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racmon
2025-03-31 21:50:47
6638文字
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モブ視点ささろまとめ
だいぶ前に書いたモブ視点ささろのまとめです
それぞれタイトルは忘れました…
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「あっ」
見覚えのある顔に、僕はその客の目をしっかりと見てしまった。ここで働き出してから人と視線を合わせたのは、延滞料金の支払いを渋り激昂した男に「ワシの目ぇ見て言わんかい!」と怒鳴られた時以来だ。
「いま、アッて言わんかった?」
「すいません」
「俺ンこと知ってる?」
「いや知りません」
「知らんことないやろー」
カラッとした明るい声を脳天で受け止める。「一泊二日で」とカウンターに置かれたDVDはジャンルもバラバラ。全米が泣いたらしい恋愛映画の下に重なっているのは、どこから引っ張り出してきたかも分からないクレイアニメシリーズの二巻だった。目の前の客の印象とは一番遠いものだと思った。
「実はな、返しそびれてるやつあると思うねん」
会員情報からお調べします、と僕が言い切る前に彼は「ツツジモリロショウ」と言った。僕は彼が新規の客であり、名前は白膠木簓であることを知っていた。
「
……
たしかに、そのお名前で未返却のものがあります」
「でも入れモンはあるやろ?」
彼は柔らかい声色で僕に訊ねた。手が震える。
「はい、すいません」
「いや返してへんのはこっちもやし」
おあいこだろう、と彼は笑顔を作った。僕は観念するしかなかった。
「ご連絡せず、すみません。間違えて入っていたディスクは、僕が持っています」
「あ、ほんまぁ! やっぱりかー」
「中身も見てしまいました」
「どやった?」
「あの、面白かったです
……
」
きゅっと目尻に刻まれた皺に、僕は上がりきっていた肩の力を抜いた。
「ツツジモリさんがまた来たら渡そうと思って、今もーー」
「あぁ、ある? ほなもろてくわ。こっちホンモンな」
不織布ケースに入ったDVDを受け取り、僕は大急ぎでロッカーへ向かった。トートバッグの奥底から取り出して『新人エンゲイ大賞予選』の手書きタイトルを確認する。
「お待たせしました」
「ほい、たしかに!」
そんとき急いどってな、ごめんな、と彼は大切そうにリュックの内側ポケットに仕舞った。
「すみませんでした。あの、ツツジモリさんにもよろしくお伝えください」
彼はレンタルした二枚を置き去りにして去っていく。やっぱり口実だったか、と僕は引き止めなかった。開いた自動ドアがなかなか閉まらないことが気になって、顔を上げた。
「なあ」
彼はぽつんとそこへ立っていた。
「明日のニュース、見んといて」
ガタつくドアがやっと閉まっても、僕にはその言葉の意味はわからなかった。
翌日、仮病から復帰した店長が「あのコンビ解散やて! 名前忘れたけど!」と元気に出勤した。中途半端なゴシップに、僕はモヤモヤしながら昼休憩まで過ごした。カップラーメンが出来るまでに調べるか、とスマホを取る。汁を吸って伸び切った麺はとても不味かった。
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