ゑ/圓堂
2025-03-27 00:13:26
5946文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】さにごぜTwitterログ03【創作男審神者×一文字則宗】

Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめさにごぜ編。2024年~直近に上げたものをまとめました。
則宗実装三周年記念小話『残香』
ポッキープリッツの日小話『管理NO3250本丸、11月11日の午後。』
則宗実装四周年記念小話『愛を尊ぶ声』
の四本立てです。


【管理NO3250本丸、11月11日の午後。】

くだらない悪戯心を携えて、今日も一文字則宗が主の執務室の障子戸を軽快に開け放ったのは、先日までしつこく居座っていた夏の気配もさっぱりと消え失せた十一月の午後のことであった。主は無言でずかずかと上がり込んできた一文字則宗の姿を一瞥して、一度は再び机上の報告書へと向き直ったが、一拍置いて再度一文字則宗を振り向き凝視する。

「おい、誰に吹き込まれたんだよそんなもん」
「ほう、流石にお前さんみたいな無粋でもこの風習は知っているのか。なら話は早い」

一文字則宗は口に細長い棒状の洋菓子を咥えたまま器用に喋ると、呆気に取られている己が主の問いは無視したまま、食え——と彼に向かって顔を突き出した。主は白けた視線を一文字則宗に向ける。一文字則宗は、当然ながらそれを涼しい顔で受け流す。寧ろ、主が己の一挙手一投足に辛気臭い無表情をころころと変えるその様を、好ましいとさえ思っている始末である。

「やらねぇからな。甘いもんは好きじゃねぇって言ってんだろ」
「何だ、面白味のない奴め。偶にはじじぃの戯れに気前良く付き合わんか」
「全然たまにじゃねぇだろ」

予定調和のような押し問答が続く。毎回彼らはこの有様である。一文字則宗がそうなるように仕掛けているからだ。愛い男を揶揄うことが、この本丸に遣わされた一文字則宗の何よりの悦びなのだ。

「主よ、お前さんまさか怖気付いているんじゃないだろうなぁ」

一文字則宗は目一杯、いやらしい笑みを浮かべて主を挑発した。大抵この後に待っているのは一文字則宗自身の敗北なのだが、主がどのような反撃の一手を見せてくるのか、それさえも愉しんでいる節がある。度し難い付喪神なのである。



さて、どのように出るか——と思う間も無かった。
それはまさに電光石火、一瞬の決着であった。一文字則宗の身体を掴んで固定することもなく、彼が唇に挟んだ菓子を、その粘膜に触れるか触れないかのぎりぎりで主は齧り、奪い去る。刀剣男士でありながらも追い付けぬほどの早業に、一文字則宗はただ、唖然とするしかなかった。
久々に食うと美味いな——と言いながら菓子を咀嚼し、飲み下してから主は一文字則宗へ再び視線を遣る。その瞳には何処となく勝利者の余裕が滲んでいる。

「これで満足か?」
「くそ……生意気な奴め」

本日も結局敗北を喫する羽目になった一文字則宗である。
言葉とは裏腹に熱くなる目尻やこめかみに霹靂しながら、一文字則宗は口の中に残った味気ない菓子の欠片を、半ば八つ当たりのように噛み砕いた。