まんばには番い、というか、審神者に決められた許婚がいた。まんばがΩだとわかった時点で審神者が慌てて別の本丸に連絡を取り、番いの約束を取り付けた。
まんばも一度だけ会ったことがあるが、屈強な刀で、あんなのでうなじを噛まれたら首が千切れるのではとゾッとした。
今回そろそろ番わせようという話になり、見合いの場が設けられた。見合いというよりも閨の場が。
まんばは真っ青になって逃げ出した。
そして行く宛もなくやってきたのが主治医の診療所だった。
「嫌なのはわかってるけど、そろそろ帰ったらどうかな?審神者も心配してるんじゃない?」
「いやだ!主は俺をαに差し出す気なんだ!あんな男に首を噛まれたら折れる!あそこもデカイだろうから尻も裂ける!!」
「そこは知らないけど、審神者に話して破談にしてもらえばいいじゃない」
「無理だ!審神者の先輩らしいから断れるわけない!あんなα嫌だ〜〜!」
わーん!とベッドで泣いている。
「いっそ先生、俺のうなじを噛んでくれ!愛人にしてくれ!!」
「くぉらぁ!!どこの泥棒猫だ!!本歌が困ってるだろ!うじうじしてないでさっさと帰れ!!うなじ噛んでもらうならそこらの野良猫に頼めばいいだろ!」
ポイっと放り出される。
まんばだって、好きな人がいないわけではない。
第二性はわからないが、街で見かけた長義に恋をしている。毎週木曜日、恐らく彼の非番がその日なのだろう。いつも同じカフェ、同じテーブルに座り、本を読んでる。もしも番いが彼ならばどんなにいいか。
『そこらの野良猫に頼めばいいだろ!』
先程言われた言葉が蘇って来て、ふと思う。
彼に噛んでもらえないだろうか。
いやいや、そんな傲慢な事はできない。それに彼の第二性は知らない。世の中大体βだ、だから彼もβに違いない。それにもしαだったとしても、自分の我儘で彼を縛り付けることになる。そもそも話したこともない輩から「噛んで」と言われて噛むだろうか、まずない。
でもどこかで番いを作れば、あのαとの番い予定はなくなる。彼以外なら誰もがマシに見えた。
(長義は無理だとしても、誰かαに噛んでもらう方がいい!)
それは名案に思えた。
まず番うためには発情しなくては。まんばは催淫剤を飲む。程なくして人工的に発情状態になった。
これでαにわけを話して、噛んで貰えば……と思ったが体が思うように動かない。道端でへたり込んでしまう。
いつもは抑制剤を飲んだ状態で発情期を迎えるため、抑制剤なしは初めてだった。
「こんなところで何してるの?」
声をかけられ、見上げれば、αがいた。
天の助けと思い、必死に事情を話そうとする。しかし焦るあまり舌がもつれて上手く言葉が出てこない。
まんばがすべてを話し終える前に担ぎ上げられる。どこかの座敷に連れて行かれ……
暗_(:3 」∠)_転
まんばは目が覚める。首が痛い。ハッとして首を見る。(鏡とか使って)
噛み跡がある!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
これで許婚解消だ!と喜ぶ。
んん…と呻く声がする。まんばはふと考える。
未来に絶望し、見ず知らずの彼と番ってしまった。しかし初対面のΩに噛み付くなんて、非常識なのでは?
性犯罪者もいいとこだ。これはレイプだ、レイプ。
(そんな男が俺の番い……?)
まんばは怖くなって逃げた。
本丸に帰る。まんばは噛み跡があるから許婚は解消だ!とにこにこ。行きずりの男と番ってしまったが、彼ともう会わなければ関係ないのでは?と思う。彼を誘うフェロモンしか出さないので、他の人には無害!
審神者がまんばの姿を見とめ駆け寄ってくる。
「主、見てくれ、これ……!」
ハッとする。
許婚は、審神者の先輩の刀だ。だから断れないと言われていた。しかしまんばに番いができたことで否が応にも破棄される。
しかしそれはこちらの落ち度だ。もしも先輩審神者が慰謝料を請求して来たり、訴えを起こした場合は?
しかも番ったとはいえ相手がいない。それならいいかと無理矢理嫁がされるかもしれない。
まんばは真っ青になる。
「どうしたの?」
「い、いや何でもない!」
審神者に心配していたなどと声をかけられる。まんばは呆然として頷くことしかできない。
布のお陰で噛み跡は見えないだろう。審神者にバレはしない。だけどドキドキハラハラ。
分岐
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.