かいえ
2025-01-28 01:31:27
11615文字
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【マイ武】そのアイドルは恋をする ②

トップアイドル「東京卍會」リーダーのマイキーと、研究生の花垣武道のラブコメ
他のメンバーとは頻繁にご飯を食べたりしているのに、マイキーとは何故か行かない武道に、マイキーがぶち切れて主にドラケンが振り回されるお話
タケミチ愛されのアイドルパロ
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「ケンチン、タケミっちと食事した後、タケミっちの家に行ったんだ?」
 タケミっちの家という言葉を殊更強調しながら、今日発売のスポーツ誌に載った記事の頁を開けて、ドラケンの顔の前にぐいぐい押し出してマイキーが聞いてくる。
 またか、と、ドラケンはげっそりした。しかも、昨日の夜の事を今朝の新聞に載せるとは、記者も仕事が早いと苦笑するしかない。熱愛とかじゃないどうでもいい記事を載せだがる意味も分からず、ただ「タケミっちとツーショットでスクープされたい!」と、だだをこねるマイキーを見下ろしてため息をついた。
「行ったけどさ? タケミっちがオマエの私物をどうしているか調べるために行ったんだろ? 本当にもう、なんでそんなんが記事になんのか全然わかんねーよ。行ったのタケミっちの家だぜ?」
「そのタケミっちの家に行けるっていうのが、もう羨ましいんだけど、ケンチンだけずるい!」と。そこまで言ってマイキーはハッとしたようだった。こんな展開がつい最近もあって、既視感が半端ない。バッと背後を振り返ると、マイキーとドラケンの成り行きを見ていたメンバー達と目が合った。
 ライブ用の衣装に着替えていた一虎は、やっぱりこれ見よがしに満面の笑みを浮かべ、左目でウィンクしてきたから、マイキーはやっぱりと悟る。一虎も武道の家に行ったことがあるのだと。しかも、その横で同じく着替えをしていた三ツ谷と八戒が気まずい笑みを浮かべ、髪をセットしていた三途が、鏡越しにそっとマイキーから視線を外し、パーチんとぺーやんはそそくさとトイレに行ってしまった。柔軟運動をしていた場地は悪気も無いようでニッと笑う。今までの経緯を知らないスマイリーとアングリーはそれがどうかしたの? という表情を浮かべている。
 またしても、自分だけが武道の家に行ったことが無い状態に、マイキーは憤怒の表情を浮かべた。マイキーの背後から得体の知れぬ黒い何がが溢れ出していて、この後のライブはどうなるのだろうかと、ドラケンは危機感を覚えた。「落ち着け、マイキー」
「こんなん、落ち着ける訳ないだろ? もう、今夜のライブは中止な?」
 マイキーの言葉にやっぱりーと、ドラケンは蒼くなった。今日からスタートする東京ドームを皮切りに始まる六大ドームツアーに暗雲が立ち込めた瞬間だった。
 東京ドームの観客数は五万人で、既に物販は前日の昨日から始まり、今日も長蛇の列だとスタッフから聞いていた。それが払い戻しになった場合の経済的損失は計り知れない。そもそも会場まで足を運んでくれているファンに申し訳ないと思った。
「マイキー、今日は六大ドームツアーの初日だろ? タケミっちは、この三日間、観客席からおまえを見るって意気込んでいたぞ?」
「マジで?」
 ドラケンの言葉に、マイキーは秒で反応した。
「ああ、マジだ。ライブではおまえしか見ないらしい。『こっち見て!』のウチワも作ったらしいぞ」
「ホント? そんなウチワなんて無くてもタケミっちしか見ないのに」
 マイキーは五万人の中から武道を見つける気のようだった。改めてマイキーの武道への執着は恐ろしいとドラケンは思ってしまった。
「本当だ。それから、東京ドーム三日間が終わったら、軽めの打ち上げをする予定だ。そこに武道を呼んである」
「え? 嘘。武道が来るの? 打ち上げに?」
「ああ、そうだとも。しかも、打ち上げの席はおまえの横確定だ」
「分かった。今日から三日間頑張る!」
 マイキーがライブ中止を撤回してくれて、ドラケンは胸を撫でおろして脱力した。何かあるといけないと思い、保険を掛けておいて良かったと思った。真面目に、ツアー中止は恐ろし過ぎるのだ。
「それから、おまえがあげていた私物の件だが、どうして身に着けて来ないのか分かったぞ。武道はおまえの私物を一つずつナンバリングしてから、ジップロックに入れて、どこで着用していたかシールを貼って保管していた」
「なにそれ?」
 さすがのマイキーも訝しい表情を浮かべた。
「推しに貰ったものだから、大切に保管しているんだと。良かったな」
「そうなんだそこまでオレの事を
 マイキーは感動していたが、周囲のメンバーは武道の片付け下手も部屋の汚さも知っているだけに、マイキーの私物の管理方法にそこまでしているのかと唖然としていた。実際、目にしたドラケンはより強くそれを感じ取っていだのだけれど、ともかくこの場ではマイキーのモチベーションを上げる事に専念した。ひとまず、上機嫌でステージに向かうマイキーの背中を見ながら、この数週間の騒動で、自分がぐっと老けたように、ドラケンは感じたのだった。