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nuka_boshi
2025-05-26 09:28:28
69686文字
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利吉さんで賽殺しパロ
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利吉さんで賽殺しパロ解説的な
めちゃくちゃ長すぎる解説。筆者が忘れっぽいので備忘録に書いた。
なので読まなくても良いやつ。興味ある人は本編読了後にお読みください。
1
2
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4
各章解説
◇プロローグ 逃亡者
今回の全体の道中イメージソングは「escape(いとうかなこ)」なので、土砂降りの雨の中からの逃亡をスタートに持ってきた。サブタイトルもescapeの歌詞から拝借。
伊勢物語を冒頭に持ってきたのはまああの時代の教養としてそこそこ知られてそうっていうのと、『高貴な姫の話』の話なので利吉さんにとっての『今の自分との落差』『この時間軸の利吉さんは自己評価がえらい落ち込んでますよ』を示すために一番良さそうだったからで、特に深い意味はない。というか筆者も伊勢物語は学生時代に該当の部分だけプリント抜粋でチラッと読んだ程度で実際ちゃんと読んでない上うろ覚えなので間違ってるかもしれない。ちなみに基本的に歴史小ネタ編で触れた通り、帝の血縁の姫君の駆け落ちは多々あるものの、駆け落ち=反社に近い行動になってしまう為、大抵が『失敗して姫が連れ戻されました』で終わるので(当たり前体操)、物語としてまともに描くわけにいかないので『鬼に喰われた』『神隠しにあった』的な暗喩で終わる。この辺は殆ど暗黙の了解みたいなもんなので、利吉さんも当然その前提で物語を読んでいるという前提。別に伊勢物語にする必要なかったんだけど一番有名かつ記憶に残ってるのがアレだったし雨降ってるなら雷落としてもええやろという雑な精神でシチュエーション的にもピッタリだったので選んだ。
追いかけてるのがきり丸なのは、本編中きり丸の出番が少ない事と、利吉さんにとってきり丸への『自分の欲しかった立場を奪われた』という危機意識が強いのでここで登場させておく事で利吉さんの挫折と荒れっぷりを印象付けさせたかったというのがデカい。
あと、きり丸が『荒れてるモードの利吉さんを心配して追う』描写を入れる事で、『実子を土井半助の孤児院に入れたにも関わらず、孤児であるきり丸に心配される程には周囲からの評価はまだ高い』を示せるというのもデカかった。ここ、利吉さん視点だとラストまで語れないポイントなので。
◇一章 最悪の世界
サブタイトルは元ネタ『賽殺し編』のサブタイから拝借。
映画のあの素敵な子守唄を絶対出したかったので初手山田伝蔵の子守唄。ある意味邪悪な使い方になってしまった感あって申し訳ねえなと思いながら生き生きと書いた。
忍たまは割と原作でも時代にそぐわぬものを堂々と出すので、病室の描写などもそれに則ってある程度普通に書いても良かったのだが、『室町から来た利吉さん』にとっての異質さを強調する為になるべく徹底して室町人から見た現代の描写にしている。天井の白い石=蛍光灯とか。
実は本来利吉さんの忍者としての優秀さ有能さを出す為に滝夜叉丸の投入をギリギリまで先延ばしにするつもりだったのだが、しんべヱの心情・行動を優先した結果まさかの初手病室突撃からの発狂で頭抱える羽目に。発狂直後はその処理考えるのに丸一日シナリオ練りなおした。
仕方ないのでファンブル処理として一日病院へ拘束&山田伝子らの対応内容を想定より大幅に変えて軌道修正を図った。
……
なんで自作の二次創作ノベルにファンブル処理があるんです??
ちなみにこの話で『階下で来客対応している伝子さん』の描写があるが、ここは実際には過去にお世話になった大学教授に電話入れてるシーン。利吉さんの視点なので来客対応扱いさせてるが、次の章の図書館イベントの伏線だった。
分厚い朱色の本=山川日本史の教科書。山川日本史は日本史教科書の中で最強の存在なので、これは絶対出さないといけないなと思ってた。基本的に山川日本史の教科書に書いてる事に嘘はないし、通説では断定されてる内容も研究結果的に違っていたら断定せずに書いてくれるので、最新研究に最も近い=利吉さん視点でも嘘が書かれていない貴重な書籍なので。
特に室町を参考書とかで学ぼうとする場合、応仁の乱がカオスすぎて史実と違う事書かれてる事が多々ある上、多分当時の人ほどわけがわからない状況だったので、下手な参考書や教本を使うと利吉さんをより困惑させるので。事実のみが簡潔に書かれている山川日本史の教科書はマジ最強。
……
なのだが、筆者が当初その教科書を実家に置いてってたのでこの辺りは教科書に載ってそうな単語を想像しつつ書いた。当初は「
……
足利将軍家、日明貿易、永楽通宝。少しずつ、確実に私の知る世界の話に近付いていく。山名宗全、細川勝元。応仁記にも登場する人物の名が小さく載るに至って、私は殆ど確信に近いものを感じていた。」と書いてたのだが、実家で山川日本史の教科書確保したら山名宗全と細川勝元、フツーに太字で書いてあったし永楽通宝や日明貿易ももっと後の項目だったので、山川日本史の教科書確保後に書き直した。記憶だけで書くのはやっぱり良くないね、反省。
浦島太郎と浦島子、どっちを採用するかはめちゃんこ悩んだ。あの時代だとどちらも読めるので。ただ、筆者は利吉さんを高二病の背伸びキャラとして認識している為、あの時代で大ヒットして浸透している浦島太郎より、浦島子の方で書いた方が似合うかなと思った為浦島子を採用。地の文ですらカッコつける男、山田利吉。
ちなみにここで出てきた『異世界転生モノの小説』は実在する有名な異世界転生モノの小説を想定していて、尚且つ令和利吉さんがその作品に出てくる父親キャラが好きになったから買ったという裏設定がある。ファンから親としてはダメだとかクズとか言われがちなキャラだが、親としてダメすぎるけど不満点もあるけどそれでも最後まで息子を愛そうとしていた所に惚れ込んでハマったタイプ、という具体的な設定も決めた上で出した。が、該当作品の真価が発揮されるのがもっと読み進めてからなのに対し、室町利吉さんは一巻のみをそれもざっくりとしか読んでないので『異世界転生して女の子にチヤホヤされてる話』としてしか認識できないまま終わった。なので作品名は伏せさせてもらった(追記・支部書き下ろし猫箱で少しここあたり拾いました。勘のいい人は作品名とキャラ名特定できそう)。
◇二章 オムライス
本来なら二章三章は一つにまとめるつもりだったが思ったより長くなったので分割した。分割した事で最終的に物語が7章構成に落ち着けたので後から見ると結果オーライではある。
道行く人が麻婆豆腐の話とトゲアリトゲナシトゲトゲの話をしているため、ここが久々知兵助と竹谷八左ヱ門ではないかと思った方もいそうなので一応触れておく。ここ、実は作者的には『誰が言ってるかわからない』モブ会話。作者の解釈する久々知の場合、豆腐好きというよりは、人とのコミュニケーションが好きでその為の手段として豆腐を使っているだけの印象なので、バックグラウンドが代わる場合、そもそもコミュニケーションツールが豆腐になるとは限らないと考えている。トゲアリトゲナシトゲトゲに関しては竹谷よりはむしろ伊賀崎孫兵の方が言いそうかもしれない。彼に関してはバックグラウンドが変わるとロマンチストを発揮しづらくなる可能性が高く、『男子でも浪漫を感じる切なげなエピソード』として『一時はネット上で存在そのものを否定され人々の中から消されかけたが徐々に見直されつつある』トゲアリトゲナシトゲトゲを選ぶ可能性が高いと思っている。
……
が、この辺は完全に作者の趣味なので深い意味はない。地の文に唐突に出てくるデラックスカジキマグロパフェみたいなもので、トゲアリトゲナシトゲトゲも単に出したかったから出しただけである。
滝夜叉丸登場時、マイペースに席を外す綾部喜八郎。ここと次回の『落とし穴を絶対に掘ろうとしない』を合わせる事で『実は前世の記憶がある』という設定を提示している。
オムライス1度目。サブタイトルもここから取った。
賽殺しで言うところのカレー作りイベントに当たる部分。なので本来ならばこの先のイベントの味噌汁作りで元ネタでやってたイベントは消費できているのだが、この話に於いては味噌汁作りイベントはあくまでも『元の世界への手掛かり探し』のためのイベントであり、親子の和解へ至るには弱いと判断した為、即席でオムライスを用意した。
実はここ、本当はもうちょっとマイルドにする予定だったししんべヱはともかく乱太郎出す予定なかったのだが、利吉さんならやりそうだと思う行動をさせた結果、筆者の逆鱗に触れた為やむを得ずペナルティとして『無邪気な2人の口から令和利吉の好物がオムライスだったを直接告げさせる』ことにした。本来ならばこの情報は最終日に滝夜叉丸が令和時空の各々のバックグラウンドを語る時に語る内容=利吉さんが決意を固め、皆の想いをきちんと受け止めれる精神状態になってから受け取る情報であり、曇らせるための情報というよりは答え合わせに近い内容だった。
が、筆者は元々三国志から歴史オタへの道へ踏み出したと言っても過言ではない歴史オタ。三国志ファンならわかると思うが、三国志の諸葛孔明は私利私欲で謀略を使えばもっと楽して生きれたにも関わらず、公私を必ず分けて私情では兵法や謀略を一切使わなかったという評価がなされており、筆者も孫子や呉子を読む時に「私欲で悪用しない」「創作に持ち込んだとしても、キャラが私利私欲で使う場合はちゃんと相応の報いを与えさせる」と誓ってから読んだクチ。その上で近世の東洋思想史(上記の諸葛孔明の評価・影響があまりにも強すぎる江戸後期〜明治維新の思想に関する歴史)も一応通っているので、信条的にここは絶対うやむやにできない・してはいけないポイント。にも関わらず、利吉さんがよりによってしんべヱ相手に『任務でもない内容で』『自分の心を偽り責任を放棄したまま』『何も知らない無垢な子供を巻き込んで兵法の私的利用』とスリーアウトかましたので、仕方なくシュレディンガーのオムライスによる曇らせを入れた。本当、ここはめちゃくちゃ悩んだし出来ることなら曇らせたくなかったので3つ揃わなければまだなんとか救済措置を考えたのだが
……
特に2番目の『自分の心を偽り責任を放棄したまま』が無ければまだ見逃すつもりだったのだが
…………
現実は非情なり。コイツ、無自覚とはいえ元プロ忍という言葉を『忍者』と『引退した一般人』として都合良くその場でコロコロ変えて使ってるのでギルティです。かつて誇りにしてたモンを言い訳に使うんじゃねえ張っ倒すぞ。
そもそも利吉さんに兵法イベント起こさせないという軌道修正も考えたのだが、元プロ忍かつプライド高めの効率厨である彼がこのイベント起こさない場合、それなりの理由付けが必要になる上物語が横道に逸れかねないので却下。泣く泣く曇らせ入れる事に。
とはいえ自分がそのままのノリでやると「しんべヱが良かれと思って令和利吉さんと伝子さんのホームビデオ借りてきて鑑賞会、めちゃくちゃ平和かつ親子愛溢れる光景を『お前が台無しにした光景だぞ』とばかりに突きつけて無垢な笑顔で『早く思い出してほしいなあ』させる」というのが最低条件なので、これやると利吉さん完全にぶっ壊れるなと思ってかなり手加減している。というか、そもそもオリキャラや手加減抜きでやれる相手の場合アウトゾーン1個踏んだ時点で問答無用でホームビデオ鑑賞会始めてるので、これでもめちゃくちゃ有情。利吉さんが忍者としての正道を忘れた以上、最低限に押さえつつもここはやるしかなかった。
ちなみにここ、手加減無しで本気でやる場合、まずホームビデオ鑑賞会で焦った利吉さんが忍者としての基本を忘れ昼間から伝子さんを路地裏に連れ込んで抹殺しようとする凡ミスをする事で1曇らせ、たまたま連れ込む場面を見てた私服警官土井半助に犯行を止められる事で2曇らせ、当然土井半助は土井半助じゃ無いので利吉さんを異常な危険人物として見るのでそこで3曇らせ、その上でまさに自分が殺そうとしたはずの伝子さんが利吉さんを必死に庇うので4曇らせ、ここで一旦留置所に入れるなり部屋で休ませるなりしてワンクッション置いてこれまでの曇らせをじっくり振り返らせた後、乱太郎達投入。『親から利吉さんはもう変わってしまったから近づくなと言われたけど利吉さんを信じてる、僕たちの憧れの利吉さんがそんな事するはずない!』と無垢な瞳による5曇らせ、そこから善意の乱太郎達に『そういえば小松田さんって人のこと前に言ってましたけどそれってこの人ですか?』と新聞に名前が載ってる順風万端令和小松田秀作の記事と写真を見せて6曇らせ。『こんな凄い人と知り合いなんて利吉さんやっぱりすごい!』と無垢な瞳ではしゃぐ乱太郎しんべヱの7曇らせさせて「私は
……
本当に何をやっているんだ
……
」と人目憚らずボロ泣きさせた後に無理矢理立ち上がらせてリトライさせます。
……
流石にここまでやったら室町に帰った時に知人の顔見れなくなるので最大限手加減した。筆者の創作物としては前代未聞なレベルのイージーモード。今回の話は菩薩並みに慈悲を与えてます。ちなみにこの曇らせコンボ一例、ソウルメイトから『格ゲーのコマンド入力がボタン大量に打ち込んで漸く一つの技なのにお前の場合矢印一個一個が致命傷』みたいな事言われた。解せぬ。
図書館の本イベント。ここは予定通り。親子仲の亀裂というか、転生者故の断絶は絶対必要なのでこの辺りの不和に関しては第一話から決めていた。
◇第三章 滝夜叉丸
滝夜叉丸の名前回。ここで『平滝夜叉丸』ではなく『滝夜叉丸』にしているのは、期待の星を目指す等身大の彼を示すため。
滝夜叉丸による世界説明。前回で回収した情報を含めて、今回の物語の世界がどういう仕組みなのかをまとめてくれる。
また今回の話は滝夜叉丸のバックグラウンド説明も兼ねる。実は滝夜叉丸の過去はここで語った以外に『令和時空には桜木清右衛門がいない』『その為若王寺勘兵衛が滝夜叉丸に気付くためのイベントが全部キャンセルされている為期待の星イベントがそもそも発生していない』という最悪の地獄があるのだが(その上で滝夜叉丸のカケラは『結果的に室町とは別の関係性を育むことができた若王寺先輩』か『前世の記憶ログイン前の綾部喜八郎』のどちらかだった設定)、そこは触れない事にした。この辺りは滝夜叉丸の覚悟の理由として重要なバックグラウンドではあるが、滝夜叉丸視点だと既に終わった話であり、利吉さんの覚悟に必要になる話でもない。無理にかさぶたを剥がす真似する必要がないなと思ったので。ちなみに滝夜叉丸のカケラに関しては先述の通りだが、正式にはどちらだったのかは決めていない。滝夜叉丸は準主人公格とはいえあくまでもお助けNPCみたいなモノなので、あまり設定盛っても回収できないし風呂敷広げすぎて畳めなくなるのでここは敢えて決めないことにした。ただしこの話に於ける彼の人格形成や哲学に関わる為、それ以外の設定はきっちり細部まで決めてある。滝夜叉丸の場合真の地獄はカケラの内容ではなく元の世界に戻れないと分かってからの出来事なので。
滝夜叉丸キャンセラーとしてタカ丸さん召喚。
人懐っこそうな言動の中にチクっと刺すように牽制してくるセリフに関しては、竜宮レナをちょっと参考にしている。
令和タカ丸はある程度視野が広く、でもまだ社会経験無しの学生なので視点が浅い
…
みたいなイメージ。というのも、ここタカ丸視点だと『無神経&無知なフリして「明日会うつもりなら僕も参加させて」と発言する』か『何も気付かなかったフリして滝夜叉丸が下手な動きしないように監視を強める』方が無難。変に捻った牽制する必要がないし、利吉さんが何者かわからない以上おかしな警戒心抱かせると余計に拗れる。ので大人っぽい挙動に見えて『後先考えずにとりあえず牽制かけてるだけ』の図。原作のタカ丸なら多分この辺りの『変に穿ったことするよりストレートに言った方が拗れない』を経験則から分かっていそうなので、無邪気に「明日も集まるなら僕も参加したいなー」と懐に入り込む挙動しにいく事で牽制すると思われる。この辺りは社会経験の差がモロに出てる。
味噌汁作りは本家のカレー作りイベントの再現。なのだが、ここは猫箱でわかる通り室町利吉さんによる印象操作が入っている。
室町利吉さんは『『山田利吉』は恐らくまだまだ慣れてないだろうから、きっとこういうこともある。つまり、時折混ざる歪な形の大根は、『私』の動揺のせいではなく、きっと『山田利吉』によるものだ。』などとナチュラルに令和利吉さんをディスっているが(原作梨花と似たようなことを言っているが)、そもそも第一章にて『せめて母の負担を少しでも減らそうと、家事を負担したりしていた』という描写がある通り、実は令和利吉さんは普段の家事をほぼ1人で担当しているので、平時はほぼ令和利吉さんが料理やってる。また令和利吉さんは幼い頃から教免取得を目指している(小学校の教師を想定している)ので、教育実習で子供に教えれるように一般的な料理はだいたいなんでも作れるし、その気になればちょっと難しい料理も割とできる。きゅうりの輪切りは当たり前の顔して1分以内に1本処理できる。つまり原作梨花と違い、令和利吉さんは室町利吉さんよりも圧倒的に料理スキル高い。なので例え令和利吉さんがメンタルぐしゃぐしゃになってても、歪な大根が混ざることは絶対にあり得ない。
ついでにここ、伝子視点で室町利吉さんと令和利吉さんが別人だとほぼ確定したシーンでもある。
というのも、元々室町利吉さんの言動に違和感があり『実の息子はもう帰って来ないのでは』という不安があったところへの歪な大根。このシーン、猫箱でも触れた通り令和利吉さんの場合たとえ記憶失ったせいで料理スキル全部失ったとしても、歪な大根が混ざったら負けず嫌い発動して「綺麗に切れるまで挑戦します!」と言い出すし、伝子もそれを視野に入れて冷蔵庫に予備のある大根を具材に選んだ。にも関わらず、利吉さんが歪な大根を放置してそのままでいるので、『これは私の知っている息子じゃない』とほぼ確信を得ている。とはいえ流石に憑依や転生を考えるのは非現実的すぎるし、そっくりさんと入れ替わったというのも無理があるしで混乱中。ただ、目の前の利吉さんが何か悩みを抱えているようだという事、それゆえに不器用ながらに距離を詰めてきている事は察しているので、利吉さんを安心させるために頑張って動揺を隠している。なので利吉さんがもう少し余裕あったら、伝子さんの上機嫌が動揺を隠す為無理しているものだと気付けていた。
なのでこの後のカレー作りも、室町利吉さんの本心がどこにあるのか、息子と本当に別人なのかを確かめたいがゆえに歩み寄っている。つまり味噌汁イベント以降の伝子は利吉さんを『息子と姿が同じの別人』という認識の元、目の前の利吉さん自身をどうにか知ろうとしている状況。
なのでラストシーンで利吉さんと滝夜叉丸の会話を聞いて、利吉さんが想定外のものを抱えている事とまさに道を踏み外しかけている事に気付いて焦っている。つまりここで出てくる『私は
――
私は貴方の母親なのよ!?』は伝子視点で完全に嘘をついている。『私は
――
』の後言い直しているのはそのせい。別人で、赤の他人で、無関係の人間なのは伝子自身が一番よくわかっていて、だからこそ利吉さんと自分を繋ぐ唯一の関係性として咄嗟に『母親』を持ち出した。なので伝子さんが母である事を否定されて傷付いているのは、母親だという事を否定されたからではなく『安易に嘘を吐いて利吉さんをより一層追い詰めてしまったから』。翌朝のイベントにて伝子がめちゃくちゃ芯が強くてブレない女性として描かれているのは、ここでの失敗から伝子なりに考えて『令和利吉とは違うけれど彼もまた自分の息子のようなものとして助けたい、その為に自分が何を言えば届くのか』を悩み抜いて選んだから。
閑話休題。乱太郎しんべヱのシーンだが、本来乱太郎に登場してもらう予定はなかった。が、しんべヱだと全部食べ物の話になってしまうと気付いて慌ててログインさせた。ここ、本当はしんべヱだけにしたかった。
また、滝夜叉丸が『室町の記憶を忘れて死を受け入れるべき』と言っているのは、利吉さんの本心が『帰りたい』ではなく『帰らなければならない』だと見抜いているので、『帰る義務はないんですよ』『室町の記憶にこだわるのは地獄の道だから、貴方までそれを追う必要はないですよ』を伝える為に敢えて言っている。自虐も含まれるが完全に利吉さんへの配慮。
「
……
滝夜叉丸。本当に、心当たりがないのかい?」「ありません」
の部分は鬼隠し編の『知らない』『なかった』の再現。この後の『君がカケラの可能性〜』以降で滝夜叉丸の覚悟の強さとかが見え始める。実際コイツは最初から自分がカケラと誤認され殺される可能性視野に入れた上で、自分が踏み躙ってしまった多くの人の想いに対する罪滅ぼしとして利吉さんに協力しているので、覚悟が桁違い。その為利吉さん程度の揺さぶりではブレない。
余談だが、当初は本作における利吉さんの台詞は、「滝夜叉丸くん」に統一するつもりだった。
が、地の文で呼び捨てな事、アニメなどの媒体みる限り身内相手には第三者のことは呼び捨てが基本な事(乱太郎の事を当人には『乱太郎くん』、伝蔵や半助相手には『乱太郎』と呼ぶみたいな)、滝夜叉丸と利吉さんの距離感などを加味した結果、本音でのムーブだと「年下の忍者」ということもあり呼び捨てだろうと判断。序盤はまだ余裕がある&見栄を張れているのでくん付けだが、滝夜叉丸にカケラの心当たりを聞く頃になると余裕が剥がれてくるので呼び捨て
――
という描写で書いている。利吉さんのメンタル復帰と共に呼び方を戻そうかなと悩んだのだが、取り繕えてない姿見せた後に今更取り繕われても滝夜叉丸も困りそうだなと思ったのでそのまま呼び捨てに移行した。
……
呼び方云々だけで無駄に文章長くなりそうだし。
『愛がなければ見えない』は有名なうみねこネタ。ここは必ず入れようと思っていた。ただし筆者はうみねこはコミカライズ勢だった上にEP3の途中くらいまでしか読んでない、のにコミカライズ版の最終巻付近だけ故あって読んでしまうという最悪のネタバレの踏み方してるので、うみねこ勢目線での『愛がなければ見えない』を再現できているかは自信がなかった。なんとか再現できたようで何より。うみねこはいつかちゃんと履修したい。(※8月追記 アニメのみ履修しました。楼座おばさまが今のところ好みの弱さと愚かさでキュンと来てます。)
「私は
――
っ! 私は元の世界へ帰らなければならないんだッ!」の部分で一度言い直しているのは、まだ利吉さんの心が定まっておらず、本音での台詞ではないから。ここで言い直しが入る事で、伝子視点で『自分が本心を偽って安易な嘘をついた時と同じ挙動』、すなわち『室町利吉さんも何かしらの本音を言えず苦しんでいる』と確定させている。
ここで伝子視点で室町利吉さんが『自分が傷つけてしまった、救うべき相手』になっており、置き去りにされている間ずっと『何を告げれば彼を救えるのか』を考えている。その為次の話で利吉さん視点突然伝子の覚悟と強度が跳ね上がっている。ここは利吉さんの視点に絞らなければ伝子さんの心の動きをじっくり書けたのだが、まあジェネリック伝子さんの心中じっくり書くのもなあ無理に伝子さん視点入れるとブレるし利吉さんに視点絞った方がいいよなぁで放置した。もうちょい文才あればここどうにかなったかなぁ。(追記・支部版隠しTipsで伝子さん視点書きました/後述の該当解説参照)
◇第四章 親と子と
サブタイは元ネタの賽殺し編の『母と子と』を捩って拝借。そのまま使うか悩んだが、伝蔵と利吉さんの関係も示せるようにした方がここは美味しいと判断したので『親』に変えた。
開幕早々聞き耳失敗する利吉さん。伝子さんが用意した飲み物、利吉さん結局殆ど飲んでない(描写省いたけど多分流石に一口くらいは口つけてる)。なので精神面も体力面も大分擦り切れてる。そして限界なので伝子さんの言葉によって『誰にも言わないつもりだった過去』を語るという。追い詰められないと絶対虚勢張るので本音が見えて来ないクソめんどくさい主人公。誰だこんな奴を主役にしたのは。
個人的には利吉さんのバックグラウンドに関してはもっと早くに出したかったのだが(そうでないと初見の方から『利吉さんはこんなんじゃねえ!』と怒られそうだし)、この人地の文ですらカッコつけるので中々語れなくてめっちゃ困った。利吉さんも滝夜叉丸も、本音中々言わないので読者にすら歩み寄ってくれないのである。もうちょっと書き手に優しくなってはくれないものか。
利吉さんの過去に関しては、リゼロのナツキスバル及びレムの過去に大分影響受けてるものの、軍師の映画最初に見た時に真っ先によぎった想定そのままで書いてた。
……
つどい設定は後から知ったので土井半助の孤児院のくだりや利吉さんにそっくりな息子くんに関する設定が後から追加されたものの、大筋はこのイメージ。
ちなみにこれは利吉さんの視点から語られている話なので、最終章で触れた通りきり丸やその他のキャラクター視点だと大分印象違ってたりする。まず、そもそも土井半助引退後の利吉さん、がむしゃらに危険な任務を受けてるのだけど、その過程で『身寄りを失った子を保護しては土井半助に預けている』ので、孤児院の子供達からの好感度めちゃくちゃ高い。なんなら危険な仕事を受けまくってるの、周囲からは土井半助を必要としている不幸な孤児を保護する為だと誤認されてたくらい。山田夫妻と土井半助は薄々真相に気付いているのでかなり心配しているし、後に『利吉そっくりの孤児』が預けられた際に全てを察している。ただし山田一家はいざというときに利吉さんが帰る場所を確保する為に真実を伏せていたので、周囲は利吉の実子に関しては『似てるけどまさかね』くらいの感覚で済まされていた。
特にきり丸に至っては、(全然隠れていない)隠しTipsの通り「卒業したらゆっくり恩返ししようと思ってたらなんか知らん間に孤児院開くと決めたらしい、どうしよっかな」で悩んでいたところへ「プロ忍として危険な依頼ガンガン受けて土井半助を必要とする孤児探し出して連れてくる利吉」という回答をお出しされたので「俺もこの人みたいに忍者として土井先生に恩返しできるようにしよう」と自身のモデルケースにしてたまであったりする。最終的にはきり丸は利吉さんの本心や実子の件を知ってしまうものの、実の所きり丸側も『両親健在で恵まれた家庭に育っているが当たり前に危険な任務ばかりをこなし命懸けで他人に尽くす山田利吉』に対し『自分は恵まれた状況下であんな風には振る舞えない』という諦観や劣等感が全くなかったわけではないので、ちゃんと事情を知ったとしても利吉さんの気持ちを汲んだ上で『この人なりに息子の幸せを考えていた』と判断、「悪いと思ってるならバイト手伝ってください」でチャラにしてしまう。乱太郎達も一番この手の話題が地雷であろうきり丸が受け入れるのであればとやかく言う理由もない。この辺りの流れは仮に利吉さんが伝子さん時空へ飛ばされなくても普通に起きるイベント。
また、物語の時系列上裏で山田伝蔵が忍術学園の学園長を継ぐ話が出ており、殆ど引き継ぎ終わりのタイミングだったりするので、山田夫妻としては『ギリギリまで利吉の心の整理を待ちつつ、利吉の希望次第で忍術学園か土井半助の孤児院の仕事を手伝えるように手配、そこから社会復帰できる体制を整えている』状態。なので伝子さんイベントが起きなかった場合、一年後くらいのタイミングで山田先生の奥様が山から降りてきて本気モードで利吉さん確保に動く。もちろん山田伝蔵も協力するので、二人に捕まってフルボッコされたあと強制的に立ち直らせられる。ギリギリまで放置してるのは、この強制復帰イベントをしてしまうと『山田夫妻や周囲に全てをお膳立てしてもらった上で自分の意思なしで社会復帰』つまり『両親や周囲への負い目やコンプレックスを引きずり自分に自身を持てないまま生きていく』事になる為、本当の意味で幸せな結果にはならない為、利吉さんの心の準備が出来るのを待っているだけだったりする。
……
あの夫婦が荒れてる息子を放置するわけないじゃん?
とはいえ伝子さん非介入の場合、利吉さんのハピエンの為には『両親や忍術学園無関係な相手からちゃんと叱られて立ち直る』『自分の意志で未来を選ぶ』が必要なので、伝子さん時空ほど強さと明るさを持てたかはちょっと怪しいところ。とはいえ伝子さんイベント無しでも両親にフルボッコされたあと、なんやかんやで社会復帰からのお見合い結婚、芯が強くて利吉さんのことしっかり叱れる自立した女性と結ばれて過去を引きずりつつもそれなりに幸せになる
……
という道筋自体は出来てたりする。例え伝子さんイベントを経た上で元の世界に帰らずそのまま令和に留まったとしても、周りに恵まれているので結局『夢の出来事(室町の記憶)』は忘れてそこそこ幸せな一般人として生きていける。結局何選んでも、利吉さんが生きてる限りは取り返しつかない事になることは無い。あとはどうやって心の整理を付けるか、というだけの話だし、選ぶことから逃げない限りちゃんと幸せになれる。いつも選択死ばかりで容赦なくキャラを地雷原でダンスダンスレボリューションさせてる奴と言われてる筆者としてはあり得ないレベルで手加減してる。
というわけで、ここは伝子さんにビンタさせて、その上で「親としても教師としても失格だけど、それでもあなたはそう思わないのでしょう?」させるだけのつもりだった。ビンタは勿論パロ元であるひぐらし綿流し編のレナのビンタが元ネタ。
――
が、伝子さんのバックグラウンド考えるとあの吐露聞いた上でノータイムでビンタに向かうのは無理があるなと判断。また、利吉さんのプライドが高すぎてある程度心を開かせないとビンタを受け入れてくれないという致命的な問題も発生。本当この主人公めんどくさいな!?
仕方ないのでワンクッション置いて彼の心を解きほぐせる話題を
――
で、即興で名前のネタを組み上げた。ここで名前ネタを選んだのは、『令和でもみんなコテコテ室町ネームだと読者が違和感で読むの辛くなりそうだよなぁ、室町ネームが流行ってもおかしくないバックグラウンド用意しとくか』で差し込んでた『空前の室町ブーム』ネタくらいしか、突然出てきても違和感無いネタが浮かばなかった為。あとは筆者が小学校で好きな漢字の意味を調べる授業の時、のぎへんが穀物なので昔の人からするとめちゃくちゃ重要なものの意味になるみたいな話が出てたのがうっすら印象に残ってたというのもある。自分が調べた紅の意味と成り立ち全然覚えて無いのになんで他の子が調べたのぎへんだけ覚えてたのかは謎。空前の室町ブームネタは猫箱の綾部喜八郎のバックグラウンド書く為に用意したしょーもない設定のつもりだったので(書いた日付は猫箱の綾滝のが先)、こんな形で回収する事になって書いた本人が一番びっくりしてる。ここだけ浮いてしまってないかめちゃくちゃヒヤヒヤした。
ここで利吉さんが伝子さんに甘える描写を入れるかはギリギリまで悩んだのだが、『このシーン入れておかないと利吉さんが本気で伝子さんに心を許したのが分かりにくいかな』と思ったのと、これまでずっと張り詰めてた利吉さんが肩の力を抜ける唯一のタイミングなので、悩んだ末に入れる事にした。これまでの利吉さんなら問答無用で突っぱねてるシーンなので、利吉さんの心の変化が視覚化できてわかりやすいというのもある。
直後にカケラ判明したことで、なんか強制的に『わからせ』入れる為にメンタルゆるゆるにしたみたいになってしまったが、まあご愛嬌。
ちなみにここで地味に利吉さんの名前をリッキーにしようとしていた祖父が山田伝蔵である事が確定してるが、ここ筆者的には萌えポイント。お茶目な伝蔵に萌えるが良い(※利吉さんはそれどころじゃない)。
◇第五章 神のサイコロの目
サブタイは元ネタの賽殺し編からそのまま拝借。もう少しちゃんとタイトル回収したかったが、構成力の低さで無理だったので諦めた。
キャプションで書いた通り、ここからが賽殺し編のメインディッシュ。なのだが、前章の解説で述べた通り、実はこの章で滝夜叉丸からの叱咤を受けた事で、利吉さんの物語としては既にハピエンが確定していたりする。
乱太郎としんべヱによる忍術学園設立の提案。ここ、しんべヱのみにする事も考えたのだけど、重要イベントなので流石に乱太郎にも同席してもらった。バックグラウンド考えると乱太郎、相当頑張って会いにきてくれてるなぁ。
落としたケーキの話は元ネタのレナのセリフをコップからケーキに変更してしんべヱに言わせた。当初は乱太郎に言わせる予定だったが、しんべヱの方が自然かつ説得力があるかなと思ったので。
ちなみに「絶対にできないこと」という台詞、個人的には室町しんべヱ(と室町乱太郎)は絶対言わないセリフだろうと思って書いてた。室町しんべヱは最初期の頃なら言いそうだが、昨今のアニメ範囲内のしんべヱの場合、利吉さんの悩みの深刻さや思い悩んでいる対象が人との絆であることを考えたら言わないというより言えないし別の言動をするのではないかなと。
温度差が激しすぎる滝夜叉丸だが、まあ嘘ついてる時のコイツはだいたいアレが通常運転なので
……
。
言動が残念すぎるのは、利吉さんの心境と現状を正しく理解してかなり曇ってるのと、それを周囲(特に三木ヱ門)に絶対悟らせまいと虚勢でガッチガチに固めているから。
なので個人的には『滝夜叉丸残念だなぁ』とは全く思わず、寧ろ三木ヱ門にめちゃくちゃ同情しつつ『ごめんねこんな辛い役回りさせて本当ごめんね』と涙目になりながら書いていた。指摘されて読み返すまで滝夜叉丸の残念な言動に全く気付かなかったレベル。
ちなみにこの五章のシーン、伝子さんや三木ヱ門、滝夜叉丸に関しては『可哀想』と言いまくっていたものの、利吉さんに関しては一貫して可哀想とは一度も言っていないし、筆者的には全く可哀想でもなんでもないと思って書いてた。確かに状況そのものは過酷だけれど、一人だけどう転んでもハピエンが約束されてて周囲にめちゃくちゃ恵まれてる状態なので、それ分かってる筆者としては同情する理由が無いし、ここで悩む事がそのままハピエンに繋がるので、加減する理由もなかった。
さて問題となる瞬間最大風速滝夜叉丸。
このシーンは初期(軍師の豪華版パンフを読む前の、滝夜叉丸のキャラを掴めず記憶から消えていく滝夜叉丸に怯えていた頃)から決めてたのだが、本来はもう少し大人しく叱る役のはずだった。
……
が、書く直前にちょうどアニメで『滝夜叉丸の名前の段』を見た結果、『あっコイツ他人への期待値が相当高すぎるしプライド高すぎるから他人から無責任に選択を委ねられたら絶対ブン殴るわ』と確信。どうにか軌道修正しようとしたものの、利吉さんが思ったよりメンタルグラついてて弱りきってしまってたせいでどうやってもどストレートに『君が決めてくれ』地雷踏みにいったので、軌道修正不可能に。書くたびに脳内で綾ベルンカステルが『山田利吉選手、豪快に地雷を踏み抜いたぁー!!!(棒読み』と実況し始めてしまい、ずっと爆笑しながら筆を進める事に。どうしてこうなった(頭抱え)。
瞬間最大風速滝夜叉丸に関しては個人的に『もう記憶から消せないレベルでカッコよく書こう、オチで消えた時に「じゃああのクソカッコいい滝夜叉丸はなんだったんだよ」って恐怖されるように書こう、私の記憶から滝夜叉丸が消えていく現象をみんなにも味わってもらう為全力を尽くそう』と初期構想から決めてたので、正直『ヤバい
……
初期案の通りに書いてるはずなのに爆笑しすぎてカッコよく書けてるかどうか分かんねえ
…
』と震えてた。
とはいえこの話は悩みながら選ぶ事=ハピエンなので、滝夜叉丸に叱られて立ち上がった時点で物語としてはもうハピエン確定したも同然。ここまでグダグダ悩んでいたのが嘘みたいに浄化された。
令和の忍術学園編からがすごく爽やかなのはそれが理由だったりする。
ちなみに、この辺りから名曲の力を借りまくっている。
どうか、どうか少しでも残っていてほしい。忘れないで欲しい。→僕たちが持てる輝き 永遠に忘れないでね
例え傷付き、躓いても。→ぶつかったり 傷ついたりすればいいさ
どんな未来へも飛び込んでいけるように。→もう飛び込むしかないさ
きっと、涙だけで終わりにしてはいけない。→まだ涙だけで終わる ときじゃないだろう
『山田伝蔵の息子』でも『山田利吉』でもなく、何者でもないただの山田利吉として。
――
他の誰でもない、私として。→ぼくたちはぼくたちらしく
人混みを避けるように、誰を信じていいのかすら分からずに、ずっと目を背け続けていたから。→誰ひとり 信じられず 回る、回る 逃亡者 人混み避けるように
――
けれども。カケラを見つけたあの日。
――
あの時、彼女にかけられた言葉の数々。彼女の言葉を受けて私が流した、あの熱い涙のその意味を
……
私は知っている。→だけどまだ あの時の涙の意味は知ってる
錆びつき開かなくなるほどに心の中の戸を閉ざし、目を背け続けていた自分に漸く気付いたから→錆びついたドアを開け放って 僕は踏み出した
きっとこの身体の持ち主の『山田利吉』が育んできたであろう絆や周囲の者からの愛情が、ここには確かにある。
――
私の手を引く小さな手の温もりが、嘘偽りのはずが無い。→そこには強い絆と愛が溢れていた
――
そうではなく、2人の言葉をあるがままに受け入れ、大切なものを当たり前に受け取れるようになった事が
……
そんなささやかな事が、私にとってどれほど難しく得難いものか、思い知ったから→大切で 目に見えないもの
想いが神の世の最も尊いものとして、カケラとして、世界に宿るなら。今ここで、私に大切なものを教えてくれた君たちに対する感謝の想いだって、きっとそれに負けないくらいの尊さがあるはずだから。その想いが、奇跡を生むことを、期待したっていい筈だろう?→心が奇跡を生む
けれども、そうして心が変われば、見方も変わる。見方が変われば、世界も煌めいていく。それは、言葉では喩えようもない美しい輝き。
……
だから、私はその煌めくような光景を、嬉しいものとして受け止めた。→煌めいて
…
…
と言った具合。爽やかさの殆どが名曲マジック。escapeと勇気100%の力すごい。
◇第六章 月無き夜の選択
サブタイトルはパロ元のサブタイトルが『選択』だったので、悩んだ末に『月無き夜の』を付け足した。ここでのタイトルは猫箱の『星だけが知っていた』とも繋がっている。月が無いので、この夜に何があったのか本当の意味で知れるのは当人以外だと星(滝夜叉丸)だけなのだ。
……
伝子さんはどうなんだって? あの人当事者なのでノーカン。
元ネタを知っている人はご存知の通り、パロ元は日没がタイムリミットで、なおかつ梨花が母殺しを決行するシーンは存在しない。ただし主人公が利吉という生粋の室町人であり、殺人への忌避や葛藤が梨花に比べて薄いだろう事を考えると、ここで元ネタ通りにしてしまうことは殺人という行為の肯定と捉えられかねない。それだけは何としても避けねばならないと考えられた為、この話が一番バランス能力と倫理観を求められた。
通称、真オムライス。即席で用意したファーストオムライスの時にオムライスを二度焼きすることは決めていたので、オムライスはこの回がむしろ本命。「2度目のオムライスが一番美味しい」と言わせた時点でオムライスを半分に分けるのは決めていたし、そこに伝子さんが手裏剣を描くのも決めていた。
ここで注意すべきは、利吉さんが向き合っているのはあくまでも『山田利吉(令和)』と山田伝蔵の2人であり、伝子さんではないということ。そして、本人もその事に気付けていないので、利吉さんの本心をなるべく伏せる必要があるという事。伝子さんと向き合うのは後半戦の「信じて」までお預けです。
教えて☆滝夜叉丸先生のコーナー。本来ならばオムライスの真実はここで明かす予定だったしこのシーンは真オムライスより先に来る予定だったが、正道を忘れた利吉さんのせいで大幅に予定が変わった。
……
兵法や忍術を私的に利用しちゃダメ、忍者と盗賊の最大の違いはそこだって土井半助も原作で言ってるから仕方ないね。
ここで「だから
――
約束はできない。約束はできないが、私はきっと、室町の世に
――――
ありふれたあの景色に、父上達のいる日常に、
……
帰るよ。きっと」と言ってるシーンは、escapeの「ありふれたあの日あの景色に僕は帰るから 約束はできないけど きっと」をイメージしている。このシーンは絶対書こうと決めてた。
また、利吉さんのメンタルが持ち直した事を視覚化させる為に「まあ、願った所でどうせ叶わないのは分かってるけどね。
――――
何せ私も君も、きっと運命の神とやらに嫌われているから」という台詞を挿入。自分の身の上を茶化す事ができる程度には立ち直れたことを示した。
滝夜叉丸の「君を見てる、君が見てる」は本作を書くか否かの分かれ目となった最大のポイント。「見届けてくれ」はぶっちゃけ滝夜叉丸視点だとオーバーキルと言っても過言ではない口説き文句だろうなと思っている。ここで理想が思いがけずに叶ってしまった事で心がやわやわになるのは、猫箱の『僕らは決して友にはなれない』の伏線でもある。
さて本作の大トロというべき利吉さんvs伝子さん。ここ、最初地の文が「落ち着け、クールになれ、山田利吉」してたのでソウルメイトにストップかけられました。ミームネタや元ネタを知っていたら多分確実に吹き出すシーン。とはいえKOOLネタは「冷静になろうとしてるつもりで根本からそもそもおかしい心理状態」なので元ネタ的には間違いではない。
「私が私である為に、幸せを掴む為に。与えられた僅かなチャンスの中で、最大限の努力をして何が悪い? 清貧であれば例え不幸であっても価値がある、とでも言うつもりか?
――
そんな物、恵まれた人間の綺麗事だ。御立派な綺麗事如きで、誰が私の努力を阻めるものかっ!」ここは罪滅ぼし編のレナの頑張り物語パートの台詞の利吉さん風アレンジ。つまりここの場面は基本的に罪滅ぼし編のレナのイメージで書いている。
「その笑みは、百を越える言葉よりも雄弁だった。
――
私と共に生きる明日を、未来を信じて疑わない微笑み。親として、子を安心させようとする優しい笑み。」→言葉より 未来を信じて
と、この回でescapeのサビをようやく回収。このシーンのためにずっと回収せずにいたシーン。
ちなみに「もしこれが、名も知らぬ運命の神が仕組んだ遊戯の類だとしたら。私の選択を、遊戯と称して見守る悪趣味な神が何処かに居ると仮定するならば。
――――
この遊戯に、決着は必要不可欠だ。そうでなければ、終わらない」の部分はLet's play a game without the endの回収なので、この辺りのシーンも割とescapeの歌詞回収しまくってたりする。実質罪滅ぼし編パロ。
綾ベルンの詩。ちなみにこの詩はちょっとわかりにくいが、一応利吉さんのイメージであると同時に滝夜叉丸と令和利吉さん、令和綾部のイメージも含んでいる。令和利吉さんはわかりやすいので兎も角として、滝夜叉丸に関しては覚悟が決まりすぎてて視野狭窄のイメージがない人の方が多いと思われるが、三木ヱ門と綾部がそれぞれ違う方向性から彼を尊重している事を正確には把握できていない=綾部の転生に気付けない、という点から、実は彼も『周囲の者たちは室町とは完全に別人、自分の理解者など誰もいない』という視野狭窄に陥っているので、この詩は滝夜叉丸の事でもある。室町利吉、滝夜叉丸、令和利吉、綾部喜八郎。アンサーである後編の詩も、この4人(+綾ベルン)をイメージした内容になっている。
没にした詩として、
穴の底には何がある?
それは黄金の昼下がり。
穴の底には何がある?
或いは根の国、
妣國
ははのくに
。
穴の底には何がある?
愛に溢れた理想郷。
穴の底には何がある?
痛みと希望と絶望と。
穴の底には何がある?
堕ちる痛みの、その代償。
穴から出たいと願うなら、
目を覚まさなけりゃ始まらない。
という詩もあったのだが、こちらだと利吉さん以外に全く当てはまらないので勿体ない気がしたので本編のものを本採用にした。
和氏の璧に関しては史記に載る内容の為、利吉さんなら一般教養として知ってるだろうと判断した。連城の璧にするかどうかで悩んだものの、和氏の方が一般的だろうと判断。物語初期ならば見栄を張って連城の璧を使わせるのだが、今作での物語を経た利吉さんならばこれ以上背伸びして気取った言い回しすることもないだろうと判断した。
送迎子守唄。これに関しては最初に子守唄入れた時点で令和時空との別れも子守唄にしようと思っていた。邪悪な子守唄とか言わない。
◇最終章 山田利吉
満を持しての主人公の名前回。
とはいえ個人的に本当はここ、原作通りのサブタイトルの『選び取った世界』か、或いは『掴んだ明日』にしたいなと思った。切実に。
ただ、お助けNPCポジションの滝夜叉丸に名前回あるのに主人公に名前回ないのも流石にどうかなーって思ったので消去法。
個人的に利吉さんの名前回を作るなら四章の『親と子と』の方が似合ってたと思う。ただ、四章の話は伝子さんの人となりや彼女の利吉さんへの関わり方、そしてこの話での伝蔵と利吉の距離関係などを示す回でもあるので利吉さん単独の名前回にするのは勿体なさすぎたので却下したらここしか名前回やるタイミングが無くなった。
帰還のタイミングがタイミングなので開幕めちゃくちゃ曇っているが、ここは元ネタ通り。とはいえ元ネタだと犯行に及ぶシーンが存在しないので利吉さんの後悔と曇り方がより生々しくなりました。
……
まあ何も無しで帰還させると、プロ忍だし葛藤なく殺れてしまうんだなで終わっちゃうのでね、それは物語のテーマ的に絶対したくなかったので仕方ない。
ちなみにこれ書く直前『おめでとう利吉さん!あとは最終章だけだからいくらでも発狂していいからね!!!!頑張ったね!!』と読んでくれたフォロワーに言いまくっていたら何故か『いくらでも発狂していい』に苦笑というかドン引きされていた気がする。おかしなことは言っていない筈なのに何故だ。
ここで真っ先に利吉さんに否定の言葉をかけ、『この世界を選ぶ』と言わせるのはきり丸にしようというのは当初から決めていた。きり丸、しんべヱ、乱太郎、土井半助の順番、というのは羽入ポジションの滝夜叉丸すら決めてなかった時期からの既定路線。
というのもきり丸は過去の経験上一番台詞に重みが出ること、そして『利吉さんにとってある種の対極』になる立場のキャラの1人だと考えているので、ここは外せないと思ったから。
個人的に山田利吉という『一流忍者の息子で親に愛されて育ったエリート』というキャラ造形の対になる立場のキャラクターは乱太郎ときり丸だと思っている。乱太郎は『三流忍者の息子』『親に愛されているけど自分も凡人』というポジションなので、利吉さんは彼のifの立場というか、あり得ないけれど『もし乱太郎が天才忍者の息子で自分も天才だったら』の立ち位置として意図して造形されているのでは?と判断していたので(もちろん山田伝蔵の息子であり全然性格も違うのでそこは一個人として完全に分けられているので、あくまでも『ポジション』の話)令和時空の乱太郎の裏設定として『両親への愛情や感謝が淡白になっている』という設定を用意してたのは利吉さんと対にする為。令和利吉さんが親子関係満たされているので、その分乱太郎が本編より親子関係希薄になっている。ここは完全に鏡の関係。
なので個人的に利吉さんの選択を赦す為の言葉、彼を後押しする言葉は出来るだけ乱太郎に言わせたいと考えたのだが、脳内でシミュレーションした結果、乱太郎は優しいが故にこういう事態で咄嗟に切り込む役回りになれないと判断。結論は決まっていても、利吉さんを傷付けない言い回しを考えるので多分他よりワンテンポ遅れる。
なので、もう1人の対極であるきり丸に真っ先に踏み込ませることにした。元々のバックグラウンドの重みからも説得力が増すし、ギャグシーンで言わんでも良いことを言って怒られがちな彼ならば、誰よりも早く反射的に喋らせても違和感がないので。
故に『真っ先に切り込むきり丸』『みんなの言葉を受けて、利吉さんに伝わるように3人の選択を伝える乱太郎』という構図は最初に決めていた。過去編などで利吉さん視点きり丸の存在感がデカいのは、土井半助と同居しているからというのも確かにあるが、それだけでなくここのシーンで切り込ませる為の布石として意識させておきたかったからという理由も少なからず存在する。土井半助は、利吉さんの焦りの原因が自分にもあると判断している負い目や後悔から即座に何か言うのは難しいと判断。また、きり丸達が己の確かな意思で『皆の絆を失くしたくないから辛くてもこの世界が良い』と主張する事への感動などもある為、この場面ですぐに口を開くことはない。利吉さんとの関係性を考えても、彼の言葉には重みが出来るので、彼の発言は最後に回すのが妥当。
というわけできり丸を後押しするポジションになるしんべヱだが、彼の台詞は元々『美味しいものはみんなで食べた方がずっと美味しい』くらいで、実は虎若の実家云々は当初の想定になかった。実はここは『教えて☆滝夜叉丸先生コーナー』を書きながら思いついたところなので、マジで単なる思いつき。ただ、彼の言葉が重みを持った事によって乱太郎が影が薄くなった気がする。ここは正直ちょっと想定外。一応、乱太郎の台詞は親との絆や友との絆がメインなので、この物語ではかなり重要な事の筈なんだけどね。
大金持ちに生まれたら〜のセリフは、ほぼ元ネタ通りではあるが当初使うつもりがなかった。が、書くにあたってきり丸に絡めて使う方が良いなと思った事、本来使うつもりだった温室の花と野草の差の話がいざ書き進めたら「よく考えたら室町に温室ってないから、馴染みのある例えの方が自然じゃね?」になったので土壇場で変更せざるを得なくなったことで発生した。
土井半助の台詞がここぞとばかりに賽殺しのタイトル回収しようとサイコロの話しているのは筆者の無駄な足掻き。
「半人前の『半助』を、足りない分をみんなが埋めてくれたからこちらが良い、『半助』にしてくれてありがとう」という台詞、これは乱きりしんの反応と同じく真っ先に決めたシーン。この台詞と、『おかえり』『ただいま』は滝夜叉丸ログイン前に既に決めていた。利吉さんが伝子さんに『おかえり』と言うシーンで基本的に『ただいま』を言わせていないのは、ここと伝蔵、息子へのただいまをきちんと描写する為だったりする。
土井半助の台詞で当初の予定から逸れたシーンは、『人間は激情に駆られ簡単に道を踏み外すけれど、それを踏み止まる力と踏みとどまれる力を持っている』という台詞の追加くらいのもの。
ここは『ひぐらしのなく頃に令』の沙都子の台詞で、直前に読んでどうしても土井半助に言わせたくなった。が、当初は実は令和時空の土井半助に言わせる予定だった。令和時空の土井半助は警官なので、令和利吉さんの悩みを聞いて『世間の犯罪者って基本的には普通の人だよ』『誰だって罪を犯しそうになるし、実際やらかしてしまう人はすごく多いよ』『でもそれを踏み止まれるようになってるのが人間だと自分は信じているし、それを踏み止まるよう支える為に自分のような警官がいるんだよ』というような台詞を言わせる予定でいた。
……
のだが、『いやこの台詞は温室育ちの警官半助よりも、天鬼となってマジでやらかしかけた室町半助のが絶対説得力あるだろ』と判断、土壇場で変更して室町半助の台詞に変えた。
その為猫箱の利吉さんと土井半助の絡みがめちゃくちゃ簡素なものになったが、個人的には『寂しいけれど令和時空の2人の関係性としては妥当な所に落ち着いた』と判断している。令和では接点など作らない&作れない方が無慈悲ではあるが自然。
山田伝蔵と利吉さんの会話。
作劇的には、そして物語の構成美を優先するならば、本音としてはもう少し伝蔵には踏み込んで話をさせたかった。ものすごく。
伝子さんにかなり向き合ってめちゃくちゃ話をしてここまで辿り着いたのだから、伝蔵ともちゃんと話をした方が構成的には美しいし、その中で伝子さんと伝蔵のアプローチの違いが浮き彫りになるので物語創作者としては是非そうしたかった。ただ、キャラクターの哲学や人物像を優先して考えるならば、伝蔵は余計な言葉を交わすキャラクターではないので不適格。このくらいの会話量でも充分に会話していると判断したので仕方なくこの内容。
孤児院の孤児達云々の台詞。ここはリアル事情が切迫していた時に書いたので最初余裕がなくて直せなかったので色々雑になってしまったが、最終的に『利吉さん以外からはなるべく孤児という言葉を出さない』方向性に修正した。本音を言えば孤児院という言葉も変えたかったが、読者へのわかりやすさ重視でそのままにした。
利吉さんを赦すきり丸の流れは最初から決めていたものの、利吉さん視点だときり丸の心情が見えてこない為、読者視点ではきり丸に無理をさせているように見えるorきり丸が都合のいいキャラになっているように見えることを書きながら懸念。同時進行で隠しTipsの 『Re:オムライス』を制作決定した。
ラストシーンで出てくる滝夜叉丸に関しては完全に個人的な恨みというか意趣返し。めっちゃ好きなタイプのキャラ造形なのに何故か記憶から消失していくというホラーを味わい続けたので少しでも多くの人にこの思いを味わってもらう為に『生きてましたけど?』な滝夜叉丸を出した。
ちなみに室町時空だと滝夜叉丸は利吉さんから『見届けてくれ』をされることはないし、恐らく今後本能的に利吉さんを避ける事になるので接点自体がそもそも消える。
というのも筆者が滝夜叉丸を「自己評価が底辺に近く、しかしそれを隠す為に自分大好きなエミュをしている大嘘吐きで本人は素の自分が一番嫌い」というキャラクターだと想定している為。自己評価が底辺で自分を嫌いな場合、本音ムーブの滝夜叉丸を褒め続けると、滝夜叉丸視点『自分がこんなにも嫌っているものを何故目の前の人はこんなに好きだというのだろう』という困惑を抱えたまま自分大好きエミュを続ける事になる為、挙動がバグって動けなくなると推察。なので、恐らく滝夜叉丸は本音ムーブを褒めてくれる相手が本気で苦手で全力で避けてしまうキャラだと思われる(褒められなれていないように見えるのも恐らくこの自己評価の低さのせい)。
この過程に基づくならば、もっと接点があっても良さそうな中在家長次に対して少し苦手意識を持っていそうなこと(絡みが少ない事)や、尾浜勘右衛門相手にも若干似たような苦手意識を持っていそうな描かれ方をしている事に説明がつく。恐らく滝夜叉丸は自分の本質・本音を鋭く見極めた上でありのままに評価してくる可能性の高い相手を最も苦手としている為、観察力に長けている上記2名を避けがちなのだと思われる(彼らが良い先輩だということをよく分かっており、高く評価しているが故に苦手な可能性が高い)。公式でハッキリと苦手な相手としての描写があった能勢久作もそうした『嘘が通用しない点』が苦手なのだろうと解釈している。ある意味ツッコミ待ちとでもいうべきか、呆れてもらえないと安心できないというクソ面倒なタイプ。
つまり、『夢の話』として『自分が最も見せたくない本音の姿』の滝夜叉丸を語った上でその『本音ムーブ滝夜叉丸』に感謝と尊敬を向けているエンディング後の利吉さんは、滝夜叉丸にとって絶対に受け入れられない、理解できない相手。令和時空滝夜叉丸は段階を踏んで精神性が代わり、自分の意思で本音を見せるようになったからともかく、室町時空の滝夜叉丸としては誰にもバレないようにずっと隠していた恥部を突然言い当てた上に何故かそれを尊重し敬意を向けて来るのだから理解不能だし恐怖しか感じられなくなる。しかも自分と接点が薄いにも関わらず本質を見抜いてきたのであれば、どこから嘘が剥がれるかわからないという恐怖も加わる為、滝夜叉丸は全力で虚勢ムーブをする羽目になるし、内心ぐちゃぐちゃになるので全力で逃げる必要が出て来る。令和時空のようなうれぴよ滝夜叉丸をするような関係性を築く余地はない為、この2人の関係はかなり希薄なものになる。
◇エピローグ サイカイ
サブタイはアニメひぐらしのなく頃に解の第一話から。ここは書き始める前にそもそも決めていた。
リスタート的な意味での『再開』と息子に再び会う意味での『再会』をかけている。
エピローグは息子との再会と息子への『ただいま』、そして人生をやり直す為の『再開』で締めようと心に決めて書いていた。このエピローグのイメージとして、最終話からエピローグまでのイメージソングは結月そらの『そらのむこう』で固定していた。地の文も割とそらのむこうの歌詞から影響を受けているのでここはわかりやすいと思われる。
が、当初の予定に全くなかった小松田秀作が加わってなんか勝手に美味しいところ攫って行った。そもそも小松田さんの登場はマジで当初考えておらず(書き始めた頃小松田さんの事をよく知らなかったのもある)、本当にちょい役で終わる予定だった。ただ、ここで彼を出さない場合、利吉さんがまた忍者になる事は絶対無いなと判断したので、選択肢を広げる為に彼の存在が必要になると考えた。
筆者の個人的な意見を言わせてもらうなら、このエピソードの利吉さんは別に忍者に戻る必要は全く無い。室町の記憶しかないのならばいざ知らず、平和な令和時空を知って伝子さんの記憶を持ち、伝子さんからの『信じて』を忘れない状態で人の命を奪う可能性が高い仕事に就くのはマジで茨の道なのでやる必要が全く無い。利吉さんの心や適性を考えれば、そもそも選択肢に入れるべき内容では無いと思っている。
ただし、じゃあ最初から除外していいかというと、それはノーだと判断した。
というのも、筆者が映画『ドクタケ最強の軍師』初見時に一番製作陣が伝えたいのだろうと感じたメッセージは『失敗はリカバリー出来るもの』『たとえひとりでは届かないとしても、仲間がリカバリーし続けていけば届く』『だからこそ仲間や友人、家族を大事にする』だった。寧ろこのメッセージを感じたからこそ、『己の失敗をほぼ己の力でリカバリーしているように見えかねない形になっている、リカバリーできてしまったと思いかねないと捉えられた山田利吉というキャラクターが、将来的に精神的余裕を無くし他人に頼る事を忘れ無茶をした結果挫折しそう』という不安に駆られたのがこの曇らせ利吉さんを書くきっかけだった。なので、皆の力を借りて立ち上がれるようになった山田利吉の選択肢は、『どんな失敗もリカバリーできる』ものである必要があると判断。その後原作落第忍者乱太郎を購入、読み進めるうちに余計にこの思いは強くなり、『この挫折により忍者を諦めさせることは原作者や製作陣の最も伝えたい事に反する内容になるのでは』と判断。
とはいえ利吉さんを忍者に戻す、というのは確定させたくない。視野狭窄により失敗した男の選択肢をひとつに絞るのは絶対やってはいけないし、まだ無限に可能性があるというラストにするべき。となると、利吉さん以外の人物から新たな選択肢として忍者に戻ることを提示される必要がある。
そして、この選択肢の提示は利吉さんの世界観を広げる為のものでなくてはならないので、山田家の人間にさせるわけにはいかない(そもそも利吉さんのバックグラウンド知ってそれでも忍者やれと言うほど非情な家庭でないので彼らに言わせるのは不適切)。乱太郎達に関しても、『忍術学園卒業生かつ父の教え子』という、山田利吉の世界観を崩すには弱いポジションなので不適切。他のキャラクターでは利吉さんの心にそこまで響かない。そこで、『利吉さんの過去を何も知らずともたとえ知っていても、当たり前に利吉さんの選択肢を増やし世界を広げリカバリーする言葉を選べるキャラクター』として白羽の矢が立ったのが小松田さんだった。
とはいえ、正直言って筆者としては『利吉さんの選択肢に明らかに茨の道となる忍者を入れる』のはめちゃくちゃ悩んだ。が、結局ソウルメイトに相談したところ『やれ』と言われたのでやった。反省はしていない。
しかしおかげでめちゃくちゃ美味しいところを掻っ攫っていった。なんだこいつ。
ちなみに利吉さんの「
――――
私もこの脚じゃ、もう助けてやれないかもしれないんだから」と言う台詞だが、実はこれ小松田さんしっかり聴こえてた上で「何か言いましたぁ?」しているつもりで書いていたし、初期稿だと「だから利吉さんも脚の怪我があるから助けれないなんて弱気なこと言わないでくださいよぉ。らしくないですよ?」「
――
って聞こえてたんかい!!」「わゎっ、しまったぁ!?」と2人でじゃれ合う会話があった。ただここまでやってしまうと流石に華を持たせすぎな上に物語の構成美に欠けると判断、物語に余韻を持たせる為に会話を削った上で「入門票へのサイン、待ってますから」の流れに差し替えた。
この変更は多分人によって好みがめちゃくちゃ分かれるところだと思われる。
ここまでで七章。個人的に猫箱含めて八話分にして『全ての罪が赦される物語』にしたかったので、ギリギリ七章におさまってマジでホッとした。
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