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urifuji
2022-01-24 23:21:00
36314文字
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権兵衛の手記
手記というのかほぼ独白です。
モブおっさんの一生というのか、御神槌さんの一生というのか。
1ページ目に注意事項が書いていますので見て頂けるとありがたいです。
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その先は染みと墨で塗りつぶされて読めない。けれどこれだけは分かる。
これは、恋文だ。
鈴菜様が神父様に向けた恋文。
ずっと隠し続けた想いの形。
諦めようと藻掻いた恋の欠片。
神父様は50年間、ずっと、ずっと大切にしていたのか
角は擦り切れ、墨は滲み、虫に食われボロボロになっても
――
最後の時まで持っていたいと、願う程に。
雫が落ち、染みを作った。
一つ、二つ、四つと落ちては墨を広げ、次第に大きな影が紙面に落ちて。
重力に負けて床に蹲った私は、感情のまま手紙ごと強く握りしめた。
クシャリと音を立てた手紙は震える私を優しく見つめていた。
ねえ、神父様。私は知っていました。
あなたが時々紙を広げ 愛おしそうに見ていた事を。
年始直後皆が祝う中であなたはいつも一人で祈りを捧げている事を。
その日だけは皆がどれだけ誘っても、決して譲らなかった事を。
村で出会った一年に満たない生活の中で 残りの人生全てかける程の出会いをしていたことを。
私は 知っていたのです。
――
知っていたのですよ。
その後。
手伝いに来た雪達が異常な雰囲気を察して駆け寄るまで
私は年甲斐もなく、子供の様に泣きじゃくっていた。
×◆年★月◎日 雪
神父様が亡くなってもう数年。
私も疲れることが多くなった。
時々孫や雪に声を掛けられ、自分が寝ていた事に気づくなど日常生活を送る事もままならなくなっている。
日記を掛けるもの、これが最後だろう。
私の人生を振り返ると様々な事があった。
時々酷くはっちゃけた事もあったような気がするが、それも許容範囲だと思いたい。
自分の為に過ごした時間よりも
人の為に祈った時間の方がずっと長くなった。
知らない誰かはいずれ大切な人になる。
その人の為に考え寄り添う事で自分の人生が前より豊かになったんだと今なら思う。
これもあの時、彼等に会ったお蔭だ。
神父様の言葉でいうならば神のお導き。
……
ふふ。随分と彼の考えが染みついてしまったらしい。
でも、それもまあ悪くない。
もしも、もしも。
もう一度出会えるのならば。
今度こそ彼等に幸せが訪れますように。
何にも邪魔をされず、思う存分
想いを伝えられますように。
ずっと。ずっと。
祈っている。
――――――――――
「って、ずっと思っていたんだけどなあ」
男は目の前の状況をみてため息をついた。
「鈴菜さん、美味しいケーキが売っているところがあるんです。よかったら一緒に行きませんか?え?甘いものが苦手じゃないかって?大丈夫ですよ。貴方と一緒なら私は何処だって幸せなのですから。え?鈴菜さん!待ってくださいどこに行くのですかっ!」
「は、恥ずかしい事を言わないでください!」
「本当の事を言って何が悪いのですか!貴方と一緒に居れる以上の幸福など私にはありませんよ!」
「っだから、そういう所ですよ~~~っ!」
「全力すぎでしょ、神父様」
そういって以前の面影を残した男は心底楽しそうに笑った。
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