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Hizuki
2025-03-13 22:42:48
6910文字
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あんスタ[零薫他]
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Oblivion
【あんスタ】零薫。とある記憶がない薫の話。アイドルをしているものの、別世界観でのパロ話なので、P.1に簡単な説明あります。やや暗め。何でも大丈夫な方向けかも。覚えていたくても、忘れられたくなくても。
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「どうしたの?今日は甘えたい気分?」
素肌のまま互いの熱と欲に触れて、呼吸を落ち着かせた頃。ベッドに座る薫くんの背中に顔を埋め、腕を回して力を込めた自分に、彼は優しい声で問う。確かに自分からこんな行動を取ることは少ないから、そう思ったのかもしれない。何も言わない自分の腕の中に収まっている薫くんは、ゆっくりと腕を撫でてくれている。とはいえ、甘えたい、とは少し違うこの感情をどう説明したものか迷って、そのまましばらく口を噤んでいた。
「
…
のう、薫くんや」
「なぁに?」
意を決して名前を呼べば、柔らかい返事が返ってきた。
「忘れられる、というのはどんな感じなんじゃろうな」
浮かんだ疑問をそのまま投げかければ、少し困ったように唸る。
「う~ん
…
そっち側の感覚を知ってたら、俺はここにいないよ」
「
…
そうじゃな」
忘れられるのはこの世から去った後なのだから、それを知っている者は誰もいない。生きている人間同士でも忘れること、忘れられることがあるにしても、それはまた意味が違う。
ただ、薫くんは『忘れた側』の感覚を知っている。母親の話題を尋ねた今日の夕方、その時に話してくれた通りだ。何も思い出せない、分からない、と。
「でも、やっぱり寂しいんじゃないかな」
寂しい、という感覚は自分でも分かる。一番分かりやすいのは、長期間薫くんに会えない時だ。互いに事情があって仕方がないと分かってはいても、そう感じる時はある。もし、自分がそうなった時に、それが永遠に続くことに耐えられるのだろうか。いや、そうなった時にはもう自分の意識はないのだから、耐えるも何もないのだけれど。
「薫くん、噛んでもいいかえ」
「え、いきなりだなぁ?理由は?」
薫くんが戸惑うのも無理はない。これまでの話と結びつくところが何もないのだから。流石に傷が伴う行為を相手の許可も得ずにすることはできなかった。
「
…
痛みと記憶が結び付けば、忘れられずに済むかと思って」
短絡的なうえに、確実でもない理由を小声で告げる。忘れられたくないという願いを込めるのに、相手に負担をかける行為。吸血鬼の一族という、自身の生まれ故にできることでもあった。
「またそういう突拍子のないことを
…
」
その声には呆れが乗りつつも、笑みが混じっている。確認することはできないけれど、きっと瞳は伏せられているのだろう。
「っていうか、自分がいなくなることを前提にしないでよ。
…
逆だって、ないわけじゃないんだから」
自分の腕を撫でていた薫くんの手はいつの間にか止まっていた。代わりに今度はぎゅっと力が込められている。
「
…
俺だって、零くんのこと忘れたくないし、零くんに忘れられたくないし」
「薫くん
…
」
同じことを恐れるように声が揺れていた。薫くんに言われてその通りだと気付く。自分達がステージの上に立つのは、障壁の中だけではない。軍に招集され、死と隣り合わせの場所が舞台になることも多々ある。薫くんが自分のことを忘れてしまう可能性と共に、逆のことが、自分が薫くんのことを忘れるという可能性がないわけではないのだ。
「でも、噛むのはちょっと待ってほしいかな」
自分の望みに待ったをかけた薫くんは、手を解くと身体を捻って顔をこちらに向けた。
「噛んでも絶対記憶が残るわけじゃない。だったら、まずは今の俺の記憶に零くんをしっかり残してよ」
もっともなことだった。どうなるか分からない未来の心配をするよりも、すぐそばにある今に心を傾ける。間違いなく薫くんは今自分の目の前にいて、答えのないことを問いかけた自分をちゃんと記憶してくれているのだから。
「全く
…
薫くんには敵わんのう
…
」
「わっ!?」
自分が力を抜いて後ろに倒れるのに合わせて、薫くんの腕を引いた。バランスを崩してそのまま自身の身体の上に覆い被さられるような体勢になる。
「薫くん、どうか我輩を覚えていておくれ」
触れ合う肌が、薫くんがそこにいることを伝えていた。今、確かに感じている熱は2人の記憶に刻まれている。
「
…
零くんもね」
互いに伸ばした手が輪郭に触れる。どちらともなく顔を近付けた唇が重なった。
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