木蔦(キヅタ)
2021-02-22 17:48:06
4590文字
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オメガバ⑦許婚と番いたくないまんばの話【ちょぎくに】


まんばには番い、というか、審神者に決められた許婚がいた。まんばがΩだとわかった時点で審神者が慌てて別の本丸に連絡を取り、番いの約束を取り付けた。

まんばも一度だけ会ったことがあるが、屈強な刀で、あんなのでうなじを噛まれたら首が千切れるのではとゾッとした。
今回そろそろ番わせようという話になり、見合いの場が設けられた。見合いというよりも閨の場が。
まんばは真っ青になって逃げ出した。

そして行く宛もなくやってきたのが主治医の診療所だった。

「嫌なのはわかってるけど、そろそろ帰ったらどうかな?審神者も心配してるんじゃない?」
「いやだ!主は俺をαに差し出す気なんだ!あんな男に首を噛まれたら折れる!あそこもデカイだろうから尻も裂ける!!」
「そこは知らないけど、審神者に話して破談にしてもらえばいいじゃない」
「無理だ!審神者の先輩らしいから断れるわけない!あんなα嫌だ〜〜!」

わーん!とベッドで泣いている。

「いっそ先生、俺のうなじを噛んでくれ!愛人にしてくれ!!」
「くぉらぁ!!どこの泥棒猫だ!!本歌が困ってるだろ!うじうじしてないでさっさと帰れ!!うなじ噛んでもらうならそこらの野良猫に頼めばいいだろ!」
ポイっと放り出される。





まんばだって、好きな人がいないわけではない。

第二性はわからないが、街で見かけた長義に恋をしている。毎週木曜日、恐らく彼の非番がその日なのだろう。いつも同じカフェ、同じテーブルに座り、本を読んでる。もしも番いが彼ならばどんなにいいか。

『そこらの野良猫に頼めばいいだろ!』

先程言われた言葉が蘇って来て、ふと思う。
彼に噛んでもらえないだろうか。

いやいや、そんな傲慢な事はできない。それに彼の第二性は知らない。世の中大体βだ、だから彼もβに違いない。それにもしαだったとしても、自分の我儘で彼を縛り付けることになる。そもそも話したこともない輩から「噛んで」と言われて噛むだろうか、まずない。
でもどこかで番いを作れば、あのαとの番い予定はなくなる。彼以外なら誰もがマシに見えた。

(長義は無理だとしても、誰かαに噛んでもらう方がいい!)

それは名案に思えた。

まず番うためには発情しなくては。まんばは催淫剤を飲む。程なくして人工的に発情状態になった。
これでαにわけを話して、噛んで貰えば……と思ったが体が思うように動かない。道端でへたり込んでしまう。

いつもは抑制剤を飲んだ状態で発情期を迎えるため、抑制剤なしは初めてだった。

「こんなところで何してるの?」
声をかけられ、見上げれば、αがいた。
天の助けと思い、必死に事情を話そうとする。しかし焦るあまり舌がもつれて上手く言葉が出てこない。
まんばがすべてを話し終える前に担ぎ上げられる。どこかの座敷に連れて行かれ……




暗_(:3 」∠)_転




まんばは目が覚める。首が痛い。ハッとして首を見る。(鏡とか使って)

噛み跡がある!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

これで許婚解消だ!と喜ぶ。
んんと呻く声がする。まんばはふと考える。

未来に絶望し、見ず知らずの彼と番ってしまった。しかし初対面のΩに噛み付くなんて、非常識なのでは?
性犯罪者もいいとこだ。これはレイプだ、レイプ。

(そんな男が俺の番い……?)

まんばは怖くなって逃げた。



本丸に帰る。まんばは噛み跡があるから許婚は解消だ!とにこにこ。行きずりの男と番ってしまったが、彼ともう会わなければ関係ないのでは?と思う。彼を誘うフェロモンしか出さないので、他の人には無害!

審神者がまんばの姿を見とめ駆け寄ってくる。
「主、見てくれ、これ……!」
ハッとする。
許婚は、審神者の先輩の刀だ。だから断れないと言われていた。しかしまんばに番いができたことで否が応にも破棄される。

しかしそれはこちらの落ち度だ。もしも先輩審神者が慰謝料を請求して来たり、訴えを起こした場合は?

しかも番ったとはいえ相手がいない。それならいいかと無理矢理嫁がされるかもしれない。

まんばは真っ青になる。
「どうしたの?」
「い、いや何でもない!」
審神者に心配していたなどと声をかけられる。まんばは呆然として頷くことしかできない。

布のお陰で噛み跡は見えないだろう。審神者にバレはしない。だけどドキドキハラハラ。

分岐