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木蔦(キヅタ)
2021-03-14 19:54:31
13711文字
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嵌られて孤立するまんばの話【ちょぎくに】
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ちょぎくに
※山姥切国広が嫌な子です。ラストは大団円ではありません。
※別視点から書いた場合、がらりと印象変わります。すべてが真実ではない。特に人の印象。
※審神者が喋ります。
まんばは初期刀、極済み。
まんばには悩みが3つある。
1つ目は長義とのこと。仲が悪い。『偽物くん』と呼ばれている。あまり話したことはない。
2つ目は審神者のこと。審神者からあまり愛されてないように感じる。加州ではないが、審神者に好かれたい、疎まれてるとつらい。
3つ目は同位体のこと。この本丸には初鍛刀の次(つまり3番目)に同位体が来た。極めてはいない。「折角2振りいるならば」と審神者の方針で今までふたりで交代交代に近侍をしていた。
(以降、初期刀を極んば、二振り目を布んばと表記。例え時期的に極めてなくても区別のため)
最初は仲良くやっていた。しかし近侍がふたりいると比べられる。同位体だし初期からいる刀。審神者が比べるたびに、ふたりの間に溝が入っていった。
布んばは要領が良い。審神者に可愛がられている。どうしても口下手で誤解されやすい極んばが疎まれる。
布んばと長義の仲はいい。
極んばは最初に『偽物くん』と呼ばれ、怯んでしまった。しかし布んばは平気で近づいて主に言った。
「主、本歌を俺の補佐にしてほしい!」
もう一人の俺は修行に行ったんだからそれくらいの我儘良いだろうと駄々をこねだ。
(審神者は布んばにも修行に行くか聞いたはずだが断ったのは布んばだった。主の側から離れたくないと言って審神者を喜ばせていた)
そして本歌は布んばの補佐になった。
公私共にふたり一緒にいるのをよく見かける。付き合ってると聞いた。だから長義は自分と布んばが対立することがあればきっと布んばの味方になるんだろうと思った。
ああ、羨ましいな、と思った。
極んばには味方がいない。
もちろん本丸のみんなは優しいが、極んばと布んばどっちつかず。
絶対的に極んばを信じてくれる味方がほしい。
ある日まんばは審神者に呼ばれた。
「国広、山姥切長義の刀をもう一振り手に入れたんだけど」
「ああ、本歌か」
「お前も補佐がほしい?」
極んばはぼんやり考える。本丸で二振りいる刀は山姥切国広だけ。二振りいるから比べられる、溝ができる、惨めになる。こんな想いをするのは自分だけで十分だと思う。
「いや、俺はひとりで大丈夫だ」
「そう」
断ったのが面白くないのか素っ気ない。布んばなら違ったのかもしれない。
「じゃあこれは長義の習合に回すよ」
「ああ」
盗難事件が起こる。他の刀達の大事な物が紛失。しかも極んばの部屋や懐から出てくる。極んばはなんでそんなところから?と疑問。みんなも「初期刀さんが隠してたの〜?やだー!」と笑って許してくれたが、何回も続くと疑念の顔つき
……
。
極んばは「俺じゃない!やってない!」というけど、事実極んばのところから出てきてる。動かぬ証拠。
みんなが極んばから少し引いた態度になる。それはそうだよなと思うが誤解。荷物に紛れ込んだとか、偶然だと思う。しかし信じてもらえない。
極んばはそのうち周りから孤立してしまう。みんなが極んばを遠巻きに見てる。極んばも嫌な顔されたくないので何も言わない。
つらい。悲しい。寂しい。
誤解だって叫びたい。無実だって信じてほしい。自分の話を聞いてほしい。
誰か、と思うが極んばの周りには誰もいない。
決定的なことが起こる。
出陣で重傷者が出る。慌ててみんなが手入れ部屋へ担ぎ込む。中傷になったら帰城するルールなのに、なぜ?と審神者が問う。部隊長は布んば。
「だ、だって、初期刀が大丈夫って、行けば良いって言ったから、俺
……
」
そんなこと言ってない。
出陣部隊から通信など入ってなかった。
みんなが極んばを見る。侮蔑の眼差し。
否定の言葉が出てこない。
「国広、今回は破壊は免れたけど、今後こんなことがないように」
俺ではないと言わなきゃと思うが、審神者にそう嗜められる。タイミングを完全に失った極んばはただ審神者の言葉に頷くしかなかった。
極んばは久々に布を被ってめそめそ。真っ暗な部屋の片隅で蹲り、膝を抱えてる。
布んばは嘘をついてる。だけど嘘だと言ってもきっとみんな信じてくれない。最近の盗難事件で極んばは信用を失ってる。
みんなからも、審神者からも信用を失ってる。味方は誰もいない。こんな総隊長には誰もついてきてくれない。それなら総隊長である資格はない。
ここで長いこと総隊長を務めてきた。隊長の資格がないならここにいる意味もないのでは。
居場所なんてない。
そう考える。
布んばはなんで嘘をついたのか。自分のことが嫌いなのか。
あの場でも長義は布んばのすぐ後ろにいた。まるで布んばの絶対的味方であるように。じぃ、と睨むように極んばのことを見てた。
ふと二振り目のことを思い出す。
もしも審神者の気遣いに、頷いていれば二振り目は自分の味方でいてくれただろうか?
「国広」
ハッとする。
いつのまにか部屋に誰かいる。入ってきたことに気づかなかった。
暗くて誰なのかわからない。暗い以外にも、目に涙が溜まってるせいもある。よく見えない。
「泣いてるの?」
優しい声。顔を覗き込んでくる。極んばは口を閉ざして、顔を伏せる。
何故だか彼が長義ではないかと思う。直前まで長義のことを考えていた所為だろう。
長義は自分のことを『偽物くん』と呼ぶ。ちなみに布んばのことは『写しくん』。『国広』とは呼ばない。
二振り目という可能性もない。二振り目は習合されたはずだ。
だからきっと本丸の刀の誰か。だけど極んばの事を『国広』と呼ぶ刀はいない。
今は布を被っているから布んばと誤解されたのかもしれないと思うが、布んばを国広と呼ぶ者もいない。
いや、恋仲なら呼ぶかもしれない。しかし恋仲の部屋を間違えるわけないだろう。
「なんで泣いてるの?」
「
……
俺には、いないから」
彼は極んばの頬を撫で、涙を拭う。
「俺には誰も、
……
頼れる人も、愚痴をこぼす相手も、信じてくれる人もいない、から」
「じゃあ俺がなろう」
唐突な言葉にびっくりする。
「お前の、信の置ける者に」
その後、彼は極んばが寝付くまで撫でて、落ち着かせるように、そばにいてくれた。
なんで極んばにそんなことをするのか目的がわからない。普通に怪しい。
だけどもう居場所がない極んばにとっては、利用されるのも構わなかった。それに疑って跳ね除ける気力すら残ってない。
ただ身を委ねるまま。
極んばは完全に孤立してしまう。今まで腫れ物を触るような感じを受けつつも、みんな一言二言は話してくれた。だけど完全に避けられてる。
しょうがない。
極んばはその日は畑当番で黙々とやる。
収穫したものを厨に置き、道具を片付けた。
すると厨の方が騒がしい。
覗いてみると、野菜がぐちゃぐちゃ。
折られたり、割られたり、踏まれたりしてる。
厨にいた刀が極んばを見留め、話しかける。
「国広くん、今日当番だったよね?」
「え?あ、ああ」
「いつここに置いたの?」
「10分ほど前だ」
「そっか」
極んばをじっと見つめて言う。
「みんなが頑張って作った野菜をこんな風にするのは、許せないよねぇ?」
まるでお前がやったんだろ、と言わんばかりの目。自分じゃない、と否定したいが、責められたわけではないので何も言えない。せめてやったのかと聞いてくれれば、やってないと主張できるのに、遠回しの圧力。
夜、ボロボロ泣いてるとまた例の彼が現れる。撫でてくれる。
「大丈夫、やってないんだろ?」
「やってない
……
」
「なら堂々としていろ」
いつのまにか、彼の胸に寄りかかり、うとうと。体温が心地いい。スヤァ
…
極んばが執務室に行くと騒がしい。審神者や布んば、長義があちこち探している。
「国広、今日提出する書類知らない?」
「同位体が作ってたやつか?いつもの場所に置いてないのか?」
「ないんだよーどうしよう!」
「仕舞う場所を把握してるのは俺と初期刀と本歌と主だけだ。まさか初期刀、」
嫌な予感。
「隠したり、してないよな
…
?」
疑念の目が極んばに向く。長義と審神者も極んばを見る。お前がやったんだろと言ってるように見える。
「俺は、知らない」
「最近あんた、俺に意地悪が多くないか?この前の重傷者が出たのもそうだ。俺はあんたに何かしてしまっただろうか?それなら面と向かって言ってくれればいいのに、あんな風に嫌がらせされるのはつらい。気に食わないなら謝るから
…
」
違う、布んばが自分を嫌ってるし、嘘をついてる。だけど他のふたりは完全に布んばを信じただろう。健気で真摯な布んばを意地悪で強かな極んばがいじめてるように見えるはず。
「意地悪されてたの?なんでその事言わないの」
「だって初期刀が怒られるのは可哀想だ。俺さえ我慢すれば済むと思って
…
。だけど重傷の件といい、まさか書類まで隠すなんてさすがにやりすぎだ
……
」
「国広、今までのこと謝って、書類返して。最近国広おかしいよ?この前の手入れ部屋のことだって
…
」
極んばは頭を振る。泣きそう。必死に耐える。
「謝りたくないって?どうしてそんなこと言うの。そんな子に育てたつもりは
…
」
「失望したよ」
長義が割り込んでくる。極んばを見てる。
「がっかりさせない、と言ったのはお前じゃなかったかな」
聚楽第での監査官との会話。あの時の期待を裏切ったと言ってるらしい。長義も布んばの事を信じてるようだ。
それはそうだ、恋仲の者を信じるに決まってる。この場で極んばを責めるのは当たり前だ。誰も味方などいない。
「最近のお前の行動には呆れたよ」
やはりすべて極んばの所為と思ってる。
「俺でさえ集められた証拠を、なんで探そうとしないのかな?」
予想外のことを言われ、きょとんとする。
「証拠、って?」
「偽物くんがそんなことしてないっていう証拠だよ」
「え
…
」
「まず重傷者が出た件だけど、写しくんはいつ偽物くんから指示をもらったの」
「えっと、中傷者が出た時に
……
」
「おかしくないかな。通信記録が残ってないんだけど。どうやって偽物くんに連絡取ったの?時代を超える通信方法は限られてるから普通の端末じゃ無理だよね?」
布んばが押し黙る。
「あと窃盗事件は偽物くんにアリバイがあって無理っていうのばっかりだった。」
ひとつひとつ長義が説明していく。
「野菜の件だって、偽物くんは道具を片付けに行ってた。時間的に無理だと思うね。そりゃ急いで片付ければできなくはないけど。それに偽物くんは畑当番だったんだから、そんなことするなら畑を荒らす方が効率的だ。わざわざ収穫する労力を使ってから荒らすのは時間の無駄。」
長義が紙を取り出す。
「あと探してた書類はここにある」
「え!?それ、どこに
…
!」
「偽物くんの部屋に置いてあった」
「ほ、ほら!やっぱり初期刀が盗ったんだ
…
!」
「写しくんの後を尾けたら、偽物くんの部屋に入っていったから、中を改めさせてもらったら見つけたんだよ」
布んばに視線が集中する。
「なんでそんなことしたの?」
審神者が優しく聞く。
「だって、みんな、みんな初期刀のことばっかりで、俺は、つらかったんだ
……
!」
ボロボロ布んばが泣き始める。
「初期刀はしっかりしてて、強くて、決断力もあって、主が頼りにするのも初期刀だし、すぐ初期刀のこと褒めるし、みんなからの信頼もあって、俺比べられるのが惨めで
…
!」
布んばがチラリと長義を見る。
「本歌が初期刀を偽物って呼んだって聞いて、本歌は初期刀のこと嫌ってると思ったんだ
…
!本歌なら俺のこと見てくれるって。なのに俺といても初期刀を目で追うし、初期刀のことばっかり話すし
…
!」
キッと極んばを睨む。
「俺は結局初期刀には敵わないんだ
…
!所詮二振り目の写しだし
…
!俺は全部持ってる初期刀のこと、羨ましかったんだ
…
!!」
認識の違いにびっくりする。
布んばは審神者から特別可愛がられてて、長義と仲良くて、人当たりもいいからみんなも話しかけやすくて
…
極んばは布んばが羨ましかった。
お互いにそう思ってたなんて、考えもしなかった。
その場は審神者が上手くまとめ、今後の運営については少し考えるということになった。
今回の件は(そんな意図はなかったとは言え)煽った自分も悪いからと、ふたりの悪いようにはしないとのこと。
夜、スススと障子が開く。
「あんただったんだな」
まんばが振り返ると長義。
「俺以外に誰が?」
「いや」
実は二振り目だったのでは、なんて言えなくてはぐらかす。
座布団を勧める。
「なんで俺の味方をしてくれたんだ?」
「俺に都合のいい状況だったからだよ」
やはり利用されてたらしい。それでもいいと思ったのは極んばだが。
でもあの時そばにいてくれて、とても勇気づけられた。
「お前はがっかりさせないと言った、それは覚えてるな?」
「ああ」
「お前は俺が認めた唯一の偽物なんだよ。だからそれも覚えておけ」
「は?」
偽物なのに、認めたとは?
認めると言うのは本物と認めてくれるのでは?偽物を認めるってどういうことだ?
わけわからない理論を言われ「???」
「それにしても写しくんには困ったもんだよ。俺のことまで
…
」
「いや俺は別にそんなに気にしてないし」
「は?」
「今回のこと、別に怒ってないぞ?」
「違う!」
「???」
「お前は!鈍いな!?」
「???」
「俺がお前を見てたと言っただろ!」
「ああ、そっちのことか。どんな偽物なのか観察してたのか?」
「話すのもお前のことばかりって、どんな話をしてたのか気にならないのか!?」
「文句だろ?」
はぁぁぁ、とため息を吐く。
「前途多難だ
…
俺の爪が甘かった
…
」
「つめ?」
「あんな風に甘えられたから、もう落としたと思ったのに
…
!」
「何か失せ物か?一緒に探そうか?」
「いらん!」
その後、習合されてなかった二振り目の長義が顕現される。
布んばに充てがうという長義の計画。
しかしそれが波紋を呼ぼうとは、この時誰も予想できなかった。
ちょぎくに(?)ハッピーエンド〜!フゥゥゥゥゥ!!お疲れ様でした!お付き合い頂きありがとうございました!
どうでもいい設定
・その後、極と布は和解。(そもそも極んばは布んばをあまり恨んでない)
そして近侍体制も変わってない。ただ審神者が人前でふたりを褒めたりするのは気をつけてる程度。
・極んば視点なので他の刀達の反応が正確ではない。みんなが腫れ物を扱うような態度になったのは極んばの様子を気遣ってのこと。立て続けにおかしなことが起こって、気を病んでるため。極んばが犯人とは思ってないけど、否定も肯定もできないため傍観の構え。
・厨での会話は燭台切。あれは極んばを疑ってない。ただ野菜をめちゃくちゃにした犯人に対しては怒ってる。そのため圧が強い。極んばは自分が責められてると誤解。
・もちろん布んばと長義は付き合ってない。
・布んばは長義に恋してるわけではない。ただ自分に賛同してくれる人が欲しかったため。
・審神者は中立。極んばも布んばも両方可愛がってるつもり。(しかし誤解を生むことになった)
・審神者から長義に習合の打診がある。その頃は既に長義は極んばを手に入れるための計画を立てていたため、「邪魔な写しくんの相手にちょうどいいのでは?」と習合せずに顕現させることを考えていた。そのため「少し考えさせてほしい」と回答。そして続編に続く。
・聚楽第での「がっかりさせるな」の投げかけに対し「言われなくとも」と返答した極んばに恋に落ちてる。
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