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かいえ
2025-02-02 11:15:16
4035文字
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【蘭武】プライベートビーチまであとちょっと【モデ蘭ちゃん番外編】
無配本「マジでクソカワなんだけど!」に書き下ろして掲載したもの
竜胆視点
4,033文字
時系列的には「海と俺とどっちが好き?」(
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18753421
) 「南の島に行ってくる」(
https://privatter.me/page/679b943008457
) の後で「六本木の怖い夜」(
https://privatter.me/page/679ce5c32ca0b
) の前です
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2
「今から海に行きたい? なんで? もう飽きるくらい泳いだんじゃないの?」
蘭と武道が滞在するホテルの部屋に合流した竜胆の顔を見て、開口一番に武道が発した言葉が「海に行きたい」だったので、竜胆は面食らっていた。長いフライトの後で突かれていたし足も浮腫んでいたから、海で泳ぐよりプールサイドのカバナで昼寝がしたい気分だったのだ。けれども、何故だか切羽詰まった感のある武道に、嫌とは言い出せなかった。ひとまず、冷たい飲み物でも飲んでから話そうと、武道とソファに移動したのだった。そういう訳で、ベッドルームで寝ている蘭に遠慮しながら、二人は隣接するリビングルームに居て、小声で会話をしていた。多分、今の蘭なら起こしたとしても、武道が居るので機嫌が悪くならないのは分かっているのだけれど、長年沁みついた習慣というのは、なかなか抜ける事は無かった。
「で? どうしていきなり海なんだよ?」
「それがですね、実は、まだ一度も海に行っていなくって
……
」
「ハァ? 何してたの?」と、口から出そうになったが、竜胆はハッとして口を噤んだ。南の島に来て一週間、海にも行かずに二人がしていた事なんて、今更聞くまでも無かっ たからだ。案の定、竜胆の予想は当たっているみたいで、武道は竜胆の前で恥ずかしそうに目を伏せている。
そっか、あれからずっとそうなのかと驚愕して、竜胆は武道に同情してしまった。そうして、道理で武道が全く日に焼けていない筈だと、一人納得する。それにしても、我が兄ながら絶倫過ぎるだろと感心してしまったのだが、その蘭についていける武道も、かなりの体力の化け物かもしれなかった。
「あの
…
蘭君とは、竜胆君が来たら海に行くって
…
話をしていまして
…
オレとしては、折角南の島に来たなら海に入りたいなって思うんですけど
…
ダメっスか? 竜胆君は海で泳ぎたくないですか?」
何とも健気で涙を誘った。これは自分が断ったら絶対海に行けないパターンのヤツだった。武道をずっと独り占めしたくて、武道を誰の目にも触れさせたくなくて、誰も武道の視界に入れさせたくなくて、兄が考えた策略だろうと竜胆は直ぐに察した。そんな風に丸め込んでベッドの上に目に見えぬ鎖で縛り付けていたのかと呆れつつ、拉致する直前の蘭のフラストレーション具合からすれば、一週間くらいは武道を手放せなくなっても当たり前なのかもしれないと思い直す。東卍メンバーによって会う事も、話す事すら出来なかった日々が続いていた最悪の日々が思い出された。あの時の蘭は、最後の方はハデスとペルセポネとか通常の会話にはまず出て来ないギリシャ神話を持ち出して錯乱状態になっていた。兵隊たちも、少しの粗相でボコボコに殴られていて、あれは本当の地獄絵図だった。あの苛々が自分に向かなくて本当に良かったと、今更ながら竜胆はホッとしてしまった。そういう次第で、その怒れる悪鬼のような兄を鎮めてくれた、ある意味生贄のような武道の事をケアしてやるのは自分の務めだと竜胆は思った。
「あ
…
まぁ、別に良いけど」
「本当ですか? やった! じゃあ、あの、水着を準備しないと」
武道はいそいそと奥に向かい、バスローブから服に着替えて戻って来た。そのいかにも武道が選んだに決まっているダサい服には見覚えがあって、反社ビルに攫いに行った日にも武道が身に着けていたものだった。そう言えば、天竺の本部ビルから奪回して、そのままここまで逃げて来たんだっけと思い出す。そして、その服を来ているという事は、ここに来てから新しい服が全く必要なかったという事で、海どころか部屋から一歩も外に出ていない可能性も出て来たというか、きっと出ていないのだろうという事だった。
つまり、水着どころか、日常に着る服も下着も何もないのでは? と、竜胆は察したのだった。ついでに色々買ってやるかと思ったのだった。
リビングのテーブルの上に買い物に行く旨のメモを残し、竜胆は武道を連れて近くのショッピングモールに繰り出した。武道はといえば、ホテルの駐車場までに通る何もかもを珍しそうに見回して歩いた。プールを見た時には目を輝かして「プールにも行けますか?」と聞いたし、その向こうに広がるプライベートビーチを目にして「すげぇ綺麗な海!」と、はしゃいだ。武道にとって海とは、東京湾か湘南の海なので、セルリアンブルーの透明度の高い海とは無縁だったのだ。
「車?」
「そう、レンタカー」
「すげぇ! かっけぇ! 外車だ!」
外国のレンタカーなので外車なのは当たり前なのだが、武道が子供みたいにはしゃいでいるので、竜胆は苦笑して見守るしかない。そうして、車で十分程の距離にあるショッピングモールに向かった。
まずは、最優先で水着という事で、選んだ水着を試着していた武道はフィッティングルームから情けない声を出して竜胆を呼んだ。
「竜胆君
…
どうしましょう?」
「どうした?」
「これ
…
」
フィッティングルームのカーテンから顔だけ出した武道が、涙目になって何かを訴えかけて来ていた。竜胆が近付くと、武道はちらりとカーテンを捲って上半身を竜胆に見せた。そこには、目を覆いたくなるような情事の痕が、身体中に色濃く残っていて唖然としてしまった。自分が来たら海行くという約束をしていたみたいなのだが、本当に行く気があったか怪しく思うしかない。
「ちょっと待ってろ」
竜胆は手の甲迄しっかりと隠れるフード付きのラッシュガードと、足の甲迄あるスイムトレンカを持って戻って来ると武道に身に着けさせた。しっかり首の上までチャックを閉めれば、肌の露出は殆どない。水着に合わせてトングサンダルを履けば、すっかり案極ビーチスタイルの完成だった。
「すげぇ! オレ、このまま着て帰ってもイイっスか? そしたら、すぐに海に行けるし!」
「好きにしろ」
「やった!」
無邪気に喜ぶ武道を微笑ましく眺めながら、竜胆は店員に声を掛けて、武道が来ているものの値札を切るように頼んで、ついでに支払いも済ました。すると、武道が竜胆の横に寄ってきて「竜胆君が居てくれて本当に助かりました! オレじゃあ、蘭君の水着迄選べなかったですから」と改めてお礼を言ってニッコリ笑うから、竜胆もつられてニッコリ笑ってしまった。
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