ぬこ尻ryo
2024-12-18 21:06:51
9309文字
Public ぴく支部再掲※R18G
 

狂人と竜の王

※妄想捏造ifのお話

もし竜穴組がマナの聖域で生き延びていたら。
デュランが、光クラスと闇クラスで分離して存在できたら。

っていう妄想

※竜帝さまと、光クラスデュラン(セイバーさんで妄想)しかほぼ出てきません。

※性的行為表現はありませんが、あいかわらずの、グロテスク表現、カニバリズム表現があります。
※原作ネタバレ有
※前提条件として腐BL。光×闇。光デュランからの闇デュランへの扱いがひどいです。


18.12.2024
ちょっとだけ誤字訂正




【la perspectiva de huge dragon 】






世界に神獣が現れた。
それは太古の時代に世界を破滅の危機に陥れた存在。

マナの女神によって討伐され、八つの体に分割されてマナストーンに封印された災厄。
神獣の封印が解け八つの体が再び一つに戻る時、世界は滅びると言われている、負の権化。

世界が再び混沌へと舵を向ける。

今、ミラージュパレスとダークキャッスルを拠点とする各勢力は、マナの聖域から聖剣を奪い、神獣の力を解き放ったのか。
ドラゴンズホールの深淵、竜帝は息をひそめ、死の間際で、神獣の息吹を感じていた。
共に沸きだした負の力が、世界を侵食していく気配も、感じ取っていた。

願わくば、自らの力で世界が闇に飲み込まれていく様を見届けたかったものよ。

マナの聖域で敵対勢力に打ち負かされ、瀕死の深手を負った竜の王は、自らの拠点である深淵の奥深くでその命が尽きようことを悟っていた。

彼奴らの狙いは、聖剣、マナの剣。
聖剣の勇者どもを、世界に飛び散った八つの神獣を倒すよう導き、生じた負の力をマナの剣に集約させること。
それによって完成される、暗黒の剣をもって、世界をわが物とする計画。

互いの利は一致していた。
だがその先の目的を違えていた。

竜帝も、負の力が集約されたマナの剣を求める勢力の一人だった。
「聖剣の勇者」たちが倒した神獣の負の力を吸収して、聖なる剣は暗黒の剣と変わる。
この暗黒剣の力を取り込み闇の力に換えて、自らの力とする。
それによって己の肉体の完全復活を目論んでいた。
かつてすべてのドラゴン族を治め頂点に君臨していた、竜の王であるヒュージドラゴンへと。

しかしもはやその望みもかなわぬ。

竜帝は、マナの聖域にて他勢力との争いに敗れた。
満身創痍の状態で自らの拠点であるドラゴンズホールへと帰り着いたことはもはや奇跡に近かった。
竜帝の命の灯が消えるのも時間の問題。
竜帝は、自らを待つ『終』の運命を諦観していた。
悲願であった完全体への復活もままならぬまま、ここで朽ち果てるのか。

竜帝の野望は道半ばで潰えた。
完全体にはなれなかった。
始まりのニンゲン、紅蓮の魔導師の魂は、所詮は魔力の素質ゼロの人間。
そんな半端ものの魂半分から始まった我が命運。
阿奴はもはや『糧』としての役割も果たさない。
所詮は、只のニンゲン風情の魂なのだ。
彼の肉体は、竜帝がほぼ喰らいつくして、いまや骨と皮状態。もはやただの抜け殻。
骨の髄くらいしか、喰える部分もないただの残滓。
我が身完全復活の力としては、意味をなさぬ。

竜帝の脳裏に、漆黒の甲冑に身を包んだ剣士の姿がよぎる。
しかしすぐに、竜帝は頭をふった。
のちに片腕として黄泉がえりをさせた黒曜の騎士も、竜帝自身から生じる闇の力を源にしている。
竜帝の闇の力が消滅してしまえば、ただの亡霊に返るだけ。

もはや、これまでか。
竜帝は、無残に破壊された自らの肉体を横たえる。
もはや、己自身の力で体を支えることもままならない。
崩れ落ちていく肉体を、その瓦解をとどめる力は、竜帝には残っていなかった。

最期に、我が根城へと帰還できたことだけは、唯一の奇跡だった。
これ以上、悲願を果たすことはかなわない。
それを叶えるためには、竜帝には、これまでにない『力』が必要だった。
そして、老いて傷ついた今の肉体という器にとって、その『力』は、諸刃の剣となるであろうことも、承知していた。

竜帝は、苦しそうにふうと息を吐くと、ゆっくりとまぶたを閉じた。
ヒト型を保つのも、ままならない。
さあ最期の時がきたか、そう覚悟した瞬間。
どおん、と竜穴を揺るがす重く激しい爆発音が響いた。
爆音にかき消されてはいたが、ぐちゃり、と何かの塊が潰れる鈍い音も混ざっていた。

竜帝は鉛のように重いまぶたを、残る力のすべてで開いた。
竜帝が煩わしそうに音のした方へ目線をやった。
今になって、この『底知れぬ穴』に命を投げるものが現れたのか。

竜帝は、ソレ、に神経を集中させ、耳をそばだてた。


底に落ちていたのは、手足を拘束され身動きを封じられた聖剣の勇者一行の、一人だった。
霞む脳裏で彼奴の姿を思い出す。
今になって、何ゆえに彼奴がここへ現れたというのか。

そこへ同じ姿かたちをしたもう一人のニンゲンが降りてきた。
重い積荷のように落とされた最初のニンゲンとは違い、縄状のものを使い、、慎重にこの地底に足をつけた。

そのニンゲンは、周囲をぐるりと見渡したのち、竜帝の姿を認めたようだった。
無遠慮に竜帝の朽ちた肉体の前へと近寄ってきた。
そしてあろうことか、気高き竜の王である竜帝のこうべを、ぐしゃりとつかみあげた。
まるで狩りの獲物を扱うかのように。。

そして、取引を持ち掛けてきた。

竜帝は、わが目を疑った。
まさか「聖剣の勇者」の仲間のいっぴきが、このような取引をもちかけてくるとは。
内容を聞いて、竜帝は嘲笑った。
所詮は、たかだか、ちっぽけな存在であるニンゲンの、愚かな戯言だと。

だが、竜帝は、その取引に興味を示した。
神獣の負の力のせいか、元来本人に備わっていた心の闇が、災厄の負の力の影響で増幅させられたか。
狂人と化したその男からは、自分と同じ『匂い』を感じたのだ。

だかこの狂人との取引に、最期の滑稽な戯れだと、応じたのだ。


竜帝は、自嘲した。
あの始まりのニンゲンと出会ったときと、立場が真逆になっているではないか。
ああ、愉快だ。
この、竜の王であるヒュージドラゴンの我が身が、こんなニンゲンいっぴきごときに取引を持ち掛けられるとは。
ずいぶんと無様なものだ。
だが、面白い。
この狂人の遊戯に付き合ってやろうではないか。

竜帝は、己も神獣の負の力の毒に中てられたか、と再び自嘲した。


狂人化したその男は、もはや抜殻でしかないが、視界に入っているであろう黒曜の騎士が実の父親であることを知ってもなお、一瞥もくれない。
ニンゲンの血のつながりとはもっと深いものではなかったのか。
ただの一瞥もくれぬとは、この男にとってしょせんはこんなものであったのか。
竜帝は、瓦解した甲冑の塊に帰した黒曜の騎士に労わるような視線をおくった。

それから、眼前に投げ出されたニンゲンの肉塊に視線を戻した。
このニンゲンの塊からも、『力』の波動を感じた。
それは、マナの聖光でも暗黒の闇でもない。
あえて表すならば、粋の力。
単純に、朽ち行く肉体の破壊を止めるためならば、十二分すぎる『力』を備えた、供物だった。

竜帝は、力の残滓を振り絞り重そうに首をもたげると、供物として差し出されたニンゲンの肉体に喰らいついた。
ニンゲンの血と肉の味が、口いっぱいに広がり、喉をとおって全身に回った。
このニンゲンの血肉は、始まりのニンゲンの魂とは違った。
竜帝は、己の肉体に生命の力が黄泉がえってくるのを感じた。


今度は、魔力素質のない欠陥ニンゲンの血肉ではない
マナの気を十二分に浴びて熟れた、力の源に溢れたニンゲンの魂だ。
シェイドの闇の力を受けたとはいえ、その根底にある信念は決して深淵に飲まれることのないであろう、美しい魂だった。
だからといって、ウィスプの聖なる力のような受容しがたい神聖な光の力でもない。
いうなれば、ただ純粋に力のみを求めた、無の属性。
ただし、竜帝の闇の力と相性がよさそうなのは、この半身を供物として連れてきた男の、心の闇に支配された魂の方ではあった。
この狂人の心の闇は、始まりのニンゲンの闇などとは比べ物にならないほど、深く純粋な、深淵だった。

だが男は、「自分の魂は始祖神となる国王陛下に捧げたものだ」と竜帝にのたまった。
わが力を利用しようとする狂人に、一蹴された。

竜帝は、闇デュランの魂を喰らったあと、冴えてきた脳細胞を働かせた。
「反転」した肉体の力と心の属性を考えて、これは面白いことになったな、と嗤った。
そして、この男も我と同じ『純粋悪』だ、と気が付いた。
己の欲するものが、純粋すぎるがゆえに、心の闇に支配されたのか。

ただ純粋に、己の崇拝する者への信仰が、神獣の負の力に侵されて、狂信者に堕ちたにすぎない。
その思考に至ったところで、竜帝は再び嗤った。
まことに、面白いことになった、と。



『第三の世界大戦か』
破壊と殺戮に満ちた混沌に堕とされた時代をもう一度この目で見届けることが可能なのか。
竜帝は自問した。同時に、自答した。
竜帝が、かぶりをふる。

最後に繋いだ命の灯。
この狂人にゆだねてやろう。


竜帝は、狂人の愚かで滑稽な世迷い事に付き合う覚悟を決めた。
長すぎる時間を生きて世を傍観してきた竜帝ですら、遭遇したことのないほどの、狂人。
しかも純粋な、いっぴきのニンゲン。
己の願望を果たすために、竜の王である己を『使役』、いや『利用』した。

己の純粋な欲を叶えるためだけに、ただのニンゲンいっぴき風情を『始祖神』とするために。
手段を択ばぬ、荒唐無稽な行動。
粋に、狂っている。

だからこそ。
竜帝は、ずるり、と舌なめずりをした。
その魂を喰らってみたいものだ。