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さもゆ
2024-12-06 16:01:55
7442文字
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BBB
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【ステクラ】ツイログ
どれも付き合ってません!
2020.12.27 たまごのお粥pixiv投稿作品
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死にかけの副官がボスにキスをぶちかます話を書きたかった。
ざまァみろ
このまま死んでもいいかと思った。
けれどそれをもう何度も何度も、本人はそんな自覚はないだろうが本当に何度も引き止めて来やがったのがきっといけなかったのだ。こっちはいつ死んでもいいしいつだってその覚悟があるし死が両手を広げて抱き込んで来たのならば抗わずに身を委ねて闇に沈んで溶けて消える心積もりでいた。
それなのに、あいつは、俺がそうやって瞼を閉じるたびに強烈な光で照らしてくる。
眠ってはいけない。
息を止めてはいけない。
私を見ろ。
光は視線や言葉でそう命じてくる。
いい加減、うんざりだった。
※
「
……
ようクラウス。こんなに目覚めなけりゃいいのにと思った朝はないよ」
「スティーブン、
……
目が覚めて良かった。ちなみに今は夕刻だ」
「本当に?」霧烟った夕焼けよりきみの赤毛の方がよっぽど綺麗だね、薄ら寒い台詞を続けて吐くが、ほとんど掠れ声だった。
しかしきっちり聞き届けたらしいクラウスは、理解できない異界言語を耳に入れ同じような言葉をなんとか返そうとするかの如く、下手くそに喉を上下させた。結局、僅かに開いた牙の覗く唇からは何も紡がれず、俺を多少愉快な気持ちにさせてくる。拍子に胸の内側、肺までが痛んで顔をしかめた。笑ってもいられない。生きているということは分かっているが、死にかけたのも事実だ。首が少し動かせるぐらいで、包帯だらけの首から下は未だ麻痺していた。内装は旧ブラッドベリ総合病院ではない。ということは、こうして目が覚めたのは割と奇跡なのかもしれない。自分の体のことだ、それほどの出血量だったのをよく覚えている。
それから、穴の開いた腹から血をだらだら流しつつ、駆け寄ってきたクラウスにキスをぶちかましたのも。
気絶する間際の、自分にしてみれば、「ざまァみろ」という心情からくる行動だった。
あのまま死んでも良かった。
しかしクラウスがそれを許さなかったので、何か八つ当たりをしたかった。お前のためならこうして死ねるのに、それくらいお前のために生きているのに、どうしてお前が邪魔をする。
結果は大成功。意識を失う直前、血濡れた手で掴んだ頬はこの上なく強張り、眼鏡の奥の新緑は驚愕で見開き、そして、僕の名を呼んでいた唇は慄いていた。ざまァみろ。牙が当たったせいで痛みを訴えた口を離して僕はそう笑った。そうして、現在。
「
……
きみが言いづらいなら、僕から言うけど」
潰れかけている喉を駆使して彼にとっては異界言語を捻り出してやっている。
「僕は別に、死にかけたら誰にでもキスするようなやつじゃあ、ないよ」
「
……
分かっている」
「そうか?」
「ああ。今まで、きみのそのような話は、一度も聞いたことがない。見たことも」
「そうだね。俺も初めてだったな、あんな映画みたいなこと」
「
……
きみにとってはそうでも、私にとってはトラウマになるかと」
「なんだって? もう一度言って。後半を特に。ごめん二度言って」
「私にとってはトラウマになるかと。
……
トラウマになりそうだった。映画などという生易しいものではなく、現実的に」
「気分がいいな」
僕は咳き込みながら笑った。ほとんど虫の息のような、ひゅーひゅーという不快な音が開いた喉から口へと出ていく。見兼ねたクラウスが、先生を、と呼びに行きそうな素振りをしたので名を呼んで引き止める。彼はやはり、いつも強い意志を宿す新緑の瞳を、眼鏡の向こうでゆらゆらと怯えさせていた。こんなことってない。
「トラウマに?
……
お前が? そうだな、きみの気持ちを考えると、信頼する死にかけの仲間に物凄い形相でキスされたんだもんな。そりゃ、なるな。ははは、面白いな、怖かったの? ごめんな。もうしないよ、ウン、たぶん。もうしない
……
」
「スティーブン」
「味を占めそう。今度またしていい?」
「きみはたまに悪趣味だ。そしてひどく恐ろしい」
「感想文みたいな評価だな。ホラー映画の殺人鬼あたりの」
「きみが殺人鬼なら、ここまで怯えはしないよ」
「どういう意味?」
「信頼する死にかけの仲間と言ったのはきみだ。スティーブン。私は死にかけの信頼する仲間から、口をぶつけられるとは思わなかった。とてもびっくりしたのだ、本当に」
「あれはキスだよ。口をぶつけるタイプの」
「タイプがあるのかね」
「口を噛むタイプもあるし。今度それを試してみようか」
「恐ろしいな」
クラウスはほとほと困ったように首を傾けた。どころか、体ごと傾いてしまっている。胃が痛いのだろう。
また、愉快な気持ちになった。
「私は死にかけの仲間とキスをする趣味はない」
「その口ぶりだと、僕がそーいう趣味があるみたいになるだろ。違うよ。初めてだっつっただろ」
「ならなぜ、」
「なあ、死にかけてない仲間とのキスはどう?」
「
……
死にかけているか死にかけていないかの二択なら、私は死にかけていない方がいい。元気に生きている方が」
「じゃあ頑張って治すよ」
俺は満足して瞼を閉じる。暗闇の向こう側、強烈な光が無言で抗議、または意味の分からなさで困惑していたが、知ったこっちゃなかった。やっぱりざまァみろと思う。眠らなければならない。死ではなく睡魔はすぐに闇を抱えてやってきてくれる。迷った末、クラウスが病室を出て行く音がした。
お前のためなら死ねるのに、お前がそれを邪魔するんだ。口をぶつけるくらい、したっていいだろう。いい加減うんざりなんだよ。
お前は僕には眩しすぎる。せめて唇くらい、塞がせてくれ。
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