウィーク)
没落寸前の子爵家ボンネウィーク家次男にして消去法の嫡男。
祖父母両親と不審な死を遂げ、家督を継ぐはずの兄が行方不明、その他彼にかかわるシッターも死んだとか、何かと黒い噂が絶えない。そんなわけで同級生には避けられている。アイス自身も人と関わりたいほど明るくもない。曰く悪魔憑き。
やたらオカルトに精通し、自身も人ならざるものが視えている。幽霊や妖精の姿がはっきり視えてしまう妖精眼。
連れのパフィンは使い魔のようなもの。ちゃんとパフィン。海辺の別荘で拾ったとか。
アイスは愛称で、だいたい本名で呼ばれることがない。
先祖は数代前の当主が軍功を上げた功績で貴族の地位を与えられたのだが、アイス自身にはまったく軍人の才がない。兄は順当にいけば名誉職の軍人になれたはず。
幼少期から兄も両親もいないので、国設定アイスよりも大人びているし妖精への対応もより適切である。悲観的なのは同じ。

アーサー
侯爵家当主。
アーサーは後妻の子で、母方の地位が高いので後継ぎになれた。異母兄たちとは遺産を分け合い表向き良好……だが、兄方の親戚とは最悪。ノルは同級で、同室だったのはポル。
香については先々代の祖父の後始末で、懐かない猫だと思っている。手駒が増えるのはいいことだ。
個人的に東の製品の輸入会社を経営している。東国趣味。
妖精眼の視える方である。ちなみにバンシー付きの家。

マシュー
軍学校の監督生。翌年は軍将校の身。
母方の祖父が落胤、と香と似たような立場。違うのは生まれたときからカークランド家にいること。
出奔した双子の弟がいる。弟は軍学校から抜け出してそのまま新大陸に行ったことまでは手紙が返ってきたが、アーサーは手紙を破り捨てて勘当を言い渡した。ゆえにカークランド家では彼のことを語ることを禁じられ、マシューは弟と同じ顔の自分もまたアーサーと距離を置くつもりで、国外への配属を希望している。

ハワード
カークランド家の執事。おじいちゃん。孫がいる。


未登場。アーサーに世話になっている留学生。帝国事情を調べにきたともいう。アーサーの輸入会社の取引相手。

エドァルド
5年次の上級生。アイスの唯一といっていい普通に話せる知り合いで、情報源。実家は貴族相手の弁護士でアイスの財産も管理しているとか。――というのは表向きで、後がないアイスの監視役。世渡りが上手い。

ライヴィス
4年次の上級生。鉄道会社の御曹司、と思わせて、養子の甥っ子なので立場が危うい。神学校にいるのは実家から近いからも理由。

ギルベルト
未登場。校医。実家で身の置き所がない。長兄を呪い殺したとかの噂。

ノル
アイスの兄。本名ルーカス。ノルは愛称で本名を呼ぶものはない。
アーサーとの狩りで行方不明になり、なぜだか漂浪してデンに拾われた。所持品でノルと呼ばれるようになったが、記憶のほとんどを失っている。その後デンに連れられて新大陸へ。
かつてはアイスと同じように視えていたが、いまはなぜか視えない。それをノルは知らない。

デン
新大陸で成功した富豪の後継ぎ。デンは愛称で、本名は別。
ノルがいい家の出身ではと疑っているが、ノルが戻りたがらなかったので家に受け入れた。





*あん怖本

どういうわけだかできた同時三冊目。10万字超176pの旅行本と5万字116pのパロ本がイベント一か月前に本文完成した余裕入稿っぷりだったのだが推敲作業が面倒すぎて逃避にもう一冊書いた。本を作るうち、推敲(何度も読み返すのがつらい)とPDF化(ちまちま数ページごとにマウスかちかちしてるので疲れる)が最大の難関です。

「ドラウグは死んでいる」のタイトルが先で、ぼこすか雑に息の根が止まる(すでに止まっているのでノーダメージ)なドラウグの話を付け加え、ものたりないのでもうひとつ、ファントムと狼男の話、さらに妖狐と悪魔の話が生まれています。出番に偏りがあるのはそのため。個人的には悪魔とお菓子モンスターの口論、お菓子モンスターとロリポップ君のお菓子バトル、UMAとエルクの駆け足競争の結果あたりが気になる。