しろくまたたくはくしゅんさん
2024-11-17 20:09:00
14159文字
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Read【ヌヴィフリ】

Dearの続きです。
PDF版ができたら支部にもあげる



 気が付けば、激流に巻き込まれていた。
 何故こうなっているかもわからぬまま身を任せる。敵意はなく、まるで大きな海流に巻き込まれたような感覚はむしろ心地よかった。

 流れが緩やかになり、光にあふれた空間に下ろされる。

……紙?」
 ただの紙ではない。文字が書かれている。
 『親愛なる』からはじまる文章は、業務で書き連ねる無機質なものではない。これは、想いが込められた手紙だ。
 頭上から舞い降り、散っていく膨大な手紙の数々。その中に、見知った書体が見えた。
 掴み、読もうとする。意味を理解する前に、文字がどんどん薄れて消えていった。
「駄目だ、」
 失いたくない。
忘れたくない。
強い拒否感が湧き出て、降りくる手紙を掴んでは読み取ろうと躍起になる。しかし文字はかすれ、沈み、すべて白紙になっていく。
掴んだ分だけでも、と手の内に仕舞い、腕に抱えたが、やがてなぜ手紙を守ろうとしたのかすら、分からなくなった。
 漠然とした悲しみに浸るが、ここでは雨が降らない。
 代わりに、インクの跡が無くなった真っ白な紙に降られる。
 まるで、なにかの祝福のように。


「おじさま!」


 声がして、振り返る。誰もいない。ただ、声のした方へ歩き出す。

「おじ様」

 別の女性の声がした。笑い声。やがて、街中の喧騒のような音が広がった。

「おじさま」
「ヌヴィレット様!」
「ヌヴィレットさん」
「おじ様ぁ」
「おじちゃま?」

 男女の様々な声が聞こえた。振ってくる紙の量が少なくなってくるにつれ、呼び声は多く、大きくなっていく。声の主を探す。足を向け、うろつく。紙が頬に触れ、足元に舞い降りては光に溶けていく。

「ヌヴィレットおじ様」
「おーじーさーま!」
「最高審判官殿!」
「おじ様?」
「ヌヴィレットさまぁ!」
「ヌヴィレットさん、」
「小父様」
「最高審判官ヌヴィレット様!」
「おじさま!」
「ヌヴィレットさん」
「おじしゃま!」
「おじ様?」
「ぬーちゃん!」

 懐かしい。だが、思い出せない。もう、思い出せない。
 はらり、はらり、と舞い落ちる紙が数えるほどになり、最後に封蝋が押された手紙が一枚降ってきた。
 手を伸ばす。
 ああ、これだけは忘れてはいけない。
 指先が触れる。────決して、離さないように掴んで、