kanaco
2025-05-15 23:10:56
12580文字
Public
 

【洛信】洛信SS(単作)まとめ(フセッター時代)

1P【つきあってない】悪酔いしキス魔になる信一くんと、1人スルーされる陳洛軍さん
2P【罰ゲーム】己の女装の仕上がりにテンション上げ信一くんと、結局YESな洛軍さん。
3P【暗】(R18)信一が好きすぎてちょっと病んできた洛軍さんと、満更ではない信一くん



【罰ゲーム】

「じゃーん」
23:00、半月の夜。外の喧騒も静まってきたその頃合いに不釣り合いな、意気揚々とした声が弾けた。自室で寛いでいた洛軍が驚いて声の方に顔を向けると、部屋の入り口に信一が立っている。

恋人である信一が彼の部屋を訪れることには日常茶飯事で不思議なことではない。それでも洛軍は目を丸くした。イレギュラーなのはその恋人が着ている服装であった。普段彼が好んでいる男性らしいラフなオシャレ着はない。

しっとりとした絹のような光沢を持つ、ロイヤルブルーの高貴な色合い。その布にあしらわれた繊細な刺繍は、優美な孔雀の羽模様。それは金糸と共に散りばめられていた。貞淑さを主張するかのように詰まった首元と、スラリと腕を覆う長い袖の縁には銀。肩にはふんわりとした白のショールを纏って慎ましさと品の良さを強調する。

それは華やかできらびやかな、美しいロングチャイナドレスだった。

「???」

混乱する洛軍を余所に信一がご機嫌で部屋へ入ってくる。

銀糸で小花模様が施されるヒール靴もドレスに揃えて深い青だ。歩く度に耳に飾ったシルバーのスティック・イヤリングとスカートがユラユラと軽やかに揺れている。ただしドレスの両側のスリットは深いものの、彼は緩やかなシルエットをした白いチャイナパンツを履いていた。顔と手以外の素肌は全て覆い隠されている。

それでも溢れ出る色香は隠し通せてはいないが、露出がないことにホッとした洛軍がおずおずと声をかける。

「その恰好でここまで歩いてきたのか?」
「そりゃそうだろ」
……酔ってるわけじゃないよな?」
そう聞かれた信一が一瞬イラっとしたような顔つきを見せる。
「あ?これ着て酒飲めっての?」
「それだけは絶対に止めてくれ」
色々な意味で阿鼻叫喚の地獄絵図になるのが目に浮かぶ。

至極真面目な顔で即答した洛軍を見て、信一が「フンッ」と鼻を鳴らした。その顔には、彼の端正な美貌をより自然に引き出すようにだけ薄化粧がされていた。瞼にはさり気ない銀の煌きと際にスッと引かれた青いライン。口元はいつもより血色の良い、紅。目が合うと様になる流し目をして、洛軍の興味を煽るので狼狽してしまう。

事の経緯はこうらしい。部下たちと賭け麻雀をすることになったと。しかし部下たちが金欠で支払えないというので罰ゲームの流れになったと。部下からの提案の女装であった。どう考えても彼らが示し合わせたように手を結んでイカサマを働くので(そうかい、そうかい。そんなに俺の美女姿がみたいかい)と呆れかえった信一はご希望通りに自分でもパーフェクトと悦に入るほどに自分を仕上げ、この恰好のまま可哀想な部下たちを蹴散らしてきたらしい。

「腰は良いとしても肩幅がな~俺広いからさぁ。さすがに体格は男のラインだし。チャイナドレスと言えば体の曲線美が醍醐味だとも思うんだけど、どうしてもバランスが崩れるからシルエットを上下ボリュームもたせて緩くしたんだよなぁ。女っていうよりユニセックス寄りにすりゃ後は俺の顔と仕草で見栄え良くなるかと思ってよ。そもそもドレスに負けるような俺じゃねぇし?それにお前ってさ、肌を隠されてる方が燃えるタイプじゃん?化粧もお前好みのナチュラルキレイめに仕上げてみたんだけど」

ペラペラと喋り通す。

「どうよ?」

と話を区切ったところで、困惑した顔をし続ける洛軍を見て片方の眉を吊り上げる。
「なんだよ。よくある罰ゲームの類だろ。女装なんて」


そうかもしれないが。
いやでも不味いのではないか。


例え遊びの延長であっても、そんなにも夜めいた美しい恰好で、お前のような一目を惹く美しい男が、意図有り無しに関わらずイタズラに周囲を煽るなどということは。この九龍城砦は多くの流れ者がいつく場所。治安はもともと良くない。第一


「お前、どうしてそんな服を持ってるんだ」
「企業秘密」
「なぜ化粧になれている
「トップシークレット」
「何度も。したことがあるのか?そういう恰好を」
「黙秘権を行使します」
「おい


ますます心配だと洛軍は困り眉を寄せる。

「全く!せっかくお前好みに仕上げようと努力した恋人の健気さを無下にするのか」

反対に、信一はふくれっ面だ。その子供じみた表情が衣装とのアンバランスさを感じさせて、ますます危ういように思う。

「そうじゃないんだがただお前が心配で」
「俺、強ぇけど」
「それは知っている。だがそれとこれとは話が全く別だ。それに」
「それに?」
「そのあまりにも似合っていて綺麗だ。お前が俺の好みに合わせようとしてくれたことも嬉しい。ずっと煽られているからかなり頑張って耐えている」
何で」
「俺はお前を大事に、優しくしたい。理性を失ったような状態でお前に触れるのは、自分が怖い」


だが正直なところ、非常にそそる。


「だから困っている」


………………
しばしの沈黙。

「ああ~もう、じれってぇなぁ!」
目へ少しの剣呑さを宿し、しかし頬を少し朱に染めた信一がついに呆れ交じりの声を出した。右膝を曲げて器用に片足立ちしながら、ヒールの靴を床に脱ぎ捨てる。さらに、そのままの体勢からその長い右足を前へと向け、軽々と一度上へ掲げると手前へ勢いよく一発。

洛軍の胸を素足でドンっと蹴り押し倒した。

当然、無防備であった洛軍は蹴られた勢いのまま後方へと真っすぐに飛ばされる。倒れ込んだのはあのベッドというにはあまりに粗末な簡易椅子。器用にもジャストフィットで仰向けのまま寝かされたような体勢になった洛軍は、勢いある自分の重みでガシャンという嫌な音させて軋んだベッドの心配……など思い浮かぶはずもなく、蹴り飛ばされながらも見えた信一の右足の青いペディキュアに目を吸い込まれる。

信一が柔な洛軍のベッドへの重量限界などお構いなしに、洛軍の腰の上に跨って座った。倒れる時に少々はだけた洛軍の腹に両手をペタリと押し付ける。


「似合うの?似合わねぇの?」
「似合う」

「美人なの?ブスなの?」
「美人だ」

「好みなの?そうでもねぇの?」
「好みだ」

「クるの?コねぇの?」
「クる」

「抱くの?抱かねぇの?」
「抱く」


信一が目を細めて満足そうにニッコリと微笑んだ。信一の体が前方に傾き、洛軍の高鳴る心音を確かめるように胸に頬を寄せる。そして納得したかのように小さく笑った声を出すと、洛軍の体を這うようにして上へと進んでいく。そうして顔と顔がやっと正面になり、2人の目線が同じ高さになる。

信一の人差し指が洛軍の鼻先を2回、トントンと優しく叩いた。


「素直で大変よろしい」


花の香が漂う。彼に似合う、仄かに甘くて上品な匂いだ。それは信一自身の壮絶な色香と相まって洛軍を包み込んで誘う。必死に理性を保とうとする洛軍を嘲笑うようなその甘美さは、彼を陶酔へとあっと言う間に飲み込んでしまいそうであった。目が眩む。だがしかし眩んで目を閉じてしまっては余りにもったいなさ過ぎる。その葛藤を知ってか知らずか信一がますます愉快気に笑う。そして耳元へとさらに近づいてきた顔、吐息。


「そんな正直者で良い子で我慢強い洛軍くんには、お兄さんから優しーく手ほどきしてあげようかな」


(あ、これはもう無理だ)と洛軍は運命を受け入れた。こんなに信一が楽しそうで、麗しくて、しかも蠱惑に誘惑的だ。このような役得の中で自分は一体何に抵抗する必要があるというのだ?キラキラとした目をした信一は、きっと洛軍の瞳の中に”ぐるり”と渦巻いた欲望を見たに違いなかった。


「ヨロシクオネガイシマス」



******************

《おまけ1》

罰ゲームにかこつけて麗しい兄貴を見たいと一揆奮闘した部下たちは麻雀の結末には喜んだけど、罰ゲームにガチで応戦してきた信一に(あ!これ一周回ってダメなやつ!!)と、明確に自分たちに放たれた攻撃性ある色香に顔を真っ赤にさせながら一目散に逃げだした。
信一兄貴「おー逃げろ逃げろ。ちゃんと”教育”が行き届いていて感心、感心♪」
きっちり全員しばいた。

《おまけ2》
ここまで完璧に仕上げたならマニキュアも塗るかぁ~と思った信一くん。少しだけ爪の形を整えたいと爪やすりを探すも手元になし。爪を短くする必要がある医者なら持ってるだろうとその恰好のまま四仔の自室を訪ね、扉を開けて一秒、目が合って一秒、「お断りです」と扉を閉められて1秒。計3秒の面会。
信一「💢」