紫輝
2024-03-03 10:26:21
5015文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんば】しょくんば詰め合わせ・7【刀剣乱舞】

ツイ…Xに放流してからずっっっとまとめてなかったしょくんばまとめました。ちょっとサボりすぎました。
目次置いていくのでお好きなところから、お好きなところだけどうぞ。お気に召すものがあれば幸いです。



*ある刀の手袋について

 どことなくぼんやりと霞むようだった空が澄んだ青さをまとい始め、緑はその鮮やかさを増す。開け放たれた障子から吹き込み縁側を撫でた風が爽やかに髪を揺らすある午後の話だ。
 俺たちは向かい合って洗濯物を畳んでいた。相方はこの本丸の一の刀で、俺は最初に鍛刀された刀だ。気心は知れていた。
 微かな緑のにおいを含んだ風に、一の刀の纏う白布がふわふわと揺れる。ついでにフードからこぼれる金糸が軌跡を描くのを見ながら、綺麗で格好良いんだからとればいいのにとここにきて幾度も思ったことを飽きもせず考えた。
「それはこっちにもらおう」
 不意にかかった声に手元に目を落とすと、膝の上には手袋が一対。靴下かと思ったがどうやら違ったらしい。
 気の抜けた顔をしていたのだろう、一の刀が言葉を重ねる。
「内番用だろう? それ」
 言われてまじまじ見てみれば、確かに少し浅めに作られているそれは親友が本丸での作業時に使うものだった。
あんちゃんよくわかるなぁ」
 『浅めに』とは言ったが、それには戦装束のそれに比べれば、という接頭辞が付く。親友は身なりに気を使う男で、見えないところこそ格好良く、を地でいくような男だった。ぱっと見同じものに見える二種類の手袋を使い分けている理由は実はよく知らない。スイッチの切り替えのためかもしれないし、効率を考えてのものかもしれない。
 とにかく親友が手袋を二種類持っていることを知っている同胞は、実はあまりいなかった。それこそ自分のような古馴染みであったり、所謂『ファッション』の分野において凄まじい偵察力を発揮する乱藤四郎や加州清光であったり、あとはよくよくこうして共に手伝いをする短刀たちのうち数名くらいだ。一の刀がそれに気づいていたのは正直意外だった。面倒見のいい人ではあるけれど、この人は自分は勿論他人の見た目にも頓着しない。むしろ触れないようにしている節さえある。さすがに派手に汚れているとかあからさまに怪我をしているとかであれば声を掛けてはくるけれども。
 そんな人が色や形が違うものならともかく、色も見た目もほとんど同じで違いと言えば浅さだけの二種類の手袋を見分けているとは思わないだろう。知らず賛辞の響きを纏った呟きに、どこか居心地悪そうに一の刀は湖面の瞳を逸らす。
まあ、それなりの付き合いになるからな」
 それから取り繕うように響いた言葉に思わず笑ってしまった。だって嬉しかったのだ。確かに「それなりの付き合い」にはなるけれど、それでも『これ』に気づいているのはごく少数なのだ。その少数の中に、この人が入っていることが。
 ――貞宗がずっとあんたを待っていた。あまり寂しい思いをさせずに済んでよかった。歓迎する――ほっとしたように口にして、恐らく無意識にだろう、こぼれた笑みに惚れたのだと、親友が照れくさそうに打ち明けてきたのはしばらく前だ。できることなら想いが通じてくれたなら嬉しいと思ってはいたけれど、相手が相手だ。難しいだろうと半ば諦めてもいた。けれどこれは、もしかするともしかするかもしれない。
……何か言いたそうだな」
「みっちゃんな、こういうよくわかんねぇトコに拘るの大好きなんだよ。あんちゃんが気付いてくれたの知ったら喜ぶだろうなって」
 手袋を差し出しながらこれを伝えた時の親友の顔を想像してみたけれど、そういえば彼と惚れた腫れたの話題で盛り上がったことがない。データが無さすぎてちょっと難しそうだ。
 一の刀がはたりと金色のまつ毛を羽ばたかせる。
やめておけ。わざわざ不快にさせることもないだろう」
 何かを諦めたように軽く首を振ったその人が、けれど言うなとは言わなかったことに気づいたのは、畳み終えた洗濯物を各々の部屋へ運んでいる最中だった。

 ――なお親友に例の件を伝えたところ『伊達男』を置いてきたような、それはもう面白い顔をしたことも付け加えておく。

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初鍛刀の貞ちゃんはしょくんばを全力で応援してくれるだろうなっていう夢を見ています。ずっと。