夜明 奈央
2025-03-30 10:30:18
7101文字
Public 中太SS
 

キモオタ×レイヤー中太

ナナサキさんの描いた後方彼氏面中也とデンジャラスビースト太宰のFA
2025年3月24日〜30日まで連載


 #TAKE2 新衣装お披露目


 今日は待ちに待ったコスプレイベントだ。ダザイの新衣装お披露目の場でもあり、俺はこの日をずっと待ち望んでいた。新衣装というのはこないだ試着していたあのどすけべ衣装だ。ダザイの衣装は全体的にすけべなものが多いが、今回のものはその中でも群を抜いている。
 満を持して登場したダザイを見て、待ち構えていたファンたちからは大歓声が上がった。局部は最低限しか覆われておらず、ボディラインを強調するように謎の紐が身体中に走る。その割には隠す必要性のない首や腕は絶対に見せてなるものかとしっかりと覆われている。
 どすけべである。こういう衣装は太陽の下、衆人環視で纏ってこそ本領を発揮する。俺はあまりの出来栄えに1人ガッツポーズで天を仰いだ。
 お披露目の歓声が落ち着くと、お馴染みの撮影会が始まった。すけべさを強調するようなポーズを嬉々として取っている。ダザイはコスプレが好きだ。中でもこういったイベントで注目を集めるのが一等楽しいらしく、表情は生き生きと輝くようだ。
 ファンではなさそうな通りがかりの人たちからも注目を集めていて、俺まで嬉しくなる。ダザイを取り囲んでいる中にはあからさまなエロ目的の輩もいるが、心の広いダザイはそんな小さなことは気にしない。だから俺も、ダザイに実害が及ばない限り邪魔はしないと決めている。今日は楽しそうなダザイを時間いっぱいしっかりと目に焼き付けるつもりだ。
 少し離れたところで水を得た魚のように生き生きと撮影に応じるダザイを観察していると、どこからか見知らぬ男がやってきてダザイに声を掛けた。ファンとの交流だろうと最初は気にも留めなかったが、話が長びくにつれてだんだんと気になり始めた。
 ダザイと出会ってから現場でダザイに近づく男は逐一チェックしているが、その顔に見覚えはない。にも関わらずダザイも快く応対していて、鰻登りだった機嫌が急降下していった。
 俺は今にも割って入りたいのを我慢してギリギリと歯を食い縛る。ここはダザイの晴れ舞台だから、いくら恋人だからといって交流を制限するつもりはない。そうだ、それがダザイのトップオタ(自称)としての俺の矜持だ。
 けれどその男がダザイの剥き出しの太腿に手を伸ばしたところで俺の広い心も限界を迎えた。ダメだ。我慢ならない。割って入るため、つかつかと歩み寄る。が、声を掛けようとしたところで、逆に自分が声を掛けられた。
「あ、幹部じゃないですか! やっぱり来てたんですね」
 興奮醒めやらぬ様子で近づいてくるのは教授眼鏡だった。俺の数少ないオタク仲間で、教授眼鏡というのはもちろんHNだ。本名は知らない。ちなみに幹部というのは俺のHNである。
「皆さん今日も気合入ってますね! 僕も腕が鳴ります!」
「悪い。今それどころじゃないんだ」
 せっかく声を掛けてもらって悪いが、俺にはダザイを守る義務がある。いつまでも不埒な輩にダザイの身体を好きにさせておくわけにはいかない。教授眼鏡の隣をすり抜けようとしたところで、教授眼鏡も俺の視線の先に気づいた。
「えっあれもしかして咖喱さんですか!? いつのまに復帰を!?」
 その言葉を聞いて俺の動きはぴたりと止まった。
「知ってるのかっ!?」
「えっはい。僕の勘違いじゃなければ、ダザイさんの前のジャンルでよく一緒に撮ってた方だと思います。確か2人共別のジャンルに移動して一緒に撮らなくなって、その後咖喱さんの方はコスやめてアカウントも消しちゃってたと思うんですけど……
 ここまで喋って人違いだったら恥ずかしいですね。でも咖喱さんが復帰したんだったら嬉しいな。今も同じ名前で活動してるのかな。
 途中から説明というよりほとんど独り言みたいに続いた言葉に俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。俺がダザイと出会ったのは今のジャンルに来てからだ。ダザイの前のジャンルも軽くチェックはしたが、交友関係の全ては把握できていない。アカウントを消していたとなればそもそも探ることも難しい。
 確かに冷静になってよくよく見れば、メイクの派手さはコスプレのそれだ。冴えないジャケットの下にはハーネスやモデルガンも装備されている。普段着としてあり得そうな地味な衣装だったから気づくのが遅れた。
 あれは不届者ではなく、ダザイのコスプレ仲間だったらしい。危うく乱入してこの場をぶち壊すところだったのを踏みとどまれて良かった。教授眼鏡に礼を言おうと振り返ると、もうそこに姿はない。他のファンに交じり、2人の絡み写真を嬉々として撮影している。
 まあいいか、と撮影会に再び目を向けると、ダザイが咖喱さんというらしい男とキスでもしそうな距離で見つめ合っていた。
 いくら何でも近すぎる。改めて止めに入りそうになるが、シャッター音はこの日いちばんの盛り上がりを見せている。俺は結局割って入ることもできず、ギリギリと歯を食い縛るしかできないのであった。

入りきらなかった設定 教授眼鏡:安吾
趣味のコスプレカメラマン。カメラ沼にもいるので馬鹿でかい一眼レフを複数提げて現場に現れる。メジャーなアニメやゲームはひと通り追っているが、特定の推しジャンルがあるというよりはコスプレ撮影が好き。
ダザイと付き合い始めたばかりの浮かれきった中也に「ダザイと付き合ってるんだ!」と言われ、それ以来そういう設定として話を合わせているが、オタクのその手の言葉を信じるわけがなかった。

幹部:中也
ROM専オタク。基本的にオタク仲間と交流しないので、SNSのアカウントはフォロワー0
安吾がダザイとの交際を信じていないことに気づいているが、バレたらダザイに怒られるのでそれで良いかと思っている。某ゲームにハマりFAなどを見漁っていた時にダザイに出会い、追っかけを始めた。某ゲームのFAは今でも見ているが、ダザイ以外のレイヤーにはあんまり興味がない。

咖喱:織田作
ダザイの前のジャンルで男の娘百合BLをやっていた。撮影時濃厚な絡み多めのため、当時「あの2人は付き合っているのでは?」と実しやかに噂されていた。否定も肯定もしないので噂を加速させる。
ジャンル移動後私生活の多忙によりコスプレをやめたが、推しジャンルのアニメ化により再燃してコスプレに復帰した。

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