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さもゆ
2024-12-06 16:01:55
7442文字
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【ステクラ】ツイログ
どれも付き合ってません!
2020.12.27 たまごのお粥pixiv投稿作品
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少年加入前。ザップさんとスティーブンさんの動物談議。
カラスと、ワシと、太陽と
烏か、鷲。
ザップには人を動物にたとえる癖があった。弱肉強食のド秘境で過ごした修業時代の名残のような感覚だ。ほかの人間を見ると外見的特徴や習慣、内面からこいつはあの動物に似ているなと自然に判断する。
ザップにとってスティーブンは烏か鷲だった。鳥類は賢い生き物だ。その中でどうして烏かと言うと、あれは非常に狡猾で足を器用に使い、夜闇に紛れ、そして死肉を恐れず食らいに行き、かと思えば真昼の空の下でも力強く飛び回る。まさに、スティーブンだ。ザップには初対面の時からそれが分かっていた。鷲の方は完全に外見からたとえている。形の良い鷲鼻。
だからどうしてそういうタイプの人間が大人しくそこにおさまっているのかが分からない。
そこ、とはクラウス・V・ラインヘルツの隣。
いや、烏だからこそ、か。
烏はその羽の黒さを厭わずどこだろうと生きていける。太陽のそばだって、同じことだろう。
ただ気に食わないことは、スティーブンが地に足をつけた四足の動物のように振る舞っていることだ。
鋭い爪を持つ二本足。羽があり、いつでも翼を広げられるくせに。
なぜわざわざ地を這う生き物の真似をするのか、どうしたって分からない。
ライブラの一員として誇りを持っているのは、ひとえにライブラが「正義の味方」ではないからだった。世界の平和ではなく世界の「均衡」を守るためというのが面白い。善悪はどちらもなければ面白くなくなる。死があるから生きていけるのと一緒で、ザップはそのために血を使って暴れられるのが好きだった。
重鈍い音で一閃、カグツチの炎が舞い上がる。
圧倒的な敵数。一帯の全てを焼き尽くしていいと言われていた。非常にいい。シンプルだ。
「
――
消し炭にしてやる」
降り積もった灰を踏み締める音がする。
霧なんだか灰なんだかどっちつかずの薄汚い白い中を、影のような男が歩いてくる。足音の様子からして、おそらく不機嫌だ。ザップはげえ、と舌を出した。美味くもない灰が舌に乗り、炎のにおいをもたらしてくる。
「汚れっちまいますよ、スターフェイズさん」
それをよく咀嚼しながら言葉にすると、焼け残った瓦礫に座るザップの前に、影のような男、氷の冷たさをまとったスティーブンが立ち止まった。黒髪にふわふわと灰が付着し、まるでアンバランスな様相だ。氷使いに熱ほど似合わないものはない。
「お前なァ」
垂れた目尻をつり上げたスティーブンが声を上げた。
「どうして毎度毎度ここまで灰微塵にするんだ。HLじゃなきゃ再生不可能、ニュースに取り上げられても文句は言えんぞ」
「いやアンタが焼き尽くしていいって言ったんでしょーが」
「お前に分かりやすく言ってるだけだ、加減は考えろ」
「め」
「めんどくさいか? けどお前にはそれができるだろ」
この人は斗の血を使う俺を正当に評価してくれている節があった。むずりとする。何せザップは自分の血に誇りを持っている。それに、とスティーブンが続けて言う。「面倒なこと好きだろ、お前は」これはちょっと聞き捨てならないし間違った評価だと思う。誰が何を好きだって?
「意味分かんねえすよ、スティーブンさん」
「無自覚か? まあそのうち分かるようになるさ」
そのザップよりもザップを分かっているような物言いは面白くなく、というか面倒なことが好きなのはスティーブンの方だろう、ぐだりと反論を試みる。
「そんなん言ったらアンタこそでしょう。どうしてイヌ科の真似事なんざしてんすか」
スティーブンは虚を突かれた顔をした。「意味が分からん、ザップ。なんの話だ?」
「いや、だから意味分かんねえのはこっちの話で
……
なんで賢いのに分かんねえんすかアンタ」
「お前、俺が分かってないことを分かってないだろう。マジで分からん。犬がなんだって?」
「あー
……
」ザップは途端に面倒臭くなって顔をしかめた。相手が分かるように言葉を選ぶのは苦手だ。「つまり
……
アンタがお上品な恰好して
……
旦那の番犬みたいに振る舞ってんのが
……
分かんねーんすよ。アンタは能ある鷹タイプで、翼広げたらでけえ鷲タイプで、そんでもって烏なのに」
「俺は人間だよ」
「ハッ、笑える
……
」
「やけに突っかかるな。なんだってんだ」
「気に食わねーんすよ。旦那の真似して富裕層みたいに振る舞ってんの。見てて寒々しい」
到底上司に向けるべきではない言葉を向けられたスティーブンは、へえ、と肩を竦めた。髪や肩に散った灰が段々雪に見えてくる。表面上はひどく穏やかな笑みを湛えていたが、前髪が掠める目尻には何の感情も乗っていなかった。「つまり、」スティーブンは無造作に歩み寄るとザップの隣に腰かけた。上等なスーツが灰で汚れる。
「お前は僕が貧民窟のゴミを漁る烏みたいだって言いたいのか」そしてザップの首に腕を回して引き寄せた。
「いや、」
そんな可愛らしいモンじゃないでしょう、と言えばさすがにマズいことになるのは大いに野生の勘で察したので冷や汗を掻きながら違いますよと答える。足技使いのどこにそんな力があるのか、首に回った腕はぴくりとも外せない。「た、ただスティーブンさんの方が面倒そうなこと率先してやってるって言いたいんすよ、俺は。それに、アンタ、金持ちとか嫌いだろ」
ぴっ、ザップの唇の前に人差し指が立てられる。しぃ、黙らせると、スティーブンは囁くように口を開いた。
「クラウスはただの富裕層や、鼻持ちならない金持ちどもとは違うさ。お前だって知ってるだろう?」
……
ああ、そっち。ザップは脱力したい心地に駆られた。自分を馬鹿にされたと思って怒ったのではない、我らがボスを馬鹿にされたと思ってこの男はここまで氷のように静かに冷たく怒っているのだ。「
……
旦那がただの金持ちだったら、毎度毎度喧嘩売ってませんよ」「分かってるじゃないか」スティーブンはバシンとザップの背中を叩いた。「ってェ」「誤解されるような言い方は控えた方がいいぜ。僕がなぜクラウスのそばにいられるかって話だったか? ああ、なるほど、分かったよ」
一人納得して頷いたスティーブンはあっさりと首から腕を放し、緩慢に立ち上がる。尻から灰を叩き落とした。
「お前にもそのうち分かる。たとえいかに面倒でも、生き方が違っても、守りたいと思う存在が現れたら、必ず」
「
……
はあ。あの人は守られるタイプなんすか」
「そうだよ。あいつはいい人間だから」
「はあ」
やはり、何一つ、分かっていない気がする。そのうちって、一体いつのことだ。
ザップは手持ち無沙汰に懐からジッポを取り出そうとして、それから、と話を続けるスティーブンに一瞥を向けた。
「お前が初めてだ。俺のことを烏と比喩したの。気をつけろよ、やつら手癖が悪い」ひらり、掲げた指先にザップのジッポが挟まっていた。
「は?」
探る懐には当然それは収まっておらず、にやりと笑うスティーブンにほら見ろ! と叫びたくなる。ほら見ろ、この人は烏なんだ、上手くそれを隠しているだけで、誰より高いところを飛んでいる。手癖が悪い? いつもポケットに手を突っ込んでいるのはそういうことかと合点がいってしまいそうだ。
ザップが消し炭にできない生き物だ。
叶う存在ではない。そういう意味では、ボスとよく似ていた。
クラウスは紛れもなく人間らしい人間だったが、太陽のような人でもあった。太陽には、烏がいる。古代中国の伝説にそういう話がある。全く馬鹿らしい、つまりザップがどう思おうと彼らは切り離せない存在なのだろう。コインの裏表、陰と陽、生死に、善悪。そういうものだ。
それが羨ましいかどうかは、まだ分からないけれど、とにかく。
「アンタまじで烏みたいだな!」
これは概ね、間違ってはいないのだろう。ザップには人を動物にたとえる癖がある。
やがて自他共に認める亀の少年と出会い、そして自分がいかに面倒事を面倒だと喚きながら引き受けてしまうか、嫌と言うほど分かるようになるのだが。少なくとも、この時のザップに分かったことと言えば、上司がどれだけ烏に似ているかということだけだった。
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