Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
たかせ
2024-12-25 23:39:11
8996文字
Public
二次創作絵・漫画
Clear cache
年末アライズ
一年を締めくくる時期のそれぞれのペアの話
2ページ…キサラとテュオハリム
3ページ…シオンとアルフェン
4ページ…リンウェルとロウ
1
2
3
4
◆リンウェルとロウ
ぱちりと目を覚ますと、まだ部屋は薄暗かった。
どうやら早起きには成功したらしい。
そうとわかればやることは一つだけ。急いで寝台を降りて上着を羽織り、よし、とひとつ気合いを入れた。
「うっし!これでこの辺りは一通り終わったな」
屈んでいた腰をぐっとのばしたロウは、きれいになった動物たちの宿舎を満足そうに見渡した。
床を磨き、藁を敷き替えた寝床はふかふかとやわらかそうで、自画自賛だがなかなかいい出来栄えだと思う。ガタがきていた柵もいくつか直したし、これで気持ちよく新しい年を迎えられるだろう。
「おーい、リンウェル。そっちはどうだ?」
残った藁を抱え上げ、ブウサギたちの餌箱を磨いていたリンウェルを振り返る。すると、餌箱を磨いていた少女は小さく「ふわあ」と口を開けているところだった。
思わず無言で見つめていれば、視線に気づいたのかはっとして振り返ったリンウェルと視線が合う。「あ」と小さく呟いた彼女は慌ててその口を閉じた。
「お前また夜更かししたのかよ」
「してないけど」
「けど今あくびしてたじゃねえか」
「
……
したくもなるでしょ?お天気いいし、お昼寝したらあったかくて気持ちよさそうなんだもん」
確かに彼女が言うように天気はいいし、昼寝したくなるのもわからないではない。だがあからさまに視線をそらしてそう言われてしまうと、疑いたくもなる。
理由はどうあれ寝不足はよくないだろ、とロウはため息をついた。
「忙しいなら無理すんなって言っただろ。手伝いがなくたって俺一人でもなんとかなるんだしよ」
「別に無理なんてしてないから。研究はひと段落ついたって言ったでしょ」
「けど」
「もう!大丈夫だって言ってるじゃない。それとも何?私がいたら迷惑?」
「そんなこと一言も言ってねえだろ」
矢継ぎ早に言葉の応酬を繰り返したのち、お互いにムッとした顔で向かい合う。剣呑な気配を察したのか、藁の上で寝心地を確かめていたフルルがぱさりとひとつ翼を打った。
その時。
「おーい、お前さん達。そろそろ休憩にせんか」
奥からボグデルがそう言いながらひょこりと顔をのぞかせた。
「もう昼時じゃし、腹も減っただろう」
そして続けられた言葉に慌てたのは、リンウェルだった。
「え!もうそんな時間?!」
そう言って振り返るやいなや、がし、とロウの腕を掴んで早口に言う。
「ごめん、ロウ!ここの片付け頼んでいい?」
先ほどまでのやり取りなどどこへやら。何ら必死なその様子に、目を白黒させつつもロウは素直に頷いた。
「へ?あ、お、おう」
「ありがと!じゃあ、よろしくね!行こうフルル」
「フル〜!」
その手に布巾を託したリンウェルは、フルルを抱きしめてあっという間にボグデルの横を通り過ぎていってしまった。
そんなに腹減ってたのかアイツ。
藁を片付け水場で布巾と手を洗って居住スペースへと足を踏み入れると、すでに小さなテーブルの上にはほかほかと湯気を立てるカップが並べられていた。いつもと違う香ばしい香りがするところを見ると、リンウェルが用意していたのかもしれない。脇にある小皿では、フルル一足先にちょぴちょぴと水を飲んでいる。
いつの間にか定位置になった丸椅子に腰掛けたロウは、ふと見慣れない大きなバスケットが置かれているのに気づいた。
「何だ?それ」
「何じゃ。坊主は知らんかったのか」
首をかしげたロウに、ボグデルはぱかりとそのふたを開けてやる。誘われるまま中を覗き込めば、そこにはぎっしりとサンドイッチが詰め込まれていた。香ばしい香りが漂って、思わずぐう、とロウの腹の虫が鳴く。
「すげえ!どうしたんだよこれ」
「嬢ちゃんが作って持ってきてくれたんじゃ」
「え?」
よっこらしょ、と隣に腰かけたボグデルの言葉に驚いて思わず顔を上げれば、自分のカップにお茶を淹れていたリンウェルがぴたりと動きを止めた。
「え、これお前が作ったの!?」
バスケットとリンウェルを見比べて素っ頓狂な声を上げたロウに、リンウェルは緊張した面持ちで「そうだけど」と頷く。
「
……
言っとくけど、キサラみたいに上手じゃないからね」
「え、そうか?すっげー旨そうだけど」
鶏肉を甘辛く焼き付けて挟んだもの、ゆで卵をつぶしたものと一緒にベーコンとレタスが挟まれたもの、とろりとしたチーズがかかったトマトが入ったオムレツが挟まれたもの
――
どれも見るからに手の込んだ、立派なサンドイッチだ。
ロウはおもむろに一番手前にあった鶏肉が挟まれたサンドイッチを手に取った。確かに具がはみ出てはいるけれど、たくさん食べられるのだからロウにしてみれば願ったりかなったり。気にするようなことでもない。
そのまま口に運ぼうとしたロウに、あ、とリンウェルが口を開きかける。ぱちりと目が合った。
「
……
食っていいんだよな?」
「
……
いいよ」
「んじゃ遠慮なく、いただきます!」
がぶり。
勢いよく噛みつけば、ぱりっと焼かれた皮の旨味と共に甘辛いロウ好みの味が口の中に広がる。鶏肉もパサつくことなくしっとりと焼きあがっていて、絶妙な食べ応え。
端的に言えば。
「うまい!」
ぺろりと口端についたたれを舐めとって、ロウはリンウェルを見た。
「すっげー美味いこれ!」
「
……
そ、そう
……
?」
「おう!ほら、じいさんも食ってみろって!」
「そう急かすでない。どれ
……
じゃあ儂はこれをいただこうかの」
ロウとは別のひとつを手にとって、ボグデルもひと口かぶりつく。
もぐもぐとゆっくり噛みしめること十数秒。
「ほー!こりゃあ見事なもんじゃ。うまいのう」
「だろ?」
「何でお前さんが得意げなんじゃ」
呆れたように笑ってそう言い、ボグデルは食べ進めるロウの脇腹をつついた。
「ほれ、二つ目を食べる前に言うことがあるじゃろうが」
「へ? あ、あーっと」
言われて、ロウは未だテーブルに着くことなくこちらを見つめているリンウェルに気づいた。先ほどよりはどこかほっとしたようなその表情を前に、素直に口を開く。
「その、ありがとな、リンウェル」
「
……
どういたしまして」
口に出してから何だか気恥ずかしくなってしまう。お互い視線を外してしまった二人を、フルルが満足そうに見上げていた。
サンドイッチでしっかりエネルギーを補給したおかげか、今日予定していた範囲の掃除は予定よりもだいぶ早く片付けることができた。
明日はここ数日世話になった寝床周りの掃除と、ボグデルと一緒にヴィスキントまで買い出しに行く予定だ。
「つーかお前、毎日来てるけど本当にいいのかよ?」
「え?」
気付けばもう3日。それなりの時間を一緒に過ごしていたことに気づいてロウはリンウェルを見下ろした。
「仕事とかあるんじゃねえの」
「それは、ちょっとお休み貰ってるから大丈夫。それにほら、私もたまには体動かさないと、なまっちゃうし」
少し早口にそう答えたリンウェルは、ついでに少し足も速めた。料理を教わりに行った時やけに微笑ましく見守られたのを思い出して、頬が熱い。
「ふーん
……
まあ、無理くりやってるんじゃなけりゃいいけどよ
――
って、ああ!!!」
と、ロウが突然大きな声を上げたのでリンウェルは思わずびくりと肩を揺らしてしまった。
「な、何よ突然!?」
「わかった!お前、そういうことかよ!」
「何?何の話?」
「サンドイッチ!」
ロウは不意に繋がった点と点に思わずがしがしと頭を掻いた。
なぜもっと早く気づかなかったのか。
「お前、あれ作ってたから寝不足だったんだろ」
「!」
昼食時に何も言われなかったから、その前の会話も含め、忘れられたと思っていたのに。
翡翠の瞳にじっと見つめられたリンウェルは、もごもごと小さな声で答えた。
「
……
だから夜更かしはしてないって言ったでしょ」
そう。したのは早起きだったのだ。
「
……
そう、だよな
――
悪かった。勝手に決めつけて、あんな言い方しちまって」
「ううん。私の言い方も悪かったもん」
いつの間にか足を止めた二人は、おのおの自分のつま先を見つめたまま向き合った。
「久しぶりで楽しかったから
……
何かお返しできないかなって思ったんだけど
……
1人で作ったのは初めてだったから思ったより時間かかっちゃって。でもそのせいにはしたくなかったっていうか
――
ごめん、何かうまく言えない」
視線を落としたままぽつぽつと紡ぐリンウェルに、フルルがそっと頬を寄せる。
「いいって。それにお前の気持ちは十分伝わったんじゃねえの?」
「
……
本当?」
「ああ」
ボグデルも美味しそうに珍しくおかわりをしていたくらいだ。味もさることながら、きっと早起きして頑張ったリンウェルの行動も嬉しかったのだろう。
力強く頷けば、それを聞いたリンウェルは、そっか、とはにかむように笑った。くすぐったそうなその笑顔に、一瞬目を奪われる。
いつもこうやってればいいのに。
――
いや、こうしてやれればいいのに。
込み上げたものを飲み込むようにぐ、と腹に力を入れていると、リンウェルがぽつりと呟いた。
「
……
ロウも?」
「え?」
きょとんと見返せばリンウェルも同じように見返してくる。
じっと見つめてくる大きな蜂蜜色の瞳が夕日を照り返してきらきらと輝いた。
「
……
お、おう?うまかったぜ?」
「
――
ふふっ。何それ」
「はあ?いや、だってお前が俺はって訊くから
――
」
「はいはい。お口にあったようで何よりです」
掴めそうで掴み切れなかった何かは、空気と共にすぐに霧散してしまった。
ただ呆れたようにそう言って笑う彼女が楽しそうなので、今はこれでよかったのだろう。と思うことにした。
1
2
3
4
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内