かいえ
2025-02-23 17:53:15
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【灰武】派遣先のものすごく怖いのに格好良くて綺麗な兄弟に迫られて困っています! ①

ハウスキーパー見習いの武道が、派遣先の灰谷兄弟に迫られる話
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 帰宅した後も、その翌日も、派遣元からの連絡は特に無かった。武道は、いつ蘭からクレームを入れられるだろうかと、冷や冷やしながら週末を過ごした。そのまま何もなく、翌週の訪問日に予定通り灰谷邸を訪問する事になった。
 玄関扉の外から扉に耳を当て内部を伺う。もちろん防音仕様なので、室内の音が聴こえる訳は無い。何となく気休めでやってしまっただけだ。
 いつものように合鍵を使って扉の内側に入る。室内は何の物音も無く無人の気配だった。一先ずほっとして、それから音を立てないようにそっと閉めて鍵をした。最近は竜胆が出迎えてくれるのが当たり前になっていたので、誰もいない玄関が不思議に思えてしまった自分に驚く。いたら面倒だといつも思っていたのに、竜胆がいないという事実が、武道を心細く物足りないような気分にさせていた。
 忍び足でリビングに入り、誰もいない事を再度確認する。背負っていたリュックを下ろしてリビング全体見回した。人気のないリビングは殺風景だ。本当に竜胆は不在なのだと実感して、もう強引に遊びに誘われなくて済むと気が楽になった反面、あんな風に竜胆と会う事は無いのだと思うと、何故か胸の奥がツキンと痛んだ。今日ここに竜胆がいない事が、兄の蘭の意思なのだ。弟と使用人が一緒に遊んでいたのだから、怒られても仕方がない事だ。クビにされなかっただけ、ありがたいと思わないといけないのは、武道にも分かっていた。
 あの日、竜胆が「絶対タケミチがクビにならないようにするから」と、言ってくれたのを思い出す。武道が例外でクビにならなかったのは、きっとあの後竜胆が蘭と話を付けてくれたに違いなかった。
 そう思い至って、涙腺が緩みそうになって焦る。竜胆に凄まれると怖かったけれど、思い返してみれば、怖いより優しかった思い出が多かった。そうして、胸の奥が再びツキンと痛んだ。
 竜胆が頑張ってクビにならないようにしてくれたのだから、自分も一生懸命仕事をするしかないと武道は思った。悲しくて仕方がないけれど、そもそも、顧客と仕事終わりに遊んでいた事が異常だったのだと、自分に言い聞かせた。それに、ここで働かなければ、一生出会う事も無い人種だったじゃないかと思う事にした。そうやって慰めないと、現状を寂しいと感じる事が何故なのか、武道本人にも分かっていなかった。
 久しぶりに竜胆に邪魔されず作業をしてみると、想像以上に早く仕事を終える事が出来た。もう三ケ月以上同じ内容の仕事をしているのだから、当たり前かもしれなかったが、自分自身で成長を感じられて、武道はすごく嬉しくなった。
「タケミチ」
 リビングでゴミを集めていた武道は、背後から声を掛けられて、びくっと身体を震わせた。
「俺だよ、竜胆だって。驚かせて悪かったな」
 振り返ると竜胆が立っていたから、武道は目を見開いた。もう二度と顔を合わす事が無いと思った相手だ。
「いえ大丈夫です
 本当は心臓が口から飛び出しそうだったけど、武道は無理やり笑顔を浮かべて誤魔化した。目の前に竜胆がいると思うだけで、足元から頭の天辺迄ぴりぴりと電流が走り抜ける。
「仕事終わった?」
「はい、終わりましたけど
 竜胆の次の言葉なんて、予知能力者じゃなくても分かった。
「この後、遊べる?」
「えっとでも
 案の定、遊びの誘いだったから、武道はどうしようかと思案に暮れた。今迄みたいに誘ってくれて嬉しい反面、本来なら付き合ってはいけない相手だと戒める自分もいる。竜胆と遊ぶのは面白いけれど、この間の事が結構トラウマになっているのは間違いなくて。正直、もう二度と蘭とは顔を合わせたくなかった。あの時のゴミでも見るような冷たい目を思い出すだけで、武道はゾッとしてしまうのだ。
「分かってる。ここではもう遊ばない。だから、別の場所に行こうぜ」
「別の場所?」
「そこだったら、兄ちゃん来ないからさ」
 結局、竜胆と一緒に遊びたいという欲望の方が勝った。自分の意志の弱さが恨めしい。了承した武道の腕を引っ張って竜胆が歩き出した。
そんな場所があるんですねと、竜胆と連れ立ってマンションの地下駐車場まで行くと、高級車の並ぶ駐車場の片隅にバイクが停めてあった。「ほら」とヘルメットを手渡されて、バイクの後部座席に乗るように言わた。どうやって乗るのか分からず突っ立っていると「もしかして乗った事ないの?」と、竜胆が意外そうな顔をして武道を見た。「乗った事無いっス」と素直に返せば「へぇじゃあ初めて乗るんだ」と、竜胆がニヤニヤして言う。
 しばらく揶揄われるんだろうなと、どんよりした武道だったが、竜胆は丁寧に後部座席への乗り方を教えてくれたからびっくりした。停めたままのバイクのステップに足を掛けでおっかなびっくり跨る間、竜胆はバイクが倒れないようにしっかり持っていてくれた。無事に乗れて良かったけれど、バイクの上は思ったより目線が高くなり何とも落ち着かない。二輪のせいか安定感も無く、どうしても変なところに力が入ってしまう。手を置く位置も分からず、座席の真ん中にある出っ張りを両手で掴んでみることにした。多分、絶対ここは持つところではないけれど、どうして良いのか分からなかった。少しでも身体を動かせば横に倒れていく感じが恐ろしくて、武道はなるべく動かないようにじっとしていたら、竜胆は武道の脹脛を優しく掴むと「足はここに置くんだ」と、ステップにそっと乗せてくれた。竜胆の優しさに武道はドキドキしてしまった。
 竜胆がセンタースタンドを足で蹴って外すと、不安定さは一段と跳ね上がり武道は生きた心地がしなかった。
 竜胆が座席に跨ると、竜胆の尻が邪魔になって両手が掴んでいた小さな突起部分は持てなくなる。どうしようと困っている武道を振り返った竜胆は「俺に捕まってろ」と、声を掛けてきた。武道がそっと竜胆の両肩に手を置くと、竜胆は「そこじゃねぇよ、腰だって。腰に手を回すの」とクスクス笑って言う。
 武道は竜胆に言われた通りに、今度は竜胆の腰にそっと手を回すと「もっとだって」と、竜胆は武道の腕を掴んで引っ張り、自身の腹の部分で腕が重なり合うように掴まらせた。そのせいでヘルメットを着けた武道の顔が、勢いで竜胆の背中にぶつかる。痛かった筈なのに「しっかり掴まってろよ」と言う竜胆は、何故か上機嫌になっている。
武道は「分かったっス!」と返事をしたが、内心は竜胆と密着しすぎて恥ずかしくなっていた。まるで自分から抱き着いているみたいじゃない? と。でも、そんなドキドキは、走行中のひやひやで吹っ飛ばされた。確かにしっかり掴まっていないと振り落とされそうで、後は早く目的地に着くことを祈るばかりになったのだ。
 バイクが停まった時、武道は竜胆の腰にしっかりと腕を回し、背中に張り付いた状態だった。竜胆に「手放して」と言われるまで、自分がどんな状態になっているかも分からなくなっているくらい無我夢中で抱き着いていた。羞恥心はどこかに吹っ飛び、緊張で変な力を入れたせいで、下半身の筋肉は酷使した状態になりぐったりしていた。竜胆に言われてのろのろと竜胆の腰から手を離すと、竜胆が武道の両脇に手を入れて引っ張り上げて下ろしてくれた事にも、武道は黙って身を任せてしまっていた。
「タケミチかわいい
 竜胆がぼそっと変なことを言っても、疲労でぐったりした武道の耳には届いていなかった。ようやく、安定した大地に生きて降り立つことが出来て嬉しさしかない。竜胆が手早くヘルメットを外してくれたので、武道は思いっ切り外気を吸い込んだ。
 てっきりどこかの店にでも行くのかと思っていた武道は、到着した場所が別のマンションだったことに驚いた。竜胆が駐輪場にバイクを停めに行っている間に、武道はマンションの外観を見ていた。築何十年も経っていそうな二十階建ての古そうなマンションだった。入り口にオートロックは無く、エレベーターは年代物の四人乗り一基のみだ。
「ここは?」
 竜胆が言うには、武道が掃除をしている本宅以外に、別宅がいくつかあるという事だった。灰谷兄弟が想像を絶するくらいのお金持ちなのだと武道は改めて思い知った。
 竜胆に連れられて入ったそこは本宅とは違って、室内が適度に汚れているマンションだった。本宅と比べるまでもなく、造りも明らかにグレードが低く、室内も経年劣化で薄ら汚れている。多分、武道たち以外も出入りするのだろう。明らかに複数人が立ち入っている乱雑とした雰囲気を感じた。
 リビングに向かう途中で、ちらっと見た部屋の中にはベッドがあり、床には女もののストッキングが落ちているのを目にしてぎょっとした。すごく破廉恥だと武道は思った。
「それ、俺じゃないからな」
 前を向いたまま竜胆がそう言った。
「へ?」
「手下も出入りしているからさ」
「そうなんですね」と答えながら「この人手下って言った」と、武道はやっぱり竜胆は怖い人なのかもと思っていた。こんなにお金持ちなのは悪の組織の親玉なのかもしれない。
「ここ汚いから、絶対兄ちゃん来ないんだ」
「なるほど」
 確かに、モデルルームみたいに埃一つないマンションに住んでいる蘭が、こんな汚れた場所に来る訳がないと武道は思った。
掃除をする際の顔を合わせたくないとか、指紋つけるなとか、浴室の床は乾燥させとけとかいう指示の全てが、竜胆ではなく、蘭からであると武道は確信していたから、竜胆の言葉をすんなり受け入れられた。
「じゃあ、ゲームの続きやろうぜ」
 竜胆はリビングにあるテレビ画面のゲーム機を指さして言った。そこには、本宅にあるのと同じゲーム機が準備されていた。こうして、灰谷邸の仕事の後は、このマンションに竜胆と来て過ごす事になった。あれから、何度も訪れたが、当初感じた不特定多数が利用している乱雑な感じは徐々に薄まり、武道が遊びに来ている時に部下と呼ばれる輩とは一度も顔を合せなかった。 
 それからしばらくして、竜胆から「この部屋さ、模様替えしようか」と提案された。「模様替えって何をするんですか?」と尋ねれば「もっと居心地良くするんだよ。例えば、ここにソファがあったら良くねぇ?」と、リビングのテレビ前を指さして竜胆が言った。
 確かに床に座って画面を見るより、ソファに腰掛けてゲームをする方が楽かもしれないと武道は思い「そうっスね。良いかもしれないですね」と、大して深く考えずに返事をした。
「だろ? 後、あっちの部屋も綺麗にしてさ、ベッド買い換えてちゃんと寝られるようにしたら最高じゃね?」
 今度は親指で玄関方向を指し示して竜胆が言う。最初に来た日にストッキングが落ちていた、いかがわしい部屋のことだ。
「そこまでしなくても」
 住んでいるわけではなく、たまにゲームする為に来ている部屋なのだ。わざわざベッドまで買い換えるなんて、貧乏人の武道には贅沢な気がしてならなかった。
「この間、床の上で寝たら翌朝だるかったじゃん。二人で雑魚寝できるでかいベッドに変えようぜ」
 竜胆が言うのは、先週遊んだ時にゲームを攻略する事に夢中になって、このマンションに二人で泊った日の話だ。勢いで明け方までゲームをしてしまい、睡魔に負け帰るのが面倒になり、そのままリビングの床の上で寝てしまったのだ。フローリングの床の上に寝たのだから、翌日身体が痛いのは当たり前だと武道は思っていて、毎日寝る訳でもないし、たまの事でそこまでする必要はないのでは? と思っていた。身体のだるさより、朝起きたら竜胆に腕枕されて寝ている自分にビビった事を思い出す。
「それはそうですけど。でも、ここって他の人も使うんですよね?  そんなに綺麗にしても汚されるだけじゃないですか?」
 不特定多数が出入りするマンションで、そもそもラブホ代わりに使われている節がある。綺麗にしたら更に増長するだけのように思えた。
「そこは安心していいよ。俺達しか使えないようにしたから大丈夫」
「そうなんですか? そんな事して大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって。他にもアジトはいっぱいあるから、タケミチは気にすんな」
 この人「アジト」って言ったよと、武道が震え上がっていた事に竜胆は気づかない。
「ここを俺達だけの秘密基地にしようぜ」
 そう言って竜胆は武道に微笑んだ。
「秘密基地!」
 竜胆の言葉に、武道の瞳がキラリと光った。さっき竜胆の事を怖いと思ったくせに「秘密基地」という魅惑的な言葉に、武道はときめいていた。武道はヒーロー好き男子あるあるの「秘密基地」好きだったのだ。だから、反射的に「それ、最高ですね」と答えていた。
 それに対して、竜胆は予想より武道が乗り気だった事に喜び、武道が大きな瞳を見開いてキラキラさせて竜胆を見上げたので、竜胆はキュン死しそうになっていた。
 こうして、竜胆と武道による、アジトの秘密基地へ改装大作戦が始まったのだ
 だが、そんな平和な日々は、蘭の登場によって終わろうとしていた。
 灰谷邸の掃除を終えた武道は、竜胆が迎えに来るのをリビングで待っていた。いつもなら武道の仕事が終わる前に竜胆は顔を出すのだが、今日は掃除が終わって十分経っても現れなかった。
 このまま灰谷邸にいると蘭と鉢合わせするリスクがあるので、武道は段々落ち着かない気持ちになった。一旦、外に出た方が良いかもと、武道はリュックを背負い玄関に向かおうとした。正にその時。背後から「竜胆をどうやって誑し込んだ?」という声を掛けられた。
「へ?」と振り返ると、二度と会いたくなかった灰谷蘭が立っていた。怖いけど目が離せない美貌に、武道は圧倒されるしかない。
「飽き性の竜胆がこんなに一人の人間に夢中になるのを見た事が無い」
「夢中ってなんスか!?」
 武道は思わず叫んでいた。
「竜胆は俺の大事な弟なんだワ。泣かしたりしたら、どうなるか分かってるよな?」
 そう言って、蘭は笑みを浮かべつつ凄んだから、武道は余計に恐ろしく感じた。
 それにしても、竜胆に泣かされることがあっても、自分が竜胆を泣かす事は無いだろうと武道は思った。そして、このまま蘭といても良い事は無いという事に気が付き「すいません! 今すぐ帰りますんで!」と、蘭の横をそそくさと通り過ぎようとしたが「メシ」と言われて、がしっと腕を掴まれた。
「メシ作って」
「メシ? あお掃除専門なんですすみません」
 武道の言葉に蘭が苛ついた。「役に立たないな」と一方的に怒られ「すみません」と謝るしかない。蘭の手は武道の腕を掴んだまま離す気配はなく絶体絶命である。
 どうしようかと思案に暮れていた武道は、蘭にいきなり持ち上げられてびっくりした。
 手に持っていたリュックが床にどさりと落ちていく。蘭はいとも簡単に左手一本で武道を持ち上げている。武道は蘭の腕に尻を乗せている状態だ。
 蘭は竜胆より更に背が高いので、武道の目線は史上最高の高さになった。はっきり言って怖いくらい高い。2mは余裕である。
「何するんスか?」と蘭に聞いても「何するんだろうな」と、適当に返事をされただけだった。
 そのまま蘭が歩き出したから、ビビった武道は蘭の背中あたりの服の生地を慌てて掴んだ。ゆらゆらと不安定で怖すぎるとしがみついていたら、いつの間にかクイーンサイズのベッドの上に寝かされていて、目の前には武道を見下ろすような姿勢の蘭がいた。
 蘭に馬乗りにされているのだと理解した時には、既に上着を捲られていた。
 なに? と思ったら、今度は頬から首筋に向かって撫でられている。「擽ったいっス」と身を捩っても、蘭の重みで身体が全く動かない。すると今度は首筋をぺろりと舐められたので「何するんですか?」と叫んだ。そんな武道を蘭は氷のような冷たい瞳で見下ろしている。
 殺されると思ったら、唇を塞がれていた。キスをされているのだと、武道は目を見開いてびっくりした。どうして蘭にキスされているのかさっぱり分からなかったし、キスをするのは初めてで固まってしまった。
 そんな武道を蘭はじっと観察しているような目で見ている。蘭の唇が武道の上唇をそっと挟んできた。食べられてしまうのかと、武道はびくっと躰を震わせた。
 ドキドキしているのは、キスされたからなのか、蘭が怖いからなのか、精神的に幼い武道には判別できない。
 蘭の舌が武道の口内に侵入し、舌の先に触れた。電気が走ったみたいにぞくっとして、再び武道の躰が震えてしまった。蘭は一度離れて、再び唇を重ねてきた。優しく唇を吸われて武道の心臓が早鐘を打つ。
 綺麗過ぎる蘭の瞳を直視できず目を閉じる。すると口づけは激しくなり、強引に入ってきた蘭の舌が、武道の舌を掬うように絡めたかと思うと、ゆっくりと口内の隅々まで舐め上げ、逃げようとする舌を捉え吸われた。
 初めての感覚に背筋がぞわぞわする。舌と舌をすり合わせる事が、こんなに気持ち良い事なのだと武道は初めて知った。お互いの唾液が混ざり合うぐじゅぐじゅという淫猥な 音を耳にして、武道の躰は熱を持ち始めていた。
 角度を変えて何度も執拗にキスを繰り返され、武道は気持ち良いのと息苦しいので酸欠状態に陥っていた。頭の芯がぼんやりとして、もう何も考えられなかった。
 ジッパーが下げられる音で我に返った。蘭の視線は武道の下半身に向けられていて、指が細く長い美しい手が武道のズボンの前を開けているのが目に入る。
「な、なにしてるんすか!?」
「ジッパー下ろしてる」
「だからなんで?」
「ズボン脱がせないとできないじゃん?」
「なななな何を?」
「セックス ❤」
 当たり前の事を何で聞くの? と、蘭は首をかしげたが可愛くないし恐怖しかない。
「でも、恋人同士でもないのにそんなこと!」
 はははと蘭が笑った。
「じゃあ、付き合おっか」
「どこに?」
「ウケる。そうじゃない。俺の愛人にしてやるって言ってんの」
「あいじん?」
「そ、愛人 ❤」
「嫌です」
「ハァ? オマエに拒否権無いって、知らなかった?」
 自分の思う通りにならない時に機嫌が悪くなるところは、竜胆にそっくりだった。さすが兄弟と武道は泣きそうになった。
「感謝しろー。なかなか俺の愛人にはなれないんだぞ?」
 そんな事を言われても、武道はありがたいと思えなかった。ただ、この後はどうなっちゃうんだろうと、心細くて泣きそうになっていた。