urifuji
2021-06-22 14:03:31
19341文字
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理想のアリア

外法帖。陰6話以降。女主人公の姿がみたい御神槌の話です。
これの前に小話を予定していましたがこちらが先にできました。







おまけ
 九桐と共に行っていた任務を終え屋敷に戻ってきた奥継は、大広間に集まってにぎやかな声を上げている龍斗たちに何やってんだよと思わず声をかけた。天戒と嵐王は予定が入り組んでいるためすでにおらず、その代わり事情を知っている(というか張本人)龍斗からかくかくしかじかと本日の出来事を聞いた奥継は、御神槌に信じられないというような視線を向け悪態つく。

「鈴菜の姿を見たいっていって龍斗の氣を受け入れただって?マジか?こんな腑抜けた顔をみたいって思う奴の気がしれないぜ」

 双子ほどではないが陰の古武術を継承し、氣を読める奥継は龍斗の氣の恐ろしさが誰よりも分かる。氣を受け入れた、との言葉だけでも理解できないのに、その理由至っては考えることを放棄した。自分の身を危険に冒してまで見たいのが、最近自分に何かとくっついてくる女の為だなんて、奥継だったら絶対にしない。
 思った事をありのまま伝えると、御神槌は怒りを抑えたような硬い声を上げた。

お言葉ですが。こんなに癒し系で可愛らしい彼女をそんな風に言うなんて、鈴菜さんにとても失礼ではないでしょうか」
『ふぁっ⁈』
「マジで?」

 御神槌の言葉に被弾する緋勇姉弟。鈴菜は顔を赤くし、龍斗は目を見開き御神槌の背中を凝視した。双龍の関係である奥継も龍斗と全く同じ表情して、御神槌を凝視する。

癒し系?誰が?」
「鈴菜さんですよ。貴方は何を見ているのですか?」

 聞き間違いだと思い尋ねるが、今の彼には全く通じずむしろ肯定されてしまった。はあ~っ!?と掛け声と共に両手で頭をガシガシ掻く。

「お前の方が何を見てるんだよっ!こいつは癒し系なんてもんじゃねえ、どちらかというと卑しい系だっ!」
『どんな部類ですか‼』
「そういう部類だ!」

 思わず鈴菜に向かって指をさし、自分の正直の思いを伝える。隣にいる彼女から反論の声が上がるが、彼は自分が間違ったことを言っていないと確信をもっていた。
 何故ならこいつは山に行くといつも山菜を見て回り、この時期何が美味しいか、どれだけ美味しいかを話しかけてくるからである。お蔭で修業中腹が減って仕方がない。
 そう強く主張するもその言葉を聞いた瞬間深く眉間に皺をよせ、聖書を構え始めた御神槌から地を這う様な声が上がった。

「風祭さん。鈴菜さんを侮辱するのはそこまでにしてもらいましょうか。それ以上の冒涜は私が許しませんよ」

 本気と書いてマジと読むぐらいに御神槌は怒りをにじませていた。手に持っている聖書が何よりの証拠である。

「な、なんだよ、そこまで怒る事じゃねえだろ。こいつだぞ、鈴菜だぞ?」

 若干後ずさりをしながら、隣にいた鈴菜の若干後ろに下がる奥継。そのため真正面で御神槌を見る形になった鈴菜は奥継に怒りを向けながら御神槌の怒りに言いようのない恐怖を抱いていた。いつもならぴょんと元気に立っている触覚も日の当たらないひまわりのようにしゅんと下がっており、鈴菜の気持ちが何よりも明確に伝わってくる。

「何を言っているのですか、彼女だからですよ。以前から思っていましたが、鈴菜さんに対しての扱いがあまりにぞんざいではありませんか?彼女が優しいからといって許されるものではありませんよ。こんなに可憐で傍にいるだけで花が咲いたように明るく、保護欲を駆り立てる方は他にいないのだから」

 御神槌が切々と話す内容を聞いて双龍螺旋脚組は耳を疑った。

「保護欲?可憐?このボケている女が?本当に、俺らは同じ人物の話をしているんだよな?」
「間違いない。やっぱりあれは混乱と魅了が付与されていたんだ。これで確信できたわ」
『あれは封印ですね。真面目な御神槌さんがこんな風になるなんて申し訳なさしかありません』

 あまりにも自分の知っている人物と剥離しているため混乱する奥継と自分たちの行った行動で脳に異常をきたしたと確信した二人。古武道を極めるため武術を軸に生活を送っていたこの三人には「恋愛」の文字は頭の片隅に欠片すらなかったため、起こるべくして起こった悲劇である。
 誰よりも冷静に物事を見ていたのは鬼道衆幹部のこの二人だけであった。

「いや、御神槌は鈴菜に一目惚れをしたんじゃないのか?」
「やっぱり九桐もそう思うかい?でも龍斗達はずっとあんな感じなんだよ」
「おいおい、鈍いにもほどがあるだろう