紫輝
2024-01-27 02:02:44
15888文字
Public リオヌヴィ
 

【リオヌヴィ】My dear little Dragon.【原神】

トラップで小さくなったヌ様と小さなヌ様の可愛いを真正面から受けるセスリ殿の話です。私が持てる全力で可愛いを表現しましたちっちゃいヌ様はいいぞ。
書きたいこと全部詰め込んだら目を疑うくらいの文字数になってしまって私が一番びっくりです。ちっちゃいヌ様可愛いからね仕方ないね。楽しかったですとても。



 星の河の如く流れる銀髪と、世界が計算に計算を重ねて創り上げたと言われても納得できるほどの整った容貌。深海の色をした長いまつ毛に縁取られた瞼は未だ閉じられたままだが、その向こう側にある幻想的な色合いの瞳の美しさをリオセスリは知っている。
 ――よくよく見慣れた、ヌヴィレットの姿だ。
「戻った、か……
 安堵のため息が こぼれる。小さなヌヴィレットはそれはもう可愛らしかったけれども、やはりトラップを因とする異常はこのひとの身体に何か影響があるのではとそれなりに心配していたのだ。少なくとも見た目は元に戻っている。中身に関しては、彼が目覚めたら自ずと判断できるだろう。
 戻っていた時のためにと小さなヌヴィレットに寝巻きがわりに進呈した己のシャツから覗く目の毒でしかない白い肩をひとまずブランケットで覆い、目をやった時計は普段の起床時刻より少しばかり早い。ヌヴィレットに事情の説明をする時間くらいは充分にとれそうだった。彼があと数時間眠り続けなければ、の話だけれども。
……んん」
 小さな呻き声を上げたヌヴィレットが身じろぐ。ゆるゆると開いた瞳が ぼうと彷徨って、リオセスリを認めて焦点を結んだ。
リオセスリどの?」
「おはよう、ヌヴィレットさん」
 寝起きだからか、聞き慣れた声が昨日まで聞いていた拙さで名を呼んでくる。うん、やっぱりこのひと大きくても小さくても可愛いな。クロリンデ辺りに聞かれたら眉間に谷を作られそうな考えを笑顔で鎧ってかけた声に、ヌヴィレットはうん、と答えてから疑問符を浮かべる。
私は何故ここに?」
「中身も戻ったか。よかった」
「中身とは?」
「説明するよ。まずは紅茶を淹れさせてくれ」
 疑問符の数を増やしつつ起き上がったヌヴィレットの寝乱れた髪に指を通し、ついでに部屋着を手渡して、リオセスリはベッドを下りた。


珍しいな、君が朝からミルクティーを出してくるのは」
「あーっとすまん、つい」
 砂糖をひとつ。ミルクをたっぷり――普段のヌヴィレットはあまり口にしないミルク多めのミルクティーは小さなヌヴィレットの気に入りで、彼と過ごしている間せがまれるままにそうしていたらすっかり癖づいてしまったらしい。睫毛を羽ばたかせるヌヴィレットに頬を掻き、淹れ直すよと申し出るも彼は首を振る。
「君が私に淹れてくれたものだ。ありがたく頂くとしよう」
 ふう、と紅茶に息を吹きかけ、カップを傾けたヌヴィレットは不思議そうに首を傾げた。
これほど美味だったか?」
 いや君の腕を過小評価しているわけではなく。慌てたように続いた言葉と瞳に浮かぶ焦ったような色にくくと笑む。
「わかってる。過小評価されたとは思ってないさ。それが美味く感じるってことは、深層心理とやらに記憶が残ってるのかもな」
 リオセスリの語る昨日の出来事をまるで報告事項を聞くかの如く神妙に聞き終えたヌヴィレットは、ミルクティーで唇を湿してため息をついた。
「迷惑をかけたようだ」
「迷惑なんて思っちゃいないさ。むしろ普段できない分あんたを甘やかせて正直物凄く楽しかったな」
 小さな龍から向けられた全力の信頼と親愛は、それだけこのひとに想われているのだと感じさせてくれた。それにあの子は、あの歳の子どもとしては大変「いい子」だった。手を焼かされた記憶が欠片もない。
「小さなあんたには言わないようにしてたんだが可愛かったなぁ。役得だった。逆に俺が礼を言いたいくらいで、」
「君の」
 リオセスリどの、と名を呼んでコートの裾を引いてくる小さなヌヴィレットのことをつい思い出して緩んだ表情を咎めるように、硬い声が言葉を遮る。
「ん?」
「君の、水龍は、私だ」
ふっ、ふふ、」
 続いた言葉と、普段の平静を投げ捨てたむっとした顔に思わず笑ってしまった。不機嫌ですと伝えてくるその表情に小さな龍の面影が見える、などと口にしたらますます機嫌を損ねてしまうだろうから言わないけれど。
「リオセスリ殿」
「いや、悪い。同じヌヴィレットさんとは言え、あんたでないあんたに寄りすぎるのはマナー違反だよな」
 頬に触れると絆されてなるものかと言いたげに、けれどすりりと寄ってくる様が猫のようだ。
 ああ俺の水龍が可愛い。鍾離が花でも飛ばしそうな勢いで笑う姿を遠くに描きつつすべらかな頬の感触を楽しんで、仕上げとばかりに唇を寄せるとようやっと眉間のしわが消える。どうやらお許しいただけたらしい。やわらかに光る紫水晶を見ていてふと思い出した。
「そういえば小さいあんたから伝言を預かってたんだ」
「伝言?」
「『急いで俺好みの美人に育って俺が自分のつがいになってくれるように貴殿の龍を説得しにいくから伝えておいてくれ』ってさ」
「は……、は……?!」
 内容を解したのだろうヌヴィレットの白い肌が蒸発反応でも起きそうなほど赤く染まる。階調の瞳が見開かれたかと思えばぱちぱちとまたたいて、桜貝のくちびるが空気を求める魚のように せわしく開いては閉じ。
「私、わたしが、そのような、」
「あの子が美人になるの確信してるんだよな、俺。楽しみだなぁ」
 最終的に呻きながら両手で顔を覆ってしまった愛しいひとの肩を抱き寄せて、リオセスリはくつくつと笑った。
 後日。
 小さな自分に先を越された(という言い方が妥当かどうかはこの際脇に置く)のが相当堪えたのか何かを吹っ切ったらしいヌヴィレットに「君好みの美人に成長したので娶って欲しい」と告げられて喜んでと腕を広げ、君の命数に関しては今後改めて云々と何やら並べ立てていた言い訳を口付けで呑み込むことになるのだが、それはまた別の話だ。