urifuji
2022-01-24 23:21:00
36314文字
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権兵衛の手記

手記というのかほぼ独白です。
モブおっさんの一生というのか、御神槌さんの一生というのか。
1ページ目に注意事項が書いていますので見て頂けるとありがたいです。




「 


 こういうふうにお手紙を書くのは初めででしょうか。
 いつもお話をしているのに改めて手紙を書くなんて不思議な感じがします。
 なんだか照れてしまいますね。

 あなたと出会ってからもう幾度かの月日が流れたのでしょう。
 優しく悲しいこの村であなたと出会って、男の人でこんなにも愛情深く繊細な人がいることを驚いたものです。私の周りにはたっちゃんみたいな人が多かったから。
 あなたは誰にでも優しかった。でも正直その優しさがまさか私にまで向くとは思いませんでした。
 だって本当にいるかもわからない私ですよ?危険を冒してまで、見たいと、私を求めてくれるなんて本当に初めての事でした。
 それからです。私もあなたに何かをしたいと強く思ったのは。

 ねえ、みかちゃん。

 あなたはいつも私に色々な事を与えてくれました。
 料理場所の提供、人との会話の手段、人に何かを伝える感謝と喜び、時に無茶をする私を真剣に怒ってくれたこともありましたね。
 そして、忌み嫌っていたこの金色の瞳も。
 あなたが綺麗と言ってくれたおかげで、私の瞳はあの瞬間、かけがえのない宝物に変化しました。
 そんなこと、人に言われたのは初めてでした。本当に嬉しかったの。有難う。

 だから私は少しずつ我慢が出来なくなっていきました。 
 今まで仕方ないと諦められていた部分が、もしかして諦めなくてもいいんじゃないかって。
 大好きな人と一緒に居たい、という気持ちを諦めなくてもいいんじゃないかって……
 そんな夢みたいなことを願ってしまいました。

 けれどあなたは只人に公平なだけだという事を知っています。それに私のこの気持ちはあなたを苦しめるだけでしょう。  
 だから言いません、絶対に。
 墓まで、といっても私にはお墓はありませんが死ぬまで隠していこうと決めているのです。
 でも、苦しい。
 あなたを愛しいと思う気持ちがまるで粉雪のように積み重なって、苦しくて仕方ないのです。
 だから、手紙を書きました。宛名の無いこの手紙。私の想いの終着点。この恋心が消えるまで、私は言えない分思う存分書こうと思ってします。
 どうしても箇条書きになってしまう私は生まれ変わっても風流人にはなれませんね。

好きなところ
①信念
 自分が信じた道は誰にも譲らない芯の強さが好きです。誰にでも思ったことをはっきりと伝える意志の強さを感じます。でも時々その頑固さを恥じているところも可愛くて好きです。
②公平さ
 誰にでも公平で平等に接する態度が好きです。お年寄りも、子供もそれぞれに合わせた対応で誰にでも優しいあなたが好きです。
③声
 少し声の高い、あなたの声が好きです。聞いていると癒されるような穏やかな声はいつでも私を惹きつけてやみません。どんな時もあなたの声を聞けたらどれだけ幸せでしょうか。
④髪色
 あなたは恥じていますが、あなたの白髪は光を浴びると輝きを帯び、まるで絹色の様に見えるのでとても好きです。たまには帽子を取り外し、光の中にいるのは如何でしょうか。その隣に私がいることが出来ればこれ以上の幸せはありません。
⑤笑顔
 普段の細目も素敵ですが、嬉しい時に浮かべる八の字眉の照れた笑顔がとても好きです。いつも凛々しいあなたが可愛くなる瞬間。その笑顔を見て私がどれだけ幸せか、きっとあなたは知らないでしょう。
⑥誠実さ
 どんな時でも人に誠実に接するあなたは、周りから多くの信頼と愛情を受けています。あなたが人の幸福を願った分、あなたに幸せがありますように。

 私があなたに出会った時間はあなたの人生でいうとほんの数刻。
 でも、それでも、私はあなたにこんなにも幸福な気持ちをもらいました。
 だから私が保証します。
 あなたはもっともっと沢山の人を幸福に導けるのでしょう。
 笑顔をもたらすことが出来るでしょう。
 そして私の知らない誰かと……
 

 」