なび
2025-05-01 22:11:20
3177文字
Public 海の魔女の物語(仮)
 

海の魔女の物語(仮)

たたみさま(@musclewata )の こちら>https://x.com/musclewata/status/1917804401428947142 のツイートに脳を焼かれ癖を滅多刺しにされた結果、書かせていただきました。
すてきすぎる絵と設定をありがとうございます……!!!!!!!

TSバソ♀によるしょたおねパーバソです。

途中までですがよろしければ。

※2025.05.03追記※
 続きました。>2話

 海の魔女と呼ばれる男がいた。
 男女とも虜にする美貌を持ち、海を支配すると噂されるほどの航海術を持つ。大船団を率いて海の上では無敗とされた。
 あまりに巧みに船を操ることから、いつしか男は海の魔女と呼ばれるようになった。
 男は人々の羨望を一身に受けたが、同時に妬み嫉みも一身に受けた。男がいかに慎重に行動しようと、それは仕方のないことだった。
 嫉妬は積み重なり、怨みとなり、呪いとなった。海に愛されすぎた故の呪いとも言われた。
 呪いは男を女の姿に変え、海に出ることを禁じた。男にとって死と同義であったが、それすら封じられた男は月に二度、大潮の日だけ元の姿戻ることができた。
 女となった男は、長の年月を経て、海を擁する貴族の庇護下にあった。庇護に甘んじる代わり、海を支配するすべを授けて暮らしていた。



 ◆◇◆



 城郭の広大な敷地の一角に、曾祖父の代に建てられたという小さな石造りの館がある。
 蔦が絡み、今にも木々に吞み込まれそうなそこは、両親からも家令からも近づいてはならないときつく言われている。しかし、そこに出入りする大人たちを見て、パーシヴァル少年が好奇心を殺しきれなかったのは仕方のないことだろう。
 音を立てず窓から覗きこむも、その日は晴天であり、暗い室内は窓に顔を張り付けても良く見えない。だが、どうやら壁面の本棚だけでなく床にまで積み上がったおびただしい量の書物があるらしい、ということだけはわかった。物音ひとつしない室内と見たことのない書物は、パーシヴァルの興味を強く引いた。両親に叱られるだろう未来と、目の前の冒険とを天秤にかけ、後者が勝ったのも無理はない。そっと木の扉を開けば、意外にも軋むこともせず、良く手入れされているのだとわかった。
 暗い室内は思いのほか奥行があり、窓からの光源は扉の周囲にしか届かない。差し込む陽光の中を埃がきらきらと舞っている。その先、日が直接当たらない場所に積まれた本へ手を伸ばそうとしたパーシヴァルは、次の瞬間、ぎくりと体を強張らせた。
「おや」
 おそらく、外で強く風が吹いたのだろう。館を覆う木々がざわめき、日の光が揺らいで部屋の奥を差した。
「言いつけを破る悪い子だね」
 館に不似合いな重厚な机がそこにあった。それが黒く光るほど長い間使い込まれている物だとパーシヴァルが気づいたのは、ずっと後のこと。机の上には壁のように本が積まれ、その向こう、開いた本を前に肘をつく婦人がいた。
 波打つブルネットの髪はゆるくまとめられ、扇のように広がる睫毛の下、意地悪そうに弛ませた瞳は海の色。
 赤い蠱惑的な唇は弧を描き、くつくつと喉を鳴らして笑う甘い声は、確かに誰をも誘惑するのだろう。
「悪い魔女に食べられても知らないよ?」
 それが、海の魔女、バーソロミュー・ロバーツとパーシヴァルの出会いだった。