おたる
2024-12-08 16:09:44
3396文字
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大海原荒れて魚二匹

怪異×アトと巻き込まれカジキ なんかよくわからない感じになった 改ページ機能を使ってみたかっただけのやつ
最終ページには怪異のちょっとした説明が載っています


 さらに別の日、あの女や子供たちの言う「おとうさま」とは一体何ぞやと考えていると、自然と足は水辺へと向い、気が付いた時には川辺で一人座り込んでいた。
 「海で待っている」と子供たちは言っていたが、「おとうさま」とやらも魚の一種なのだろうか、そも「おとうさま」なら相手もいるであろうというのに、なぜオレを呼んでいるのか、謎は尽きぬどころか深まるばかりである。
 それならばいっそ海まで行って、直接そいつの顔を拝んでやれば手っ取り早いのでは?という考えが名案面して何度も脳裏に浮かんでくるが、どうしてもそんな気にはなれない。本能的な、第六感じみた何かがそれを否定しているのだ。

「──臆病モンが、伝言なんてまどろっこしい事してないで直接顔を見せに来いってんだ」

 穏やかに流れる川へ向かってそう吐き捨てると、幾分か胸のうちにあるもやもやとしたものが晴れたような気がする。さあ戻るかと伸びをしながら立ち上がると、ずん、と地響きのようなものがひとつ。波一つなかった水面はわなわなと震え出し、何かが遠くの方から水音を立てて近づいてくる。最悪の展開を想像し動けないでいると、やがてそれは激しい水しぶきを立てながら、オレの前に現れた。

「ピョピョ~、アトランティスではないか~っ!こんなところで出会えるとはなぁ!さあ、あの時の続きをしようではないか」

 それは見知った魚であった。きんきんと歌いあげるように、上機嫌極まりないといた様子で近づいてくるそれに、オレはしっしと手を払うジェスチャーを返す。喧しい魚の相手はもううんざりだ。
 しかしそれは帰るどころか急に圧し黙り、訝しげな表情でオレを上から下までじろじろと見分してくる。突っかかるのも面倒になり、しばらくそのままにさせていると、それは顎に手を当ててうんうんとうなり声をあげだした。

「急に来たと思ったら何してんだよテメェは」
「一寸懐かしい気配がしたのでな、確かめていたのだ。ずいぶんと面倒なのに好かれているようだな、お前は」

 瞳に敵意が宿る。リング上のそれとはまた違った種類の、いっそ怨恨とでも呼んだ方がしっくりとくるような、そんなじっとりとした敵意が向けられている。

「──アトランティス。最近、何か不審な出来事は」
「なにもなかった」

 返答を考える間も無く、口が勝手にそう動く。塞ごうと伸ばした右手は左手に取り押さえられた。だらりと流れた汗がオレの背中を伝う。

「なにも、起きちゃあいねェ。おれ、は、これから用事が。いくとこが有るんだ。テメェに構ってる、暇なんか、ねえんだよ」

 舌をかみ切らんばかりに顎へと力を込めるが、口は依然止まらず、オレの意思に反して動き続けている。

──コイツのせいだ、コイツに出会ってしまったからこんな面倒なことになったのだ。忌々しい梶木通しめ、お前のせいで折角の準備が台無しになってしまった。ようやく会いに来いと言ってもらえたのに。早く逃げなければ。遠く、とおくへ、遠く離れた海の底へ。一刻も早く逃げなければ!
 走りだそうとした身体はすぐさま押し倒され、そのままずるりと引きずりだされてしまった。