Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
逆髪
2025-05-05 22:32:17
4342文字
Public
Clear cache
Confidential
2024/05/04スパコミの新刊の全文です。武新の小話3本、ぜんぶハピエン
1
2
3
『ハピネス』
時刻は八つ時、間食を求める英霊が食堂に現れだす時間帯。自他共に認める甘党である武市も例に漏れず、本日の甘味を数量限定抹茶プリンにするか、はたまた定番のバナナケーキにするか、メニューを見ながら悩んでいた。
悩む義兄の姿は実に様になる。まるで一つの絵画のようにさえ思える。画家の英霊なら題材にするに違いない。彼とは違い芸術の嗜みは一切ないのだが、そんなことをふと思ってしまう。
新兵衛は真剣に考え込むその姿を横目に、もう少し時間がかかりそうだと判断し、先に飲み物を用意しておくことにした。一言断り、席を立ち上がる。
部屋の角にはセルフサービスのドリンクコーナーが設置してあった。どうしてもこだわりのある者は別に用意することもあるが、基本的にはここで好きな飲み物を選ぶことができる。
武市のためにカップに珈琲を注ぎ、いつものように小さじ一杯の砂糖を入れ、牛乳を少しだけ足す。自分の分には紅茶を注いだ。砂糖は入れない。
武市の好む珈琲には苦手意識を抱いていたが、紅茶の方は日本茶とも風味が似てるようでそうでなく、なかなかに悪くなかった。未来の己の故郷は茶の産地としても有名らしい。そういうのも縁だろうか。
彼のために飲み物を用意する、この午後のひと時を新兵衛は気に入っていた。彼の新たな好みを知って、それを覚えていく。その過程を好んでいた。
あまりにも穏やかで些細な幸せ。たとえこの生が仮初のものとわかっていても、噛み締めるそれはどんな菓子よりも甘くて味わい深いのだ。
「田中くん、君はどちらがいい?」
向こうから声がする。では半分分けますので、あなたと逆のものを頼みましょう。そう答えを決める。二人で分けたものを、あなたが美味しいと思ってくれますように。そんな身勝手な思いも懐きながら、お盆を持って武市の下へ向かった。
1
2
3
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内