nuka_boshi
2025-05-26 09:28:28
69686文字
Public 利吉さんで賽殺しパロ
 

利吉さんで賽殺しパロ解説的な

めちゃくちゃ長すぎる解説。筆者が忘れっぽいので備忘録に書いた。
なので読まなくても良いやつ。興味ある人は本編読了後にお読みください。


外伝/Tips


◇Tips 箱選びゲーム
元ネタは原作ひぐらしのなく頃に暇つぶし編の同名のTipsから。暇つぶし編というタイトルの元になったと思われる重要な話なのだが、媒体の都合上アニメや漫画では回収出来なかった、けれど原作に触れているとめちゃくちゃ好きになるエピソード。実は原作賽殺し編で『かつて貴女が箱選びゲームと称したように〜』という文章がある上に、主人公が元の世界に戻った時にまだ悩む姿を見兼ねた竜宮レナが飴玉を使って再現、「人間は一つの世界しか選べないのだから選んだ世界に全力で向き合うべき」と諭すシーンがある為、これはどうにかして入れなければいけないと考えた。ただ、土井半助や乱きりしんのアプローチで箱選びゲームを自然にさせるには手間がかかるし、手の中に隠す飴玉の代わりをどうするかという問題が起きるので悩む事に。そこで、『本編書く前に書いた外伝の綾部喜八郎と滝夜叉丸の話を使ってifルートの分岐させて読者に箱選びゲームをさせる話を書こう、その方が読者の知りたいかもしれない余談が伝わるだろうし』と突然の思いつきを実行、本編と同時進行で書き始めた。
なので順番的には一番最初に書いたのが綾部喜八郎視点の外伝(伝子さん死亡ルート)、次に本編、本編と同時進行で綾ベルンカステルの箱選びゲーム(空っぽのカケラ含む)と令和利吉さん外伝(伝子さん生存ルート)の1ページ目まで、そして本編書き終えてから令和利吉さんのエピソードと隠しTipsを作成した形になる。
令和利吉さんの猫箱はマジで長くなってしまったのですごく困った。長くなりすぎてこの箱選びゲームの作成自体をやめようか悩んだものの、相談したソウルメイトから『書け、猫箱に長さなんてそもそも関係ないだろ』と唆されたので書いた。当のソウルメイトからあまりの長さに笑われたがお前が唆した物語だろうが解せぬ。


◇猫箱の中身
冒頭の綾ベルンカステルの詩は分かりにくいが

箱の中身は幸福で満たされていた→室町利吉

箱の中身は空っぽだった、なんでも詰めていける→令和滝夜叉丸、令和綾部

箱の中身は飴玉ひとつ、じっくり味わった→令和利吉

僕は箱を選ばなかった→綾ベルンカステル

をそれぞれ対応させている。実は令和綾部は「室町〜戦国の記憶を捨てる」という選択をしているので「空っぽだった」に対応している。なので滝夜叉丸と同じ箱を選んだ上で別の道を歩む、という形式。
令和綾部の猫箱を見れば分かる通り、この2人は選択こそしたものの、過去の記憶に振り回されて茨の道を歩んでいる。なのでまさに『空っぽの箱』。ただしそれを選んだ事を誇りに思い、互いに目標に向かって逞しく生きていくと決めているので『不敵に笑った』になっている。

ちなみに箱の中身の内訳は、
青色→綾ベルンカステルが言っている通り冷たい印象を与える色なので、優しさや倫理観を失った魔女ムーブをしている綾ベルンカステルのイメージ。ここは若干消去法でもある。何も考えずに全部読もうと思った人が順番に読むならまず選ぶであろう順番にしたかったので一番上に持ってきた。
赤色→作中での重要だったオムライスのケチャップカラーなのでオムライスの出てくる令和利吉さんの話。多分伝子さんのエピソード見たい人はケチャップカラーからメタ読みしたらこれを引くだろうなと思っていた。原作が赤と青の二択なのでここは二番目。
紫色→綾部視点の滝夜叉丸のエピソードなので、四年生カラーで紫。滝夜叉丸目当てに選んだ人が当作品の滝夜叉丸というキャラクターをより深く知れるようにと思ってこの色にした。
原作に存在しない箱なので三番目。
という振り分け方をしている。なのでメタ読みである程度中身がバレていると思われる。とはいえ綾部喜八郎が記憶持ちな事に作中で気付けないと狙って予測するのは中々難しいかもしれない。
まあ綾ベルンカステルの詩が『深い穴底』だったり箱選びゲームの綾ベルンカステルが綾部口調になっていたり、そもそも作中で綾部が『落とし穴を掘った事がない』と徹底的に落とし穴に関わるものを避けている描写があることなどから、人によっては気付くだろうと想定している。
正規ルートがどんなものかは筆者の中では一応決めているが、それはそれとして選んだ箱を大切にしてほしい。

◇僕らは決して友にはなれない
最初に書いた話なので先に紹介。
綾部を転生者とする事は当初からの目論見通り。これは世界がそのまま続いた場合、滝夜叉丸が挫けそうになった時に立ち上がらせる役がいないと彼にとってあまりにも地獄なので。
なので、起きた出来事としてはかなりバッドエンドに見えるが個人的には滝夜叉丸への救いの物語として描いている。
また、個人的に昔から綾部喜八郎が結構好きなのだが、綾部は自分の信念と覚悟を決めているキャラクターであり、ブレる事が起きない為主人公に出来ないと感じているので、『別の倫理観が入ってきて嫌でもブレるしかないこの設定の綾部喜八郎』でなければ主人公にするチャンスが起きないと感じていた為、そのチャンスを逃さないために作った話でもある。
ちなみにこの話書いたのはフォロワーさんとお泊まりして滝夜叉丸と綾部の話を見た直後で、まだ軍師の豪華版パンフレットの小説を読んでいなかった頃。つまり滝夜叉丸についてまだ掴みかねており、この物語を書けるキャラ造形か分からずシュレディンガーの滝夜叉丸していた頃。なので妄想と幻覚のつもりでいたし、実際の滝夜叉丸がどんな奴か知ったら書けなくなると思っていたので慌てて書いた。
どうでもいいがイメージソングはドーナツホール。
ちなみにこの話では本編であれほど覚悟が決まっていて強かった筈の滝夜叉丸が挫けかけているが、これは燃え尽き症候群によるもの。ここまで滝夜叉丸は地獄のような日々を嘘だけで必死に乗り越えてきて、ずっと走り続けてきた。そして、一番欲しかったであろう『見届けてくれ』という言葉を受け、憧れの先輩の軌跡を踏襲した事によって、彼にとっての本懐は達成したに等しい。しかもその上で見届ける必要のある相手である山田利吉を喪ったわけなので、実質的に『限界まで走り続けて脚を負傷、もう頑張らなくて良いのだと思ってしまった山田利吉』と全く同じ状況になっている。滝夜叉丸視点、これ以上嘘を吐く必要など何処にもなく、『もう頑張らなくていい』と燃え尽き症候群を起こしてもおかしくない状況。しかも利吉さんの訃報を聞いていることで、嫌でも『もう居ない山田利吉の事』を思い出さずにはいられない。利吉さんは滝夜叉丸に細かい過去を話してはいないが、滝夜叉丸の知り得る断片的な状況や彼の人となりからある程度彼が挫折した理由を察していると判断して書いているので、「ここで挫けてはいけない」という意識もある。しかし挫けまいと思っていても、成し遂げるべき目標を全て達成したと思っている滝夜叉丸からすれば、何を支えにすれば良いのかわからない。なので立ち上がる為に時間がかかる。そのタイムラグを突いて、三木ヱ門から『大丈夫か?』と心配されるという『等身大の自分に触れられる』という行為をされるわけなので、そうそう耐えられる内容ではない、というかオーバーキル。故に曇っている。なのでここで記憶持ち綾部喜八郎がいない場合、滝夜叉丸は立ち上がるタイミングを失ってしまう。しかし滝夜叉丸は理想とプライドがエベレスト並みに高いので、ここで挫けて『もういいや』と虚勢を辞めた場合、利吉さんと同じく『そんな風に思ってはいけなかった』『期待の星として私を見てくれた人に合わせる顔がない』と自分を追い詰める事になる。なので、このタイミングでさっさと立ての『おやまあ』が入らない場合、滝夜叉丸は遅かれ早かれ絶望して死ぬものと想定している。逆にここで綾部が『おやまあ』した事により、己を見てくれる綾部喜八郎の存在に気付く為、挫けずに嘘を継続出来る。筆者の考える滝夜叉丸は決して強い人間ではないので立ち上がらせてくれる人がいないとダメなのだ。また、ここで滝夜叉丸視点で『恐らく綾部には記憶がある』をうっすら気付かせる事で、『かつての同室もまた自らの意志で選び、記憶を手放そうとしている』と知った為、何も言わずとも互いが互いの心の支えになる。この叱咤の『おやまあ』イベントは伝子さん死亡ルート以外のルートでも起こり得る内容のため、今後滝夜叉丸が挫ける事はない。
そして挫けない限り、滝夜叉丸は自分の選択に責任を持って乱太郎やしんべヱのケアを行うので、実は見た目ほど悪いエンディングではなかったりする。
ちなみに『ベテルギウスは勇を鼓す』の執筆後に、その内容を取り入れる形で若干の加筆を行っている。修正後は綾部の想いが滝夜叉丸と同じである事が念押しされている他、過去を受け入れた理由がより分かりやすく明言されている。
尚、加筆で追加された『思い出話を語り合った人』は仙蔵。この設定は元々決めてた内容なのだが、かなり寂しいバックグラウンドになってしまう事や書いた当時に綾部と仙蔵の関係や抱く感情の重さに自信が無かった事から初回執筆時に省かざるを得なかった部分。

◇消えたカケラ
綾ベルンカステルによる魔女ムーブ。
くすくす笑いを封じているのにここまでハマり役になるとは思わなかった。
ちなみにこの話の綾ベルンカステルは自分が綾部喜八郎を名乗るのは令和を生きる綾部喜八郎に悪いと思っているので、綾部喜八郎なのか問われたら『そんなわけない、別人だよ』と答えるし、キャラ設定説明でも書いた通り名前を名乗るなら踏鋤の踏子を名乗る。なんでやねん。
ここで出てきた『君』が誰かは想像にお任せします。ちなみに原作のベルンを思えば綾ベルンも数多の世界を渡り歩いて長い時を過ごしている可能性が高い。その為たとえ本来の綾部喜八郎にとって先輩や教師にあたる敬語で話すべき人物に対しても、恐らく『自分より若輩者』という扱いでタメ口になる。ここは原作梨花の赤坂への対応に近いと思って欲しい。なので、会話相手が読者ではない場合、どのキャラクターにも当てはめれたりする。
カケラ遊びが出来る場にいるという事は上位存在になるので、そのキャラクターも世界の移動をしている事になるが、カケラは無数にあるので令和時空への移動とは限らない。もしかしたら江戸時代や歌舞伎のパラレル時空、御伽話のパラレル時空などもあるかもしれない。
綾ベルンカステルが利吉さんを令和時空に落としたのか?は皆様が心の中で決めてほしい。筆者としては一応決めてはいるが、別にどちらであっても構わないと思うので。

◇星だけが知っていた
令和利吉さん視点。令和利吉さんの人となりや伝子さんとの親子関係、その後の滝夜叉丸との関係などを書こうとしたらめちゃくちゃ長くなった。
令和利吉さんは本家より若干情緒が幼く素直なキャラクターとして描いているので、どちらかというと「おじゃんです」の頃の利吉さんに近い性格。これはまだ子供であり、世間を知らない事や、親に対して強くコンプレックスを感じることも無く、関係性が良好そのものな為。
親が伝子さんという『あけっぴろげに素直なコミュニケーションを取る女性』であり『素直になれない亭主関白の山田伝蔵』とは違う事も大きな影響を与えている。伝蔵の奥さんはどちらかというと大和撫子タイプというか、利吉さんを受け止める方向性のコミュニケーションをとるタイプと想定しているので、『自分からアプローチしないと甘えられないけれどプライドが邪魔をして素直になれない室町利吉』と『全力で自分を愛しに来る母親を持つ令和利吉』では、後者の方が自分の感情に素直でのびのびと育っていると予測したのも大きい。
また、山田伝蔵夫妻と伝子さんの教育をしっかり受けている為基本的に真面目で育ちが良いツンデレでもある。この辺りは、『年齢的に少し遠出して遊びに行くくらい別に問題ないのに心配をかけないようにと自重し、『悪戯の言い訳のように」知らない街へ足を運ぶ』『夕食までには帰れる距離を選ぶ』『外出先でゴミを捨てる事もできるのにわざわざゴミ袋を持参して家まで持ち帰る』などの描写からも滲み出ている。恐らく伝子さんが予備校の欠席連絡を入れてなければ遠出すらしてない。伝子さんに対する思春期故の反抗もほぼこんな調子なので、スレたところなど見つけてもらえない。この辺りの『真面目すぎて本人は荒れたり反抗したりしてるつもりでもそう見えない』の部分は完全に室町利吉さんと同類。
どうでもいい余談だが、モブ3人娘に関しては、それぞれタイプの違う現代っ子っぽい子を考えようとした結果生まれたキャラクターの為、実は別れた原因も違っていたりする。
1人目は『利吉に愛されようと焦ったが故に肉体関係を迫ってしまった上、自分を大事にするようにと何度も諭された』という事で彼が彼なりに自分を心から大切にしている事をちゃんと理解し、それ故に自分の浅はかさに耐えられずに別れたので、利吉さんをマザコン扱いする事はまず無い。『軽はずみな事をしている自分に明らかに非があり、しかし不安に駆られた時に自分は立ち止まれないと気付いたからこそ利吉の為にも別れた方が良いと考えた』が本音なので、『愛が重すぎる』はほぼ方便に近い。なので利吉さんマザコン説がそもそも頭に浮かばない。本音を言えなかったのは、これを伝えると利吉さんが『そんな事気にしなくて良い』というのが分かりきっていたから。彼女が焦った理由は『山田利吉が容姿端麗で頭脳明晰、明らかにハイスペックな上にこれまで誰からの告白も断っていた高嶺の花で、尚且つ当人が「まだ恋愛というものがわからない」と自己申告していた』為『本当に自分を愛してもらえるのか』『他の人が現れたらそちらに靡いてしまうのでは』と焦ってしまった事に起因しており、それがバレた場合利吉は間違いなく気に病むし、自分に非があるから別れる必要はないと言い出すのが目に見えている。それを防ぐ為に、『恋愛感情に温度差がありすぎて上手くいかないから別れよう』を伝えようとして出力に失敗したというのが真相。
2人目はわかりやすくミーハー女子。この子は「その間告白してきた何名かの女子にしたように僕は以前「愛が重すぎる」と破局してしまった事があるからと伝えた」という地の文がポイント。実は彼女は噂話などを聞いて利吉の『愛が重すぎる』をドラマや漫画にいるような『恋愛に関しては束縛系ヤンデレイケメン男子』と思い込み、誰にでも優しい年下のイケメン男子が自分にだけは重く執着してくれるシチュエーションに憧れて告白している。つまり、利吉さん本人を見て告白した訳ではない。その為付き合っても挙動が変わらず優しく、尚且つ自身を尊重してくる利吉さんを見て「あれ、思ってたのと違う」となった結果、自分が利吉さんを全く見ていなかった事やシチュエーションに惚れていただけだという事に気付いた。なので彼女にとって利吉さんとのお付き合いは完全に黒歴史。ただし、「やっぱり普通に愛してくれる人の方がいいってよく分かった、ごめん。」という台詞にもある通り、利吉さんに触れた事で『サブカルチャーのシチュエーションに惚れるのではなく、ちゃんとした恋愛をしたい』という認識が発生した。そして、それは「まだ恋愛がわからない利吉さん」と「サブカルのシチュエーションに恋していただけの自分」には出来ないことだと判断したからこそ別れている。この子に関しては何故別れたのか友人に聞かれた場合に愚痴として少し利吉さんのマザコンっぷりに触れる可能性はあるが、当人が自分の非を強く感じている為、友人がそれを指摘したり広めたりすると烈火の如くキレる。なので利吉さんをマザコンだと思ったとしてもそれを広める事は絶対にしない。
3人目は最も等身大の利吉さんを見ていた女子。利吉さんが母を大切に思うことや自分を大事にしてくれることを長所と感じ、意外とムキになる所やプライドが高く見栄っ張りな所も全部わかった上で長所とした尊重、愛していた。ただし、『引っ込み思案な、人よりちょっと子供っぽい感性』という部分が問題だった。実は彼女は自分に今ひとつ自信が持てず、恋をするにはまだ未熟だった為、伝子さんという『自分も利吉さんも憧れる理想の教師兼母親』の話を聞いているうちにどんどん不安になってしまった。どうでも良いので作中で触れていないが3人目のこの子は利吉さんの真面目さに触発され他結果教員志望、利吉さんの志望校に合格して利吉さんと別れてからもそのままずっと強い意志で小学校教師を目指している。そのくらい利吉さんから得た物学んだ物が多く、それ故に本気で好きだったと言える。実際別れてからも利吉さんのことをめちゃくちゃ気に掛けており、交通事故云々の話を聞いて利吉さんへの心配と励ましの言葉を綴った手紙を書く程度には心配している(ただでさえ長いのにモブ描写にこれ以上筆を取られるのはどうかと思ったのでバッサリカットしたが、初期プロットではラストシーンで部屋に戻った利吉さんがこの手紙を読む予定だった。この話ではもしかしたら勇気が足りずに手紙を出せなかったか、或いはまだ届いていないのかもしれない)。
だからこそ上位互換とも言える伝子さんの存在が不安になったし、己の未熟さが気になり耐えられなくなった。つまりは自己評価の低さの問題なので、彼女がもう少し社会経験を積み自分に自信を持てるようになれば解決する。また、利吉側も「伝子さんへの愛が重い」は事実なのだがこれは社会人になって伝子さんとはまた違うタイプの『尊敬できる上司』に出会えば落ち着く。マジで付き合うタイミングが早すぎただけというか、大人になってから『ああそんな事もあったね』と笑い合える余裕を持ったあとなら、再会さえできれば当初こそは多少の気まずさはあるだろうがゴールインまで持っていく事は実はワンチャン可能だったりする(教師という仕事が出会いが少ないので余計に)。とは言えこの辺りは完全に縁の問題だし、双方に歩み寄りの姿勢がなければ不可能なので、復縁は決して容易ではない。奇跡が起きればワンチャンくらいの塩梅。
……なんで大して重要でもないモブ女子の話がこんなに長くなっているんだ。
閑話休題。思い出して良かったと飛び付いてくる乱太郎としんべヱの描写だが、実は泣く泣く削った台詞としてしんべヱが「あの時は『絶対にできないこと』って言ったけど、やっぱボク、本当は諦めたくなんか無くてぇ……ッ!」と泣く台詞があった。この台詞、本当に本当に使いたかったのだが、利吉さん視点で完全に訳がわからないので他の会話に埋もれてしまう事から無理に出しても不自然になるということで削るしかなかった。この台詞があったら今回の一件を機にしんべヱらにも気持ちの変化ができていることを多少なりとも示せたと思う。しんべヱ乱太郎と令和利吉さんの会話シーンを書こうかとも思ったが、まだ利吉さんが気持ちの整理をつけれていない所の絡みを書いても仕方ないのでバッサリカット。
きり丸と伝七、そして私服警官土井半助を出す事は実はこの外伝書くと決めた時に同時に決めていた。
土井半助は令和なら教師向きのキャラクターだが、教師を選ぶ理由がそもそもないので本人の性格適正には若干かみ合わない警官になっているという設定。性格上こちらの世界でも神経性胃炎したりしてるが室町ほど深刻ではない。
孤児ではないきり丸と接点が出来ることもなく、エンカウントしたとしても『ドケチでもなければアルバイトもしない満たされているきり丸』にとっては全く興味がないただの他人になるのであの距離感。ちなみに土井半助が身なりに頓着しない、服が薄汚れているのは個人的には「生きていく目的が希薄だけど仕方なく生きてるからこそ自分の身なりには頓着しない土井半助」故に発生する現象だと思っているので、令和時空ではもう少し髪も服も整えさせたかった。……が、これやると名前出せない以上マジで誰かわからんくなるので泣く泣く諦めた。
伝七がきり丸と一緒に居るのは叙述トリックみたいになっているが、『実践に弱い』『プライドが高すぎて素直になれない』という伝七本人が気にしているであろうポイントが解消する関係性になるのでここは外せなかった。勿論安易にこっちの方が良いと言えないように、佐吉や兵太夫、その他作法委員会との接点は無くなっている。なのでもし伝七がこの世界に転生したらめちゃくちゃ曇る(この世界に記憶持って転生して曇らない人はそもそもいないだろうけど)。
こっちの話の滝夜叉丸は綾部が転生者な事に多分気付いていないと思われる。それどころじゃなさすぎて綾部にまで気付く余裕がない。
滝夜叉丸の雰囲気がガラッと変わった時の令和利吉さんの戸惑いは、暇つぶし編の赤坂が黒梨花を見た時などのシーンを参考にしている。
この外伝は滝夜叉丸の『見届けさせていただきました』と伝子さんと利吉さんの相互指差し『オムライス!!』を書くためのものだったので、滝夜叉丸が良い感じに書けていれば良いなと思っている。――というかこの2つをどうしても書きたかったが故に膨大な長さになったところはある。……じゃあきり丸と土井半助のシーン削れよって?いや、せっかくの外伝なんだから本編で出てこなかったキャラクターの動向が見たいって思うのが一般的な読者の心情じゃない?――え?そんな事ない??
利吉さん帰宅後のオムライスのシーンで伝子さん相手に「ぎゃふんなんてきょうび聞かない言葉、誰が言うんだ」と言ってる利吉さんが「母がぎゃふんと言うくらい立派な教育者になってやる」と言ってるのは完全にブーメラン。令和利吉さんはそういうとこがあります。
1番書きたかったシーンとも言える相互指差し『オムライス!』。ここは伝子さんと利吉さんの普段の関係性、本来のノリを出したくて書いたとも言える。伝子さんは元々このくらいお茶目でノリが良い人だし、令和利吉さんも若干染まっている。そしてこれは室町利吉さんでは出てこない挙動なので、この挙動を見る事で伝子さんは『本来の利吉が帰ってきた』と実感出来る。
彼女いないのかと地雷を踏み抜く伝子さんに関しては、ぶっちゃけこの為だけにわざわざモブ女子3人も作って冒頭で情け無い利吉さんを描写したので計画通り。利吉さんは泣いていい。
当たり前のようにオムライスの写真を撮る利吉さんは、これが普段からの日常風景だということをよく示している。実際利吉さんのスマホには伝子さん特製オムライスの写真が大量に残っているし、入学式などの特別な時に作ってもらったオムライスの写真は絶対消えないようにバックアップもとってある。ちなみに反抗期になる前は利吉の待受画像は母親特製オムライスだったし、彼と付き合ったモブ女子と利吉の友人は全員そのこと知ってる。……思春期突入するまで同世代の男子がそこを揶揄わなかった事を考えると、マジで人間関係SSR引いてる男。
冒険彗星をイメージソングとしているので、『神様が、ひとりにひとつだけ、人生という世界を与えるのなら〜』は『ひとりにひとつ与えられてしまった世界の真ん中』を意識している。そしてこの場面で利吉さんが『しょーもない世界』について触れる事で、綾ベルンの詩に出てくる『箱の中身が飴玉』だったキャラクターが令和利吉さんだと確定させている。
また、平行線上の道のりを歩く〜は、『並行な旅路の交差点で〜』の歌詞に対応していたりする。
ラストの『星さえ知っていればそれで良い』は令和利吉さんの本心であり、神の目視点だと『全てを知っているのは滝夜叉丸くらいで良い』の意味も含む。令和利吉さんは今回の物語の全容を知る必要はないし、知らなくて良い。伝子さんは当事者なので除外するとして、当事者以外にちゃんと事情を知っているのは滝夜叉丸だけ。そして滝夜叉丸は令和利吉さんを(姿こそ現さないものの)今後もこっそり気に掛けて彼の選択を見守っていくものと推察される。見届けるべき相手が居続けるので、滝夜叉丸は曇ったり挫けたりせず満たされて生きていける。また、綾部は挫けそうになる滝夜叉丸に触れる機会がないので、自分の記憶の秘密を完全に隠し通したままになる。利吉さんと滝夜叉丸の出会いで『この滝夜叉丸も自分の記憶と地続き、同一人物だ』という実感を得たので今後は自らの記憶と上手く折り合いをつけてまっすぐ生きていくので、彼に関しても満たされて生きて行けると言っても過言ではない。そういう意味ではこのエンディングが1番幸せな猫箱だと思われる。
……どの世界線でも何も知らないまま嘘つきたちに翻弄される三木ヱ門が可哀想すぎて涙を禁じ得ないが、相談相手がいるしなんとか上手く生き抜いてほしい。

隠しTips


◇隠しTips Re:オムライス
利吉さんが本編で受けとった「オムライス」への返信という意味のサブタイトル。全然隠れていないがれっきとした隠しTips。返信なら利吉さん視点で伝子さんのこと語らせた方が良いのだが、それは本編で充分触れたと判断。伝子さんから受け取ったものを利吉さんがどう消化しようとしているのか、そしてそれが周りにどう影響を与え始めているのかを描く事にした。作品的なポジションとしては祭囃子編の隠しTipsの『お子様ランチの旗』に近い。なのでpixivから見た人は多分辿り着くのに苦労すると思われる。興味ある人は頑張って猫箱でカケラ紡ぎしてほしい。
最終章の解説で触れた通り、このままだときり丸が都合の良い男になりかねないと思ったので、本編へのアンサーとしてきり丸側の心情の掘り下げのエピソードという側面が強い。ここで主人公を乱太郎にしたのは、本編での乱太郎が当初の想定よりだいぶ影が薄くなったから救済措置。
室町の赤い食材、梅干しと唐辛子と山桃くらいしか浮かばなくてマジで困った。だって確か野苺とかはもうちょっと時代が後の方だよね? 私は室町時代に詳しくない魚類。アケビとかも考えたけどアケビって赤なのか紫なのか知らない。私は食材にも詳しくない魚類。むべも候補に入れたけどむべって何色なの??私はむべを母校の隣接博物館でしか知らない魚類。
人参に関しては室町時代はガチで貴重なので実は本編のオムライスの描写でも必死に省いている。ゴロリと顔を覗かせる野菜、に人参も含まれているはずだが、高麗人参と現代の人参を調理済みの状態で同じものとして認識するのは現実的ではないと思われる上に、そもそもただでさえ貴重な人参を利吉さんが食する機会はないと考えたので、室町利吉さん視点未知の野菜扱い。ちなみに利吉さんが両親にオムライス作り見られそうになって場所借りに来た、となっているが山田家は普通に知ってるし本来は隠す必要もない。利吉さんが勝手に気恥ずかしさからきり丸を頼った模様。……これがきり丸の掘り下げ用の外伝でなければ、素直に母親に手伝ってもらって再現を目指す親子エピソードにしていたのだが、まあ伝子さんの件への気持ちの整理中の利吉さんが実母にすぐに料理を教わろうとするのはちょっとハードルが高いと見た為、隠れて作る話にした方が妥当だと見た。そしてそういう場所を後腐れなく提供しそうなキャラクターが利吉さん視点限られているので(確実に山田家に義理立てする為山田夫妻に伝わってしまうであろう土井半助やうっかり何言うかわからない小松田さんは頼れない。他の人間に関しては、いきなり『調理場を貸してくれ』と頼むのは流石に非常識ではないかと躊躇すると思われる。そうすると、『町で適当な相手を探し出して交渉する』か『ビジネスとして話を持ち込めば黙っていてくれるので交渉相手として適任なきり丸を頼る』の二択になる。利吉さんなら、交渉相手を探す手間を掛けるより効率重視できり丸に話が行くはず。当社の利吉さんは効率厨なので、流れ的にきり丸がこの話を受けるのは全くおかしくない)。
この話で外せないポイントは、『きり丸は利吉さんに嫌悪感などは一切持っていない事』『寧ろ彼の本音などを知って安心しているしそれ以前から感謝の気持ちがあること』『きり丸が銭儲けとは別に、土井半助にオムライスを作りたいと思っていること』。
本編にせよ外伝にせよきり丸の存在感がめちゃくちゃ強くなるが、まあこの物語は元々軍師映画の視聴がきっかけで生まれた物語なので、きり丸が存在感放つのは仕方ないと思われる。
あとは相手の心に寄り添い踏み込む乱太郎、出力は遅めだが本質を突くしんべヱ、そして逞しいきり丸、という構図と、上記の押さえるべきポイントを拾って書くだけ……だったのだが、個人的にきり丸の心情吐露をどう表現すべきかでめちゃくちゃ悩んだ。変な書き方してきり丸が利吉さんを愉悦していたように誤認させるのは嫌だし、かと言ってあまりに表現を柔らかくするときり丸の心境が伝わらない。また、きり丸の心情としては『悩んでいる』というより『慣れない感情に戸惑っている』の方が近いので、下手に深刻な書き方をして『利吉さんや土井半助が傷付いているきり丸をケアせず放置した』に見えてしまうのが1番困る。実際にはきり丸は利吉さんによって傷付いてるわけではなく、単純に自分の感情に戸惑っているだけなので、彼らが何かしらフォローしようとしても空回ってしまう状況。つまり決して土井半助らがきり丸のケアを怠っている訳ではない。が、きり丸としてはこれは土井半助や利吉さんには絶対知られてはいけない感情だと思っているし、山田伝蔵らにも(土井半助らに伝わる可能性を考えて)相談が出来ない。なので、画面外で利吉さんが「オムライスの材料がわからない、こちらでも調べてみるけどきり丸も思いつく食材がないか探してほしい」と頼み、悩みがあるなら自分と無関係の人についでに話ができるように、相談しやすい土壌を作っている(そうじゃなければ山田夫妻にオムライス作りをバレたくない利吉さんが、口止めをお願いするので)という事情もある。特に食べ物関連で誰かを頼るなら、堺の貿易商である福富屋の息子のしんべヱを確実に頼るし、そこからきり丸の悩みを確実に聞けるであろう乱太郎&しんべヱコンビへの相談が容易になるのでその目的でオムライス作りに巻き込んだところはある。
吹っ切れ後のきり丸がオムライスに描きたい物は、個人的にこれしか浮かばなかった。もっと他に彼ららしい内容がある気もする。知らんけど。

◇書き下ろしTips :ベテルギウスは勇を鼓す
伝子さんのTipsより先に書いているので順番を前後して紹介。この話とRe:オムライス、孤独の3つのTipsは外伝だけど正規ルートというか、本編と同じルートを進んだ場合確定で発生するイベントとして書いている。
室町時空の滝夜叉丸――というか、利吉さんの帰ってきた世界の滝夜叉丸の心情や精神性を確定させた上で彼が幸せになる道筋を作る為に考えていた話で、実は本編書き始める頃には既に構想があった。当初はもう少しわかりにくい構成だったのだが、『いつも笑顔での段』を視聴して七松小平太との対話を用意すればすっきりした内容になると判断、紆余曲折の末にこの形に落ち着いた。
とはいえ、シュレディンガーの滝夜叉丸を確定させてしまうと『本来の滝夜叉丸はどういう人物なのか』に関して想像の余地を狭めてしまうので、個人的にはこれは猫箱に閉まってたほうが良いかなと思っていたのでソウルメイトにすら概要を伝えてなかったレベル。ソウルメイトには書く予定のネタの大抵のネタバレはするのだが、この話に関しては初期段階で決まってた内容にも関わらず、滝夜叉丸の葬式を挙げる事以外ほぼ前情報無しである。
ちなみに本作はひぐらしパロなので、悲劇を回避するにはルールXを打ち破るための鍵が必要不可欠。そしてこのイベントを経由した場合、滝夜叉丸がルールXの鍵を不器用ながらに入手出来ているので、令和時空の滝夜叉丸ほど地獄を見ることは無くなる。ある種、令和で罪や苦難と共に生きると決めた滝夜叉丸との対比で室町滝夜叉丸は罪のない人生を送る形。なのでこの話の滝夜叉丸は、令和滝夜叉丸のような壮絶な覚悟を決める事は無い。……どちらの方が尊いかは、好みの問題。多分優劣は無い。ただし覚悟完了してない滝夜叉丸が利吉さんを立ち直らせるのは不可能。
補足部分で触れた内容で小平太の発言に長次が驚いたとしているが、実は初期案だとこれ最初に言い出したのは長次だった。長次がどう考えても情に厚いので流石に言い出しっぺにしない方が良いかと思って土壇場で変えたのだが、公式の長次見てると寧ろ情に厚いからこそ言い出して良かった気がする。

◇幕間(支部書き下ろし猫箱)
綾ベルン達によるお茶会。これに関してはひぐらし・うみねこを通っている人でないとわからない部分が多い解説になりますご了承ください。とはいえ筆者はうみねこまともに通ってないんだけどね。
直前にソウルメイトを相手に魔女人格発生させてみたいキャラに関して熱く語り合った結果、筆が乗った為書く予定無かったがうっかり書いた。
綾ベルンの「その中の一つが、君にとってのあの世界の真相って事でどうかな?」から既に分かっている人もいたと思うが、猫箱で綾ベルンが提示したカケラはどれも綾ベルンの手が入ったものであり、そのまま全てが真実という訳ではない(とはいえまるっきり嘘という訳でもない)。ただし隠しTipsであるRe:オムライス後述する孤独、それから同人誌版書き下ろしTipsのベテルギウスは勇を鼓すに関しては正規ルートとして書いている。
ちなみに綾ベルンが言ってる『うるさいの』は筆者想定では相当な壊れ方をしているので、綾ベルンはまだ話が通じるというか人間としての感覚を比較的持ち合わせてる部類。
また、綾ベルンが話しかけている『君』や『うるさいの』は利吉さんの魔女人格ではない。
ちなみに筆者のひぐらしに於ける考察としては、ゲーム盤にいる駒が古手梨花で、ゲーム盤のプレイヤーのフルデリカ・ベルンカステル(賽殺しで梨花と分離した方のベルン)は古手梨花と記憶を共有して介入している(上位世界B)。そしてフルデリカはカケラ空間を通じてより上位の世界の観測者であるフレデリカ・ベルンカステル(皆殺し編冒頭でフルデリカと対話していた、惨劇すらも楽しんでる方のベルン)と会話をしている形。フレデリカの活動する上位世界(上位世界A)はフルデリカのそれより一つ上のレイヤーの世界であり、ゲーム盤への直接介入は行えない為、フルデリカを通じて助言と観測を行うことしかできない。つまり魔女はひとつ下層のレイヤーに介入する事は可能だが、上位世界Aから最下層であるゲーム盤の駒の選択に直接介入することは不可能。ただしカケラ遊びによってゲーム盤の初期配置を弄ることは可能性。めちゃくちゃややこしいけどこれが大前提。
その上で綾ベルンと『うるさいの』は上位世界Aの住民として書いている。そして作中で綾ベルンが語りかけていた相手は上位世界Bのキャラクターという前提。なので、話し相手の『君』が上位世界Bの綾ベルンや滝夜叉丸という可能性も普通にある(勿論今作の作中に全く出ていないキャラの可能性もあるが)。……現時点では筆者の中で候補は何名かいるが、ハッキリ誰と決めている訳じゃないので皆様で想像してみても楽しいかもしれない。
ちなみに余談だがこの『君』はとある前提条件により、一年は組と山田伝蔵・土井半助、6ろや善法寺伊作は候補に入らない(他にも候補にならないキャラは沢山居るが書ききれないので省略)と考えている。とはいえここは各キャラクターの信念や性格の解釈によって変わってくるので、人によっては候補に入るかもしれない。また、筆者は山田利吉の魔女人格はそもそも発生していないと考えているし万が一誕生したとしても耐えられず発狂して廃人化するのでそもそも綾ベルンと会話が成立しない=候補に入れられないと考えてる。……利吉さん、メンタル弱すぎてどう考えても魔女とかやれるようなタマじゃねーのよ……。まあ魔女人格なんて発生させない方が人としては正しいのでその方が良いのだけれども。

◇隠しtips 孤独
イメージソングは高橋瞳の16、或いはReoNaのカナリア。なのだがカナリアの場合利吉さん視点の私を信じてのイメージの方が強いのでどちらかといえば16の方がイメージに合うかなぁ?という感じ。
シナリオ上利吉さん視点では触れられなかった、伝子さんの視点の話。本当は3章〜4章までの内容を伝子さん視点で触れつつ、『味噌汁作りの時点で利吉さんが息子じゃないと気付いてたんだよ〜』『それを認めれなくて傷付けてしまったからこそ覚悟決めたんだよ〜』を少し触れるだけのつもりだったのだが、何故か出す予定無かったバックグラウンドにまで話が及んでしまい、やたら長くなった。本当は味噌汁からの話から天岩戸利吉さんのシーンまでだけのつもりだった。伝子さんの過去や一章時点での思考はシナリオ上触れる必要性を感じないから出す気無かったのに、一体どうしてこうなった。
pixiv版の隠しTipsとして書き下ろしたものの、書き始める時は実はかなり悩んだ。というのも、筆者の中でこの話の伝子さんはあくまでもジェネリック伝子さんであり、筆者の推しの伝子さんとは別人だから。
言うなればガワだけ同じのオリキャラに近く、そのキャラクターが利吉さんへの重めの感情を語るだけ……というのは、構成としてちょっとどうなのかなぁと思ったので。
ちなみにソウルメイトに『恋愛要素は無いにせよ四捨五入したら伝子さん成り代わり山田利吉夢小説とか思われても仕方ない内容だから……』と言い続けてたら何故か怪文書扱いされたのだが、恋愛するだけが夢小説ではないので私は間違った事は言っていないと思う(真顔)。と言うか書いてる間ずっと『伝子さん成り代わり夢小説扱いされたらどうしよう』とビクビクしてた。なので伝子さんのバックグラウンドに関しても、設定はあったものの実はここまで踏み込む気は無かった。あんまり踏み込みすぎるとそれこそ伝子さん成り代わりオリキャラ小説とか言われそうだし。ただ、伝子さん視点の三章〜四章に触れるならば、この作品に於ける伝子さんが一般人なのに何故ここまで覚悟を決めれたのか、その意志に説得力を持たせる為には触れないとただ都合のいいキャラになりかねないと思ったので仕方なく書いた。ああ違うんです、成り代わり夢小説じゃないんです本当なんです信じてください!
伝子さんのキャラ造形に関しては本編中で滝夜叉丸が触れた通り、バックグラウンドに利吉さん要素が含まれていることもあり、本家伝子さんのような無敵で強い偶像的な人ではなく、一貫して部分的に脆くて未熟だが芯は強い女性として描写してきたつもり。というか本作にメンタルが強くて成熟しているキャラは多分居ない(強いていうなら三木ヱ門は本作では比較的強い部類かもしれない。ただし彼の場合は『何も知らない・関われない一般人としては』という枕詞が付く。寧ろ無知故の強さ、幼さ故の万能感による強さなので成熟した強さとは真逆だし、事情を知ったら折れる)。強く見えるとしたらそれは覚悟や背負っている想いのせいなので。綾部はメンタルが強く自己完結しているが、成熟とは少し違う。
なので公式伝子さんはこんなに弱くないし踏み込み方も全く違う!こんな未熟なアダルトチルドレンじゃない!!これは別人!!!とキレながら書いてた。
個人的に一番悩んだのは、滝夜叉丸と伝子さんの会話を入れさせるかどうか。
実はこのシーンの「母親でもない癖に!」の罵倒、伝子さん以上に曇っていたのが滝夜叉丸というのは本編執筆前から確定していた。滝夜叉丸のバックグラウンドや覚悟の形成に関してはかなり細かく決めてあるのだが(そうじゃないと利吉さんを諭せるだけの説得力が出ないので)、その前提条件からすると滝夜叉丸的には過去に味わった一番の地獄の片鱗を目の前で再現された状態なので。人としての真っ当な感覚を持っている限り、ここは直視できるものではないと判断した為、本編では口論の最中に耐えきれず逃亡させた。が、コイツの精神性とバックグラウンドを考えると逃げたままを良しとするようなヌルい覚悟は絶対していないので、利吉さん逃走後に公園に戻ってくる事は確定事項だった。
問題はここで伝子さんがまだ公園内に居るかどうか。伝子さんは茫然自失になるものの、利吉さんに向き合う覚悟を比較的早く決められるので、滝夜叉丸よりも早く精神を持ち直す。ただし滝夜叉丸は、利吉さんと伝子さんの口論が始まった段階で逃亡、その後持ち直したらすぐに戻ってくる形になるので、伝子さんにはギリギリ会える可能性が残るタイミング。……間に合わない可能性しか無ければ問題ないのにどっちもあり得るのが本当に厄介だった。おのれ、滝夜叉丸め。
長くなるのでカットした方が無難ではあるしこの二人の会話は蛇足がすぎるのだが、滝夜叉丸が伝子さんの過去を知り、利吉さんにとっての室町の世のしがらみが親へのコンプレックスにある事を確信出来る一番自然なタイミングがこの場面で伝子さん本人と対話をする事であること、そして伝子さんの想いを直接彼女の口から聞いておく事で、紫の猫箱(伝子さん死亡ルート)になった場合彼女の遺志を滝夜叉丸が確実に繋いでいける道筋を作れるようになることから渋々会話させる事にした。嗚呼こうしてTipsが無駄に長くなっていく……
サブタイトルの『孤独』は元ネタ賽殺し編のサブタイトルの内、本編で使いそびれたタイトルから。なんか元ネタの『孤独』とは真逆の使い方になった。
伝子さんの過去に関しては、筆者からすると良好な家庭環境で結婚して子供を持つ人の思想は完全に未知の領域なので、多分ファンタジーというかリアルさが全く無い内容になっていると思われる。……これ、ちゃんと良好な親子関係になってるの? わからん、どう考えても筆者の基準が一般家庭とズレてるからマジでわからん。
なるべく良好な関係を目指して書いたが、シングルマザー故のやむを得ない部分以外で親子関係に歪さが出ているようなら、多分それは筆者が一般的な良好な親子関係よく分かってないからですすみません。嗚呼、こういう所で筆者の人生経験の浅さが浮き彫りになるぅ……
一応言い訳させてもらうなら、この話の伝子さんは夫の死から休む間もなく駆け抜けるしか無かった為、大切な人の死を本当の意味で受けいれ乗り越える暇が無かった=成熟する為のイベントを中途半端にしたまま育っているのでこうなった、という建前はある。ひぐらしで言うなら鷹野三四と似た精神構造というべきか。勿論令和なので未熟なままでも生きていけるし、それなりに幸せにはなれる。が、ジェネリック伝子さんの望む強さは本イベントを経由しない限り手に入らないので、何も起きない場合ちゃんと自分に誇りを持てたか微妙。何も起きない退屈だけど何も手に入らない道が幸せか、それとも苦難だらけでも一番望んだ強さが手に入る道が幸せかは読んだ人の心次第。
どうでもいいが、今回地味に病室の扉の描写が入ってるので一応補足。伝子さんが触れた事で気付いた方もいるかもしれないが、本編中、実は引き戸が登場していない(……筈)。
実はこれ、当初は引き戸にしようとしたのだが特に病室は最初実際に引き戸にして書いていたのだが、途中からわざわざ書き直している。筆者の通院している病院の診察室は基本開き戸タイプなのでその方が馴染みがあったからというのもあるのだが、滝夜叉丸に立ち上がれビンタされた後の利吉さんが『錆びついたドアを開け放って僕は踏み出した』する為に、扉をなるべく『心を閉ざす』『閉ざした心に踏み込む』為のギミックにしたいと思ったのが最大の理由。作中で施錠の描写が入っていたのも、防犯の為というよりは、なるべく視野狭窄の利吉さんが人との繋がりを断とうとしている事を示すのに入れたかったというのがデカい(そうじゃなきゃ省く。室町人、そもそも鍵とかあんまかけない気がするしわざわざ書く意味がない)。図書館の自動扉は他人に左右されるものではなくあくまでも利吉さんの内面にのみ触れる物なので、ガラス戸にして利吉さんの姿を映させ自分に向き合わせる事を示すのに使った。とはいえこれはフィーリングでやってた所も大きいので徹底してるわけではないし、描写としては重要度は低い。
病院を開き戸にしたのも、「ドアノブを回して開く」という動作を入れる事で、利吉さんの心に踏み込もうとしている伝子さんを表現したかったというのがデカい。
……まあ筆者はお馬鹿なのでそのあたりは緻密に計算して書いたりできないので、雰囲気として目指した程度に思っていただきたい。というか筆者はそもそも内開きと外開きどっちがどっちかの区別すら出来ない。……もうめんどくさいから全部引き戸で良くない?
正直こういうネタは話してもつまらないどころか数年後に小っ恥ずかしくなるだけだが、なんか目に付く描写になってしまったので備忘録として触れときました。
それはそれとして、弱すぎる伝子さんに終始解釈違いでキレ散らかしながら書いてたのでこの話が一番書いててキツかった。ただ物語の構成的に伝子さんが強くてカッコ良すぎると利吉さんの心に寄り添えないし、賽殺しパロとして意味がないので泣きながら書いた。もしこのTipsで作者の気持ちを答えよと言われたら、正解は確実に『伝子さんはこんなに弱くも未熟でもねえよやめろ私の推しを愚弄すんじゃねえ!!!』になる。ある意味曇ってる滝夜叉丸だけが癒しだった。癒しすぎて存在しない滝夜叉丸編のネタをだいぶ入れてしまった。