【カグ東・カミ東】逆さまあべこべ真っ逆さま【東ツヅ】

「お前が私の地獄を分からないように、私もお前の地獄が分かりやしないさ」
捏造過多。ノリと勢いでどうぞ。
※44話までの要素含みますご注意。
2025/3/11 45話読了。45話読む前にこの妄想幻覚の類を出力できて本当に良かった(真顔。





短期決戦であればいい勝負をする東雲とカグラ。が、体力に物を言わせる持久戦に持ち込まれればまた話が変わってくる。
「ほらほら♡ 薫ちゃんへばってるゥ~♡」
ッッるっせ!!」
それでも意地で食らいつく東雲と二人の世界に酔いしれているカグラ達をとっくにギブアップしたツヅミとスズはさも「頂上決戦! どちらが最強メスゴリラに相応しいのか!?」を肩で息をしながら眺めていた。
ビーチパラソルの涼しい影の下。水分補給でペットボトルを半分近く一気飲みしたスズが自分の隣に体育座りで座るツヅミの遥か遠くを見つめる眼差しを追った先、分かり切っていた必死こいて動き回るプリン頭が視界に入り、程なくしてペットボトルがくしゃりへこむ音を耳が拾うもスズは視線を向けやしなかった。

──嗚呼、私も頑張ってもっと強くならなきゃ……

「(って、思ってんだろな。アホくさ。あのレベルまで達したら人間辞める事になんぞ。それにあんたの強さはそっちじゃないっての)」
「ねえスズ」
「なに。メスゴリラはあの二人で一生間に合ってから、ツヅミ姉ぇまでなりたいって言わないでくれる?」
抑揚のない興味薄な声音でぼやくスズに視線を戻したツヅミが丸い瞳がさらに大きくなったあとぷっと噴き出した。
「はははっ。そっかそっか。じゃ違うの探さなきゃ」
「出来ればこっちサイドでいてくれよ。……ずっと」
茶化す物言いから一変、トーンの落ちた何処か寂しげなスズの言葉尻にツヅミは穏やかな顔で柔く微笑んだ。
手入れの行き届いた艶めいた髪が俯いた顔を隠しているお陰でスズが一体どんな顔をしているかツヅミの方から確認できない。
されど、頭の形に添って撫で静かに自分の肩へ寄せるツヅミに煙たく嫌味を零すスズであったが、撫でる手も引き寄せる力を振り解こうとはしなかった。
「(あ~ぁ。素直になれない自分にホント嫌になる)」
一族の大概が扱いさえ間違えなければ体のいい悪霊を使役する”次男”扱いする中、奇異の目やおべっかを使わないで”スズ”として唯一姉らしく傍に寄り添い優しくしてくれたツヅミがスズは面と向かって言えない程大好きで。
己より秀でた才の一つや二つあれば多少溜飲が下がったであろうに、残酷なくらい何一つ無くそれでも父親から特別視される妬ましさで首を掻き毟る程大嫌いだった。
眼鏡を兄と選んでくれたのが純粋に嬉しかった。だが、父の目の半分を奪った眼鏡を掛けている自分を自慢してるのか、と嫉妬した。そう嫉妬してしまったのだ。
「(……ツヅミ姉ぇがそんなことする性格じゃないっての僕が誰よりも知ってんのに)」
つい最近の苦々しい記憶がスズの脳裏を駆け巡る。
マトリョーシカに五重に封印した呪物をパクった犯人がツヅミかもしれない猜疑に失望した以上に、スズは寮に戻って来ないツヅミが何処の馬の骨とも分からない素性すら謎の悪霊を手懐ける”言霊使い”と随分親しげにしているのが心底許せなかった。
「(そんで八つ当たりとかホッッッント可愛くない)」
堪りに堪っていた鬱憤を幼子よろしく喚き散らした挙句、苦手な土俵でコテンパンやられた上に東雲の逆鱗に触れ強かに背中を打ち気絶する。中々の恥の上塗りっぷりにスズは改めてげっそりした。
スズ? あれ、もしかして気持ち悪い?!」
わたわた慌ててクーラーボックスの中身を漁るツヅミを肩越しにスズは首を捻って眺めふと思案に耽る。
「(風当たりはあんたの方が全然キツいってのにどうして──)」
分け隔てなく何てことないようにあたたかく接してくれるのか。
殆ど抵抗する間もなくツヅミの流れる所作で彼女の膝上に後頭部を乗せられたスズは、前髪をかき分けられた額に凍ったペットボトルを当ててくれるツヅミの心配そうな顔を見上げフッと和らぐ気をまだ上手く認められずにつっとそっぽを向き。
「あ、ありがと
素っ気なく礼を尖らせた唇で述べた。



──そんな仲睦まじい二人の様子を気配を押し殺して傍で見守っていたカミキリの瞳に宿る慈愛の色が手品師も真っ青な速さで蒼い炎が灯る。
「だーっ!! 休憩ッ休憩ッッッ!!」
「お疲れ様です東雲さん」
ドッスドス砂をまき散らしてビーチパラソルに近付く東雲からカミキリの目が片時も離れる事は無かった。
それは何故か。
シャツの裾を持ち万歳する要領で脱いだ途端、ほぼ下着と大差ない布面積を誇る東雲の上品な胸のシルエットがはっきり分かる黒ビキニが現れたからだ。
雑に脱いだTシャツをブルーシートの一角に放り投げ、ツヅミから受け取ったペットボトルをべこべこ鳴らして飲み干す東雲を同じく屈んだ状態で水分補給するカグラの熱視線が隈なく彼女を舐る。
「おっほ♡ 大胆だなあ薫ちゃんは♡」
「っせ! こっから本気出すんだよっ! ほ・ん・き!!」
苛立ちを隠す気なぞ毛頭ないらしく飲み干したペットボトルを一気に握り潰す東雲の手から無残な姿になったペットボトルを受け取り、逆にへこみ一つない綺麗な空のペットボトルをカグラから投げ渡されたツヅミは双方の間で飛び散る火花を膝枕介抱しているスズを気に掛けつつ。
「二人とも頑張ってくださいっ」
と、渾身のエールを送った。
「ぐぬぅ。絶対ぇ勝つ!!」
チーム戦の手前どちらか片方だけを応援するわけにはいかない、そんなツヅミは何一つ間違っちゃいない間違っちゃいないが胸にモヤついた気持ちを吹き飛ばすべく東雲は勝利宣言を叫んだ。
「臨むところ♡ さっ、はやく二人っきりのコートに戻ろ? 負確薫ちゃん♡」
目の中にハートを描き色黒の肌を興奮で紅潮させ煽るカグラに東雲の奥歯がギリィと軋む。
下手しなくても頭の血管数本ブチギレてる東雲の視界端、おずおずと今し方脱ぎ捨てたTシャツが綺麗に折り畳まれたシャツを両手で持っているカミキリの姿が入った。
……あの大家さんシャツ脱がナいでホシい
目線を下に落として一向に交わさない今にも消え入りそうな声で話すカミキリの言葉に東雲の瞳が豆粒と見紛うばかりに窄まる。
事実気が昂っている状態で冷静な判断を下せる訳もなく、加えて咄嗟に飛び起きたスズが東雲の中で燻っていた誤解の火種に油を豪快に注いだ。
「おいコラッ、東雲薫! その粗末な体晒してんじゃねえあだだだだだッ!!!」
ノールックでスズにアイアンクロウをキメる東雲の面貌は伍段階が可愛く見えるほど畏怖に染まり、事を穏便に収めるため腰を上げたツヅミに気付かないくらい怒り心頭に発していた。
頭蓋にめり込む五本指の圧にスズの手が何度東雲の腕にタップしても彼女は止める気配がない。
「誰が粗末だゴルアッ!! あんだあ? カミキリさんも私のナイスバディにケチつける口か? あ゛あ゛ん?」
まだ直接的な物言いをしていないものの事と次第によってはただじゃおかない、と東雲が微かに動いているカミキリの唇を凝視する。
ポイから」
「あ゛?」
すぐ間近で痛みに悶絶しているスズにかき消されてしまい良く聞こえなくて顔を寄せる東雲の気配にカミキリの少年から男としての片鱗を見せつつある肩が跳ね上がる。
そして、カミキリはその色白の肌が日に焼けるにしては不自然なくらい急激な速さで肩口から頭の天辺まで熱が駆け上り、二度三度開閉をくり返した唇に言の葉を乗せた。

「東雲さんすごく色っポイ目のやり場困ル……

まさに蚊の鳴くような消える間際の声。
差し出されたシャツと初心な反応をしているカミキリを交互に見つめ、彼の手からシャツを受け取る頃にはすっかり東雲から怒りの感情が消え去っていた。
「・・・そっかそっか。んじゃ仕方ねえなあ。カミキリさんには刺激が強すぎんなら着るしかねえなあ」
いそいそTシャツを着る東雲にようやく解放されたスズをツヅミが受け止め甲斐甲斐しく世話を焼きだすのを余所にカグラは一人静かにそれぞれの様子を値踏みする。
「頑張っテ」
「おうッ」
僕の、大親友の、目を穢すなァ
「ス~ズ、そんな失礼なこと言っちゃダ~メ。メッ」
「(──はいはい。なるほどなるほど)」
合点がいった。腑に落ちた。憶測や推測に確証を得た。
誑し要素を持っている当人が他者からの好意に鈍感なのは往々にしてあり、良くも悪くも軋轢と乖離を産み出す切っ掛けを孕んでいる。それがなんとまあ綺麗な一方通行具合にカグラは肩を回してやる気を充填させている東雲に数歩遅れる形で追い、コートに入る間際周囲の者に悟られぬようコートを囲む結界を展開させた。

「シャッ! 来いッ!」
何処撃ち込まれても拾ってみせる気概を放つ東雲を一瞥後、先程の気迫や勢いの一切合切を横に置き十二分体力のない常人でも緩く楽しめる程度の力でカグラは放物線を描くように相手コートにボールを打った。
「んなっ?! オイッ、真面目にやれ!」
脊髄反射で東雲もまた波打ち際でビーチバレーを興じる女学生並みの力で打ち返してしまい、自分自身の行為に憤りを覚えるのと共に真剣勝負する気のないカグラに眉間のシワが深くなる。
「真面目にやってるさ。もっとも今度は、ボールじゃなくて言葉のラリーに変わったってだけ」
「は? なに主旨変えてんだ。私は下りるぞ」
「──周囲に聞かれたくないってんなら安心しな薫ちゃん。私達の声は誰にも届かない」
カグラが顎で示す方向、砂に埋もれた札を目視した東雲は肩で息を吐き緩いボールをこれまた緩い力で相手コートに戻した。
「ちなみにお前は科学的根拠に基づいて”アレ”説明できんの?」
「ダーリンが望むならば明々後日の明朝まで夜通し語っちゃう♡」
……遠慮しとくわ」
自分で言っておきながら辟易する東雲の愚か可愛さにカグラは昂る想いをボールに込めるのを必死に宥め賺し打ち返す。
「で、お前は妹その壱を自分らの母親にしたいって言ってたが改めて如何いう意味か教えてもらおっかな」
「どうもこうも……。そのまんまだよ、ツヅミママは私達のお母ちゃん管理人になってもらうっての」
ポーン、と軽くネット超えるボールを揃えた腕の内側で打ち上げた東雲の発言にカグラが小首を傾げ言葉を選ぶ。
「つまり──、本気でいい年こいた大人達が寄ってたかって年端のいかない未成年女子相手に母親代わりをさせる、ってこと? うわァ流石のカグラちゃんもドン引き案件」
「姉弟三人嫁に差し出すって言ったテメェにだけは言われたくねえよっ?!」
動揺を隠せず平静を装い切れなかった東雲のコートに子供でも余裕でキャッチ出来るボールが無情にもポスっと落ちた。
名状し難い感情が渦巻く東雲からボールを受け取ったカグラは意気揚々とサーブを打つ。
「自分の常識や感性が相手や社会から見れば非常識で異常なのを理解すべきだぜ薫ちゃん♡」
……そういうお前はどうなんだよ」
「そりゃ勿論周りに排他されるのを理解した上で力でねじ伏せている。私は知性なき獣じゃない知性のあるただの人間化け物ってね」
「バケ、モノ
「そ♡」
東雲以外の者であれば壮絶な笑みを称えるカグラの悍ましい風貌に身の毛がよだつ思いをするところだが生憎東雲はカグラに怯えやしない代わりにボールを敢えて見逃した。
なに。憐憫? 同情? そんなの要らないからもっと熱い視線私におくれよ♡」
カグラの猫撫で声に東雲は凪いた表情でボールを拾い、ネット前で其処らの男より余程体躯のいい体を揺らしているカグラにボールを押し付け顔を仰いだ。
「それって演技か。わざと正気を失ってんのか」
詮索ではない真直ぐ見据える東雲の目の奥にチラつく見知った気配。正しさに捨てられ優しさに見放された者が諦観に彩られ澱むも生きるしかない、そんな鏡合わせの姿にカグラはわざとらしく人差し指を口端に当て首を傾げた。
「んー、薫ちゃんとの不毛なやり取り嫌いじゃないけど今は気分じゃないかな」
「そうかい」
東雲に押し付けられたボールをカグラがサーブ位置に向かって放り豪快にバク転をしながら器用にコート端にボールを叩き込む。
緩すぎるボールに慣れていた反動で東雲の動体視力が追っつかなかった訳ではなく、かと言って疲労が足に溜まってしまい動きたくても動けなかった訳でもない東雲にカグラがネットを潜り敵陣地に足を踏み入れるや否や彼女のシャツの胸ぐらを掴んだ。
「問題無く反応出来たのに無視するなんてツレねえ事すんなって。興奮させてくれや」
「お前がしたくねェって先に言ったんだろうが」
? あっ! 言った言った」
ボールのラリーではなく言葉のラリーになったからこそ、東雲はカグラの言った事を律儀に守る姿に胸ぐらから手を離した。
微かに浮いていた爪先が砂に着地した東雲はボールを受け取ったときから目をカグラから逸らさずに見続ける様にカグラの方が負け目を逸らしてやたら大きな独り言を言い始めた。
「私は生い立ちや性的嗜好に負い目や恥を抱いた事は無い。まあ、薫ちゃんのは軽蔑視すっけどさ」
「オイ」
ドスの利いた東雲の突っ込みを物ともせずにカグラは語り続ける。
「でも、そんな特殊性癖を曝け出して拒絶しないどころか受け止めてくれる相手って滅茶苦茶貴重だから絶対逃がさない方がいいってアドバイスを肝心要が甘々マイプティングちゃんに授けよう」
「んだよそれ」
全くもって度し難い表情を浮かべていた東雲が試合終了のホイッスルを合図に駆け寄るツヅミを見て顔を綻ばせ、駆け寄るツヅミもまたカグラ自身見たこともない笑顔を弾けさせる様子に所なさげに潮風と砂でキシキシになった後頭部を無意識に掻いた。
「(羨ましい、か)」
東雲に対してか、はたまたツヅミに対してか。確たる答えが出ないまま、結界を解きコートから出ようとしていたカグラの手を東雲が掴み留まらせた。
「負けは負けだし、約束のしてやんよ」
若干致し方ない感が漂う東雲が人差し指と中指を揃え自身の唇に触れさせたその二本を爪先立ちを駆使して気持ち猫背になっていたお陰で届く高さになっていた彼女の唇にふにっと押し付け、いたずらっ子のように笑った。
「キスはキスだかんな。ナハハッ」
出し抜けにされたカグラは東雲の指の感触が残る己が唇を固い皮膚に覆われた両手を合掌させその窪みに埋め目の中に沢山のハートを浮かべた。
「薫ちゃん♡ やっぱり私のこと嫁にもらわない?♡」
「もらわない」
「遠慮すんなって♡ ネ?♡」
「しつこいっ!!」
恍惚な表情で東雲を追い掛け始めたカグラと、「こうなるんだったらしなけりゃよかった~!!」なんて後悔先に立たないのを嘆き走り去る東雲の背中に「ビーム出せ大家~」と野次を飛ばす有希達に向かってツヅミは頗る暢気な声で。
「お夕飯までには戻ってきてくださいね~」
手をメガホンにして言う様子をスズは目頭を揉み解して言いたいけど言ってはいけない言葉を気合で飲み込み。
ツヅミと本日一緒の夕食当番であるカミキリはやる気で頬を朱に染めて、東雲(達)に美味しい料理を振舞うべく小さなガッツポーズを胸の前でしたのだった。