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racmon
2025-03-31 21:50:47
6638文字
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モブ視点ささろまとめ
だいぶ前に書いたモブ視点ささろのまとめです
それぞれタイトルは忘れました…
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俺は自他共に認める朝型人間だ。特に理由もないが五時から七時のシフトを希望しているので、怠惰な同世代のバイト仲間には感謝されている。これは個人の感想だが、朝の客の方が対応しやすい。通学や出勤で急ぐ人たちは体の揺れなどで急かしてくることもあるが、俺は仕事が出来る方なので問題ない。飲み会終わりの酔っ払いをダラダラ相手にするよりよっぽどいい。ほかにも、大体決まった客しか来ない時間帯ということもあり、基本的にはスムーズなやり取りができる。
「しゃあせぇ」
まさに今も、ときどき見る顔が入店してきた。ときどき、というのはこの店でのことであって、実際この人物を頻繁に見かけるようになった。街のポスター、新聞の記事、ヒプチューブの広告など、俺の意思とは関係なく目に飛び込んでくる。その結果、サブリミナル効果というものだろうか。俺の部屋にテレビはないが、うっかり配信でバトルを見守ってしまった。彼が所属するどついたれ本舗の勇姿を見たいと思ってしまった。
繰り返すが、俺は朝型の人間だ。働き始めた時からずっとこの時間にここにいる。仕事内容の物足りなさに辞めようと思うこともあったが、まだしばらく続けるつもりだ。その理由は決して、いまレジに向かってくる彼目当てということではない。
「レジ袋いかがなさいますか」
「あ、結構です」
彼も俺に負けず劣らず朝が早い。平日不定期、おそらく出勤前に来店することがある。清潔感のある服装に、知的さが窺える眼鏡をかけていた。今日は土曜日だった。週末に彼を見るのは初めてだった。それから格好も、なんとなく気が抜けている。ロングコートはいつもと同じ紺の美しいシルエットのものだが、その合わせから覗くのは少し毛玉のついたスウェット生地。部屋着を中に着ているというそとは、どこかへ出かける途中ということではなさそうだ。そしてなんと、眼鏡をかけていない。きつめの目元に惹きつけられる。しかし俺は淡々と業務をこなす。菓子パンが二点、ボールペンの芯が一点、チョコレートが一点、最後はーー。ゴムが、一点。正直一瞬停止してしまった。俺ももう大学生だ。童貞でもない。しかし彼が差し出すゴムには驚いた。早朝避妊具。朝日に照らされる避妊具だ。なんというか、ショックだった。
「イコカで」
彼は毎回そう伝えてくれる。俺は彼がイコカで支払うことも、パスケースにプリンのシールがいくつか貼られていることも知っている。他のことももっと知りたいと思っていた。欲が出たせいで、一番知りたくないことを知ってしまった。
「ありがとうございました」
軽く微笑んで背を向けた彼の姿を、店員特権を行使しじっと見つめる。自動ドアの向こうに、人影が見えた。眩しい日を背にしていて細い影しか捉えられない。
「盧笙! 眼鏡眼鏡!」
軽快かつ大胆なリリックを繰り出していた、あの声だった。
「おまっ
……
! 俺が一人で来た意味ないやんけ!」
顔を真っ赤にした彼が、チラチラとこちらの方を見た。俺は咄嗟に目を逸らす。そうすることが、彼のためだと思った。一度だけ、とそろりと顔を上げてみる。眼鏡チェーンをくぐる仕草にぐっときた。それをさせているのは俺がこの先いくら頑張ろうと追いつけない存在だ。俺は恨みがましく見ていたのかもしれない。視線に気づいた細い目が薄っすらと開いた。
ーーお、れ、の。
俺は来月からのシフトをすべて夜に変更しようと心に誓った。
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