残りの吐きそびれた息は、彼の口に飲み込まれた。衝突のようなキスだった。それを見ていた(見させられた、見守っていた)うちの気の利いた誰か一人が、二人の近くに携帯を滑り込ませた。音楽が流れ響く。『I will always love you』だった。いやいや、あれ別れの歌じゃないか、それじゃ駄目だよこっちの方がいいよ、別の人間が『Can't take my eyes off you』を流す。何言ってるの? 私の国じゃこれが定番のラブソングよ、更に別のどこの国の言葉とも知れない歌が流れる。流れはあっという間にタイムズ・スクエア中を駆け巡り、たっぷりと多種多様の音楽と歓声と野次で満たし尽くした。