饂飩粉
2025-04-10 19:57:58
4868文字
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UNBROKEN

 ほぼセリフのみのブルーロック糸師凛夢小説です。
 糸師冴への憎しみ爆発〜ブルーロック入寮前の糸師凛とホラー映画の話をする高校2年生の夢主という設定です。
 セリフに出てくる映画のタイトルはほぼ全て作者の趣味です。

5月

「最近何観たの?」
「『リヴィッド』」
「どんな映画だった?」
「まあまあ良かった。同じ監督の『屋敷女』よりはこっちの方が好きだ」
「『屋敷女』はショッキングな描写の印象がやっぱり強いよね。ノーカット版はヤバかった」
「ゴア描写でいうと、『リヴィッド』では喉を刃物で縦に裂くシーンがあったな」
「そうなんだ! 確かにホラー映画だと喉って横に裂きがちだもんね」
「グロテスクなシーンと言えば切り株みたいなところあるからな」
「ねー、斬首刑の文化の名残かな?」
「日本だって打ち首の文化あったろ」
「あー三池崇史の『十三人の刺客』でもあった気がする」
「三池崇史は『オーディション』『悪の教典』『着信アリ』とかは観たな」
「え、『着信アリ』って三池だったの!?」
「知らなかったのかよ」
……本当だ。一作目って三池だったんだ」
「見てねえのか」
「見たけど、その頃は意識してなかった」
「色々やってるからな」
「ねー。そういえば私『オーディション』見たことない。どんな話?」
「映画のオーデションと称して再婚相手探したけど、その相手がヤバかったって話」
「うえ、再婚相手の探し方の時点でキモ……
「そのキモい奴が酷い目に遭う」
「それならいいか。グロい?」
「まあまあ」
「ふーん、今度ゲオでレンタルしよっかな」
「配信でも見れるぞ」
「サブスクのサービスは親が契約させてくれないんだよね〜小遣いで払うって言ってんのに」
……大変そうだな」
「出た上から目線。そもそもタメ語使ってっけど一応私二年生だかんね?」
「関係ねえ」
「なんそれ、生意気な。じゃあ今日観るのはこれにすっから」
……『ファウンド』じゃねえか」
「なんだ、知ってたか」
「観たことはない」
「DVDはわりと最近発売したからね。ちなみにイケてるお兄ちゃんとホラー映画大好きな弟君が主人公だよ」
……
…………嫌なら、別のにするけど」
「いい。観る」

 クライマックスで、凛は席を立った。
 凄惨なシーンだったが、それが理由じゃない。多分、映画の中の兄と弟に、自分自身とお兄さんが重なる瞬間があったのかもしれない。
 凛は私には、話してくれないけど。


6月

「最近何観たの?」
「『水霊 ミズチ』」
「知ってる!」
「そうか」
「面白かった?」
「最初の方は」
「確かに私も序盤の方が好きだったかも」
「というより、最初が良過ぎた」
「あの、自宅の熱帯魚飼ってる水槽から一瞬目を離した次の瞬間には水槽が空っぽになってるところ、ゾッとしたわ」
「俺もあのシーンは好きだ」
「その後は原因を調べる流れになるけど、そこからは恐怖のテイストも変わるよね」
「正体がわかってからもホラーとして成立させるのは、ジャンルを跨ぐくらいの思い切りの良さが要る」
「『インシディアス』とか、途中から流れ変わるけどそれはそれで面白かった」
「ジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビは鉄板だからな」
「リー・ワネルといえば最近アメリカで最新作上映始まったらしいよ」
「『アップグレード』だっけか?」
「そう、それ! 日本に来るのいつかな〜」
「予告見たけど、あれホラーか?」
「『狼の死刑宣告』よりはホラーのジャンルに近い気配ない?」
「気配ってなんだよ」
「予告編から漂ってる雰囲気のこと。ってか、凛にとってホラー映画の基準って何かあんの?」
……ヤバいもんに何かを壊される感覚がある映画だな」
……グロいかどうかって話?」
「肉体的な話に限らない。壊れるのは精神でも、ヒトでも、モノでも、なんでもいい。とにかくヤバい何かのせいで、何かが壊されれば、俺にとってはホラーだな」
「『アップグレード』だって、AIチップで生活がメチャクチャにされる的なあらすじじゃない?」
「ヤバいかどうか、壊れてるかどうかは俺が判断する」
「わお、自分勝手」
「うるせぇ」
…………ねえ、日本で公開したらさ、一緒に観に行かない?」
「あ?」
「『アップグレード』の話。凛的にホラーだったかどうか、聞きたいし」
「DVDスルーされる可能性だってあるだろ」
「その時はさ、ここで見ればいいよ」
「あっそ」

 精一杯勇気を出してデートに誘ってみたつもりだった。
 でも、うまくいかなかった。


7月

「最近何観たの?」
「『スペル』」
「サム・ライミの!」
「そう」
「"ラ〜ミ〜ア〜"でしょ?」
「ぬりぃモノマネだな。全然似てねえ」
「じゃあ凛がやってみせてよ」
「誰がやるか」
「じゃ得意なモノマネある?」
「ねえし、あったとしてもやらねえ」
「何かなあ、凛が得意そうなモノマネ」
「勝手に考えんじゃねえよ」
「えっとね…………待って、変なのしか浮かばない」
「どういうことだテメェ」
「凛ってアイス好きじゃん。だから舌が特徴的なヤツって思い浮かべると『グエムル』とか『トレマーズ』とか『レリック』とか……
「モンスターばっかりだな」
「あれは? 11月くらいに日本公開する『ヴェノム』! 凛ってシンビオート似合いそう」
「なんだそれ」
「え、知らないの!?」
「ホラー以外は興味ねえ」
「『ヴェノム』はホラー寄りだと思うけどなあ。破壊衝動的な? 『スパイダーマン3』は観た? ライミのやつ」
「観てねえ」
「なんでェ? 『スペル』は観てるのに」
「『ダークマン』なら観た」
「逆に私はそっち観てないや」
「『スパイダーマン』観てるなら観とけよ」
「うわ、今のマウントっぽい」
「ライミの『スパイダーマン』観てるなら『ダークマン』観といた方が良いって話だよ。勧めてるだけだ」
「勧め方不器用過ぎ」
「うるせえな」
「そんなにいうなら今日は『ダークマン』にする?」
……おい、DVDあるのに観てなかったのか」
「いやあ、こういうのはタイミングとか色々あるじゃん? ほら、時間潰すためにテキトーに選ぶ場合は選択肢に入らなくて、腰を据えて臨みたいって時にこそ選ぶみたいな?」
「それは腰を据えるための努力を怠ってることへの言い訳だろ」
「ぐっ、正論…………
「機会は待つもんじゃなくて、作るもんだ」
……じゃあさ」
「あん?」
「映画、観に行こうよ」
「今から観るだろ」
「違う。視聴覚室でじゃなくって、映画館で」
「いつ観にいくんだよ」
「夏休み。凛の予定に合わせるから」
「何観るつもりだ」
「『ウインド・リバー』でどう? ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセン出てるやつ」
「ホラーじゃないだろ」
「サスペンスだけど、気になるの」
……
「機会は待つもんじゃなくて、作るんでしょ?」
……わかったよ」
「っ——本当に? 本当に本当!?」
……その映画は、俺もちょっと気になってた」
「いつ? いつなら空いてる?」

 その日のうちに、凛と映画館に行く約束を取り付けた。
 それから私は、クリスマスを待つ子供みたいな気分でその日を待ち続けた。