koto
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Public れめしし😈🦁
 

Gratuitous

れめししシリーズ小説
れめ→ししの短編3連作になります。
原作101話までの内容を含み、それ以降は原作軸とは異なる世界での話となります。原作と乖離する捏造部分がありますのでご注意ください

・雲裏の流星群(pixiv:2023.01.16.公開)
タッグマッチ戦後の整理がつかないままの獅子神に叶から連絡が入る。用件は流星群観測のお誘いで……。
101話時点での創作になりますので、102話以降とズレがあります

・embrace(pixiv:2023.02.28.公開)
獅子神宅で寝入ってしまった叶は、目覚めた深夜にとあるトラブルに見舞われる。そこで偶然目にしたものは?

・サヨナラの質量(pixiv:2023.02.28.公開)
※原作と外れた多くの捏造を伴います※
ある日、突然カラス銀行の賭場から叶の姿が消える。告げられた別れの理由と叶が獅子神に残したものとは

雲裏の流星群



「敬一君、星を観に行こう」
 叶からそう連絡があったのは、獅子神のハーフライフ初戦から1週間ほどが経った頃だった。
「星?相変わらず突然だな
「知らないのか?明日は流星群の極大日、しかも新月で観測するにはもってこいの状況だ。こんなチャンス逃すのも惜しいと思わないか?」
 電話口でそう話す叶の言葉に、たしかにそう言われると少し興味をそそられる。叶が天体ショーへ赴く目的の一つとして考えられるのは配信用の動画撮影だ。獅子神は詳しくないが星空を撮影するとなると専用のカメラや三脚も必要そうな気がする。であれば、車を出してやった方が身動きはとりやすいだろう。
「わーったよ。明日は用事もないし場所指定してくれりゃ迎えに行ってやる。待ち合わせ場所と目的地と時間、あとで送っておけ」
「さすが敬一君!じゃあ、また明日な」
 機嫌良く切られた通話に獅子神はまったく現金な奴だなと少し呆れるが、満更でもない。考えてみれば夜空を見上げることはあってもそんなのは数秒のことで、改めて星を見るためだけに時間を取るなんて経験はなかった。こんな風に半ば強引に誘われでもしなければ自分の中で選択肢にも挙がらなかったかもしれない。

 あの特別交流戦でのタッグマッチを終えてから、獅子神はいつも通りの日々を送っていた。朝起きて夜眠る、それまでの間を大幅にルーティンやペースを乱すことなく淡々と過ごす。半ば意識的にそうした生活を送りながらも、あの時、村雨に縋るように投げかけ、前提の間違いを指摘された問いについて考えない日は無かった。村雨の強さは副産物であると本人は言っていた。村雨だけじゃなく、真経津や叶もそれぞれがその強さに起因する正しさ以外の何かを持っているんだろう。
 そこまで考えたところで、獅子神は賭場における叶の姿を知らないことに思い至った。真経津からは相手の反則負けを狙わなければ勝ち目がなかったという話は聞いていて、その後、図らずも当人と会った際には事実ヤバい奴だとすぐに獅子神は認識できた。
 皮肉にも今までの獅子神は自分が見たくないものから目をそらすため、恐ろしいものや危険を孕んだものを察知する能力が常人よりも高かった。見ないようにするために察して、そんなものは無かったかのように振る舞う。一緒にいる奴らの段違いな強さを認識しながら、そもそもの覚悟の違いにまで考えを及ばせずに遊んでいたのも、今までの自分の悪い癖から生じた事だ。もちろん、彼らが気の置けない友人となりつつあることには変わりないのだが。
 腹を括り覚悟を決め、今まで直視することを避けてきた様々なことに相対する時が今なんだろうと獅子神は思う。
 
 
 
 
 
 あの日、獅子神に《何か》があったのは叶から見て一目瞭然だった。今まではどこか歪さを帯びた愛すべき友人であり、裏を返せばそれ以上でも以下でもなかった彼が、彼なりの強さの一端を手にして戻ってきた。そして強さ以外にも元来の善性ゆえなのかグチャグチャとした乱雑な想いも賭場から引き摺り帰ってきたようだった。タッグマッチで共に居た村雨はもちろんそれについて多くは語らなかったが、この変化に関わっていることは叶にはすぐに分かった。
 叶がその経緯をどうにか確認できないかと数日算段をつけていると、いくつかあるメールアドレスのひとつに観測者の一人であり叶を賭場での推しなどと宣うVIPから一本の動画共有のURLが送られてきた。どうやら銀行側がある一定以上のVIPに対して公開した特別交流戦の様子を収めたものらしい。一定、というのは今までの賭け金と観覧歴の長さ、あとは銀行に預けている預金額も関わっているかもしれない。これを見ることで更なる金を銀行に落とす可能性が高い層をピックアップしてるのだろう。熱心な観測者である送り主は、先日の配信動画から今回のタッグマッチ戦勝者が叶の友達であることを察しこれを送ってきたようだ。早速、叶は念の為極力自身の身元が特定されないように配慮した上でその動画を再生した。
 そこに映し出された内容は改めて村雨の強さを知らしめるに十分なものだった。一見気狂いじみた行いも、全てが終わりに向けた完璧な手順であり、その無駄のないアプローチには惚れ惚れしてしまう。
 そして、そのアプローチの一環として村雨が手ずから獅子神を鍛え上げる様もそこからは見て取れた。死の際に立たされ、そこから変貌する獅子神の様子はなかなかに魅せる光景であった。何が行われているか分からない状況ではある種恐怖映像にもなりうる雰囲気だが、結果が分かった上でこうして観れば獅子神がさしずめ羽化するような様をVIPが楽しむこともできそうだ。
 途中、相手側から開示された獅子神の過去は叶が感じていた獅子神の歪みの一因として附落ちした。時折見せる勤勉さや、他者へのマウントを示す作法、常に目を背ける何かを無意識に探しているかのような様はここに由来するのだろう。

 ゲームの決着が着いたところで動画は終わっていた。が、恐らくこのあともなんらかのやり取りがあったであろうことは叶の想像に難くない。
「んー、礼二君ばっか良いなー」
 叶はぐぐぐっと腕を上にあげ背筋を伸ばすと、床を軽く蹴り、座っている椅子の座面を回転させる。くるくると数度回りながら、最初にこの感想が出てきた自分に叶はフフッと笑う。少し前であれば、恐らく自分は村雨の強さを近くで垣間見れ一緒に遊べた獅子神に対して羨ましさを感じていただろうに、と思ったからだ。もちろん、その思いも叶の中にはあるのだが、それ以上にやはりあそこで1番羨ましいのは村雨の座する席だった。
 それにしても、だ。普段のハーフライフでの舞台装置や装飾から考えるとあの場は些か華やかさに欠けていた気がする。賭場はショー会場であり、客を高揚させ金を落とさせるために銀行側は抜かりない。それを考えるとあの会場のお粗末さは単に時間が無かったからなのか、それともメインディッシュはゲーム以外の物で、VIPに事前周知がありゲームに関する過度な装飾は不要だったのか。
 あの場のVIPがチームの勝敗以外に別の何かに賭けていた可能性が頭に浮かびながらも、叶の今の思考の半分近くを占めるのは銀行側の思惑に巻き込まれた獅子神についてだった。初戦は村雨という補助輪をつけた状態でスタートしたゲーム。終盤では補助輪は外れたものの、この先、道によっては派手に転び大ケガもするだろう。銀行側が獅子神の前に用意する道を考えると叶の口から悪態が溢れた。
 
 
 
 
 指定された待ち合わせ場所に獅子神が到着すると、パッと見それらしい人物は見当たらない。暗さに紛れているとはいえ、叶のいつもの出で立ちなら目に入らないはずは無い。まばらに行き交う人の流れを獅子神がなんとなく眺めていると、その中からこちらへ近付く人影に獅子神は気付いた。
 男はよく見知った背格好ではあるものの、その装いは見慣れたものではなく獅子神は顔が確認できるほどの距離に来るまで半信半疑で見つめていた。そして、やはり間違っていなかったことが確信できると運転席から降り立つ。
「オマエ、そういう格好もできんのな」
「そこまで近付かないと確信できないなんて敬一君は薄情だな」
「普段とのギャップがあり過ぎんだよ
 獅子神の近くまで来た男はアウトドア用の薄手のアウターを着てデニムにスニーカーといった出で立ちだ。特段奇抜さは無く、強いて言えばアウターの胸元にあるマークがブランドのものかと思いきや、よく見れば見覚えのあるものだったことくらいだ。なんてことのない格好だが元の素材の良さをいかんなく発揮し、通りかかる人々の視線を奪っていた。
「とりあえず、目立つから乗るぞ」
 そう言って獅子神は車内へと促す。自身も運転席に乗り込みながら傍らを見ると、その長い脚を器用に助手席へ収めているところだった。

「で、他は誰が来るんだ?」
 当然のように獅子神が真経津か村雨、もしくはその両方が同伴すると思って投げかけた問いに叶ははて?といった表情を作る。
「今日は他には誰も誘ってないな」
「え、そうなのか?」
 予想外の返答に獅子神は少し動揺するが、確かに昨日誘われた時には誰が一緒かとの話はしていなかった。ただ、今まで叶とは二人だけで出かけたことがなく、当たり前のように複数人で行くのだろうと早合点していたのだ。些細なことではあるが先入観で決めつけていた自分の思考に獅子神は小さくため息をつく。
「お?敬一君は俺だけじゃご不満かな?」
「ちげーよ。そういうんじゃねぇ、悪ぃ
「なんてな、分かってるよ」
 自分のため息が確かにタイミング的に2人きりであることへの不満に聞こえることに気付き謝る獅子神を叶はからかっただけだと笑い飛ばした。獅子神はここから1時間半ほどの目的地へ向けて車を出した。

 車中のBGMは叶に任せると獅子神は夜も更けすっかり暗くなった景色の中、外灯で浮かび上がる街道を目的地へ向けてひた走る。建物の輪郭が夜の暗さに削ぎ落とされ、点る煌々とした明りは車のスピードでどんどん後方へと流れていく。存在を主張するはずの看板すらも無個性に映り、そんな中で運転をしていると自然と気持ちが凪いでいくようだった。車内には音楽が小さくかけられ、獅子神のすぐ横では叶もいつもの騒がしさはどこへやら、静かにそこに座っていた。
 暫くして先に口を開いたのは獅子神だった。
「叶は、なんでギャンブルをやってるんだ?」
「珍しいな、敬一君がオレにそんなこと訊くなんて」
 声の聞こえから、窓の外を眺めていた叶が獅子神の方へ顔を向けたのが分かる。獅子神は視界に広がる道路を見つめたままだったが、叶がこちらに視線を寄越したままであることは感じ取れていた。数秒の沈黙。叶は恐らく質問の意図を獅子神の口から話させたいのだろう。
「前に言ってたろ?止めたい時に止められる奴はこんな所にいないって。だから、単に金を稼ぐためってわけでもなさそうだし、何か理由があんのかなって」
 叶は真経津よりもハーフライフでの勝数自体は多く、村雨が一度4リンクまで下げたため、賭博口座から多額の金を使っていない限り4人の中でも残高は多い方のはずだ。それは村雨が以前語ったワンヘッドにも近いということになる。そんな危ない橋を渡り続けて尚、賭場に身を置く理由に興味があった。
 叶は獅子神に向けていた視線をフロントガラスの向こう側へと移す。獅子神が目に映す風景と同じものを見遣り口を開いた。
「そうだなあそこは敵とオレだけでゲーム中は余計なものが介在しない。お互いが目の前の相手の考えを漏らさず全て読み通そうと真剣に必死に見つめ合う。中にはしょうもない退屈な奴も居るが、ハーフライフ以上だったらそこまでのハズレは無い」
 その口から出てきた答えは叶らしいと言えば叶らしく、ただ一方で命を賭けギャンブルを続ける理由になりえるかと言われれば、すっと腹落ちする内容ではなかった。
「オレの答えが敬一君の答えになるはずもない。晨君も礼二君も当たり前だけどみんなそれぞれ違ってる」
 叶は獅子神の釈然としない様子を把握した上で話し続ける。
「共通してる点があるんだとしたら、オレも晨君も礼二君も、性さがなんだろうな。傍から見たら理解不能な理由でも、そうしないといられない性さが。そんな俺たちにあそこは求めるものを提供してくれる。一般的な倫理観てやつに照らし合わせれば、狂ってる異常者に」
 そこまで話すと、叶は小さく一息つき獅子神を見る。
「まあ、あくまでオレの考えだ。礼二君に聞かれたら勝手にわかったふうな口をきくなって睨みつけられるな」
 そう言うとケラケラと笑い、スマートフォンを取り出すと手元のそれに視線を落とした。
 話はここまで、ということなのだろう。獅子神は叶の言葉を頭の中で反芻しながらアクセルを踏む足に少しだけ力を込めた。自分にもそんなものがあるのだろうか。獅子神の中にまだ明確な答えはなかった。
 
 
 
 
 
 車は渋滞に巻き込まれることも無く予定通りの時間で目的地に到着した。叶が指定した場所は広い敷地の駐車場で周囲には明かりが少なく、車のライトを消せば真っ暗になる天体観測にはうってつけの場所だった。だが、それにしては停まっている車の数はまばらであった。
「叶、これちょっと厳しくねーか?」
 エンジンを切り、それぞれが車から降りると獅子神が空を見上げて言う。その言葉の通り、空は雲がかかり煌めいているはずの小さな光をくまなく遮っていた。
「んー、降りそうなタイプの雲じゃないな。せっかくここまで来たんだし、ちょっと様子を見ようか」
 そう言いドアを開け後部座席をゴソゴソと漁ったかと思うと、叶は獅子神が持ってきた荷物を取り出す。
「せっかく敬一君が用意してくれたコーヒーとお菓子もあるんだし、そこのテーブルとベンチで休憩といこう」
「そういうのは、持ってきた本人が言うんだよ」
 今までなら、用意してきたなんて一言も言って無いのになんで分かるんだ、と騒いでいそうな獅子神の変化に叶は小さく胸が踊った。自分がどうやって気付いたか、それが獅子神にも理解できるようになったという証拠だったからだ。
 薄曇りの夜空の下、深夜のお茶会は非日常感が漂っていた。獅子神は菓子に手を伸ばすことは無かったが、用意した温かいコーヒーには口をつけた。日中は夏を思わせるような強い日差しが照りつけることも増えてきたが、それでも、まだ夜は肌寒い。叶も同じように差し出されたカップに口をつける。
「たまにはコーヒーも良いな」
「オメーはエナドリ飲み過ぎなんだよ。今飲んだのはデカフェのコーヒーな」
 そう言ってニヤリと獅子神は笑って見せる。自分のエナジードリンクの量からカフェイン摂取量を気遣ったらしい獅子神の選択に叶は楽しそうに笑う。
「いいね。敬一君オレのことよく見てるじゃないか」

 鍛え上げられる前から、目の前の男に素養というか予感めいたものは感じていた。なかなか悪くない、と。上手く転べば有害となり得る強さを手に入れるんだろうなと。
 正直、出会ったばかりの頃の獅子神は有害か無害かと問われれば圧倒的に後者だった。だが、よくよく観測すると獅子神もまた歪いびつさを抱えていることに気付いた。本人の無自覚と未覚醒はさて置いても、そもそも歪んだ人間じゃなきゃ、こんな有害が服を着ているような二人と友好な関係を築けるわけがない。かくして、獅子神の入国を許可した叶だが、今考えると入国許可の動機としては少し薄い気が叶自身している。そうして最近になり、有害な存在になりそうな予感以上に、今後、愛する存在になる可能性を心のどこかで確信していたからなのかもしれないと叶は思い至ったのだった。
「にしても、なんで今日はそういう格好なんだ?配信用の動画撮影でもするつもりだったんじゃねーのかよ」
「今日は撮影の予定そもそも無いぞ」
「そうなのか?」
 予想外だったらしく、目を丸くする獅子神に叶はニッコリと笑ってみせる。
「敬一君と星を観に出かけたかった。それだけだ」
 叶の言葉に疑問を抱いたようだったが、獅子神は直ぐに彼なりにその理由を考えついたらしい。
「なんか、気ぃ使わせちまったみてーなら悪かったな」
 そう言ってバツが悪そうに笑顔を浮かべる。バカだな、と叶は思う。どうせ、そんな見せかけの笑顔なんて自分には意味がないのだから、もういっそ今抱えている迷い、痛み、苦しみに任せて自分の前で泣き出せばいいのにと目の前の男の見えない泣き顔に思いを馳せる。礼二君のように割り切っているか、晨君のように振り切っていたら、こんなに思い悩むこともなかったんだろうな、と叶は思った。

 日本では推計で年間数千人の失踪者が居る。この中には、恐らく銀行がらみで地下オークション送りやゲームで死亡した奴も一定数含まれているのだろう。一般的に考えられているよりも実は容易に人は社会から消え失せることができる。熱心に探す存在が居なければなおのことだ。だから、多分、このまま自分と獅子神が突然姿を消したとしても多くの人々は気にも留めないだろう。
 そこまで考えて、いっそ拐さらってしまったらどうだろうという思い付きがふと頭を掠めた。大きめの家に不自由なく必要なものを揃え、そこから出なくても生活ができるくらいの充実した環境を整える。最初こそ抵抗するかもしれないが、時間をかけて実は自分が獅子神を大切に思っていること、叶の世界から消えないでほしいことをこんこんと諭せば、あるいは。と、そこまで考えたところで、これじゃあ、箱庭でのままごとだなと叶はそんな思い付きを鼻で笑った。
「何言ってるのか分かんないね。オレが敬一君と来たかったんだ。オレがそうしたいと思った。それ以上でも以下でもないな」
「そーかよ」
 下手くそな笑顔が少し歪む。叶がそうしたいと思うほど価値ある人間なのに、そんなことを分かっていない目の前の男は、弱者への思いやりの類だと勘違いしている。ほんとに愛しいなと叶は思う。
 コーヒーは飲み終わり、菓子も数個食べ終えた。それでも空を見上げれば切れ間は小さくあるものの、いまだ雲は空を覆ったままだった。だが、そんなことは別に叶にはなんの問題でもなかった。今日この時間のこの場所が曇ることなど出発前から分かっていたのだから。
「車戻るか」
 晴れない空を見上げた獅子神はそう言って、テーブルに広げられたものを片付け始める。獅子神にとっては無駄足を踏まされたような状況だが、それに苛立ってるようにも落胆しているようにも見えなかった。

「敬一君」
「ん?なんだよ?」
 荷物を持ち曇った空を見上げながら、ゆっくりと車に向かう獅子神の後ろから叶が名前を呼ぶと獅子神は振り向きもせずに応答する。
「オレは敬一君がどんな強さを選んでも、変わらず好きだからな」
 叶の言葉は完全に想定外だったらしく、数秒後、獅子神はものすごい勢いで後方を振り向く。
っ、はぁっ⁈いきなり何気色わりーこと言ってんだよ!!」
「あはは、ひでーな。お兄さんが悩める青年にエールを送ってるのに」
 当人は暗がりでバレてないと思っているが、頬が紅潮していることは叶には分かっている。
「なにがお兄さんだ。世話焼いてんのはどっちかっていうと俺の方だろ」
「あ、世話焼いている自覚はあったんだな」
「お陰様でな!」
 語気を強めながら車のドアを開けると獅子神は手に持っていた荷物を後部座席へ置く。
「まあ、でも実年齢ではオレのが上だからやっぱお兄さんじゃないか?」
 叶の言葉にドアを閉めた獅子神はマジマジとその顔を見つめる。
「は?オマエいくつなんだよ」
「28歳」
「嘘だろ」
 愕然とする獅子神の気持ちも分からなくはないがなかなかに失礼な反応だなとも思う。
「そんなお兄さんなオレから敬一君へ注文がある」
 獅子神は叶の語調の変化に気付くと口を閉ざし、続きの言葉を待った。
「強くなってくれ。最低限、自分の命を守れるくらいには、な。敬一君以外の誰を犠牲にしてもだ」
「叶
「オレは敬一君の料理が気に入ってるからな。食えなくなるのは困る」
 少しだけ茶化すようにそう言うと、叶は笑いながら獅子神の頭に手を置き、わしゃわしゃとその金色の髪をかき混ぜた。
「ちょっ!ざけんなよ!!」
 急な叶の仕業に驚きながらもどうにか逃れた獅子神は運転席へと乗り込んだ。急に頭を撫でられたものだから、おそらく慌てただろう獅子神が少し気を落ち着けるまでの数秒を叶はドアの外で待つ。
 頭上には相変わらず雲が広がっている。神頼みなんて柄じゃないし、星に願いをなんてなおのことだ。それでも、この雲の裏でいくつもの光りが降っているなら一つくらいはこんな願い事を聞いてくれないかと思う。
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マシュマロ
読後の一言などいただけたら大喜びです

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