こがねいろ
2024-09-07 17:30:33
2823文字
Public 黄金小説
 

★黄金色の想い

小説初投稿。黄金ペア/大石視点/全年齢


「大石!」

先にコンテナの上へ登った彼が、俺に向かって手を差し伸べる。その手を掴もうと、俺も腕を伸ばす。指先が触れ合った瞬間、力強く引き上げられた。

……この場所で反省会を行うのは、これで何回目だろうか?

今日の試合、最終的に青学は勝利を収めたものの、俺たちダブルス1は惜しくも負けてしまった。
悔しさはあれど、不思議と後悔はしていない。むしろ全力を尽くして戦ったことに、清々しささえ感じていた。

——それはきっと、彼が……英二が、俺のことを信じて待っていてくれたお陰なんだ。

……なぁ、英二」
「んー?」
……ありがとな」

彼に向かって放った言葉は、心からの感謝だった。英二は一瞬キョトンとした表情を見せた後、「なんだよ〜急に!」と言って照れ臭そうにはにかんだ。そんな彼の反応を見て、俺も思わず笑みを浮かべてしまう。

「いや……ただ、改めて伝えたくなっただけだよ」

照れ臭いのはこっちも同じだ。顔に熱が集まっていくのを感じながら、誤魔化すように街を眺める。あの日と同じ夕焼け色に染まった空の下に広がる街並みは、どこか幻想的な雰囲気を放っているように見えた。

「そっかぁ……じゃあ、さ」

ゆっくり視線を戻すと、そこには先程までとは打って変わって、真剣な眼差しを向ける英二の姿があった。その様子に思わず息を呑むと、彼は続きとなる言葉を紡いでいく。

「俺の方からも言わせてよ。……いつもありがと、大石!」

真っ直ぐ向けられた瞳に、屈託のない笑顔。それを見た途端、胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚に襲われた。同時に、ドクンドクンと鼓動が激しくなるのを感じる。

……どういたしまして」

どうにか平静を装いながら返した言葉は、少しぎこちないものになってしまったかもしれない。それでも彼は再びニコッと微笑むと、俺の前にそっと右手を差し出してきた。その手の意図を理解した俺は、そっと自身の右手を重ね合わせる。

「へへっ……握手!」

ギュッと握りしめられた手のひらから、じんわりとした温かさが伝わってきた。それはまるで、互いの体温が溶け合うかのように、身体中へと広がっていく。

……このままずっと離したくない。

そう思えるほどに、心地の良いものだった。

………なんかさ」

繭に包まれたような温もりに浸っていると、不意に英二が口を開く。

「こうしてると、相手の考えてる事とか全部……分かる気がする」

〝まるで同調してる時みたい〟と付け加えて、彼は小さく笑う。その言葉を聞いた瞬間、ドクンと跳ね上がった心音が、自身の耳に大きく響き渡る。

……もしかしたら、この手のひらを通じて、彼の方にまで伝わっているかもしれない。そう思えるほどに、強く脈打つ。

「英二…………

名前を呼んでみるも、続く言葉は何も出てこない。彼もまた、何も喋ろうとしなかった。

……二人の間に、暫しの沈黙が流れる。

けれど、その時間は決して嫌なものではない。寧ろいつまでも続いて欲しいと思うくらい、穏やかで幸せなひとときだった。

……ね、大石」

ふと何かを思い出したかのような口調で、英二が俺の名前を呼ぶ。それに答えるように見つめ返すと、彼は静かにこう告げた。

「俺も……同じだよ」

——お前と同じ気持ちだってこと。

繋いだ手から伝わる確かな温もりが、何よりもの証拠だった。

…………英二」

もう一度、彼の名を呼ぶ。

「好きだ」

続きとなる言葉。今度ははっきりとした声音となって、唇から零れ落ちた。

……うん。俺も、大好き」

黄金色に輝く夕陽に照らされながら、眩しい笑みを湛える英二。
その光景は、何物にも代え難い尊いものとして、俺の心に深く刻まれていく。

(ああ……なんて、幸せなんだろう)

重ね合わせた手をゆっくりと離すと、指を絡めるように繋ぎ直す。
そしてどちらからともなく、互いの距離を縮めていけば、二つの影は一つに重なった。