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豆炭々炬燵
5310文字
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モアナと伝説の海シリーズ
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【マウモア】悴む夏
モア海2の世界観で半神半人の英雄と無垢な勇者、果たして余裕がないのはどちらなのかの話。映画ネタバレ独自解釈捏造要素有。
前の話→
https://privatter.me/page/678654b43d7aa
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本来あるべき温もりが腕の中にいない違和感にマウイはみっともなく飛び起き、釣り針を握り締め外と区切られているタパを焦燥と不安に彩られた手で慌ただしく捲った。
夜闇に包まれた周囲に意識を巡らせモアナの気配を探る。水を飲みに起きたか、用を足しに行ったか、そのどちらでもないか。
「──いない」
少なくとも家の周囲に彼女の気配を感じられない。
嫌な動悸が収まらない胸と自分の良心を撫でたマウイは釣り針を天色に光らせ高く飛翔した。夜目も利く鷹の目で島を隈なく見下ろし、このモトゥヌイで一番高い頂きに探し求めていた影を見つけるや否や地面に激突する勢いで急降下。兎角驚く素振りを見せないモアナを腕に閉じ込め彼女の命のぬくもりに縋り付いた。
胸の奥張り詰め絡まった感情の糸を掻き毟る指が蒸し暑い夜に悴み戦慄いた。
「
……
見つけた
…
ッ」
黄昏の花びらが舞い散り宵闇が芽吹き瀑声満ちる洞窟で想いを告げ、腕の中にある確かな柔らかくあたたかな命を慈しみ──、深い海の底を彷彿させる夜の訪れに怯えるようになってしまった。
三年の間に熟れ育ち肥大化した想いは、モアナが半神半人の生を受けたのを切っ掛けに固く閉じていた蓋をこじ開け溢れ、とっくに諦めた見て見ぬふり気付かぬふりを笑い飛ばして、急な結婚の申し出に躊躇い戸惑う無垢な心が自分と同じところまで育ち色付き落ちるのを当初マウイは鷹揚に構えるつもりでいた。
だが、実際ひとつ屋根の下で暮らし始めれば如何だ。
隠し切れようのない此方を意識してくれているモアナのいじらしさに喜びを抱く以上に、拒絶される恐怖、要らないと捨てられた過去の精神的外傷の鎖が未だ心を雁字搦めにして彼から泰然自若を取り上げる。
表面上取り繕うも臆病風に吹かれた心が揺れ、追い打ちを掛けるように静寂の光を浴び眠るモアナの穏やかな寝顔にかの日を残酷に思い出させる。手と腕に残る弛緩した体の重さ。残酷な記憶を打ち消すべく夜な夜な彼女を抱き寄せ眠った。
翌朝、意気地なしの所業を愛おしい女性の所為にする子供染みた行動をするたびマウイの胸に自己嫌悪の棘が深々突き刺さる。刺さる棘の数に比例してモアナの好意から距離を取り、痛みと罪悪感で泣き叫ぶ本音と本心から目を逸らした。
その癖彼女に嫌われたくない彼女の愛情を渇望する不器用な祈りと願いをくり返す傲慢な己自身に辟易しては下唇を血が滲むまで噛み締めた。
「うん、見つかっちゃった」
切羽詰まったマウイを気遣うように敢えて明るい声音で返すモアナは自分を迎えに来てくれた彼の太い首に腕を回し頬を摺り寄せ抱き着いたのだった。
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