不破
2024-11-30 02:11:09
4617文字
Public 空戦
 

#23




「極東か……

 言いながら、ラザフォードは白い剣をベルトに通したホルスターに挿した。
 極東オワリノ國。リベルタリアの東方に位置する大国で、人類が空に移り住むより以前から、ノブサヤ・サイトウという人物が治めている。曽祖父の代からシンクレアを中心とするリベルタリア和平協定に参加していると聞くが、ラザフォードが思うに「敵対していない国家」であり、協力的であるとは思わないというのが素直なところである。

「あの国がまともに協力するとは思えないが……

『そうでしょうけどね。和平協定があるもの、こちら側につくという体裁は取るはずよ。ラウル・シンクレアの血を引く貴方がそう言えばね』

 ラウル・シンクレアの血を引く、か。確かにその名を出せば言うことを聞きそうなものではあるが、それはあくまでそもそもが友好的であるというのが前提だ。しかし、オワリノ國がそうだとは、ラザフォードには思えなかった。

「ノブサヤ・サイトウと直接協定を結んだのは曽祖父ひいじいさんだ」

『爵位は血に与えられるものよ。同じ公爵でも、教皇の血を引くのは貴方だけ』

 ハーティアの言葉に釈然としないまま肩に掛かった髪を払い除けると、溜め息をついた。

『サイードの艦隊はほぼ壊滅よ。クルクスだけじゃブカレストを突破できないわ』

 と、続けられるハーティアの言葉に口を噤む。
 彼女の言う通り、合流したサイードの艦隊は先のブカレストでのロゼ・シュタインベルク率いるシリウス隊との戦闘でほぼ壊滅と言って差し支えない大打撃を受けた。この状態で再度ブカレストに攻撃を仕掛けても押し返されるのみで、今度こそ全滅に追い込まれる可能性すらある。

……わかった。メッカで補給を済ませてからオオザカに進路を取る」

『ええ。お願いね、ラザ』

 そう言ったハーティアとの通信が切れ、ラザフォードはまた溜め息をついた。