ゑ/圓堂
2025-03-26 23:22:31
8531文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】さにごぜTwitterログ02【創作男審神者×一文字則宗】

pixivから移植
Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめさにごぜ編。2023年に上げたものをまとめました。
則宗実装二周年記念小話『こひしたまもの』
審神者の日記念小話『INFORMAL』
眼鏡珈琲ネクタイの日小話『Heart is Sweet or Bitter?』
sirronさんへのうちよそ小話『Saliti!』
の四本立てです。
大好きなsirronさん(https://x.com/sirron0122)のお宅の創作男審神者・佐山先生と日本号のCPお貸しいただきありがとうございました!
sirronさんちの佐山先生が大好きで大好きで……今度はちゃんと主くんとがっつり絡む話が書きたいですね。

【こひしたまもの】

冬の布団というものは、風呂上がりの些かのぼせた肌にもひやりと冷たい。
毎年その感触に辟易するものの、行火を用意するまでにはどうしても至らない。手間よりは一時的な不快感を諦める。この本丸の主はそういう男である。

今日は珍しく仕事も早仕舞いし、健全な時間に食事を摂り風呂も済ませた。数ヶ月ぶりにゆったりと浸かった湯船のおかげで、身体だけでなく思考の凝り固まった部分さえもほぐれたような心地で、こういう日も必要なのだ――という事を主は思い知らされたような気になった。

掛け布団を腰のあたりまで掛け、仰向けに寝転がる。夜着越しに伝わる敷布団の冷気に一度だけ身体がぶるりと震えたが、無視して執務室から持ち出した本を開く。
主がこの本丸に来てからそれなりの年月が経つが、寝室の布団の中で本を読むなど初めての事だった。その事実に思い当たった主は、今日という一日が殊更贅沢なもののように思えた。

「うう、寒い寒い」

一章の半ばまで読んだところで、近づいてきた小走りの足音の後に障子戸が開き、大仰な台詞が主の耳に飛び込んできた。

「流石は隠居のじじぃ、湯冷めが早いな」

主が活字に目を向けたまま、揶揄うように声の主――一文字則宗へと投げかけると、くそ坊主のわがままに付き合っていたらすっかり冷えてしまった、と彼は肩をすくめて言い訳を述べた。

「孫に構ってもらえて何よりじゃねぇか」
「にしても、もう少し労わって欲しいもんだ。そら、どいたどいた」

主がようやく手にしていた本を閉じ、枕元へと置いて一文字則宗の方へ顔を向ける。やれやれといった表情の一文字則宗はややせわしない挙動で、主の寝そべる布団まで歩み寄るとさっさと電灯の紐を引いた。常夜灯の褐色の闇の中で、一文字則宗のシルエットが掛け布団の裾を持ち上げる。
主が一文字則宗の声に従い、人ひとり分の余白を自身の隣に作ると、一文字則宗はいそいそとその余白に忍び込んだ。

「ほれ、おいで。じいちゃんが抱っこしてやろう」
「俺は孫になった覚えはねぇ」

布団の中の温もりに心の余裕が出来たらしく、今度は一文字則宗が揶揄うように主へと両腕を伸ばす。軽口を返しながらも、主は素直に一文字則宗の胸へと潜り込んだ。

夜着の襟元から覗く肌が頬に触れ、然程湯冷めを感じさせない体温が伝わる。鼻腔を満たすのは、湯煙の残り香に混じる彼の匂い。
鼓膜を震わせる一定のリズムは、彼が、一文字則宗が人の身で生きている証。

――何を考えている?主よ」
、別に」

一文字則宗の問いに、主は僅かに口籠る。
やがて、胸中の本音はそのままに、悪くねぇなと思って、とだけ返した。
うははは、そうだろうそうだろう、と一文字則宗が抱きかかえた主の背をぽんぽんと叩く。

来るべき時までは、僕はお前さんから離れたりはせんよ」
「、あ?」
「いや何、温くて心地好いと言ったんだ」

いい湯たんぽだなお前さんは、と言いながら、一文字則宗はいよいよ眠りの態勢に入る。主は、先程と打って変わった独り言のような彼の言葉を聞かなかった事にして、旋毛に一文字則宗の穏やかな呼吸を感じながら目を閉じた。