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Isa
2025-03-22 16:27:24
10103文字
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寄りかかる
ED後のトゥルシスのつもりだったもの(途中までしかない)
・アナザーシスルのユニストと矛盾
・すれ違い話のつもりだったものの、仲直りまで書けずに力尽きた
・故にあんまり楽しくない話
誠に申し訳ないのですが、特大矛盾のせいでモチベが地に落ちてしまったため、このあとの展開は各自で脳内補完お願いします。
正直言うと多分ここまでが一番書きたい場面なんだよね(最悪性癖の懺悔)
1
2
3
天気は快晴。昨日まで降り続いた雨は止み、今日からはお客様を外でのショーに御案内できる。実は庭いじり日和でもあるのだけれど、本日のお役目はキッチン部門畑のお世話担当に預けることにして。
エンタメ部門のスタッフたちの朝の準備はいつも通り順調だ。モンスターたちの調子もばっちり、慌ただしく準備の総仕上げに取り掛かっているのは、キッチン部門のスタッフたち。
朝から晩まで、お客様へ最高の料理をお届けするために奔走するのだからこちらもたいへん忙しい。その中でも朝食というのは重要だ。朝目が覚めて、一番最初に口にするものなのだから、とびきりの美味しさで一日をスタートさせてほしいという想いが込められた一品ばかり。既にお腹を満たした者の食欲にも訴えかけてくる、色彩、盛り付け、芳しい香り
……
。
と、厨房の方から大音声の掛け声が聞こえてきた。キッチン部門のゲートキーパーは今日も絶好調だ。
サービス部門も朝の忙しさでは負けていない。本日チェックアウト予定のお客様の荷物を整理し、人数分のお土産の準備、船便の手配と必要なお客様への出航時間のお知らせ。
次もまたここに来たいと、ここで最高の時間を過ごしたいと、そう思ってもらえるように、最後の最後、この島の姿が見えなくなるまでの時間は一瞬たりとも気は抜けない。
既にこの二つは早朝より本格的な業務が始まっているが、ガード部門とエンタメ部門は営業開始のその時からが本番だ。朝一番の船便でやってくるお客様のお出迎えはホテルへのご案内と共にサービス部門へ引き継ぎ、島を巡るツアーに参加する方へのご案内が、一番最初の主な仕事だ。
何が起こっても怪我などないように、ガード部門とケア部門との連携は重要だが、常日頃よりお客様第一として、部門の垣根なく協力を惜しまないスタッフたちに、憂慮すべき点はひとつもない。
ニユロハスはゲートキーパーとして朝の日課である各部門、各分野担当のリーダーたちから報告を受け終わると、水平線に船の姿が見えてきた港へ向かった。時間はぴったり。ヴィキディテとはアイコンタクトだけで挨拶を済ませて、本日の業務が幕を開ける。
そんな、いつもと変わらない、最高の時間を提供する──エルシアムの、いつもの一日のはず、だったのだが。
日が中天にかかる頃。様々な露店が並ぶ通りで、即興的に始まったニユロハスのショーに集まった人混みの中に見えたのは、すっかり見慣れた姿だった。
「あれぇ
……
、シスルちゃん?」
「! あ
……
」
メインの舞台を他の踊り子に任せ、人混みに割って入った先にいたのは、スティーノスがバッジを渡した、お菓子の国にいるはずのシスルだった。
俯いて離れた場所にいたせいで気付くのが遅れてしまった。いたなら声を掛けてくれれば良かったのに、と続けようとして、ニユロハスは口を噤む。顔を上げたシスルが、深く傷付いたような顔をしていたからだ。
ショーのために来たのではないのだろう。そういえば、以前は一緒にいたはずのパートナーの姿もない。驚きに丸くなった瞳はすぐに伏せられて沈み、ニユロハスはシスルの手をそっと取った。ぱちりと目が合うと、ウィンクひとつでシスルを黙らせる。
「君、もしかして、お友達と逸れちゃったの? そうだよね、ここはお店がたくさんあって、目移りしちゃうもんねぇ。よし、お姉さんが一緒に捜してあげる!」
「えっ? えっと
……
」
「そうと決まったら、早速しゅっぱ~つ! みんな、エルシアムは広いから、ちゃんと手を繋いで歩くんだよぉ。もし迷子さんになっちゃったら、近くの大人のひとに声を掛けること。わかったひとは元気よくお返事だぁ!」
子供たちの明るい返事を聞き届けてから、やや強引に、シスルを裏の通路へ連れて行く。抵抗がないあたり、ニユロハスの見立ては当たっているのだろう。
スタッフ用の休憩室に辿り着くと、残っていた数人に外の手伝いをお願いして人払いをしてから、シスルをソファに座らせた。昼休憩が終わったばかりだから、この場は暫く静かだろう。
繋いだ手をシスルの膝の上に置いてから離し、その上から手を重ねる。鎧うというほどもない、外向きの笑顔をまだ完全には外さずに、いつも通りに話しかける。
「シスルちゃん、久しぶりだねぇ! 会えて嬉しいなぁ。何か飲めそう? それともお腹が空いてるかなぁ?」
「
…………
お腹、空いた」
「そっかそっか。じゃあ、くくかさんのとこにまかない貰いに行っちゃう? それとも、昨日のおやつのキャロットクッキー、一緒に食べてからにしよっか?」
シスルは俯いたまま、膝の上に置いた手を固く握り締めていた。立ち上がる気配はしない。ニユロハスは残しておいたクッキーの包みと飲み物だけを取ってくると、机に置いて、もう一度シスルの隣に座った。
「どうしたんだよぉ、シスルちゃん。君はいっつも口達者で、泣いちゃうときも悲しくて悲しくて、わーって怒っちゃう子だと思ってたのに。私の前では、遠慮しなくたっていいんだよぉ? 我慢したくなかったから、ここまで来たんじゃないのかなぁ?」
顔を覗き込むまでもなく、シスルがゆっくりと顔を上げた。涙を溜めた瞳が、どうして、と尋ねている。ニユロハスは手を伸ばして、小さく震えているシスルを愛おしく抱きしめた。
明るい気持ちのお裾分けにはまだ早い。ニユロハスは声のトーンを落として、完全に閉じ込めてしまわないようにだけ気をつけながら、腕に力を込めた。
「ふふぅ、エンタメ部門のゲートキーパー、ニユロハスさんを舐めてもらったら困るなぁ
……
なんてね? シスルちゃんのことは、まだまだ知らないことも多いけど、少しはわかってきたつもりだよぉ。ここまでよく頑張ったねぇ。私たちを頼ってくれてありがとう。大丈夫、ボスには私たちから上手く言っておいてあげるからねぇい」
「頑張ったって、なんだよ
……
、ワタシなんか、ぜんぜん
……
、オマエだって、なんにも、わかってないくせに
……
!」
くぐもった小さな声が、ニユロハスに抱えられた頭の下から聞こえてくる。
憤るような、ひどく苦しんでいるような、傷付いたような、悲しい声。けれど、激しくはない。シスルからこんな風に悲しみをぶつけられるのは初めてだった。
「ごめんねぇ。でも、シスルちゃんが話したくないことは、私、聞きたくないよ。わかったふりをしてあげるのも、違うと思うんだぁ。だから、今は、今のシスルちゃんの気持ちをそのまま全部吐き出して。取り繕わなくたって、私たちはシスルちゃんの味方だからねぇ」
「
……
そんなの
……
」
「信じられないかなあ?」
「
…………
ずっと、前から、知ってる
……
」
シスルはそれきり黙った。その言葉の意味を尋ねようとは思わなかった。信じてくれているのであれば、それで良い。
この場所は、シスルを受け入れる準備がいつでもできているということを、シスルは知っている。
けれど、それを受け取る気は、これまでも、きっとこれから先も、ないのだろう。
それでもこうして、時には交差する時間もある。誰しも、心と覚悟を決めている道の途中だって、時には座り込みたくなることも、寄り道をしたくなることも、引き返したくなることも、故郷に帰りたくなることもあるだろう。
そのひとつの選択肢として、シスルの中にこの場所が存在するのなら、それでいい。
「シスルちゃん、どうしよっかあ? トゥルータくんが来たら、何かしてほしいこと、ある? 私のショーに飛び入りゲストとして引っ張り出して、ひとつ素敵な踊りでも披露してもらっちゃおうかなあ?」
一発入れてもらうだとかそういう物騒な話はガード部門に任せるとして、エンタメ部門としての制裁を仮定する。暫くの沈黙のあと、小さな笑い声が聞こえた。
「
……
ふ、ふふ、なんだよ、それ。へんなの
……
。トゥルータじゃ、真っ赤になって動けないだろうね」
シスルは想像だけでおかしそうに笑っていて、ニユロハスは内心安堵した。深刻な喧嘩をしただとか、何か傷付けられるような出来事があったとか、そういうわけではないように感じられた。
「そこでシスルちゃんにエスコートしてもらうって流れで。ね!」
「かわいそうだろ。べつに、そんなことしてもらわなくたっていい。たっぷりのバターで焼いた目玉焼きとベーコンでも食べてもらうから」
「それもそれで、しんどそうだねぇい。うん、でも、そうだよね! お菓子の国では食べられないもの、私と一緒にたくさん食べよっか!」
「
……
仕事は?」
「いいのいいの! ボスには上手く言っとくって言ったでしょ。ゲートキーパー舐めないでほしいなぁ?」
「だめな上司
……
」
「いつでもどこでも気を張りすぎ、頑張りすぎじゃ疲れちゃうでしょ。私たちはずっと舞台の上にいるわけじゃない。ずっと全力でいなきゃいけないわけじゃないんだから。そのこと、シスルちゃんも忘れちゃダメだからねぇ?」
「ん
……
、わかってるよ」
シスルの涙の跡を拭って、簡単な化粧を施す。何が食べたいか聞くと、シスルは少し考えてから、
「あの人の作るものなら、なんでもいい」
と言った。
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