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かいえ
2025-03-17 22:14:16
15913文字
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【灰武】続灰谷村
「灰谷村」
https://privatter.me/page/67d6d893ac3f4
の続編
人外灰谷兄弟×人間武道
15,902文字
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「武道を六本木のマンションに連れて行きたいんだけど」
本館に全然現れない竜胆を探して離れにやって来た蘭に、竜胆は詫びる事もなく唐突にそう切り出してきたから、蘭は「ハァ?」と、怒り気味の声を出した。
締め切った竜胆の部屋の中は、若い雄の香りで充満している。竜胆のベッドで眠っているのは武道で、シーツから覗く武道の肩は素肌だ。武道が何も身に着けていないのは想像に難くない。問いただすまでもなく、竜胆がこの部屋で何をしていたかは一目瞭然だった。
長老たちとの会合をすっぽかしてまですることかと思ったが、蘭が怒っているのを承知で、武道を外に連れ出したいなどという突拍子もないことを言ってきたのなら、それ相応の何かが起こったのだと、蘭は察するしかない。とはいえ、武道を外に連れ出すのは簡単に出来ることではなかった。そうでなくとも、儀式をもっとしろと望む村人たちを宥めるのも、今だってかなり骨が折れるものなのだ。
「あのさ、タケミチを村の外に連れ出すのは、あんまりいい事じゃないって、勿論分かってる。でもさ、ずっとこの屋敷に閉じ込めているのも息苦しいんじゃないかと思ってさ。屋敷の外に連れ出したとしても、そこら中に村人の目があって、気分転換にならないんだよ。全然気が休まらないんだ。だから、たまには気晴らしさせてやりたいんだよ」
竜胆の要望を聞いて、蘭はどうしたものかと黙り込んだ。
タケミチはようやく見つかった二人の×××だ。儀式の翌朝も死なず、子を孕み産んでくれた本物の×××だ。待望の子供を授かることができて、ずっと苛立っていた村人たちの気持ちが少しは収まってきたこの時期に、普段と違う行動を起こすことで、変に刺激を与えたくないというのが蘭の本音だった。
この村には蘭が結界を張っていたから、外部の人間が通常は入って来られないようになっている。だから、この村の中にさえいれば、何の問題も起こることはないのだけれど、結界の外に武道を連れ出すとなれば、話は違ってきてしまう。武道が結界の中にあるこの村に来られたのは、正に××の導きによるものだ。そこに武道の意思はない。だから、村の外に連れ出すということは、何かしらの問題が起こる可能性は否定できない。武道が村の外でどのように生きてきたか知る由はないが、親兄弟がいるだろうし、友人などもいるのだ。突然姿を消して、探していないわけがない。だから、そこは慎重にならざるを得ないのだ。
「ほら、昔はオレも息抜きでよく六本木へ行かせて貰ったじゃん? オレ、あれがあったから、この閉鎖的な村でも過ごせたんだと思うんだ。だから、タケミチにだって、たまには外の空気を吸う必要だと思うんだけど
…
ダメかな?」
今となっては昔の話ではあったが、竜胆は村人から疎まれていた過去があった。それは、先代が一人も村人に子を与えずに早死にした怪を、代々一人しか生まれない跡継ぎが、二人現れたことが原因ではないかと考える村人たちが少なくなかったからで、その怒りの矛先は、蘭より後から生まれた竜胆に向けられたのだ。
蘭は憎悪の目を向けられる竜胆を不憫に思い、六本木に家を買い、社会勉強と称して時々竜胆を村から連れ出していた。竜胆はそこでようやく外の世界を知り、誰からも疎まれない環境で自由を満喫し、日ごろの鬱憤を晴らした。
そして、目の前にいる竜胆は、あの頃のように追いつめられているように蘭の目に映っていた。武道が心配だから村の外に行きたいと言いながら、実際は竜胆が限界なのかもしれないと蘭は思った。
「あいつら、タケミチのことなんてどうでもいいんだよ。今だって十分無理させているのに、これ以上のペースで子を産ませるなんて、無理に決まってるだろ? タケミチは人間なのに、あいつら全然分かってねぇし」
竜胆が言うように、村人からの要求は際限がなかった。蘭に対しても、もっと子を作れと言う圧力が半端ない。今日の長老との会合でも、ちくりと遠回しに嫌味を言われたことからも分かる。
先代の件があったせいで、村は存亡の危機に直面しているのは確かで、その村人たちの焦りを蘭だって重々承知していた。このまま人口が減少していけば、確実に村は終焉に向かう。だから、仕方なく半年に一度儀式を行い、武道に子を産ませていた。×××に子を産ませるのは、本来なら一年に一人の慣例を、蘭は既に破っているのだ。
それは、一か八かの賭けであったが、武道は今のところ精神に異常をきたすこともなく、体調も問題なく過ごしていた。けれども、無理をさせているのは間違いなく、武道がいつおかしくなるかなんて、蘭にだって分からないことではあった。
今までの×××候補は、儀式の後の初夜の翌日に、全員気が狂って死に至った。竜胆はきっとそれを思い出して、武道がいつかそうなるのではないかと、不安に苛まれているに違いなかった。いくら、武道が××選ばれた×××であったとしても、肉体は人間のものしか持ち合わせていない。人間が××の子を孕むのは、そもそも危険な行為であるというのに、村人たちは武道の負担など全く考えていないのだ。
そこが、竜胆が危惧するところであり、憤懣やるかたないところだというのは、蘭もよく理解していた。
しかし、今までの×××候補は、自分たちではなく、村人が連れて来たニセモノだったから起こったことだと、武道を手に入れた時に蘭は分かってしまった。それくらい、武道は他の×××候補とは別物だった。最初こそ、蘭は武道を×××だと見分けられなかったけれど、交わった瞬間、この人間こそが、自分たちの唯一無二の×××だと知った。
蘭が竜胆ほど武道の心配をしないのは、何故か大丈夫だという謎の感覚が蘭にあったからだ。そして、この感覚は、竜胆には無いのだと、今改めて蘭は知った。最初に武道を見つけたのは竜胆なのに、この感覚が竜胆には無いのだと、蘭は不思議に思うしかない。
けれども、こんな風に、蘭と竜胆で役割が振り分けられていることを知る度、自分たちはやはり二人合わせて××なのだということを蘭は実感した。そして、大切な×××を失うかもしれないという恐怖と戦っている竜胆のことを慮った。
蘭だって武道の事は竜胆と同じくらい愛おしく感じていて、武道が居なくなる事など考えられない。従って、武道を変わりがある使い捨ての駒のように考える村人の傲慢な態度と欲深さに、吐き気がするのは蘭も同じだった。
「分かった。そのかわり3日だけだ。オレも同行する。それでいいな?」
「うん。それでいいよ。ありがとう、兄貴」
竜胆はそう言って嬉しそうに笑ったから、蘭はホッと胸を撫で下ろした。武道の事ももちろん大事ではあるが、自身の半身である竜胆は、何者にも代えがたい存在だった。武道に息抜きは必要だと竜胆が考えるように、竜胆にも必要な事なのだと蘭は思っていた。
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