約束破りの嘘つき
*タイトル:宵闇の祷り様*
*Gルートのお話。*
ふわりふわりと風に舞うそれはまるで、世界一面を真っ白に染める雪のように見えた。
両腕でしっかりと抱えた弟
を、そっと柱の影に隠す。そうして頭を一つ撫で「ここで隠れていてね」と男は笑った。
「大丈夫。何があっても、兄ちゃんが守ってあげるからね」
男は、物言わぬ弟にそう答えて立ち上がる。奴にここが見つかる前に、弟から離れてしまわなければ。
急いで柱から離れて、奴が来るであろう廊下の奥を見据える。さて、最初の言葉は何だっただろうか。
コツン。コツン。男が廊下に仁王立ちしてすぐ、廊下奥の暗闇からひとりのニンゲンが足音を鳴らして現れた。
——奴だ。
怪物と呼んでしまいそうなほど不気味な笑みを浮かべたニンゲンに、男はそっと口を開く。
いらっしゃい まってたよ
いそいでるところ わるいけど
きみに ききたいことがあるんだ
どうして みんなをころした?
オレのなかまを かぞくを……
いや サンズはまだ いきてるじゃないか
でも どうして サンズがしんだ きおくなんて
ちがう これは ちがう そうでしょ?
おまえは サンズをころしてなんて いない
けど おまえは みんなを ころして……
……だいじょうぶ
きょうは きみにとっても オレにとっても
さいこうの いちにちに なるはずだよ
ねえ?
言い終わってすぐ、相手の返事を待つことなく男は走り出した。少し目を見張ったニンゲンに、いつの間にか握っていた骨を振り下ろし
——。
その場に、赤い液体が広がった。
……一回目。
コツン。コツン。男が廊下に仁王立ちしてすぐ、廊下奥の暗闇からひとりのニンゲンが足音を鳴らして現れた。
——奴だ。
怪物と呼んでしまいそうなほど不気味な笑みを浮かべたニンゲンに、男はそっと口を開く。
まずは 1かい……
まだまだ これからって かおしてるね
言い終わってすぐ、相手の返事を待つことなく男は走り出した。少し目を見張ったニンゲンに、いつの間にか握っていた骨を振り下ろし
——。
ガチン。高い音と共に、骨が弾かれた。ならば、と指を鳴らせば、一瞬にして頭上に現れる五本の骨。
先の尖ったそれが、勢いよくニンゲンに飛びかかっていき
……次の瞬間。
その場に、赤い液体が広がった。
……二回目。
コツン。コツン。男が廊下に仁王立ちしてすぐ、廊下奥の暗闇からひとりのニンゲンが足音を鳴らして現れた。
——奴だ。
怪物と呼んでしまいそうな不気味な笑みを浮かべたニンゲンに、男はそっと口を開く。
ほら 2かいも しんじゃったね
ニンゲンだって いたいのは いやでしょ?
……三回目。
3かいも ころされたのに
わかいって いいねぇ
……四回目。
五回目。六回目。七、八、九。十
……何度も何度も繰り返される戦い。男は、肩を揺らして息を吐いた。
汗に似た液体が男の額を、床を濡らしていく。それも、目の前のニンゲンが死んでしまえば、全て消えていくのだが。
——ああ、くそ。だめだ。そんな考えが男の頭を支配していく。どうして。サンズを守らなければ。負けちゃだめだ。でもサンズは
……もう。
それは、ほんの一瞬であった。本当に一瞬、弟に気を取られた男をニンゲンは見逃さない。
首元に感じる熱。ぐらりと傾いた視界。ゴトン、と鈍い音を立てて、男の視線は低いものになる。
どう して
どうして こんなこと……
まって そっち には さん ずが
だめ やめてくれ たのむ から
さんず だけは……
さんずだけ は みのがし て
ニンゲンが、男を背に歩き出す。そうして、柱の影を覗き込んで小さな笑みを浮かべた。
——だめだ。おねがいだ。かみさま、どうか。どうか、弟は
……。
*サンズのあみぐるみだ
*はかいしますか
▶︎はい
YES
はかいする
振り上げられたナイフが、弟の腹部を切り裂いた。
さん ず……
それは、男の最後の言葉。サラサラと風に舞う男はまるで、世界一面を真っ白に染める雪のように見えた。
約束破りの嘘つき
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