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紫輝
2024-01-27 02:02:44
15888文字
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リオヌヴィ
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【リオヌヴィ】My dear little Dragon.【原神】
トラップで小さくなったヌ様と小さなヌ様の可愛いを真正面から受けるセスリ殿の話です。私が持てる全力で可愛いを表現しましたちっちゃいヌ様はいいぞ。
書きたいこと全部詰め込んだら目を疑うくらいの文字数になってしまって私が一番びっくりです。ちっちゃいヌ様可愛いからね仕方ないね。楽しかったですとても。
1
2
3
*ヌ様が5~6歳ほどの見目に縮みます
*溢れるご都合主義
いけない、と声がした。
腕を引かれて、よろめくように後退する体の前に躍り出た紺碧のコートがはためく。
閃光が視界を白く染めて。
戻って来た視界に映ったものに、空は嘘でしょ、と呻いた。
***
「まあまあまあ! ヌヴィレットさん、とっても可愛いのよ!!」
頬に手を当てたシグウィンが花を飛ばす。その緋色の瞳より少し高い目線で彼女を見つめ「君には親しみを感じる」とシグウィンを評した少年は、彼女の呼んだ名の持ち主と
――
ヌヴィレットと瓜二つだった。
「それで? 原因に心当たりはあるんだよな?」
怪我がないか診せてね、と声をかけるシグウィンと、頷いて身を任せる少年を少し離れた場所で見守りながらリオセスリは空に問う。散歩がてらに要塞内を見回っていたリオセスリの元へ、彼の相棒たるパイモンが文字通り飛び込んできたのはついさっきだ。その必死さから繰り出された頭突きをもろに食らった鳩尾がまだ痛む。
シグウィンを呼んでくれ、ヌヴィレットが。
なんだ落ち着けと宥めたパイモンの言葉に、リオセスリはシグウィンとパイモンを抱えて要塞を飛び出したのだ。
パイモンに案内されたのは要塞にほど近いリフィー地区の小さな島だった。精々海獣や原海アベラントの休息場所くらいにしかならないだろう、何かの拠点になるには狭すぎる島だ。地図に書き足す必要はないかなと職務のことをちらと考えつつ上陸した島に、空と少年はいた。しゃがみ込みルエトワールを見つめている銀髪の少年と、彼から形容し難い距離をあけて立つ金髪の少年の姿はなんともシュールだった。
シグウィンに少年を任せ、警戒されちゃって、と困ったように頬を掻く空に問いを投げて
――
少し前に戻るのだ。
「調査に入った秘境にトラップがあって。俺を庇ってくれたんだ」
気づいたらああだった、と空は眉を寄せる。意思疎通に問題はないが人間に対して警戒心が強いのと、それを抜きにしてもこの状態のヌヴィレットを任せられるのはシグウィンくらいしか思いつかなかった、そうだ。
「満点だな。あのひとのことなら看護師長以上に詳しい存在はいないだろう」
「地脈異常なら気にしないんだけど」
「原因を潰すか離れれば元に戻るからな」
頷き合ったところで鈴を振るような声に呼ばれ、そちらへと足を向ける。先の空の立ち位置を参考に小さなヌヴィレットから少し距離を取って立ち止まると、シグウィンがぱたぱたと寄ってきた。
「お待たせなのよ」
「どうだった」
「健康状態には問題ないわ。状況としては、ヌヴィレットさんの体内で時間が巻き戻ってる感じね」
シグウィンは人差し指で反時計回りに円を描く。
「巻き戻ってる?」
「自分の生きてきた時間を時計だと思ってみて。キミ達の出遭った何かの仕掛けが、その針を反対向きに動かしちゃったのね。だから今ヌヴィレットさんはああなってるんだわ」
ヌヴィレットさんでああだもの。キミだったら存在ごと消えちゃってたかも。
さらりと恐ろしい事を宣うシグウィンに空が思わず二の腕を摩る。五百年生きるヌヴィレットを子供の姿にするほどの『巻き戻し』だ。確かに少年が受ければ無事では済まなかっただろう。
「状況はわかった。で、その時計の針はどうやったら元に戻るんだい? 何か必要なものがありそうか?」
現状の理解が済んだなら、次は対応策を考える。問題解決のセオリーだ。シグウィンが開いた口が音を紡ぐ前に、くいと肩にかけたコートの裾を引かれる。思わず目をやった先で、こちらを見上げる宝玉とかち合った。
「ええと
…
初めまして。リオセスリだ」
まさかあちらから近づいてくるとは思わずうっかり出かけた動揺を瞬き二回で叩き伏せて、ひとまず小さなヌヴィレットを驚かさないようゆっくりと腰を落とす。見上げてきていた階調の瞳と目線を合わせてそう口にすれば、彼はこくりと頷いた。
「リオセスリどの。
…
わたしの事はヌヴィレットと呼んでほしい。彼女もそう呼ぶ」
彼女、とはシグウィンのことだろう。対面時のやり取りを見るに、記憶はほぼ無いと思ってよさそうだった。人間に当て嵌めるなら五、六歳ほどに見えるが、それにしては言い回しがしっかりとしている。そこに時々見え隠れする辿々しさが愛らしい
――
「よろしくな、ヌヴィレットさん。それで? 俺に何か話があるのかい?」
などという思考を笑顔に押し込め首を傾げて用向きを問うと、ヌヴィレットは小さな鼻をすんすんと鳴らし。
「水の気配がする。龍の気配もする。貴殿は我らに関わりのある者か?」
ぱちりとまたたいてこてりと首を傾げる。
「あー、まあ、そうだな」
可愛い。いやそうじゃない。発言と仕草のギャップがすごく可愛い。だからそうじゃない。ともすればまともな思考を放棄させようとしてくる脳の怠慢を叱咤してなんとか言葉にした答えはなんともぼやけたそれだった。
関わりがあるかと聞かれれば、ある。今はたいそう愛らしくおなりの目の前の水龍様とは恋仲であるので。まあ水の気配も龍の気配もするだろう。恋仲であるので。けれどそれをこの少年に伝えるのは躊躇われた。きっと、いや確実に混乱させてしまうだろうし、それが元で一般の『人間』より警戒などされたら流石に凹む確信があった。
「なんと言うか
…
個人的な知り合いがいるんだ。龍に。それでかもな」
苦し紛れに告げた答えに、少年はそうか、と。だからだろうか、と素直に頷き。
「貴殿のそばは安心する」
一歩距離を詰めて、その小さな手でこちらの服を握るので。
「
……
そうか。そりゃ何よりだ」
顔を覆って叫び出したくなる気持ちを、それはもう必死で押し殺す羽目になった。
――
ちなみに。
「ちっちゃくてもヌヴィレットなんだなぁ」
「ふふ、やっぱり旦那様はわかるのね」
「頑張れ、工場長」
言いたい放題の外野の言葉は努めて聞こえなかったことにしたし、少年に聞こえていない事を心から願ったりした。
「あー、看護師長? 俺たちは大切な話の途中だったと思うんだが」
脱線どころかカーレス線の如く線路ごと崩壊しているのではと思うくらい迷子になりつつある話題をなんとか手繰り寄せる。人間に対する警戒心が強いと聞いていた小さな水龍にこうもあっさり懐かれると悪い気はしない
――
正直物凄く気分がいい
――
けれども、彼は今状態異常をもろに受けているのである。それを思うと浮かれてもいられないのだ。そうだったわごめんなさい、とシグウィンが笑っているところからしてそれほど深刻な事態にはなっていないのだろうと予想はつくけれど。
「ええと、時計の針を戻すのに必要なものがあるかどうか、よね」
「ああ」
「ないわ。今この時にも、ヌヴィレットさんの時間は元に戻ろうとしてるみたい。遅くても数日で、元のヌヴィレットさんに戻ると思うのよ」
明日かもしれないし明後日かも。断定はできないけど。
シグウィンの診断に、まずは胸を撫で下ろす。であるならば、こちらは不測の事態に備えつつ彼を見守るだけでいいだろう。
「数日か。パレ・メルモニアにはなんとか頑張ってもらうとして
…
」
「ヌヴィレットはどうするんだ?」
「街は避けた方がいいよね?」
首を傾げる空とその相棒に是を返す。空一人であれだったのだ。見渡す限り人間に囲まれているような環境は今のヌヴィレットにあまり良いとは思えない。
「
…
メリュシー村は?」
うーん、と唸っていた空が顔を上げるのに、それだ!とパイモンが手を叩いた。
メリュシー村は名の通りメリュジーヌ達の暮らす村だ。海中洞穴を抜けた先にあり、滅多に人間は訪れない。彼女らは世話好きで心優しい種族だ。この少年が彼女らの敬愛する主であることを差し引いても、きっと快く彼を受け容れてくれるだろう。
「リオセスリどの」
つと、リオセスリの傍らにいたヌヴィレットが控えめに裾を引く。
「なんだい?」
「その
…
貴殿のそばにいるのでは、だめなのだろうか」
そしてぽそりと、伺うように口にした。人を警戒する小さな龍からの信頼だ。自分で良ければ喜んでと答えたい。答えたいが、如何ともし難い問題があった。
「あー
…
まあ、駄目じゃあないが
…
俺がこれから戻るところは「人間のたくさんいるところ」だ。それでもいいなら」
一応業務を抜けてきている身である。ヌヴィレットの件がまとまればメロピデ要塞へ戻らなければならない。護衛兼経過観察要員として傍についていてやりたいのが本音ではあるが、他でもないヌヴィレットに信頼され任されている立場を疎かにはできなかった。かろうじて「水に近い」という利点がなくもないが、人間だらけの閉鎖空間は今の彼にはストレスにしかならないだろう。
「かまわない」
「即答かぁ」
…
という、一応彼を案じての確認を予想外の勢いで切り返されて頬を掻いた。このひとはこういう所があるのだ。少しでも己の希望が通りそうな兆しを見れば多少の不都合に見向きもしない。それがこのひと自身にとっての不都合であってもだ。
「
…
やはり迷惑だろうか」
「いいや。頼ってもらえて嬉しいよ。それに俺は水龍の頼みは断れないタチでね」
それでいてこちらの都合は最大限に考慮しようとする。不器用なこのひとの、控えめで下手くそなわがままを愛おしむななんて言う方が無理なのだ。言葉通りなんだって叶えてやりたくなってしまう。際限なく。
しょん、と下がる眉と勢いを欠く語気に、思わず小さな頭へ載せた手を拒まれなかったのをいいことによしよしとそこを撫でて笑みを浮かべれば、小さなヌヴィレットはありがとう、とほっとしたように呟いた。
***
「なるほど、それで俺を」
ぱちりと、鍾離がその琥珀の瞳を瞬く。ごめんね先生、と恐縮していた空は、今はリオセスリの代わりにパレ・メルモニアへ事情の説明に行ってくれていた。
「黄金
…
? じゃない、岩
…
?」
「よく分かったな。俺は鍾離。彼の友人だ」
リオセスリの背後から窺うように顔を覗かせるヌヴィレットの半ば独り言めいたそれに、鍾離がにこりと笑む。彼が限りなく自分に近い種だと感覚で理解しているのだろうヌヴィレットは、その答えに不思議そうに首を傾げた。
「? 貴殿が彼の龍ではないのか?」
うん?と、鍾離は目を丸くしてリオセスリを見る。
「この子にはどこまで話しているんだ?」
「ほぼ何も。伝えていいものかも分からなくてな」
小首を傾げられるのに肩を竦めてそう返せば、琥珀の瞳が細まって。
「なるほど。であるのにこれか。ふふ」
ちらとリオセスリの服を掴む小さな指へ目を落とし鍾離は肩を揺らす。微笑ましいものを見るように。
「鍾離さん」
「いやすまない。君たちは本当に仲が良いな。
…
では俺もそのつもりで話をするとしよう。リオセスリ殿から岩の気配はするだろうか?」
どうにもこそばゆいそれに寄せた眉にあまり誠意の感じられない謝罪を口にした鍾離は、ヌヴィレットに向き直るとそう問いかける。
「
…
水の気配だ」
「そうだろう。彼の龍は水龍だからな」
ぶんぶんと振られた首と先にも言われた気配の属性に、鍾離がよくできましたとばかりに頷いた。
…
ところで『彼の龍』という言い方が無性に恥ずかしいのは自分が人間ゆえなのだろうか。二人がしれっと口にしているところを見るに龍の世界では普通のことなのかもしれないが、自分には少々、いや割とむず痒い。
「水龍
…
だから
…
」
ヌヴィレットがぽつりと呟く。
「なにか気になる点が?」
「水龍の頼みは断れないと、リオセスリどのは言っていた」
「ふっふふ。そうか。彼は彼の龍をとても大切にしているからな」
「あー、鍾離さん、そのくらいにしてもらっていいかい?」
今度こそ吹き出した鍾離と何故かむぅと膨れるヌヴィレット、という
二匹
ふたり
の龍の様に、堪えていたため息を吐き出して割って入る。このままでは際限なく羽根で背筋をくすぐられるような思いをしなければならない気がした。
「いや、うん、すまん。
…
さて。俺がここにきたのは、君に
守護
まじない
を施すためだ」
「不要だ。人間に遅れは取らない」
こほん、と、わざとらしく咳払いを挟んだ鍾離が笑みを収めて口にする。対するヌヴィレットは眉を顰めて首を振った。確かに「幼生の君には守護が必要だろう」と言われればいい気はしないだろう。龍は誇り高い生き物なのだ。
ヌヴィレットの拒絶を予期していたかのように、鍾離は頷き、やんわりと言葉を紡ぐ。
「そうだな。君は強い。だが君はこれからリオセスリ殿のところに身を寄せるのだろう? 彼がこれから戻る場所には人間が多くいる。そういう場所に行くときは、こちらも相応の対応を取らねばならない」
「相応の対応とは?」
「色々あるが
…
今回は
隠行
おんぎょう
だ」
「身を隠す? なぜ?」
「君を侮り、手を出してくる人間からの干渉を避けられる」
「
…
そんなことはさせないが」
うっかり声に出してしまった。鍾離の事だからこれも説得の一環と分かってはいるけれどもそれはそれ。同族の守護がなければ自らの領地で、自らが護衛を務める大切なひとに軽々しく触れられる輩がいると思わされるのはあまりいい気分ではない。
「それに」
リオセスリの地を這う呟きに気付かないふりをしてくれた鍾離は大真面目に畳み掛ける。
「それに?」
「身を隠していればリオセスリ殿に着いて回っても誰にも見咎められないぞ」
「分かった」
何を言うのかと思えば突然妙な方向へ飛んだ説得に思わず目が丸くなった自覚があった。真面目な顔で何を言い出すのだろうこの人は。そしてヌヴィレットも天啓を得たように頷くのは何故なのか。そんな理由で納得してしまっていいのか。言いたいことがありすぎて何も言えない間にも会話は進んでいく。鍾離の楽しげな顔で背筋がかゆい。
「だが貴殿の力は借りない。目眩ましくらい私にもできる」
身を隠す事を受け入れたヌヴィレットは、鍾離の申し出には重ねて首を振る。やはり譲れない部分があるらしい。
「うん、その矜持の高さ、同じ龍として誇らしい。だが万が一があってはいけない。今回は俺に協力させて欲しい」
「
…
むぅ」
「では彼の持ち物を媒介としよう。これでどうだろうか」
鍾離の声はどこまでも優しい。ヌヴィレットはリオセスリの十七倍程の年月を生きるひとではあるが、齢六千を越える鍾離からすれば『可愛い同族の仔』くらいの感覚なのだろう。
それにしても唸るヌヴィレットに次々と妥協案を提示してみせる手腕が素晴らしい。この人政治力もあるんだな、まあ璃月を統治してた人だから当然か、などと『交渉』を見守っていると、鍾離はその指を唇に当て。
「ふむ
…
彼の龍であればこのあたりで納得してくれるのだが」
参ったとでも言うように口にする。だからしれっとその呼称を使わないで欲しい。し、常のヌヴィレットであればとっくに話はついているだろう。譲れない一線があったとして、あのひとはそれと上手く折り合えるひとだ。万全のヌヴィレットが鍾離の手を借りる事態なんてそれだけで大惨事の予感しかしないけれども。
「
………
わかった」
「よし。というわけでリオセスリ殿。何でも構わないのだが、君の身につけている物を貸してはくれないだろうか」
引き合いに出された常のヌヴィレットの何が彼に刺さったのかはわからないが、小さなヌヴィレットが長めの沈黙を経て、不満を滲ませつつも頷いたところで、彼を見下ろしていた琥珀の視線がリオセスリへ向けられた。
「って言われてもなあ。ヌヴィレットさんが持ち歩けそうなものなんて
…
こいつくらいか?」
「ああ
…
いいな。直接君の肌に触れているものだ。この子に不満はないだろう。鎖を通せば簡単に身につけられるしな」
ぴん、と右耳のピアスを弾いて首を傾げれば、鐘離は瞳を細めて満足げに頷く。外したそれを手渡すと(勿論きちんと布で拭いた)、鐘離はピアスを両手で包み何かを呟いた。金色の光がピアスに吸い込まれるようにして消える。どこからか取り出した細い鎖にそれが通れば少々個性的なネックレスが出来上がった。当然のように手渡されたそれを促されるままに細い首に掛けてやれば、心なしか輝きを増した瞳がつまみ上げたピアスを見つめる。宝物が増えてよかったな、と鐘離が掛けた声にこくりと頷かれて、なんとも言えない気持ちになった。
「随分とまあ愛らしくなったな、君の龍は」
「楽しそうに連呼しないでくれ
…
」
くすくすとさも愉快げに鐘離が笑う。ちなみに渦中の小さな水龍様は現在お召し替えの真っ最中だ。かのトラップが衣服を考慮してくれるはずは勿論なく、ヌヴィレットその人のドレスシャツをワンピースの如く身につけている状態はさすがによろしくなかろうと並ならぬ気合いで千織屋へ出向いていったシグウィンは先ほど戻って来ていた。予算は、と問うてくる彼女に天井が必要かい?と返した時の笑顔はそれはもう眩しかった。
「あの子の身体と精神はあの通り逆行しているが、あの子を形作る根幹に変化はない。安心して良い」
「つまり?」
「いつもより少しばかり心に忠実なだけで、あの子はあの子のままということだ」
記憶がないせいで元のヌヴィレット殿に対抗心が見えるくらいかな。
完全にこの状況を楽しんでいる龍種の大先輩は、いまだ肩を揺らしながらさらりと爆弾を投げて寄越す。
「あーーーーーー
……
」
受け止める間もなく爆発したそれの衝撃で、ここに至るまでの諸々が勝手に脳内で再生されて思わず頭を抱えた。
要するに、まあ、そういうことらしい。なんだそれは。俺のひとが可愛いにすぎる。ちょっとキャパオーバーかもしれない。
「君のことだ。只人相手に万が一など起こさないだろうし、あの子も小さくとも龍王だからな。何事も起きないだろうが、しっかり護ってやりなさい」
「ハイ」
何かあれば呼んでくれ。
あまりにも気安く、ぽんと肩を叩きさえして鐘離は帰って行った。どうも最近あの人に親戚か何かと思われている気がするなぁなどと考えつつ、今度口に合いそうな紅茶を贈ろうと脳内で候補をリストアップしている間に「お召し替え」は終わったようで。
どこぞの貴族のご令息と言われても何ら違和感のない、普段よりはゆったりとしていながらも気品のある服装に見た目通りの愛らしさを足されてしまった、あまりにも麗しいに過ぎる小さなヌヴィレットが戻ってくる。少し後ろから追ってくるシグウィンは達成感に満ち満ちた顔をしていて、拍手を送りたい気持ちとやり過ぎだと苦言を呈したい気持ちが彼女の作るミルクセーキの如く混じり合った。
似合うだろうか。
おずおずと問われるそれに返せる言葉が「ああ、とても」以外にあるはずもなく、よかったとほわり微笑まれて鷲掴まれる心臓に、このひとは
理性
ストッパー
が強すぎるくらいでちょうど良いのかもしれないと思った。
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