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amarey
2024-12-14 01:34:24
12484文字
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one day
ムリナール叔父さん、誕生日おめでとう。
遅刻してごめんね。
たくさんの人にお祝いされても素直に喜べない話。
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+++
『ムリナール、そう言えばそろそろだったな。あなたの誕生日は
……
』
雨の中、黒髪の男は呟いた。
『下らないことを口にするくらいなら閉じていろ』
『はは、つれないな
……
だが仕方もないか』
ムリナールの言葉に男は力なく笑い、しかし黒髪を濡らしながら寂しげに続ける。
『いまの私に贈れるものは祝福だなんてそんな美しいものではなく、あなたをもっと苦しめるものだろうか
……
いや、それすらできないかもしれないな』
声からも少しずつ、炎が消えつつあることがわかる。それでもクランタの男は眩しそうな瞳をムリナールに向ける。
『それでもあなたはいつまでも、私のあこがれ、私達の
太陽
ニアール
……
』
まるで昔のように。
肩を並べていた日々のように。
いま先ほど戦ったことも、どちらが勝ちそして負けたのか、そんなことも忘れたかのように。
おめでとう、と。音にもならないくらいにか細く、シチボルは口にした。
「ちょっといいかしらっ!?」
どばん、と訓練室の扉が豪快な音を立てて開かれた。
部屋の中央で鍛錬に励んでいた男は不機嫌そうにそちらに目を向け赤髪の少女が目に入ると、人知れず息を呑んだ。
そして、その少女がクランタではなくザラックであり、そして
焔尾騎士
フレイムテイル
を名乗るソーナであることに気が付くと、ムリナールは思わず深々と息を吐いた。
「ジャマするぜぇ!」
後を追うようにもう一人現れたクランタの少女・イヴォナは力一杯に声を上げた。
「騒々しい。次の相手はお前達か?」
「私達はデリバリーに来たんだ」
更にその後ろからひょこりとユスティナが現れ、その手には小鍋とパンの乗ったプレートが見えた。
「
……
デリバリー?」
「そう、言うなれば私達は
……
」
真顔のままユスティナは口を開き、ソーナを見やる。すると赤髪のザラックはこくんと頷いた。
「臨時請負・出前所『
赤松林
レッドパイン
』よ!」
ソーナは誇らしげに宣言し、イヴォナも笑ってはいるがそれはあくまでも自信を持った笑みであり、そして三人ともが背筋を伸ばしていた。
ムリナールは目を細め、何から告げるべきか悩み、そしてゆっくりと壁面に貼られた紙面を指差した。
「訓練室での食事は禁止だ」
「禁止だな。でも長時間訓練なんてこともザラだし、アンタみてぇに個人訓練で引き篭もるヤツもいる。だからこれは
……
」
チッチッチと、わざとらしくイヴォナは唇を鳴らして立てた人差し指を振る。
「特例事項ってヤツだ!」
高々と宣言したかったのだろう。
何故か特例という単語を口にする瞬間、瞳を輝かせていた。
「
……
何処の誰に言われて持ってきたのか知らないが、不要だ」
しかしムリナールはただ断るのみだった。
すると三人の騎士はあからさまにショックを受け、ソーナは「レッドパイン騎士団、集合!」と二人を呼び寄せ、ムリナールがいる方とは逆の壁際へと集まった。
ひそひそと話を始めたのだが、そんな声では筒抜けなことも気付かぬほどの事態らしい。
「ほら! やっぱり断られた!」
「困ったね
……
秘書殿に『ドクターからの厳命ですよ!』なんて言われていたのに」
「要らないって言ったよな? じゃああたしが食べても良いか? 良いよな?」
「こら、だめよ! もしも食べてくれなかったとしても残しておいてって言われたじゃない」
「ああ、今日乗り合う彼にあげるって言っていたな」
「あ? ああ
……
来るんだっけ、アイツ」
丸聞こえの内緒話をする少女達から離れて鍛錬を再開していたムリナールはイヴォナの言葉に動きを止めた。
「
……
あいつ
……
?」
少なくともアイツとは姪達ではないこと、そして彼女らと知り合いであることがわかる。そして今後カジミエーシュ領へ到達することを加味すると、ひとりの
男
サルカズ
が思い浮かびムリナールは顔を顰めた。
「あっ、わわっ、ききききいてたんですか!?」
「なんでも、カジミエーシュ領に入ったらピックアップして欲しいらしい」
「
……………
」
ソーナは慌て、ユスティナは動じず、そしてイヴォナはユスティナの持つプレート上に置かれたパンとスープとムリナールをそれぞれ交互に見ている。
誰が何を考えているかは不明だが、いまのムリナールには起きる事象も誰かの来艦も興味が持てず、いまはただ、一人になりたかった。
「カジミエーシュに入るのは夜中と聞いている。誰かに残すくらいならお前達で食べなさい。さっきも言ったが私は不要だ」
「確かに
……
パンにスープが染みきっちゃうから早めに誰かが食べる方が良い」
「ほんとかぁ!? じゃあ良いのか!?」
「あ、こら! だから私達は
……
」
そうして再び、訓練室のドアが開き、灰毫の騎士名を持つグレイナティとロボットが現れた。
「待たせた」
「カイちゃん!」
今回は轟音もなく静かに開いた、と思ったのは束の間だった。
「Di-di! ジャスティスナイト、訓練室に到着よ! 出来立てホカホカのチーズクリームスープとブレッド、さぁみんな召し上がれ!」
「わっ、こらっ。あまり激しく動いたら
……
!」
到着を喜び、そして食事のデリバリーを宣言するジャスティスナイトの背中でスープを入れた鍋が賑やかに揺れる。レッドパイン騎士団達の周りを駆け回ろうとするジャスティスナイトをグレイナティとユスティナがかしりと捕まえていた。
「えへへ、私達の分もあるんです
……
ついでに簡易テーブルもあったりして」
ソーナの申し訳なさそうな顔、そして期待した顔で鍋を見る様子から空腹なのだろう。全てを持ち帰れと言うのも心苦しく、ムリナールは仕方なく訓練室の床に腰を下ろした。
「前に教えてもらったんです。こんな風に中身をくり抜いたパンにクリームスープを入れて食べると美味しいって。
……
耀騎士に」
確かにそれは、ムリナール自身も知っている、懐かしい食卓の味わいだった。
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