萩月
2025-02-02 18:07:07
2515文字
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おいしい におい/危険な香り

アタルさんは出てきません。途中で分岐します。


「今のお話、私にいい考えがあるわ!」
ばん!と扉を開ける音に続いて鈴を転がしたような声がした。

「ビビンバ様?!」
「ごめんなさい、盗み聞きするつもりではなかったのだけれど……

突如現れた王妃にミートもブロッケンも、動きが止まる。それに構わず、ずいっとビビンバが近寄り、きらきらと瞳を輝かせながら早口でまくし立てる。

「ブロッケンJr.様が来ると聞いて私もお話したくて!声をかけようとしたら、アタル様とケンカされたのです?でも怒ってる様子がなんだか微笑ましくて……ついつい何か私も協力できないかと考えていたら……
「けっこう初めの方から聞いてますね……
ミートがぼそりと零したが、ビビンバも彼女に圧倒されているブロッケンも聞こえていなかった。

「それでですね!!」
「な……なんだよ……
あまりにもの勢いにブロッケンは反射的に聞き返してしまった。 それに気をよくしたのか、ビビンバはにっこりと笑って、自信の案を披露する。

「以前スグル様にと買った香水があるのだけれど『ロビンがキメキメの時の10倍くらいの匂いがする!』とあまり気に入って貰えなかったんです」
……?それが?」
意図が見えない、と首を傾げる。

「その香水を差し上げますので使ってみて!ブロッケン様から知らない香水の匂いがしたら……さしものアタル様も驚くのでは?!」
「え……
「わわわッ!」
アタルが驚く、その一節はブロッケンの琴線に触れた。いつも余裕で涼しげな彼を、自分が驚かせるなんて──

一方、腕の力が急に抜けたので、その拍子にミートはバランスを崩し、なんとか両足で着地した。横では自信満々に息を巻く王妃に、軍服の超人が話に聞き入っているという、なんとも奇妙な光景があった。
そして恋する乙女はその僅かな反応を目敏くキャッチする。

「はい!!アタル様にギャフンと言わせる、よい作戦ではありません?」
「隊長にギャフンと……!」
「え……なんかそれ、大丈夫なんですか……?」

ミートが思わず口を挟む。テレビドラマの「知らない女の香水の匂いがするわ!」と浮気発覚からの修羅場、というド定番の展開が脳裏を過ぎった。
ブロッケンの普段の装いから「新しい香水買ったのか?」よりかは、前者の方が近しい状況になりそうである。
何か必要以上に波風を立ててしまうのでは……と小さな胸に大きな不安を抱く。
しかし、ビビンバはいいから、と言うように目配せをし、ブロッケンに向き直る。

「じゃあ後で持ってくるわ!ところで、その代わりとは言いませんが……
にやり、と大きな目を細め、先程までのころころとした声からうって変わり、ひそひそと囁きかける。

「アタル様の反応やその後どうなかったか、教えてくださいませ♡」
……わ、わーったよ……

すっかり乗せられてしまったブロッケンは「ボクは絶対止めた方がいいと思いますよ」という名セコンドのアドバイスを全く聞き漏らしてしまっていた。

危険な香り