ぬこ尻ryo
2024-12-18 21:06:51
9309文字
Public ぴく支部再掲※R18G
 

狂人と竜の王

※妄想捏造ifのお話

もし竜穴組がマナの聖域で生き延びていたら。
デュランが、光クラスと闇クラスで分離して存在できたら。

っていう妄想

※竜帝さまと、光クラスデュラン(セイバーさんで妄想)しかほぼ出てきません。

※性的行為表現はありませんが、あいかわらずの、グロテスク表現、カニバリズム表現があります。
※原作ネタバレ有
※前提条件として腐BL。光×闇。光デュランからの闇デュランへの扱いがひどいです。


18.12.2024
ちょっとだけ誤字訂正



【la perspectiva de 狂騎士 】






神獣が復活した。
世界が負の力に飲み込まれていく。
災厄の闇に侵食されていく。

負の力が世界を侵食していくように、己の肉体も、侵されていく。

自分のうちにある、心の闇が濃くなっていく。
血管に溶け込んで、全身をかけめぐる。
ウィスプの力で得た聖なる光の力。
それは彼にとってもっとも信仰するものへの信仰心を依りどころとした。

その信仰心は、世界に満ちた負の力に中てられて、狂信者のそれに染まっていく。
神獣の災厄は、聖なる騎士を一人の狂信者へと生まれ変わらせた。

世界が争いの渦に飲み込まれるのが近い。
彼の瞳から、光が消えた。
その双眸は、漆黒の闇に染まった。
新月の夜のようなその双眸が映すものはただ一つだった。

彼がもっとも敬愛し崇拝し、魂をささげた存在。
「国王陛下」

この混沌に堕ちた世界にあっては、男にとってその存在は、神に等しい存在だった。
いや、もはやこの男の中では彼の者は『神』として存在していた
混沌に堕ちた世界を破壊し、作り上げる新たな世界を治める『始祖神』として。

心の闇が、いっそう濃くなっていく。

「世界を、国王陛下のために。」

そのためならば、手段は択ばない。
どんな方法をもいとわない。

聖なる騎士は、自らの心の闇に支配された。

そうだ、あいつらを利用してやろう。
マナの聖域で行方をくらませた、死にぞこないの、あの古の竜を。

世界に満ちた負の力は、さらに、聖なる騎士の心と肉体を二つに分断した。

それは互いに、おさまる場所を取り違えた、不幸な事故。
蝶の羽ばたきのひとひらのような、些細な間違い。

だがそれは、世界をつくり変える力に変わっていく。




二つに分かれた片割れである狂騎士は、考えを巡らせた。

竜帝は、完全体になるまえに、暗殺された。
マナの剣を求める他勢力の力によって。
そうなれば、あの暗黒の騎士は間もなく消滅するだろう。
竜帝の闇の力を糧としているのだから。

紅蓮の魔導師なんぞは、もはや亡骸。
そんな死骸を喰っても食っても、竜帝の完全復活には微塵も役にも立たない。
もし生き延びていたとしても、もはや風前の灯火。
赤子の手をひねるようなもの。
足元を這う蟲けらを踏み潰すことと同じ。
その弱みにつけこむなら、いまだ。

やつらには、力が必要だろう。
負に侵された聖騎士は自らの片割れを、剣士としての純粋な力の顕現を供物として、竜帝に取引を持ち掛ける計画をたてる。
世界が滅びの道を歩むことを止められないのならば、
閣下を『始祖神』として新たな世界をつくりだせばいいだけのこと。

そこまでの思考に至り、狂騎士が歪に嗤った。




狂騎士は単身、ドラゴンズホールを訪れた。
マナの聖域で深手を負った敵方が姿をくらませられる場所など多くはない。
ならば奴らの古巣をあたるのが手っ取り早い。

自分の半身を手土産にして。
容赦なく自らの半身を盾にして、襲い来るドラゴンどもを薙ぎ払う。
自分は後方で高みの見物を決める。
半身が戦いに倒れれば魔法で無理やり立ち上がらせる。

当然、身体の傷は消せても、体力は消耗する。
精神も、養分として狂騎士に吸い取られる。
だが狂騎士はそれが当たり前のことであるように、感情をまったく変えず、半身を使役した。
むしろ、狂騎士からは、一切の感情が消えていた。
だからこそ、自らの半身であろうとまようことなく、「国王陛下」と「その他」の後者に切り捨てることが可能だった。
狂騎士にとって、半身は、使い捨ての消耗品、でしかなかった。


半身の肉体の消耗も激しくなってきたころ、狂騎士は「底知れぬ穴」を見つけた。
半身がその深淵のそばに立つと、「ここから竜帝と黄金の騎士ロキが落ちたのか」、と彼の感慨のようなものが狂騎士に伝わってきた。
だが感情を切り捨てた狂騎士にとっては、感傷など無駄な要素だった。
この狂騎士にとって、『始祖神』たる国王陛下以外は、意味のない存在でしかないのだ。


狂騎士は、半身の背後に回り、肩当を外し、右肩に左手をかけた。
右手で半身の手首をつかみ、右腕を水平に90度、肘を上90度に曲げ、背面に強く引いた。
ごきん、という関節が抜ける音と同時に、半身の力が肩から抜ける。
唸るような低い声が聞こえた。
左側も、同様に肩関節を外す。
これで、両腕は使い物にならなくなった。
念のため、両手を背に回して重なった腕ごと、有刺鉄線で縛り上げる。
短い針金の先端が、棘のように容赦なく半身の皮膚に食い込む。
半身が、苦痛に顔をゆがめた。
棘は皮膚に無数の穴をあけて、体液を滴らせる。
血の匂いに吸い寄せられたのか、周囲にドラゴンたちの気配が集まってきた。

次いで、狂騎士は、半身の足に呪詛の込められた拘束具をとりつけ始めた。
万が一にも抵抗されないようにと、半身の後頭部をつかむと近くの岩壁に叩きけるように顔面を押し付けた。
そのまま、岩壁伝いにずるずると頭を引きずり、位置を下げる。
両膝が折れて、地に膝が着く。
狂騎士は半身の頭を押さえつけたまま、剣を抜くと、半身のかかとの上をねらい、ためらいなく刃先を突き立てた。
ぶち、と腱の切れる音が聞こえた。
反対側の足首も同じように剣先で切る。
それからようやく、狂人は切った腱を覆い隠すように、鉛付きの鎖を取り付けた。

最後に狂騎士は、自分が万が一にも竜帝に返り討ちに合わないようにするため、後頭部を押さえつけている手のひらに精神力を集中させ、半身に残る『力』を自分へと移動させた。
供物は、完成した。
ここでようやく、狂騎士は、穏やかな笑みを浮かべた。



しかし、血の匂いに誘われたのか、魔物が気配が濃くっていくのも確かだった。
聖騎士は躊躇いなく、ただの積荷になった半身の塊を、「底知れぬ穴」に突き落とした。
暫時落下音が聞こえてくるが、それもすぐに深淵の底に飲み込まれて消えた。

狂騎士は自分自身も深淵の底へ向かうための準備に取り掛かった。
手早く、用意してきた丈夫な麻縄を腰に縛り、一方の先端を近くの岩にしっかりと縛る。
力を込めて引っ張っても動かない。
縄が固定されたことを確認してから、狂騎士はするすると岩壁を伝って、深淵の底に向かって降りて行った。


重力への抵抗を持たず突き落とされ、四肢の自由を封じられた半身の塊は、損壊のひどい肉塊のように身動ぎもせず、底に在った。
受け身が取れないのだから、当たり前だ。
ぐちゃりと瓦解した甲冑と肉の塊のように見える、人型を保っていない半身に近づいて、その一部をつま先で小突く。
かすかに、反応があった。
指先が、ピクリと動いた
まだ死んではいないことを確認する。
ただ、底に打ち付けられた衝撃で、いたるところの骨は砕けていて、内臓はぐちゃぐちゃに破裂している可能性はあった。

だが半身の状態など狂騎士にとってはどうでもよいことだった。



半身を一瞥してから、狂騎士は天使の聖杯をとりだした。
屍肉食動物に群がられた屍塊の残骸を眺めるように見下ろした。
聖なる力で満たされた杯を、穢らわいいものを清めるかのように、半身に向けて放り投げた。
聖杯に満たされた光輝く聖なる水が空中できらめきながら飛散し、半身の肉体に降り注ぐ。
ウィルオウィスプの光を彷彿させる柔らかな光の粒子が煌めきながら肉体を包み込む。
ゆっくりと、半身の肉体が黄泉がえってくる。