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さもゆ
2024-12-10 03:09:17
33128文字
Public
吸死
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【ドラロナ】貴様にはやらん
むかしモブ吸血鬼に執着されてしまった若造と、ブチ切れ兄貴と、現・執着真っ最中の雑魚砂吸血鬼の話。
※自我と名前のあるモブがガッツリ出る
※ドラロナ付き合ってない
※ド(自覚済み)ロ(ほぼ無自覚)くらい
※兄貴ーッ!
2024.4.18 たべものpixiv投稿作品
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四 顛末
一晩明け、二晩明け、三日も経つころにはいつもの魔都シンヨコ、たとえ雨でも、雨なら雨でいつも通りのおポンチな輩が蔓延っている。いつも通りじゃないことと言えば、ロナルド吸血鬼退治事務所内の様子が少しおかしいくらいだ。
ロナルドは最初、雨が止まないからだろうと思った。思ったというか、思い込みたかった。この三日、つまりあの寂しがりな吸血鬼との対決から、曇天の空は耐えかねたように雨を降らせていた。同居人は雨に弱い。
だから機嫌が悪いんだろうと思うことにしていた。自分が気にすることではない。しかし四日目にして、気にしないふりをするのも限界を迎えた。四日だ。よく持った方だと思う。
「おいクソ砂」
「ウワッ」
事務所のソファに座りゲームをしていたドラルクの胸倉を勢い込んで掴んだ。おいバカ造やめろデータ飛んだらどうしてくれる、喚いて砂になった同居人に構わず隣に座る。胸倉を掴んでいた手から砂が零れ、迷って、再生したマントの端を掴み直した。「
……
まだ怒ってんのかよ」
最初の勢いとはかけ離れた仕草と小声に、ドラルクの眉がぴくりと動く。「何に?」
その訊き方が、と思う。もう既に怒ってんじゃん。
「
……
レダンとのこと」
「もっと具体的に」
「
……
」ロナルドは情けなくも眉を下げた。具体的にって。何が悪いかを、子どもにきちんと自覚させるような問答だ。「
……
レダンのこと、ロナルドウォー戦記に書くって言ったから
……
」
けれどもこれは、誰に何と言われようと決めたことだ。
あのとき、ロナルドが言ってやりたかった台詞は、VRCに収容され枷を嵌められた彼に無事言うことができた。
──レダン、聞いてくれ。俺さ
……
その、作家になったんだ。吸血鬼は、あんまり写真には写らないし、鏡も専用じゃないと使えないだろ。でも、けどさ、文字なら残るんだよ。文章なら、そりゃ途方もない魅力がねーとダメだけど、世界中に知ってもらえる。記憶に残るんだ。それじゃ、だめかな。それだけじゃ、お前のためにはならないかな。俺がんばるから
……
またお前が眠って、目覚めたときに、少しでも寂しくないように、頑張るから──
その場でそれを聞いていた兄も同居人も、それはもう複雑な顔をしていたけれど、最後にはお前は本当にお人好しだなとそれぞれの言葉で言い見守ることに徹してくれた。これでこの因縁めいた事件は終わり。ロナルドはそう思って日々を過ごしたが、同居人にとってはそうではないらしい。今日に至るまで、分かりづらくはあるが、ずっと不機嫌なままだ。
「ドラ公」
マントの端を手の中でくしゃくしゃにする。まるで本当に怒られ待ちの子どもに、ドラルクは盛大な溜め息を吐いた。
「きみは何っにも分かっちゃいないな」
俯いた視界に手袋の細い手が入り込む。マントを握りしめるロナルドの手を、とん、とん、と叩いた。つい先日もこのリズムを、首裏に刻まれている。じわ、ロナルドは自分の耳朶に熱が集まるのを感じた。ピアスが冷たい。
「執筆活動はフクマさんやオータムに後押しされているんだ、私がとやかく言うつもりはない」
「じゃあ、何でだよ。この間からずっと、おまえ機嫌わりーじゃん」
「本当に分からない?」
だからその他人に正解を言わそうとする面倒くさいやり口やめろよ、ロナルドは口を噤んで黙り込んだ。手の甲を叩いていた指先が、すり、皮膚を擦る。う、と声が漏れそうになった。喉の奥が濡れた感覚がする。気のせいだ。ロナルドは唾を飲み込む。
「お、おれが、」
ようやっと言えた声は無様なほど震えていた。
「おれが、お話書くために、その、VRCにいるあいつに会いに行くのが
……
イヤ、とか」
落ちた沈黙をこれほど叩き割って窓から捨てたいと思ったことはないかもしれない。
何とか言えよ、ほぼ泣きながら叫ぼうと真っ赤な顔を上げ、ぴたり、一切の動きが止まる。
ドラルクは清々しいまでに牙を見せて笑っていた。
「惜しいな。ちょっとだけだが。ただ嫌なだけじゃない、頗る嫌だよ」
「
……
だ、駄々捏ねねーの」
「私とて弁えるさ。執筆活動の邪魔をしてフクマさんに深淵に引きずり込まれたくはないし」
「じゃ、じゃあ、そんな不機嫌そうにすんなよ」
「それは無理」笑んだ目許に、青筋が薄っすら浮かんですらいる。「きみは相変わらず、吸血鬼の執着を舐めている。私が健康優良吸血鬼なら毎秒血反吐を吐くくらいの不快さだぞ、だが私は真祖にして無敵なので砂るだけで耐えられている。真祖で無敵でなければ耐えられなかった」
「それ耐えてるって言わねーだろ」
「うるさい捏ねるぞ、駄々を。部屋中砂だらけにしてやろうか」
「
……
」ロナルドはちょっと迷った。迷って、言った。「ドラ公。俺おまえの作る飯好きだぜ」
「はあ? そんなもんは毎回綺麗に平らげられる皿見りゃ分かるわ」言ったものの、普段ない素直な褒め言葉に面食らったのか耳が砂っている。「急にどうした若造」
これじゃ駄目なのか、と思った。これじゃ伝わらないらしい。
だがしかし、思い返しても、今回のドラルクのように直截な物言いはハードルが高すぎる。会話の流れならまだしも、自分から言うとなると、顔から火が出そうだ。出そうだが、何とか頑張るしかない。自分は作家だ、小説家だ、与えられた言葉を、自分なりに翻訳して相手にも返さないでどうする。
「あの、さ」
「うん」
「その。
……
お、お前がつくったこの体、もうあんまり、噛ませないように、する」言ってしまってから、いや無理だ、とすぐさま思い直す。この町には何せポンチが多い。ポンチしかいない。「ぜ、善処する。俺は、俺のだけど、でもお前が毎日飯作ってくれるおかげで仕事できてることも無きにしも非ずだし」
ええいままよ。ロナルドはぐずつきながらも言ってやった。
「喉の奥、まで、ゆるすのはお前だけだから。だからそんな怒るなよぉ
……
」
ぐあっ。
牙が迫った。
とほぼ同時ぐらいにロナルドの優秀な反射神経が拳を振り上げ、事務所の扉が様子を見に来た兄によって開けられた。スリープモードだったメビヤツが目を開ける。
とりあえず。
事務所は砂だらけになった。ヌーー!
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