おたる
2024-12-08 16:09:44
3396文字
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大海原荒れて魚二匹

怪異×アトと巻き込まれカジキ なんかよくわからない感じになった 改ページ機能を使ってみたかっただけのやつ
最終ページには怪異のちょっとした説明が載っています


別の日、やけに機嫌の良い上司に連れられ立ち寄った定食屋でまた声がした。

「ああ、あれが」「おとうさまのいってた子だ」「おおきな目がすてきね」「ひれもおおきいよ」「かっこいいなぁ」「たのしみだね」

 声は上司の注文した生シラス丼から聞こえてくる。まさかと思いつつ目線を丼の方へ向けると、数えるのも面倒になるほどの眼が一斉にこちらを向いて息を呑んだ。目が合ったことがうれしいのか、きゃあきゃあと更に喧しくなった声が脳内で反響し、ぐらりと視界がゆがむ。

「なんでお前らも俺に話しかけてくるんだよ」

 上司がテレビの中継に気を取られているうちにひっそりと声を潜めてシラス丼に問うと、無数の眼はこの前の魚と同じように、にっこりと目を弓なりに細めまた一斉に口を開く。

「『でんごん』なんだ」「おめでとう」「海でまってるっていってたよ」「おとうさまがよんでるよ」「かわいそうに」「ひとめぼれなんだって!」「やったね」「うらやましいなぁ」「はやくいってあげてね!」「ずっとまってるから」「おめでとう」「うごけないんだ」「きてね」「おめでとう」

 口々好き勝手に喋る中でなんとか聞き取れた情報をまとめると、「おとうさま」とやらがオレを海で待っているらしい。それはとても喜ばしい事らしく、言う事のなくなったらしい子供たちは銘々俺に向かって祝福の言葉を口にする。真昼間の定食屋にこだまする喝采に気が狂いそうだった。
 テレビ中継を見終わった上司が子供たちを喰らいつくすまでおめでとうの声は止まず、同じものを頼まなくてよかった、と無心で蕎麦を啜っていた。