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みたむら
2025-01-21 01:30:00
10389文字
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呪術夢:短編まとめ
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雪降る夜に
大人五×女夢主(同級生&恋人)
浮気の噂に絶えられない中「彼女」を継続する夢主。続けられた理由は自分の目で見ていなかったから。
そんなある日、夢主は一日オフで街を歩いていると五条と見知らぬ女性が歩いているのを見かけてしまい――。
完璧な彼女になるために我慢強い夢主と、たまには甘えて欲しいと思って夢主に仕掛ける五条の話。
少しだけモブ(補助監督)が出ます。
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2
3
◇ ◇ ◇
いつも呪術師として多忙だった私が久しぶりに一日オフになった。
今のうちに買い出しに行こうと街へ繰り出した。必要なものも買ったし、たまに可愛いアクセサリーを見かけてたまには自分へのご褒美に買ってもいいよね、と自分を甘えさせて少しだけ奮発した。普段、呪術師として呪霊を祓う毎日に髪飾りを使う場面なんてないだろうけど、部屋に飾るだけでも罰は当たるまい。それほどまでに可愛くて欲しかったものだった。
荷物を一回家に持って帰ってから再び外に出る。今度は何も買う予定はなく、ただぶらぶらと散歩やウインドーショッピングのように気軽な気持ちで出かけた。
先ほど歩いていた人通りの多い道を歩いていると、少し離れた場所で見知った人物が見えた。
(あれは
……
ごじょ
――
悟君)
それは、彼氏がいた。普段奥手で、みんながいる前で恋人の名前を未だに恥ずかしくて言えず苗字で呼んでしまうけれど、最近悟君から「二人きりでいる時くらいは名前で呼んで」と言われてしまった。そんな器用なこと出来ないよと言っても少しずつでいいから、と言われて今でも慣れようと頑張っているところだ。
好きな人の名前を呼ぶ
――
それは簡単なようで、とても難しい。好きだからこそ、大事に呼びたい気持ちもあり、恥ずかしい気持ちもある。悟君は軽々と私の名前を呼んでくれるけれど、多分深い意味はないのだろう。だって、同期である硝子ちゃんや虎杖君たち生徒にも名前で呼んでいるのだから。
私も恥ずかしくなく彼女らしく彼の名前を呼べるようにしたいけれど
――
それは経験と時間が解決してくれると思いたい。
そんな経験を持たせてくれるかのように街の中を前方で歩く彼に、声をかけようとした。
しかし、私の開いた口に声は乗せられなかった。まるでパクパクと開く魚のようにだらしなかったと思う。ただ、吐いた息が外に出るだけ。
隣に、綺麗な女性がいたのだ。
最近、彼の周りには噂が付きまとっていた。初めこそ彼も誤解だと周囲に弁解していた。
しかし、噂はどんどん広がっていって彼もその度に弁解するのも面倒くさいと思ったのか、もう何も言わなくなった。それもそうだ、彼は五条家の当主であり特級呪術師でもあり高専の教師をやっている。常に多忙な人が一々弁解していくのは時間の無駄だし、今度こそ倒れてしまいそうだ。
私もそのことを彼女という立場で見ていたので分かっているつもりだ。そんな忙しい人でも私と一緒にいる時間を出来るだけ作ってくれるし、仕事が入ってしまったならすぐに連絡してくれる。後日ケーキなどお菓子を買ってきては一緒に食べようと言って埋め合わせをしてくれたり。
だから、それで安心しきっていたのかもしれない。きっと噂がまた出てきても悟君は私を見てくれると。
そんなある日、悟君の噂はどんどん大きくなっていく。一応高専内では私が彼女だというのは、悟君の言いふらしによって知られているが、補助監督さんたちを初め、噂を聞いていた。
「
藤森
さん、五条さんと上手くいってますか?」
「
……
何かあった?」
それはとある任務で討祓が終わり、女性の補助監督さんと車で高専へ帰る時の話だ。高速で渋滞に巻き込まれ、待っている間に補助監督さんが暇つぶしにと私に話題を振ってくれたのだろう。
「すごく言いづらいんですけど、また五条さんの噂があるんですよ。もし支障が出てるなら
……
と。あっ、聞きたくなければ言いませんけど!」
「うん、どんな噂が出てるの?」
知りたいか知りたくないかというと知りたいのが人間の性だろう。私は平常心を保ちながら補助監督さんに話を聞く。
彼女は私を気遣ってか、少しオドオドしつつも話してくれる。
「何か、五条さんが知らない女性と歩いてる姿をよく見かけるってウチの同期たちが話してたのを耳にしたんですよ。また噂が広がっただけだろうって思ったんですけど、先日私も七海さんと任務で出かけている時に見かけまして」
七海君のことが出てくると私は少しだけ心臓が跳ねた。後輩の名前が出るとなると、それは噂レベルでも何でもなくなる。彼も目撃したというのなら嘘ではないのだろう。彼は真面目で、冗談を言うことは極端に少ない。
「
藤森
さんと上手くいってないのかなって同期は心配してましたけど
……
藤森
さん、大丈夫ですか?!」
「うん
……
大丈夫」
補助監督さんが声を上げて、鏡で私を心配してくれる。私は平常心を保っていたはずなのだが、表情が強張っていたらしい。補助監督さんは「私は
藤森
さんの方が彼女らしいですけどね!」と慰めの言葉をかけてくれて、彼女の気遣いを無我にできず「ありがとう」とお礼を言った。
(やっぱり、私に隠れて女性とデートでもしてるのかな?)
そりゃ恋人の名前を呼ぶことさえ躊躇してしまうどうしようもない彼女よりも、可愛いか美人な女性の方が付き合いやすいよね。
恥ずかしながら、悟君が初恋相手だ。まだ誰かと恋をしていたり、付き合っていた経験があればよかったのかもしれないけど、彼が初めてなため、これは正しいのか正しくないのかなど常に試行錯誤しているところだ。異性を名前で呼ぶことさえ難易度が高い。
(浮気っていうヤツなのかな)
浮気はある意味自然現象なものだと思っている。好きなものが突然別のものが好きになり、それに熱が走るのと同じように。物でもあるのに人は駄目なのか、と学生時代は思っていたけど
――
なるほど、人になると途端に嫌な気持ちになる。私に飽きて別の女性と遊んでいるというのは、気分がよくない。だけど、私は彼の隣で歩けるような立派な人間じゃないことは自覚している。だから、彼が飽きたと言われてもそれは仕方ないのだと思う。
それでも、まだ何とか自我を保てた。何故ならそれは噂の域だったから。その時はまだ、〝私は目撃していない〟から。
しかし、その自我を保つグラグラの柱は割と早く崩れ去るようになった。
高専で硝子ちゃんと医務室で談笑していると、悟君が入ってきた
――
それも女性を横抱きにして。
それはさすがにクールビューティーな硝子ちゃんも顔を強張りつつも事情を聞けば、救援に向かった先でフリーの女性呪術師さんが深手を負ったから反転術式で治してほしいと無下限で移動して来たらしい。確かに彼女は安全地にいるにも関わらず目を覚ます様子はない。そして、外傷が見るに堪えない状態だった。
その人は無事に治療が施され、数日医務室で安静にしたら回復した。助かる命があるなら助ける、という彼の判断は間違っていない。ただ、その
……
少しだけ羨ましかったのかもしれない。
私にも彼にああやって抱かれたことがなかったから。その姿を見たとき、もし私が倒れてしまったらああやって運んでくれるんだろうか、なんて人の生死が左右される大事なときにそんなことを思ってしまった。
またある時は、悟君が私に声をかけてくれて、軽く雑談していると高専にお邪魔していたらしい女性呪術師さんが彼に声をかけてきたり。その時に「この間、とても楽しかった」と意味深な会話を耳に入ったのだ。悟君は楽しそうに彼女の会話をするけれど、私は置いて行かれた気分になり、私は「次の任務があるし、準備しないといけないからもう行くね」と笑顔で彼らから距離を置いた。
そういったことが続き、私は彼にとって何なんだろうなと思うようになっていた。そう思いつつもまだ耐えていた。大体は任務や仕事の時間が大半だった。プライベートな部分はまだない。だから耐えられた
――
それが数分前まで。
これはもう決定打だな、やはり〝浮気〟というヤツなんだなと自覚した。
それに、前方に歩いていた悟君の表情は少ししか見えなかったけど、私には見せてくれない笑顔だった。
(ああ、やっぱりキツいなぁ
……
)
私はショックが思った以上にあって、声をかけることなくその場を走って元来た道に戻って行ったのだ。そして冒頭に至るのだった。
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