株価大暴落

チャ誕の話を書こうと思ってたのにノイ誕の話が出来上がってしまった。
ほにゃっと時空ハイノイ。
CE83、6月ハイ38.ノイ37.チャ36.ナタノレ6ヶ月

 六月九日、十七時三十二分。大切な日だというのに、仕事の進捗が思わしくない。
 研究所に新しく入れたスタッフのミスで開発中の新兵装のプログラムにバグが出て修正に時間が取られたのが痛恨だった。
 こうなると人にやらせるより自分がやったほうが早い。何せ今日はノイマンの誕生日だ。
 アークエンジェルの操舵士としてひと月に一度、数日しか帰宅出来ない休みをハインラインの要望で今日に合わせてくれている。
 パートナーの誕生日を共に祝いたい。一緒に居たいというわがままを聞いてもらった形だ。
 定時で上がって予約していたケーキを受け取って、ケータリングを受け取って配膳してやることは山積している。プレゼントはあらかじめ買っておいて良かった。ナタルも迎えに行かなければ。全部をノイマンの帰宅に間に合わせたい。
 ハインライン専用のメインコンピューターの前でイライラしながらプログラムを修正していると背後から件の新人スタッフが「あのぅハインライン博士」と声をかけてくる。
「なんだ」
「実はその
 しどろもどろなスタッフから新たなミスの報告を受けて、残業確定。ノイマンの誕生日に並々ならぬ意気込みで臨んでいたハインラインはついカッとなってしまった。

「お前のような無能がよくプラントの大学を卒業できたな!どうしてこんな初歩的なミスをする?少し考えればわかるだろう。見ろ!三行目から見落とし!ここでもスペルミス!いくらなんでもありえない!バカじゃないのか!」
 感情のままに新人スタッフを怒鳴りつけていると、ポンと肩を叩かれる。
「うるさい!今取り込み中だ!後にし……ッ! アーニー
 振り返ると、黒いTシャツにジーンズという私服姿のノイマンが驚いた顔で立っていた。
 ハインラインは氷入りの冷水を被ったような心地になるほど頭が冷えたし、咄嗟にデスクの上の時計に視線を向けると定時を少し過ぎていた。
 いつの間にか二十分ほど部下を叱責していたらしい。
 ノイマンの誕生日を盛大に祝う。絶対に定時に上がると約束して朝家を出たのに、まだ研究所に居る上に部下を怒鳴りつけているところを見られた。頭は冷えたが情けなさに頬はカッと熱くなった。
どっ、どうしてここに」
「同僚の都合で半休取ったんだ。メッセージ送ったのに既読もつかないから見に来た」
「なっ」
 ノイマンからの連絡に気がつかないほどヒートアップしてしまうとは。
 白衣のポケットから端末を取り出して通知を確認する。ポップアップウィンドウにノイマンのアイコンが表示され「早上がりになったから迎えに行こうか?」とメッセージが届いているのが見えた。
「忙しそうだな。残業するならまた後でくるけど? どのくらいかかる?」
「いえ! もう帰りますから」
「無理すんなって。まだ全然終わらないんだろ?」
「でも今日は」
「誕生日なんてこの歳になってまでそんな盛大に祝わなくていいんだよ」
「そんなことはない!」
「わーかったから。で、どれくらいかかるんだ?」
「それは、一時間いえ、三十分で終わらせます」
「ハイハイ、一時間半後な」
「アーニー!」
「コノエさんにナタルの迎え行くの遅くなりそうって連絡しといた。ケーキとケータリングは今から店に取りに行くし、受け取ったらチャンドラのところで時間潰してまた迎えに来るから」
「すみませんせっかくの誕生日に色々やらせてしまってそもそも今日は休みにすべきだった。調整ミスです
 ハインラインは罪悪感や羞恥心でノイマンの顔が見れなくなった。あれだけ大口を叩いておいて予定通りにいかない。パーティーの主役に色々やらせてしまう上、気をつかわせて申し訳ない。部下を激しく叱責するような余裕の無いところも見られてしまった。
「だからそれはいいって。あ、新しく入った方ですね。アルバートが失礼な態度をとって申し訳ありません。いつもアルを支えてくれてありがとうございます」
 ノイマンはミスしたスタッフに謝った上に、はにかんでお礼を言った。
 ミスした新人スタッフはノイマンの笑顔にポッと顔を赤らめ「はゎ」と変な声を出している。
 わかる。ノイマンの笑顔は眩しい。脳内リソースを掻っ攫っていくので言語野が機能しなくなる。ハインラインは今日初めて新人スタッフに心から共感したが、パートナーの魅力が自分以外にも振り撒かれている状況が面白いはずもない。
 新人スタッフとノイマンの間に割り込むように身体を移動させ、ノイマンに宣言する。
「必ず一時間で終わらせます!」
「ぼちぼちやれよ。怒鳴ったりするなよ」
「うっわかりました」
「じゃあこれ差し入れ。皆さんでどうぞ」
 ノイマンはハインラインを横に退けると、ミスした新人スタッフに近所で評判のドーナツ屋の袋を渡した。
 一ダース入りの箱が三つ入った大きな袋を両手で受け取った新人スタッフは「あゎありがとうございます!」と頭を下げる。
「アルも甘いもの食べてがんばれよ」
 ノイマンは拳でハインラインの胸をトンと叩いてから颯爽と去って行った。
「か、カッコイイ〜! 博士のパートナーさんすごいですね博士より年下でオーブ軍の三佐でしたっけ? 落ち着いてるなぁ。めちゃくちゃモテそう」
 ドーナツの箱を抱えた新人スタッフは男性ながらノイマンのかっこよさに感動していた。
 ハインラインは軽く拳の触れた胸を押さえてノイマンの後ろ姿に見惚れてぼうっとしていたがその言葉にハッと我に返った。
「モテ………?」
 ハインラインはスタッフに言われて初めて気付いた。確かにノイマンはモテるかもしれない。


2≫