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nuka_boshi
2022-11-25 19:02:51
11172文字
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すとぼ関連
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【StoryBox派生自己解釈二次】ガラクタのアトリエ【すとぼ二次創作】
StoryBoxシリーズ十周年のお祝いに書いてしまった独自解釈に基づく楽曲『メモリア』の小説です。救いは……救いはどこですか……。
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記憶を失った僕へ
記憶を失くしてからの事を考えて、それから心の整理をする為に、この手紙を綴ります。あなたは、今の僕は、彼女のことを少しでも覚えていますか? もし覚えていたらこの手紙はそのまま元の場所へ片付けてください。
まだ読んでいるという事は、やはり僕は記憶を失くしてしまったのですね。ほんの少しだけでも記憶があれば、もしかしたら彼女をこれ以上傷つけずに済むのではないかと淡い期待を抱いていたのですが。
僕には、好きな人がいました。彼女は、本当に優しくて、良い子で、誰よりも愛おしい女性です。ですが、彼女は罪を犯しました。といっても彼女自身に非はありません。彼女は悪意ある周囲の人間に利用されただけで、純然たる被害者です。それだけは忘れないでください。
魔女は彼女に贖いを求めました。代償として、彼女の命を差し出さねばならなくなりました。
僕はどうしても彼女を助けたかった。だから、その為ならなんだってやってやるつもりで魔女に契約を持ちかけました。彼女の代わりにどうかこの僕を殺してくれと。
どこか苦しそうな魔女は、或いは誰かの命を奪う事に疲れていたのかもしれません。だから、僕は彼女の代わりに彼女に関する記憶を奪われるという内容の契約をしました。そうです、僕の記憶の欠落は、その契約によるものです。
僕はこの選択を全く後悔していません。彼女が生きていられるならばそれで良かった。それだけで本当に、本当に良かった。
でも、それ以外のことでは、とてもたくさんの後悔があります。
もっといろんな思い出を残したかった。もっと色んなことを話したかった。もっとたくさん好きだと伝えたかった。もっとたくさん、彼女の笑顔を見たかった。本当に、キリがありません。
僕は、今日の夕方、リンにもう二度と僕に会いに来ないように頼みました。そうでなければ、優しい彼女は何も知らない僕の姿を見てきっと傷ついてしまうからです。
だけど、もし。もしそれでも、リンが僕に会いに来たのなら。今の何も知らないあなたに会う為に、このアトリエに訪れたなら。
その時はどうか、リンのことをよろしくお願いします。
泣かせないでほしいと頼むのが筋違いなことはわかっています。だけど、せめて彼女の涙が少しでも少なくて済むように、優しく接してあげてください。無茶なお願いなのはわかっています。でも、あなた自身の為にも、どうかお願いします。多分、僕は記憶を失ってもきっといつかリンを好きになってしまうから。
僕は沢山の後悔を彼女に遺してしまいました。だからあなたは、全てを忘れてしまった方の僕は、どうか少しでも後悔しないように祈っています。彼女とやりたいこと、彼女の為にやってあげたいこと、きっと沢山出来ると思います。なるべく沢山のことをして、たくさんの思い出を作ってください。リンの中の悲しい思い出よりも沢山の、楽しい思い出を作ってあげてください。なんて、これは流石に今の僕の願望が入りすぎましたね。あなたの思うようにしてください。
最後に。僕はずっと彼女が好きでした。彼女の明るい青色の瞳が好きでした。陽にあたってキラキラと反射する、綺麗な
黄金
きん
の髪が好きでした。しっかり者の彼女の、楽しげな笑い声に心が弾みました。僕の絵を見て自分のことのように喜んでくれる彼女を、愛していました。だから、何度でも書きますが自分のした事に後悔はありません。
僕は彼女に出会えて幸せでした。
「
……
今更すぎるよ」
涙で滲んだ跡をいくつも残した手紙の文字を最後まで目で追って、少年は大きく息を吐き出した。
やがて、その手紙を丁寧に折り畳むと、最初に置いてあった通りに引き出しの奥にしまう。
今日もアトリエには、無数の絵画が飾られている。そこにはひとつとして片付けられた絵画は無い。
――
全て、元通りに飾られている。
いつのまにか開けてあった窓をそっと閉める。外から入り込んだ海風が、絵を痛めてしまったら大変だ。
それが少年にとっては意味を為さない絵画でも。きっとガラクタなんてひとつも無いと、もう知っているから。
《おわり》
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